第574回「マンション用地がない」

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新築マンションの供給戸数がひと頃の半分に減ってしまったことについて書いたことがありますが、簡単におさらいしておくと、10年前の前後5年は平均8万戸(首都圏全体)も供給されたが、直近5年は平均4万戸と半減しているのです。

この現象は、一時的なもので東京五輪後は価格も下がって供給戸数は再び増えると、どなたかが書いていましたが、筆者は意見を異にしています。

●マンション用地がない

数年前から「新築は伸びない。これからは中古の時代だ」と予測して来ましたが、その根拠は土地がないことにあります。

マンション用地の希少性が急に薄らいだのは2000年代初頭でした。あり得ないほど貴重な一等地が多数放出されたからです。法人所有者の土地に対する考え方が激変したためでした。

社宅、運動場、学校、倉庫、工場などの大量放出が始まったのです。歴史ある企業が保有していた社宅は、その多くが取得時は田舎・郊外だったかもしれない場所にありましたが、近年は住宅地として最高の条件を有する、将に「一等地」に変貌していました。それが雪崩をうったように市場に出たのです。

学校跡地が売り出されたのは、郊外への移転によるもので、都心の本部ビル・校舎は残しながら一部を切り売りした資金で、売った土地の10倍の広さを郊外に買ったのでした。廃校になったためという売却例も確かあったはずです。

ある製造業の会社は、製造拠点の海外移転によって不要になった工場を売却しました。倉庫を売却した例も多数ありました。それらは工場・倉庫なのに市街地にあったので、マンションにとっては適地だったのです。

こうした企業・団体の土地放出は、景況の悪化で資金繰りに窮したというような理由ではなく、新時代を迎えての積極的な「リストラクチャリング」の一環でした。創業から100年にもなろうかという老舗企業でなくても、戦後誕生した50年企業は「含み益」のある優良な土地資産を数多く保有していました。

今も、毎年少しずつ社宅を整理統合したり単純売却を計画的に実施したりする企業はありますが、2000年初頭に始まった社有地放出の潮流は7~8年くらいで一巡し、もはや売地は底を着いてしまったのです。

●2017年9月1日の新聞報道で明らかに

このような経過が最近5年ほどの供給戸数の少なさにつながっているのですが、実は筆者にもこの動向にかすかな疑問を感じていました。

それは、新規の供給戸数が増えないのは着工と発売を遅らせているだけで、用地は多数保有しているのではないのかというものでした。

ところが、2017年9月1日の日経新聞に「販売用不動産2年ぶり減・大手5社の保有高・用地確保難しく」の文字が躍っていました。筆者の疑問は解けました。やはり、大手業者も用地確保に苦労しているのだと確信めいたものを感じたのです。

記事によれば、ホテル建設などの不動産投資が活発で用地確保が難しくなっているとありました。ホテル建設はオリンピック目当てなので、あと1年もすれば峠を越えるかもしれませんが、オリンピック後も訪日客の増加傾向は続くから建設ラッシュはなくならないという向きもあります。

交通利便性の高さを条件とする点など、ホテル用地とマンション用地は類似点が多いのです。このライバルがマンション適地をさらってしまうらしく、マンション業者は土地不足に嘆くことになりました。今後も競争は続くのでしょうか。

マンションは開発時間を考慮し、少なくとも2年先の販売商品用に早めに用地を買収して行くのですが、大手が扱う大規模敷地は5年先を見越しているものもあります。再開発案件になると10年先のプロジェクトが普通です。

●今後注目されるのは再開発物件か?

用地難はおそらく長く続くだろうと見ています。

需要がある以上、マンションデベロッパーは用地を求め続けるでしょう。しかし、無理な仕入れをしても利益を削るだけのこと、売り上げだけ増やしても意味はない。だから、販売が確実に成功する立地条件の良い土地を厳選して仕入れると語るデベロッパーも増えています。

先頭を切ったのはライオンズブランドで一世を風靡した(株)大京でした。かつては供給戸数でナンバーワンを長く続けた業界トップ企業でしたが、10年前にはトップの座を明け渡し、数を追うことは止めたようです。

郊外に目を向ければ、マンション用地になりそうな売地はあるので数を追うことは可能だそうですが、都心から遠い物件は販売に苦戦するので積極的には取り組めないと多くのデベロッパーは語ります。

今後デベロッパーはどこへ向かうのでしょうか?

