第635回 ワンルーム投資は相変わらず好調らしいが・・・

このブログは5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

最近のご相談で、「自宅以外にマンションを持ちたい」というパターンが増えています。

 

ご相談は、二つに大別できます。

ひとつは、転勤続きなので、このまま行くと定年までマイホームを買えないのではないかもしれないという危惧があるので、そこに住むことになるかどうか分からないが、早めにどこかに買っておきたいというご相談です。

 

もうひとつは、老後の資産形成にワンルームをいくつか買いたいというご相談です。

 

今日は後者の「ワンルームマンション投資」の話です。最近の新聞で、ある新築ワンルームの広告に注目しました。

●ワンルームマンションの広告を見て・・・

1K25.28㎡ 3160万円 サブリースで安定した家賃収入を実現

家賃収入:109,800円/ローン返済+管理費等106,838円

・・・・・・・・差し引き2962円が毎月お手元に

住宅ローン金利 変動1.60%(提携金融機関:都市銀行)

専有面積:25.28~25.41㎡ 総戸数68戸・・・・ワンルームばかり68戸はファミリーマンション面積換算で30戸程度と小規模

売主:都知事免許(2)の社歴が短い企業

 

この広告に関する筆者の感想を申しましょう。

 

サブリースについて)・・・空室ができても受託企業が家賃を払ってくれるのがサブリースのメリットですが、受託企業は長く存続するでしょうか?サブリースの期間はいつまででしょうか?何より、賃料はどのくらい安くなってしまうのでしょうか?

 

このような疑問が湧いて来ます。業者は空室リスクを取りながら受託するのですから、当然のさや抜きをするわけです。

一般にサブリースは査定賃料の85%~80%でオーナーから借り上げ、転貸するというものです。つまり、15~20%が業者の利ザヤということになります。オーナーから見て賃料収入が15~20%少なくなるのです。

 

ともあれ、分譲主がサブリースの受託者になるのが普通であり、ワンルーム専門に販売をしている業者がサブリース事業を行うことで販売の促進に役立てているのが実態です。

 

リーマンショック後、マンション業者が多数破綻しました。その中にはワンルーム専門業者もあったのです。

 

サブリースを利用すれば、借り手は空室の心配はしなくて済みます。安心と引き換えに安く貸すという選択はありますが、借り手が直ぐ決まるような物件ならサブリースなど利用しなくてもいいのでは?そんな疑問も湧いてきます。

 

以下は、小規模な全戸ワンルームの投資物件を念頭においたものです。

●30年先のワンルームマンションの状態を想像できますか?

小さなワンルームマンションの資産価値について、筆者は「30年先のマンションの姿を想像できますか?」と聞いてみることを常としています。

 

ところが、これを具体的な形で理解している人はいません。築30年のワンルームマンションを見たことはありますか?と聞いても答えは「NO」ばかりです。

 

建物は古くなれば当然に資産価値も低下して行くものですが、日常管理と大規模な改修工事を周期的に実施すれば、劣化スピードは遅くなり、改修のつど若返ります。しかし、果たして改修はどこまで実行されているのでしょうか?

 

オーナー不在のマンションは改修に関心が薄く、雨漏り防止対策(外壁補修と屋上防水)工事は最低限の修繕として行われますが、それ以外の工事は殆どなされません。

その結果、古ぼけた印象は年齢とともに増して、資産価値を下げて行きます。

 

30年前に「ワンルーム専門業者」として一世を風靡したSG商事とMK産業が残したワンルームは都区内、関東一円に多数見られます。SGもMKも消滅企業ですが、現存するSL社は投資用のワンルームマンションを今も建て続けています。

 

あえて言いましょう。これら専門業者が建てた全戸ワンルームの小型マンションのなれの果てを筆者はよく見かけます。細い路地を入った所にひっそりと建っています。管理人室はあっても管理人は巡回なので普段は不在。清掃人は定期的に来ますが、乱雑な自転車置き場、チラシが散乱したメールボックス室などが目に入ります。

 

何より、外壁のタイルが剥離していたり、ところどころ鉄さびが目立っていたりもします。また、黒ずんだ床、傷だらけ・落書きの目立つエレベーターなどが年数を超えた古さを印象付けます。オートロックもないものが多いのです。

 

●賃料さえ入ればいい?

ワンルームオーナーは、毎月の家賃さえ入ればいいと考えているふしがあります。メンテナンスに無関心と言ったら言い過ぎでしょうか?

