第696回 「マンションの1階住戸購入は避けたい」

このブログは10日おきの更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。

2019年秋の台風19号豪雨被害を見てしまうと「マンションも危ないなあ」と思った人も多いのではないかと想像しています。

言うまでもなく、分譲マンションは巨大地震が来ても、少なくとも築35年より新しいマンションは倒壊することはなく、生命の危険はないとされます。

しかし、雨台風の場合の水害の被害には、マンションも無縁ではないことが分かりました。台風に毎年どこかが襲われる日本ですが、2019年は千葉県が8月に大きな被害にあったばかりだというのに、10月は中部地方、関東地方、北陸地方、そして東北地方まで広範囲に大雨を降らせ、甚大な被害をもたらしました。

毎年、一度はやって来る大型台風ですが、今回のような広域で甚大な被害をもたらした台風はなかったのではないか、多くの日本人がそう思ったようです。

多数の死者を広範囲に出し、悲しみにくれる人々、後片付けに追われる人々、家を失い避難所生活を強いられる人などのニュースに触れて他人事ではないと思った人も多いことでしょう。

東京に仮住まいしている筆者も、家族の住まう神奈川県の我が家のことを心配しつつ、一方で「あそこなら大丈夫」という安心感があって家に帰らず、東京に留まったのですが、強風は予想通りだったものの、雨が溜まる所ではないので、被害も予想通り何もなくて安心したところです。

さて、筆者は過去何度も天災に遭遇して来た一人ですが、そのたびに恐怖を感じ、その後に生き残った幸運を神に感謝しています。誰一人、家族・親戚で命を落とす者はいなかったからです。

宮城県の出身である筆者は、津波も巨大地震も体験し、小さからず被害経験がありますが、子供のころに「チリ地震津波」に襲われ、自宅が流された体験もありますし、大人になってからは出張中の1995年1月17日に関西で「阪神淡路大地震」にも遭遇しました。

自然災害の恐怖は何度も体験し、日本に住んでいたら「何処に居ても同じ」と覚悟して生きて来ましたが、巨大地震と津波に対する諦観のようなものでしょうか?とはいえ、今秋の台風には驚きと恐怖感を覚えました。

雨も地震も対策は十分過ぎるくらいの首都東京でも、被害とは無縁でなかったからです。想定外の風雨におびえていた人も多かったことでしょうし、大きな被害に遭ったばかりの千葉県に再び大雨がやって来るのではないかと心配した人も多かったことでしょう。中部地方から関東、東北地方まで広範に被害をもたらした今回の台風は過去最大級と言ってよいのかもしれません。

行方不明の人、亡くなられた人、家屋が倒壊したり、流されてしまったりした人、川が氾濫して町中が水浸しになった地域の人々にお悔やみを申し上げるとともに1日も早い復興・復旧を願わざるを得ません。

平成から令和にかけて数えきれない数の天災が続く日本ですが、1000年も前から何度も天災地変に襲われて来た歴史があり、そのたびに強固な街・国をつくって来た歴史もあります。

ここで歴史を振り返るつもりはありませんが、自身の仕事に関係あるせいで、少なくとも安心な住まい、安心な地域といった点に思いを致しています。改めて「安心なマンションの選び方」を整理しつつ今日の記事にしようと思います。

●天災に強い家か?

川の氾濫は怖いと感じたという地元以外の視聴者の声、電気が来ないマンションのエレベーターが止まって身動きができなくなったという報道、風雨がたたきつける窓ガラスの音に恐怖を覚え眠れなかったというあるタワーマンション住民の声、マンションの1階が水没した被災者の声・・・などをテレビで見聞きして様々な思いを持ったことでしょう。

「助かってよかった」「二度と来ないで欲しい」「今度来るまで対策を講じておかなければ」「もうここには住めないなあ」「でもどこに行けばいいの?」・・・

もう若くない自分ですが、過去の体験から思うことは「日本に居れば、どこに住もうと絶対に安心な街などはないのだ」そう思っています。地震が少ないとされた関西でも筆者自身が出張中に「阪神大震災」に襲われましたし、津波に無関係な山間部の街でも今回の台風で川の氾濫に襲われた地域を知りました。

