第623回 新築マンションの値引きの可能性を探る

このブログは5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

今日は、値引き交渉の考え方と交渉の方法論をご紹介しようと思います。

 

新築マンションは、購入者の家族に小中学校児童がいる場合に新学期への移行期の4月までに引き渡しをしようと、概ね1~2月の工事完成を目指します。

数百戸の大規模マンションになると、全世帯の引っ越しの日程調整の関係から、前年11~12月に完工させます。

 

売主の決算期が3月になっていることも多いので、売り上げ計上基準である「引き渡し」を3月にしたいという社内事情もあって、中小規模のマンションにあっては3月初旬の完工で3月末の引き渡しというタイトなスケジュールの物件も少なくありません。

 

普通は、建物完成までに完売させたい売主ですが、完成時点で売れ残りになることがあります。完成マンションで未販売住戸は、「在庫品」ということになります。(完成してから売り出しを掛ける例も稀にありますが)

 

さて、1月~3月の建物完成から半年を経過して売れ残りを抱えている売主は在庫をどのように処分しようとしているのでしょうか?

 

各社の方針や戦略は様々ですが、共通しているのは「値引き販売」です。売れ残りの直接の原因は違っても、最終的には安ければ売れるものです。

買い手の立場でも、「少し気に入らないところもあるが妥協できないこともない。最後は価格だと思います」と筆者へのお便りの中で述べています。

 

つまり、「価格交渉がうまく行ったら買おうと思います」。「ついては、交渉の仕方を教えて」や「いくらくらいまで可能ですか」というお尋ねがよく届くのです。

 

  • ●はじめに:成否は相手次第

交渉事は相手があって成り立つ話です。相手が強力か非力かで成果は当然違いますし、タイミングによっては強力な相手でも満足し得る成果を引き出すことが可能です。

 

一律の交渉技術などというものはありませんし、傍観者たる筆者が保証できるようなものでもありません。

 

個人の買主から見れば、交渉の相手は強大な力を有する企業です。その相手と対等に渡り合うことは可能なものでしょうか?このような疑問を持つ人もあります。しかし、相手にも弱みがあるのです。筆者は、気を強く持って交渉に当たるようにと助言するようにしています。

 

ただし、何事も例外はあるもので、どんな方法・作戦で臨もうと、「梃子でも動かない業者」、「非常に手ごわい業者」もあることをお断りしておきます。

(本稿では、業者名を公開はできません)

 

一方、買い手にとって最終の決め手になる値引き額とは、どのくらいでしょうか?物件価格の5%でしょうか?10%でしょうか?これも個人差がありますし、物件にもよるわけですが、大きければ大きいほどよいことは確かです。

 

  • ●値引きが可能と思われる物件(その1)

どなたもご存知かと思いますが、値引きをしてくれそうな物件の代表は、「モデルルーム価格」と表示している物件です。

 

建物が竣工して売れ残りがあるケースは、例外なくマンション本体にモデルルームを移動して販売活動を行っています。それまで、貸しビルの中や借地して建てたプレハブ小屋などの、外部にあった「棟外モデルルーム」から「建物内モデルルーム」へ移るのです。

 

建物本体内のモデルルームは、ショールーム兼商品です。たくさんの人の出入りがあり、ドアというドアを開けたり閉めたりします。多くの人々が素手で触るのです。ガラス越しに覗くわけではありません。

 

このような、いわば手垢のついた商品ですから安くなって当然です。マンション広告を見ると、「モデルルーム価格」と書いてある物件があります。これが安値にした住戸で、2室程度をセールに出しているのです。ただ、元の価格(定価)が広告に掲載されることは滅多にありません。

 

これは直接現地に行って尋ねるしかありません。ともあれ、その値下げ額は何百万円単位ですから、検討の余地はあるはずです。少なくとも200万円、大きいものでは500万円くらいの値下げになっているものです。

 

  • ●値引きが可能と思われる物件(その2)

完成済みでありながら「第〇期〇戸。××月××日から登録受付開始」と、いわゆる期分け販売における「新発売」を謳う一方、同じ広告誌面に「先着順受付中〇〇戸」とあったら、販売に苦労している物件と見て間違いないでしょう。

 

未完成物件でも同様の物件を見ますが、こちらは苦戦中とは断定できないケースがあります。

 

また、「再登録受付」というのも候補に入るでしょう。これは登録キャンセルになったので、もう一度登録をやり直すというわけです。「キャンセル住戸の先着順受付」でもいいわけですが、広告の表現戦略上、こうした方が良いと判断したのでしょう。

ともあれ、このケースも値引き可能物件である場合が多いのです。

 