1棟リノベーション物件の開発、郊外の駅前マンションに絞る、木造密集地の再開発、建て替え事業など、メニューは揃っています。しかし、柱になるほどのものはありません。それぞれに高いハードルがあるためです。

そんな中で注目できるのが「再開発」です。戦後の焼け野原から無計画に家が建てられた街は東京中に数多くありますが、そんな中の「木造密集地」は、災害の危険度が高いとされます。

巨大地震などによって火災が発生すると、道が狭いために消防車が入って行けず、延焼して被害が広がるという心配があるのです。すなわち、新潟県糸魚川市で起きた大火のようなことが現実味を帯びているのです。木造密集地は、下町だけでなく世田谷区などにも見られます。

最近販売が始まった密集地の再開発マンションが注目を集めています。大井町と武蔵小山のことですが、少し前の国分寺、竣工済みの蒲田や大泉学園なども駅前の再開発案件だったはずです。

再開発は地権者が数多くいるので、合意形成に時間がかかると言われ、成功事例も少ないのですが、最近はスピードアップしているような気がしています。少なくとも、分譲マンションの建て替え事業より早いのは間違いないようです。

糸魚川大火のような規模ではなかったものの、実際に火事が発生し、鎮火に苦労した事態を目の当たりにして危機感を持った住民は、デベロッパーの提案に全員が賛同するのに長い時間を要しなかったという話も聞きました。

行政側も積極的に協力する姿勢を見せていると聞きます。

武蔵小山駅前の再開発計画は第2弾、第3弾と続くとあります。連鎖なのでしょうか?古くからの地元住民が街の活性化に前向きに取り組んでいるということでもあるのでしょう。

東京の古い駅前商店街などが、街の衰退を未然に防ぎ、魅力ある街づくりに取り組もうとする波は本格的にやって来る気配を感じます。

武蔵小杉や豊洲など、最近10年くらいで急発展した街は、もともと夫人所有の大規模敷地が多数あった場所なので、開発を進めやすかったという背景がありますが、個人住宅や商店が密集する場所の再開発は合意形成に時間がかかるため、デベロッパーも取り組みに消極的だったのですが、用地不足に悩む中で最近は姿勢が変わってきたようです。

ゼネコンも将来の工事量確保のために再開発プロジェクトには昔から積極的でしたが、最近は拍車をかけているのかもしれません。デベロッパーとゼネコンが地元住民とタッグを組んで街づくりを行う、災害予防のためにも結構なことです。

とはいえ、再開発で生み出されるマンションの戸数は1カ所で500戸~1000戸です。用地不足を補うまでには至らないでしょう。しかも、再開発マンションは決まってバカ高い売値になるのが普通です。最近の国分寺も大井町も、また間もなく売り出される武蔵小山でも、ものすごい人気だそうですが、購入できる人はごく一部です。大変な数の関心客が集まるものの、価格を聞いて大半が諦めると聞きます。

どれとは言いませんが、再開発マンションの価格は、それまでの相場の5割高であったりするからです。価値あるマンションには違いないけれど、そこまでも価値があるのでしょうか?買えないこともないという人から、その種のご相談が筆者の所にもよく届きます。

●新築は数がなく、買いたくても買えるものがないと思いましょう

今後は魅力的な駅前再開発マンションが続々と登場してくるかもしれません。しかし、価格は驚くほど高いので、それでも値打ちあるものと、価値に見合わない高値のものとを見極めなければなりません。

うかつに高値で買えば、将来の資産価値は期待外れとなりましょう。駅前マンション、再開発マンションというだけで飛びつかないことが大事です。

ともあれ、マンションを買ってみんなで喜べる時代ではないので(少なくとも、あと10年は)、マンション選びの難しさもしばらく続きます。少なくとも、新築にこだわったらよい物件には巡り合えない、そう思った方がよいでしょう。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。

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