こうした報道に触れるたび、胸が苦しくなる思いがします。被害状況の映像はこれまで何度も見て来ましたが、もはや耐えきれない想いです。せめて生き残った人々が今後は被害に遭わないことを祈るばかりです。

●1階住戸の選択に疑問

さて、筆者が深くかかわる「マンション」についてのみ書きますが、今日は「災害に強いマンションの姿」です。ブログの読者から頂いたお便りに、1階住戸の購入について、その是非を尋ねて来られた数も少なくないので、先ず1階住戸の選択の是非について書きます。

1階を選択する人の話(お便り)では、「子供が家の中を走り回るので、他の住人に迷惑をかけたくない」という理由で1階を選びたいというのです。「水害はなさそう思うが・・・」と断り書きがありました。これに対して、筆者が助言したのは、以下のとおりです。

1階は購入価格が安いですね。でも何故安いかを考えましたか?人気がないから、安くせざるを得ない。そのことを新築マンションの売主業者は経験上よく分かっているからです。

眺望も良くない上に、隣の家が採光を邪魔していることもありますし、何よりプライバシー性が低い住戸だからです。将来、必ず売却するときが来ます。そのときの買い手は同じ境遇の元気なお子さんがいる家族に限定されてしまうのです。つまり売りにくいのです。

売れないときは価格を下げざるを得ません。新築分譲でも価格表上で比較してみれば1階住戸の価格が他の住戸より格安に設定してあることが分かります。

思い切って下げておかないと買い手がつかず、売れ残り状態を続けることになります。そうなると、何故売れないのか、何か問題があるのではないかと興味を持った買い手は疑心暗鬼に陥って、ますます売れない状態になりかねないため、早々に売り切ってしまいたいと考え、分譲業者は弱気かなと思うくらいの価格設定をするのです。

その安さに惹かれてはなりません。昔のことわざに「安物買いの銭失い」があります。1階住戸には、その懸念が強いものが多いのです。

●1階でも魅力ある住戸はないの?

住戸面積と同じくらいの広い庭があったらどうでしょうか?庭の向こうがマンションでなく、一戸建ての家だったら?庭の向こうが一般道路だったら?庭の向こうが公園だったら?庭の向こうが学校の庭の場合は?

様々ケースが考えられます。1階でも悪くない例は確かにありますが、数は少ないのです。その場合なら1階でもマイナスをプラスが補って余りあるということになるでしょう。

しかし、「痘痕も笑窪」の心理状態にあるときは判断を間違います。筆者のような第三者に聞いてみるに限ります。冷静、かつ客観的な判断が必要なのです。

また、条件の悪いマンション・住戸も価格が安ければ売れるものでもあります。1階住戸は最初から安くしているものですが、中には「そうでもない」物件もあります。中古物件には、売り手の思い入れが重なってか、意外に高いものも散見されます。

どのくらいなら安いと言えるのか?仮に安いと思い込んで高く買ってしまったようなときは将来どんなことになるのか? 大きな損失につながってしまうのか?少なくとも、どのくらいで売れるかを知りたい――筆者に届く「物件評価」のご依頼の趣旨はこのような点にあります。

筆者の「将来価格の予測レポート」の中では、決して甘い希望的観測はしません。「より安全」を見て10年後~15年後の予測を導きます。それが、どの程度お役に立っているか、サービスを始めてから8年を経て、今のところは例外なく依頼者の期待を良い意味で裏切る結果になっています。

しかし、今後はどうか、その答えはしばらく待たねばなりません。

●大雨で水没した半地下の廊下と駐車場

前面道路から階段を降りるような形のエントランスをご覧になったことはないでしょうか?かつて世田谷区に住んでいた筆者は、住宅街に建てられた中低層のマンションを何十軒と見てきましたが、道路より低い位置にあるエントランスに出会うたび、危険だなあと感じざるを得ません。

知り合いの設計士に聞いても、「想定される雨量なら、この側溝に落ちた後は、この雨水枡(ます)に流れ、そこから・・・」と答えてくれるので、大丈夫と思ってしまいます。

しかし、その設計士が設計したマンションが想定外の雨量の豪雨だったというマンションの被害を見ました。地下に潜らせた機械式駐車場が水没し、何台もの自家用車がすべて廃棄処分になったのです。幸い、施工を担当したゼネコンが大手の一角で、その後の対策と新車の購入代金まで補償してくれたことを思い出しました。