  • ●値引き額を明示している物件

モデルルームを販売しているケースは元の価格が分かりにくいと述べましたが、分からないだけに広告のインパクトが弱いので、はっきりと「000万円を000万円に下げます」と謳う必要に迫られる物件も登場します。

 

このときの金額はまちまちですが、小さいものでは200万円から大きいものでは1000万円以上の実例があります。

 

このケースでは、モデルルームの分譲と限っていないものが含まれます。仮に、特定住戸のみを値下げすると表示してあっても、実態は在庫をすべて値下げ処分すると見て間違いないのです

 

先に述べた「モデルルーム分譲」も、実は在庫全部の値下げ処分の含みがあります。しかし、売主にとっては、そのように表示することのデメリットがあるため、建前として「手垢のついたモデルルームだから」という建前にしているに過ぎないのです。

 

どのようなデメリットでしょうか?

まず一番は、定価で購入した先行契約者からクレームが来ることが挙げられます。定価購入者にしてみれば「高く買って損をした」という気分になるからです。「不公平だ」とクレームをつけて来る契約者が現れることを恐れているのです。

 

もうひとつのデメリットは、全部を値下げするかのような表現は「売れていないので仕方なく」と語るようなもので、新しい顧客に弱みを見せるだけでなく、売れないものは悪いものという印象を与えてしまうことです。それは販売促進のスピードを一段と低下させるので、それを売主は忌避するのです。

 

では、値引き額を明示してしまった物件はどういうことになるのでしょうか?

それは、最後の手段に訴え出たのです。同時に、値下げ金額の大きさがインパクトあるレベルであれば集客効果は高いと考えた作戦とも言えるのです。

 

このような方法で、先行契約者からのクレームはないのでしょうか?

 

このようなケースは大抵竣工1~2年を経過していて、「新古品」と見なされ、クレームは少ないだけでなく、先行契約者(入居者)は、早く完売してくれと願うものらしく、クレームは来ないと言います。

 

いつまでも売れない「ひどいマンションを買ってしまった」と思いたくない、思われたくないという購入者心理からクレームを手控えるのでしょう。

 

  • ●表向き値引きしていなくても

「決算前ですので、〇〇万円ほど勉強させていただきますから、この機にご決断ください」などと誘ってくる下手な営業マンもあります。会社から値引きの枠をもらっているようです。

 

このようなケースは、「〇〇万円ではねえ」などと気のない素振りを見せるといいでしょう。必ず「いくらなら買ってくれますか」の反応があります。このパターンは買い手が主導権を握ることを意味します。

 

このような下手な営業マンだったらチャンスは大いにありです。ネゴシエーションは駆け引きです。粘って大きな金額を勝ち取りたいものです。

 

●値引きの要求額に根拠は要らない

ご相談者の中には「値引きの根拠とするため、適正価格を知りたい」という人があります。適正価格を評価レポートの中で示すのはいいのですが、それを持ち出して値引きの材料にするのは得策ではないとお伝えしています。

 

買い手にとって、安ければ安いほどいいのであって、例えば「不動産鑑定士の鑑定結果がいくらだから、この価格はいくらいくら高い。よって、ここまで下げろ」などの理屈は通用しないのです。

 

ご相談者の意図は違うかもしれませんが、どこかに「交渉時の拠り所」となる数字が欲しいということなのでしょう。

 

どこかの家電量販店が、「当店より安い他店がありましたら、同じ金額まで価格をお引きします」という販促手段を駆使して成長しました。これは、同じ型番の商品と分かるから可能な商法です。不動産のような唯一無二の商品には当てはまりません。

 

その意味からも、たとえ100万円でも得した気分になることがあれば、500万円の値引きでも得に感じない商品もあるはずです。

 

また、元々が高値であれば、少しくらい値引きしてもらっても安いとは感じないはずです。

 

反対に、元々が大変優れたマンションで、魅力を感じていたものの、高いことだけがネックで逡巡していた人にとっては、100万円でも背中を押されたように感じるということがあるのです

 

大事なことは、値段に見合った価値あるマンションかどうかです。ただ、その見極めは中々難しいところがあります。そのようなときは、第三者の意見もお聞きになるといいでしょう。

 

その昔、新築マンションの場合、表立った値引き販売は、一切していませんでした。実際には気付かれないように行っていたのですが、近年は「価格改定」「新価格」などと広告に堂々と打ち出すことが多くなりました。そうした経緯からか、最近は値引き販売については、当然あるものだと認識している買手も多いと思われます。

 

  • ●値引きしてくれるのはどんなマンション?

