第603回 価値が下がらないマンションの3要素
- 2018.01.30
- マンションの資産価値
このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論を展開しております。資産価値を重んじる方のための購入のハウツーをお届けするもので、お気に障ることもあろうかと思いますが、満点の家はないと思っていただき、失礼はお許し下さい。
5日おき(5、10、15・・・)の更新です。
マンションの価値は、一般に建物の劣化とともに低下して行くものですが、それを止める要素、劣化のスピードが遅くなるマンションの条件についてお話ししようと思います。
新築マンションを購入する人には、遠い先の話なので、読み飛ばしていただいてもよいかもしれません。もし、選択肢の中に中古もある方は、間近な問題になるかもしれないので、基本的な知識として記憶に留めて頂いたら幸甚です。
①管理・メンテナンス
資産価値を長く維持できるマンションの条件、そのひとつはこれです。
なんだ、そんなことなら先刻承知とおっしゃるかもしれませんが、本稿はちょっと視点が違うので、お読みいただきたいと思います。
マンション管理と言えば、清掃や整理・整頓などの日常の管理も大事ですが、それだけでは不十分です。そう、大規模修繕を実施して行くことが必須です。しかし、その範囲が実は問題なのです。
大規模修繕は目安として築後12年、24年、36年というインターバルで実施していくものとされますが、これは法定ではありません。しかし、実施するのときの対象範囲がどこまでか、そこに問題が隠れているのです。
日本人の寿命はやがて90歳になります。ここまで延びたのは、医療技術や医療体制、個人の健康意識の高まりにあると言われます。とはいえ、病気を治すだけでは加齢を防げないように、血管年齢を若く保ち、骨密度と筋肉量を維持するためのケアや運動を継続するということが必要です。
最近のマンションは生まれたときから長寿命の体になっているので、きっと人間の寿命くらいは生き延びるはずです。つまり、周期的な大規模修繕を行って行けば、長生きできるのは間違いありませんし、管理意識の高まりが長寿命を実現させるはずです。
つまり、どのマンションも普通に管理し、普通に手入れして行けば心配はないという結論になるのです。
筆者が語りたいことは、寿命を縮めないようにするにはどうするかなどという読者が既に知っている、分かり切った内容ではありません。「年を感じさせないマンションの条件」についてお伝えしたいのです。
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大病をしたことのない人でも、年を取ると体力の衰えは隠しようがありません。いえ、体力だけではありません。見た目の衰えも確実にやってきます。
日ごろから体を鍛え、ケアも怠らないアスリートも、年齢を重ね、やがては引退を決断する時が来ます。
サッカー選手の三浦知良さんのように50歳で現役という、とんでもない人もいますし、イチロー選手のような大リーグで活躍する高齢のアスリート、スキージャンプの葛西選手など、世界には数多く高齢でありながら一線で活躍するアスリートが存在します。
アスリート以外では、80歳で若大将そのままの加山雄三さん、現役の舞台俳優では仲代達也さんや草笛光子さんなど、元気老人がたくさん見られます。一般人でも、年齢を感じさせない若々しい人が少なくないようです。
しかし、このような人たちもいつか引退するときが来ます。
マンションの寿命も飛躍的に伸びて行くかもしれませんが、見た目の美しさを保っていくことは可能でしょうか?専門家の診断を受け、悪い所は大手術を施して新築同様にすることは可能です。弱った心臓も、機能が低下した腎臓も、血流が悪くなった血管も全て交換するような、人間では困難なことも建築では可能です。
従って、部分的には60歳のマンションも0歳に若返らせることが理論上は可能です。しかし、建て替えない限り、全部を新築のようにすることは不可能です。
市場に流通している中古マンションは、5歳から45歳くらいまであります。当然、新築同様に美しく最先端の設備を装備し、素のままで買い手を待つものから、古着を身にまとい、レトロな雰囲気を漂わせたものまで幅は広いのです。
その中から選択するのは容易なことではありません。いくつもの検討物件の中から最後に選んだのが築30年を超えるかどうかといったマンションであるとき、買い手は直前まで悩むに違いありません。
買い手の多くは管理状態を見るはずですが、築20年くらいまでは管理による差異は、少なくとも表面的にはできにくいものです。極端な言い方ですが、若いうちは特別な手入れをしなくても、素のままで十分に奇麗なのです。
