第629回 「中古は住んでいられる時間が短い」という勘違い

このブログは5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

新築は何となく安心、中古はどんな瑕疵があるか分からないし、調査能力も素人にはないので不安である。それに長く住めないのではないか、新築より価値の下落スピードが早いのではないか。新築に10年住んでもまだ築10年の新しいマンションと世間は見る。だから高く売れるが、築10年のマンションに10年住んで20年中古になると価値が大幅に下落してしまい、売れても格安になってしまうのではないか。

 

こんなふうに考えて中古を嫌っている人にときどき遭遇します。極端な勘違いは、中古は長く住めないというものです。

「長く住む気はない」はずですが、「長く住めるマンションは価値あるもの。どうせ買うなら価値あるものがいい。価値あるものは売却にも有利なはずだ」と考えるためでしょうか?

 

今日は、中古マンションに対する誤解の背景と、中古マンション選択の基本スタンスについてお話ししましょう。

 

●国土交通省の調査による「中古住宅に抵抗がある理由」

中古住宅に抵抗がある理由を調査したデータがあります。まず、これを見て頂きます。

「中古住宅に抵抗がある理由」 ~平成23年度「土地問題に関する国民の意識調査」から~複数回答

第1位:新築住宅の方が、気持ちが良いから 55.2%

第2位;中古住宅は間取りや仕様を自由に選べないから 32.9%

第3位:中古住宅の方が、耐震性や断熱性能等の品質が低いから  20.5%

第4位:中古住宅のリフォーム費用やメンテナンス費用が分からないから 18.4%

第5位:抵抗はない   15.3%

第6位:中古住宅の方が、品質に関する情報が少ないから 14.6%

第7位:中古住宅の方が、価格の妥当性の判断が難しいから  11.7%

第8位:中古住宅の方が、住宅ローンや税制面で不利だから  4.1%

第9位:「その他」+「分からない」  3.0%

 

ここから見えてくるものは、次のような点です。

 

①新築は気持ちがいいし、最新の設備もついている。物件によっては間取りの選択や色・仕様のオプションが付いているので、自分の好みを具現化できる。

 

②それに、新築はリフォーム代がかからないし、仲介手数料も要らない)。税制面でも得な気がする。

 

③中古は年数にもよるが、新築に比べて性能が低いと思う。その情報がないので、素人判断では手を出しにくい(分からない・怖い)・・・タイトルの「長くは住めないという誤解」も、ここに分類される

 

④年数がばらばらなので、新築のような価格比較がしにくく、妥当な価格かどうかが分からない。

 

以上の4点について、敢えて反論を試みることにします。

 

①中古のほうが自分好みを具現化できる

新築のマンションは、その多くが最新の設備をまとい、買い手のハートをつかむものではあります。しかし、それでも気に入らないところは必ずあります。気に入らないところをメニュープランやカラーセレクトなどでカバーできるかと言えば、限界もあります。

 

「ここをこうしたい」と打診すると、「それはお引き渡し後、ご自身の費用でリフォーム工事をして下さい」、加えて、「売主が用意したメニュー以外の変更工事をした場合はアフターサービスの対象外になります」と通告されます。しかも、セレクトプランの受付は期限があります。工事を止めることができないからです。

 

なんだ、それじゃあ、中古マンションの方がリフォーム代はかかるが自由はきくねえ」―こんなふうに思った人は多いはずです。

 

結局、これらは販促の手段に過ぎないのです。間取り変更やカラーセレクトなどを無料でやってもらえるというのは、買い手に「おとく」と思わせるだけのことです。しかも、急がないと受付はできないと「意思決定」を煽るのです。結局、売り手に都合のいいサービスということになります。

 

中古なら当然お金はいるが、室内を好きなようにデザインできます。筆者は、中古マンションを購入した経験はありませんが、何回かの新築マンション購入では、引き渡し後に室内を何点か改造したことがあります。

 

建具のドアハンドルのデザインが気に入らないからと全部変えたこと、子供の寝室が狭いので広くし、隣の個室を狭くしたこと、トイレを広げて洗面化粧台を設けたこと、シューズボックスを拡張したこと、壁の何面かをクロス張りから板張りにしたことなどですが、筆者のこだわりと家族の希望を叶えたのです。

 

マンションのリフォームは自由自在というわけではありませんが、費用さえかければ思い切ったことが可能です。予算の関係で限度はありますが、筆者の体験ではプチリフォームであっても満足度は高く、完成したときの喜びは格別です。

 

②中古は新築より諸経費がかかるから損だとは言えない

新築マンションより中古マンションの方が、余分に諸費用がかかる。一理ありますが、トータルではどうでしょうか?

良い中古は、物件価格も高いうえに、リフォーム代や仲介手数料もかかる、住宅ローン控除も少ないから損だという考えを持つ人もあります。

 

しかし、新築にあって中古にない「修繕積立基金(一時金)」の差は大きく、トータルでは微妙なところです。ともあれ、トータルの予算を同額とした場合は、中古の方がよい物件が選択できるはずです。

 

また、損か得かという判断は、長い目で見なければなりません。築10年の中古をトータル5千万円で買って10年後に売った場合、同じく5千万で新築を買った場合とで、10年間のランニングコスト(管理費・修繕積立金・固定資産税)も含めてリセール損益を計算したら、中古の方が得ということもあるのです。

 

③品質・性能が分からないという心配はこう考える

新築の性能は分かるが中古は分からない。どうして、そう思うのでしょうか?