マンションが値引きをする理由は、販売が思わしくないからです。順調に売れていたら値引きはしません。

「売れている」マンションに対して、 いかに上手に値引き交渉を持ちかけても、無駄と断言してもいいのです。 そこで、売れているか売れていないかを判断することが先決になります。

 

実は、あなたが良いマンションだと思っても、なぜか売れていないマンションがあります。客観的に見ても、良いマンションが売れないことがあるのです。何故でしょうか?価格が高いからです。高すぎれば売れ足は鈍いものです

 

しかし、販売状況は中々つかめません。売り手が巧妙に隠すからです。

売主が販売状況を隠すのは、先に述べた通り、値引き交渉に及ぶ客が増えることを恐れるからだけではなく、売れていないものは悪いものという誤解を買い手に持たれたくないからです。その誤解がますます売れないという悪循環に陥ることを恐れてのことです。

「良いものは売れる。売れるものは良いもの」という思わせたいのです。

 

これも先に述べたことですが、売れているか売れていないかを見極める簡単な方法は、建物が完成に近づいているか、既に完成し入居が始まっているとき、プレハブ小屋の外部モデルルームから建物本体内の実物モデルルームに移転して販売しているかどうかです。

この状態は、大体において売れていない物件です。

 

しかも、「第〇期・新発売」と謳い、売れ残りでないことを言いたげな物件でも、当該期の売り出し戸数が一桁だったら、販売不振の動かぬ証拠と言えそうなケースが多いのです。

 

本当の売れ残り住戸数を知るための、いくつかの方法を挙げておきましょう。①,②は完成物件の場合です。

①メールボックスに名前の入ったネームプレートを数える

契約はしても、まだ引っ越していない人もありますが、大まかには分かります。 最近はネームプレートを貼らない人も増えているので、実数を正確につかむのは難しいのですが。

②夜、電気がついている住戸を数える

これもネームプレートと同様、 実数よりも少ないはずです。全世帯が在宅とは限りませんから。 しかし、ゴールデンウイークなどでなければ夜は在宅率が高いものです。

何度もモデルルームに通う覚悟があるなら、行くたびに価格表をもらう

売れた部屋には売約済みの印、未発売の部屋は「次期以降分譲」、販売中の部屋は「価格」というふうに明示してあるのが普通です。

価格表を毎回もらうことによって、突合してみると「売れ残り多数」か「販売が順調」「販売促進スピードが遅い」などが大まかに分かって来ます。

 

  • ●「竣工後半年以上」経過の物件は確実な成果が期待できる

飛びつくほどでなくとも、気に入って買っても良いと感じる物件があったら、決め手は価格になるはずです。最後は、「安かったから」と自身の決断の根拠にしたことを吐露する人も多いものです。

 

決め手になるほどの値引き額とは、どのくらいでしょうか?これは個人差がありますし、物件にもよるわけですが、大きければ大きいほどよいことは確かです。

 

交渉の結果、大きな果実が得られる可能性が高いのは、建物が完成してからの時間が長いものです。その時間とは概ね半年以上です。長ければ長いほど値引き幅は大きくなると考えてよいのです。

 

既に述べた通り、建物が完成に近づいて在庫(=売れていない住戸)が多数あるときは、販売を急ぎたいので値引き要求を受け入れる可能性が高いのです。売主の決算期が目前に迫っていれば交渉成果は特に期待できます。

 

学期の変わり目の3月引き渡しが工事スケジュールになっているマンションが多いのですが、中には8月や12月引き渡しのマンションもあります。

いずれにしても、売主はできるだけ多くの戸数を決算に間に合うように引き渡しをしてしまいたいと考えます。

マンションメーカーの会計基準は引き渡しベースなのです

 

売主は、決算前の3か月間は、特に販売を急ぎます。引き渡し=売り上げの目標戸数(金額)が決まっているからです。

 

このようなときは、思い切って大きな金額をぶつけてみましょう。交渉術に長けている人は、駄目でもともとの精神で臨むものです。

 

  • ●例外的な早期の値引き販売もある

決算期の直前以外に値引きする可能性はないのでしょうか?売れ行きが良くない、このままでは決算に計上できる数字が足りないという危機感があれば、半年くらい前から値引きを覚悟している場合があります。竣工前のマンションでも 売主が「このままでは全住戸を売り切れない」 と判断すれば 販売員に値引きの予算を与えて、 少しでも契約戸数を伸ばそうとするのです。

 

従って、値引きはいつでもチャレンジして良いのです。まだ竣工していないからといって 値引きはまったくないかというと、 そういうわけでもありません。完成前のマンションでも、値引きはあるのです。

 