 

古くなれば賃料は間違いなく低下します。借り手は単純に安い方が良いとは言わないもので、奇麗で設備が整ったマンションが望みです。賃料とのバランスで借り手が直ぐに決まったり、中々決まらなかったりするのですが、古くて汚いマンションは人気薄で決まりにくいため、賃料に下方圧力がかかります。

 

賃料を維持するには、室内をリフォームするだけでは足りません。共用部も改修工事を実施しなければならないのです。

しかし、その合意は形成しにくいのが実態です。財政基盤がないからです。結論から言えば、全戸ワンルームの小型マンションは見映えも悪く、加齢とともに資産価値は急カーブで下落します。

 

多少賃料が減るのは仕方ない、まさかゼロにはならないだろうと甘く考えているオーナーも少なくありません。中には、サブリースによって賃料は保証されると思い込んでいる人さえあるのです。サブリースも何年かおきに賃料を見直すという契約になっていることを知らないようです。

 

●売却の必要が起きたら?

ワンルーム投資を始めようとしている人は、その目的を「年金のように老後の安定収入源にしたい」ようです。住宅ローンが残っているうちは、実質の収入はないが、完済すれば、その翌月から収益を得られる。

厚生年金がもらえなくなることはないにしても期待しているような額は無理だろうから、老後の生活費を補填するために収入源を確保しなければという思いが「ワンルームマンション投資」に向かわせるのです。

 

そのライフプランも、下手な買い物をしてしまったら、根本から崩れてしまうことを知らないのかもしれません。

 

変動金利で借りたローンが高金利になる一方、賃料は下がり、結局毎月のキャッシュフローは赤字に。そんなことが起こりえるのです。それでも何とか30年間のローンを家賃収入によって返済し続けることができれば、無借金の資産がいつの間にか手許に残り、それが打ち出の小槌のように毎月の収益を少ないながらも生み出してくれます。

 

元々、殆ど資金を出さずに手に入れるのだから、たとえ毎月5万円でも入ってきたら意味はある。そう語った人もいました。

 

しかし、将来どこかの施設にお世話になるとき、売却して現金にしたいと思ってもうまく行かない。つまり、期待するような換金価値はないのでしょうね。そうも言いました。

 

そうです。二束三文でもいいと覚悟があれば別ですが、何かの事情で売却する必要が起こったとき、全戸ワンルームの小型マンションはスムーズに売れないと考えなければなりません。

 

マンション投資をするなら、資産価値の高いものを対象にしたいものです。

 

●自分で住むかもしれないマンションを買っておくという選択

どこかで売りたいと思ったときを想像しましょう。そのときの買い手は投資家に限定されると思った方が良いのです。投資家は、古いマンションほど安い価格を条件にします。利回りで説明すると、新築なら4%台、中古は6%、10年を越えたら7%、20年以上経過した物件は10%以上などといった目安を持っています。

 

古いワンルームは賃料が低いうえに高いリ利回りを買い手から求められるので、分母の物件価格も安くすることが必須です。つまり、ワンルームを高く売ることは殆ど不可能と言って過言ではありません。

 

これが自己居住目的のマンションとなると、尺度はがらりと変わります。投資利回りという概念は入り込まないので、良い立地条件、ハイセンスなマンション、使いやすそうな間取り、日当たり・眺望なども良く、自分で住みたいと思うものを選べば、将来の売却価格も購入価格から大きく下がることなく売れる確率が上がります。

 

最悪の場合は夫婦二人で住める物件にしておけば、売却のタイミングも市況を見ながら決めることができるかもしれません。

 

筆者は、住戸タイプはコンパクトであっても、自分たちで住むことが可能なものがいいと進言することにしています。しかも、資産価値の高い物件として、ファミリーマンションと同じく、以下の条件で探すようお勧めしています。

 

リセールを決める要素は、①立地条件(利便性と環境)、②スケール(存在感)、③外観・玄関・空間デザイン、④建物プラン(共用施設、間取り、内装や設備など)、⑤ブランド、⑥管理体制です。

 

大手業者の中には、ファミリータイプのサブリースを取り扱っているところがありますし、サブリースを利用しなくても良い立地なら借り手の心配もありません。

 

●最近はWローンも心配はない

金余り状態の中、銀行は何とか融資先を増やそうと懸命のようです。投資マンションを考えたい人は、いざ自分たちで住む家を買いたいときに既存の住宅ローンがあると利用がしにくいと考えている人もあるようで、ワンルームなら金額も小さいので心配も小さいと思うのかもしれません。

 

その懸念は今のところ殆どありません。

つまり、ワンルームより価格の高いマンションを保有したまま、新たな物件を購入することが可能な金融情勢にあるのです。既にどこかをお持ちの人は、それを売らずに新たな物件を取得できるチャンスです。先々も同じとは言えませんが、当分は可能です。

 

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。

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