新築には、住宅性能評価書が付いているからという人もいます。

 

確かに、2000年から始まった「住宅性能評価書」は築18年以前の物件にはありませんが、普及率も当初は低く、築18年未満でも評価を受けていない物件も多いのは確かです。しかし、住宅性能評価書があっても、よく見ると「性能が特に高いわけでもない」物件は少なくありません。

 

性能評価書がなくても、専門家がチェックすると高い性能を持つ中古は数多くあります。

問題は、性能を見極めるチェックポイントを持たないことにあります。どうすればいいのでしょうか?

 

基本的には、仲介業者の営業マンを通して売主に質問すること、内覧の際のチェックポイントと質問項目を以下に整理しました。これをメモとして持参することです。スマートフォンにアップしておいてもいいでしょう。

 

質問事項とチェックポイントは次のようなものです。

  1. 築年数と耐震性 (1983年以降の竣工物件かどうか=1981年以降の建築許可物件か?性能評価を受けていれば、耐震性能と劣化対策等級を聞く)
  2. 築年数と修繕履歴 (大規模修繕がいつ行われたか。その範囲は?)
  3. 分譲主・施工会社 (売主か施工会社、または両方のブランド力は高いか?)
  4. 管理会社と管理体制、管理状態 (管理会社の経験・実績は豊富か?管理人の勤務日数は?滞在時間は1日8時間以上か? 清掃は隅々まで行き届いているか? 放置自転車はないか?)
  5. 管理費・修繕積立金 (管理費は1㎡当たり首都圏平均の@235円より高いか安いか? 高い理由・安い理由は? 修繕積立金は築年数の割に安いことはないか?)
  6. 建物規模と共用施設 (100戸以上の規模か? どのような共用施設があるか? 中庭や植栽スペースはたっぷり取られているか?)
  7. 外観・玄関等のデザインとグレード感 (個性的・高級感・上質感・洗練されている・重厚感・格調高い・威風堂々・優美・壮麗などのキーワードのどれかに当てはまるか?)
  8. 間取り (10年住んで行ける間取り・広さがあるか? 主寝室のプライバシーは問題ないか?家具配置はどうか?)
  9. リフォーム費用 (どこをリフォームすべきか?設備機器は交換を要するか=使用期間は何年経過しているか?)
  10. 立地条件・交通便 (坂道はないか?歩道付きの道か?学校までの時間は?)
  11. 立地条件・環境・眺望・日当たり(嫌悪施設はないか?)
  12. 品質保証 (瑕疵担保責任はどこまでか?仲介業者による瑕疵担保保証はあるか?

 

④中古マンションの価格は適正と判断できることが多いが例外もある

原価の積み上げで決まるのが新築価格、需要との関係で決まる中古価格と、大雑把に言えば、この違いがあって、「新築はメーカー希望小売価格」で販売され、中古は市場価格で販売されるという特性があります。中古は市場にゆだねるというイメージになるのです。オークションのようなものかもしれません

 

価格判断は簡単ではありませんが、「高値掴み」とならないようにしなければなりません。新築も相場をしっかり調べることが必須ですが、中古も相場上昇のトレンドに便乗した強気の売り出し価格になっているケースも少なくないので注意をしなければなりません。

 

相場を調べるのは簡単です。同じマンションの取引事例を仲介業者に尋ねれば教えてくれます。そのデータと階・向きなどを勘案して比較すればおおよそ「高いか安いか」が判断できます。

 

取引事例がない場合もあります。あっても3年前のデータしかないというケースもありますが、類似の物件(駅距離と規模)の取引事例を探してもらいましょう。

 

●マンションの寿命と居住年数の関係

どれだけ長く住めるか分からないという問題については、次のように考えるといいのです。

先ず、マンションの寿命は何年あるかと考えます。ここでは長くなるので、簡単に結論だけにしますが、概ね80年としておきましょう。80年の根拠は、過去のコンクリート造の集合住宅の建て替えまでの年数が80年だったからです。分譲マンションとして建てられたものでは61年でした。

 

80年とすると、築20年のマンションの余命は60年ということになります。新築の余命は80年ですから、60対80という差になるわけです。築10年中古なら、70対80という差になります。

 

メンテナンスいかんでは、築20年も新築も殆ど差がない余命があると考えられます。現に20年以上経ていても見た目だけでなく長持ちマンションは存在するのです。

 

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今日は、食べず嫌いに陥りがちな中古マンションの誤解を解いてもらおうと書きました。

筆者は、新築派でも中古派でもありません。マンション選びを新築に限ると選択肢が狭く買いづらくなっていることを知っていただくとともに、積極的に中古も検討して欲しいと考えているからです。

 

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。

 

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