金属でも長年の使用によって金属疲労を起こし破損しますし、コンクリートも長い間には亀裂を生じ、鉄筋は錆びてボロボロになります。塗装はいつか剥がれ、日焼けした後の皮膚のような状態になるのです。
しわのない老人はいませんし、男なら大抵髪が薄くなったり白くなったりします。それと同じです。
買ったマンションが築25年なら、美しく、かつ大規模修繕も行われたばかりで、屋根も外壁も雨漏りの心配もないはずです。ほとんどのマンションが維持管理を放棄したまま25年を経たなどということはないからです。24年目には大規模修繕(屋上の防水や壁面の補修など)も実施していることでしょうから、何事もなく25歳の誕生日を迎えたはずです。
しかし、そのマンションを15年後に売りに出したときの姿はどうでしょうか?築40年になっているのです。人間に例えれば壮年です。ところが、物件によっては「くたびれた」印象を放っているかもしれません。
そのころには、3回目の大規模修繕が終わり、エレベーターなども新品に交換されているかもしれませんが、そのほかはどうでしょうか?問題は見た目です。
管理の対象となる共用部分の手入れを適切に行って来たマンションでも、経年劣化は防げないのです。早く言えば、床や壁、天井の古さ、清掃しても取り切れない汚れが建物を醜く変えて行きます。つまり、「見映え」が悪いのです。
深いしわのある顔も年輪として美しく見えないこともないですが、そうでない人もたくさんいます。しかし、叶うことなら「外形的な若返り」を望んでいる人は多いはずです。
マンションも古くなったとき、そのレトロ感を「味があっていい」とされるものもありますが、多くの場合、歓迎されない醜さをさらけ出しているものも多いのです。どうやったら、外形的な美観を保てるのでしょうか?
簡単です。人間ではできないことがマンションなら可能です。マンションの場合は、皮膚を取り換え、髪を植え換えればいいのです。これを「美容整形」と言いましょう。
しかし、多くのマンションが「美容整形手術」をしないのです。正確には改修工事を中途半端に留めていると言うべきですが、このために経年劣化は避けられず、築30年・築40年マンションが新築のように蘇えることはありません。
管理組合の財政の問題でもあるのですが、美容整形に対する意識がまだ高まっていないのでしょう。今後の課題かもしれません。
②経年優化という発想
これはある意味でカモフラージュということになるのかもしれませんが、建物を樹木が覆うような姿を想像してみてください。
敷地内に植樹した木々が育つとマンションの形が変わるのです。建物は劣化しても、建物の周りを覆う樹木がそれを覆い隠します。大きく育った樹木がマンションの足元を隠し、顔を上げると建物が見え隠れしているといった景観は美しいものです。
買おうとしているのが新築マンションなら実感はないはずですが、中古マンションなら既に建物の劣化を覆い隠しているかもしれません。そのような物件なら築40年になっても古ぼけた印象を放つことはないかもしれません。
「美しく年を取る」をマンションに当てはめると、こういうことかもしれません。
③立地条件的に希少価値あること
マンションの価値は、立地+建物ですが、建物価値が経年劣化によって低下しても、立地において並ぶものがないとき、その価値は何年経ても変わらないのです。
普通の立地のマンションが経年劣化によって、築20年くらいになれば、その価値を新築と比較すると東京では平均して70%相当に評価されますが、希少価値の高い立地にあれば80%なり90%なりの評価を受けるわけです。
このようなマンションは都心の一等地にヴィンテージマンションとして多数存在しますが、そうなりえる可能性があるマンションかどうか、もしかするとそうなりつつある中古を将にあなたは選択しようとしているのかもしれません。
新築との比較と言いましたが、希少価値のある立地条件にあるということは「新築」にはない立地を意味するのです。新築対比80%、90%ではなく、立地で劣る新築と比べれば100%、110%ということもあり得るのです。
新築より高い中古、それは希少価値そのものかもしれません。
仮に、希少な立地のマンション、その近所、分かりやすく言えば隣地に新築が30年ぶりに供給されることがあれば、その新築は立地条件の良さから高い分譲価格となることでしょうから、その対比で見れば30年中古は80%の価格かもしれません。
しかし、そっくり同じような建物ができることはないので、規模や高さで圧倒している中古なら、その差は接近し、90%なり100%となって行くのです。
希少な立地条件にある中古は、近辺で誕生する「希少とは言い難い立地の新築マンション」との価値の差が何年経っても開かない、そのように期待できるのです。
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