そういうマンションをどうやって見分けるかですが、これも既述のように売れ行きがカギです。

マンション販売の戦略に、「分割販売」または「期分け販売」が一般化していますが、好調な物件は、一気に百戸単位で売り出します。

 

売れていない物件は、竣工前では第5期とか第6期といった回数を既に重ねています。その中に、1期当たりの売り出し戸数が5戸とか6戸、多くても10戸といった僅かな戸数の物件があれば、売れ行きが良くない証拠です。

 

竣工まで時間がたっぷりある物件でも、ある日電話がかかってきて、「キャンセル住戸なのでお値段が安くできるのですが・・・」なども同じで、販売状況が思わしくない物件なのです。「キャンペーン期間はいろいろサービスもあります」なんていうこともあります。

 

値引きを軽く打診してみてあっさり断わられた場合も、しばらく様子を見ながら時期を待つ手もあると言えます。

 

  • ●値引き幅はどのくらい?

いくらまで「値引き」してくれそうかは、買い手の最大の関心事です。 実際どれくらいの値引きを引き出せるものでしょうか?

答えは、 そのマンションがどれくらい売れているか、 ということに大きくかかわって来ます。

 

また、売主によってもその値引き幅は異なります。それこそ「投売り」レベルになって 2 割 3 割の値引きということもままあります。

 

会計処理の上では、1戸単位で原価が定められていますから、赤字にしたくない売主は2割が限度と考えます。 マンションデベロッパー(売主)の粗利益は、おおよそ 2 割ですから。

 

ただ、2割も引くケースは「ほぼ投げ売り状態」です。そのような物件は大きな欠点・弱点のある(大抵、立地条件が悪い)物件です。2割引きでもまだ高い物件のようです。

 

  • ●値引き交渉の語り出し

モデルルーム販売という広告を見て販売事務所(マンションギャラリー)を訪問し、買いたい部屋が残っていたら、「こちらもモデルルーム同様にお値引きして下さいますよね?」と、さも当然といった顔で言ってみましょう

 

「いえ、モデルルームだけですので」などと拒否したら、「では結構です」と買う気が失せたような態度を見せましょう。それで、担当営業マンが慌てるようなら勝機はあります。

 

全く動揺を見せず、「モデルルームと同じというわけには参りませんが、少しくらいなら」などと回答した場合も可能性は大いにあります。

 

「すみません。モデルルームだけのことでして」などとすげない返答だったら、一旦帰途につきましょう。「そうですか。ではまた」でいいのです。後日(ひょっとして忘れかけた頃に)メールが届くでしょう。

 

「前回お越しいただいたときのお部屋の下の同じ間取りタイプがモデルルームとして〇〇万円で売り出す予定になりました」などと。

 

また、相手が売り急いでいるようなときは、ズバリ 「ちょっとおまけしてくれたら、ここで決めますが、どうですか」 と言うことですね。

当然「いくらですか」と聞いてくるでしょうから、そのとき平然と大きな金額を言うのです。理由など説明する必要はありません。安い方がいいに決まっているのですから。

 

〇〇〇万円おまけしてくれたら必ず契約します」と、明確な意思表示をするのがコツです。間違っても、「金額次第では検討するから」などと言ってはなりません

 

百万円と言って百万円になるよりは、1千万円と言う方が、5百万円は無理かもしれませんが、3百万円くらいの値引きを勝ち取る可能性が高いものです

 

最初は、「それはとても無理です」と答えるでしょう。そうなったら、「では、いくらなら勉強してくれますか」と切り込めばいいのです。「ちょっと上と相談しませんと・・・」と反応したら脈ありですね。

 

販売が順調ならば、売主も強気ですから、「ご勘弁ください」 と値引き交渉に応じないでしょう。しかし、それでも粘って交渉すれば、価格以外のサービスを提供してくれることがあります。

例えば、「モデルルームに展示していた家具」 や 「登記料の売主負担」、「駐車料5年分無料(売主負担)」 といったものです。

 

こうした駆け引きが苦手な人や、値引き交渉をしたことのない人は、「何かおまけは付かないのでしょうか」 から口火を切ってみてはどうでしょうか。

 

前の方でも述べましたが、担当者が、いきなり「今決めていただけるのなら〇〇万円お値引きします」 と言ってくることがあります。

 

これは、販売が絶不調の証拠です。あらかじめ 〇〇〇万円までなら値引きしていい、 という値引き幅が現場に与えられている場合で、 誰が行ってもその額だけは値引きしてくれるということです。 そういう場合は、その額を交渉のスタートと考え、更なる積み上げを狙うようにすべきです。

 

 

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