設計事務所は零細なところが多いので、この場合も設計者の問題ではないからとゼネコンM社が負担してくれたので、設計事務所は事なきを得ましたが、これはほんの一例です。

想定外の巨大台風、想定外の豪雨、想定外の雨水の量、想定外の氾濫、想定外の自然災害等々、過去何回も天災に遭遇して来た日本ですが、そのたびに対策を講じて私たちは生き残ったのです。

あり得ないことが起こる世の中とも言われます。想定外の規模の天災地変は今後もあり得るのです。「天災は忘れたころにやってくる」と言います。今秋の巨大台風は、かつてないレベルでしたし、広域に被害をもたらしました。たくさんの人命も失われました。

被害から立ち直るまで時間がかかるかもしれませんが、日本人の多くが過去何度となくあった天災被害から立ち直って今日の繁栄を築いて来ました。ボランティア活動に精力的に動いてくれている人たちだけでなく、地域住民同士が助け合いながら、今日の日本をつくってきたのです。世界中から支援を受けても来ました。

誰もが天災地変を望んだりしていませんし、行政も地域コミュニティも、いえ、世界中の人が他人の不幸を望んではいないのです。日本の行政機関も、地域住民に良かれと働いています。今回も、災害被害を受けて新たな対策が始まることでしょう。

●1階住戸を選ばずとも

そのかたわら、私たちは自助努力もしなければなりません。話はそれてしまいましたが、本題に戻りましょう。今日の記事の狙いは「低層階の選択に警鐘を鳴らす」ことでした。

下階に迷惑をかけないようにと、1階を選びたいという人へ、筆者の考えを述べることでした。

ここからは筆者の被害者としての体験です。

筆者がかつて住んだマンションの上階で室内を走り回る元気なお子さんが住むお宅がありました。2人のお子さんが部屋の中を走り回るので、うるさくてかなわないと妻がいうのです。妻は、管理人を間に入れてクレームを伝えたり、それでも変わらないので直接文句を言いに行ったりしたようです。

筆者は帰宅が遅かったので、騒音被害をこの耳で聞いたことはありません。しかし、妻はひどく不快だったようで、文句を言いに何度も加害者宅を訪れたようです。

ところが、何度文句を言っても室内を走り回る行為は止まらなかったようです。

しまいには、妻もノイローゼになってしまいました。筆者は、「仕方ないよ。子供が走り回る時間帯は非難するしかないな」と言うほかありませんでした。安物マンションを買った覚えはありませんし、管理人の話では騒音苦情は我が家の1件だけだというのです。

しばらくの間、家族を苦しませた騒音被害は、やがてピタリと止まりました。。かけっこをしなくなったのです。子供は成長が早いものです。聞き分けがよくなったのです。もしかしたら、静かな遊びを知ったのかもしれません。私たち夫婦はそう結論付けました。

短い間かもしれないが、子供が家の中を走り回ることで階下の住民に迷惑を掛けたくない。だから1階住戸を選ぶという考え方を間違いとは言いませんが、できることなら、1階住戸は避けた方が良い、2階もやめておいた方がよい、できたら3階以上を選んだ方がいい。筆者はそう思うのです。

下階の住民に迷惑をかけるかもしれないのは「いっときのこと」です。半年か長くて1年です。その間の暮らし方を考えればいいのです。財産を守るために子供を犠牲にして良いなどという話ではありません。

共同生活をするということは、こういうことだと子供をさとすこともできます。分譲マンションとは、木造アパートよりはるかに優れた住まいだとしても、室内を走り回れば下階に音は伝わるのです。

一方、1階住戸はセキュリティの心配、プライバシー性の問題などから嫌われる傾向が強く、昔から高く売れない位置として今も変わりません。

1階を売るには、2階から上の部屋にない特徴・長所を設けなければならないのです。例えば、専用駐車場付きであるとか、住戸面積を超える大きな庭がある、地下倉庫がついているといった1階ならではの魅力付けが必須です。それが十分でないものは「価格勝負」になってしまうのです。

1階住戸の選択は慎重に。できたら避けたい。そう思った方がよいという話でした。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「対面相談」もご利用ください。お申込みはこちらから(http://www.syuppanservice.com

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第223回は「「スラム化マンション。日本で起こるとしたら」です。