第699回 「綺麗に使う」を意識するとリセールに有利です

このブログは10日おきの更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。

マンションを買ったら、売るときのことを考えておく・・・これは大事なことです。

筆者に届く中古マンションの評価依頼のメール文を読んでいると、ときどき「室内がとてもきれいで、このままで住める状態のお宅でした」という感想が添えられていることがあります。

家はどなたが住もうと、何年か経てば「使用感」が現れます。新築したばかりの状態が10年続くなどということはないはずです。

 しかしながら、可能な限り綺麗に使うようにした方が、転売時に有利に働くものです。今日は、買い手も将来は売り手に転じることを踏まえての話題です。

●中古マンション取引でのトラブル

 これは、筆者がかかわった中古マンションの取引で実際にあったお話です。

 都区内の高級マンションの中古売買で、転居先に引っ越しをして数日経ってからのこと、購入者の残金決済前の室内確認の立会いを依頼されて、取引マンションを訪問したときのことでした。

 引っ越しのあとで、掃除はしてはあったものの、家具が置いてあったらしい跡が壁や床に残っていました。驚いたのは、掃除をしたのか極めて疑わしい室内の汚れでした。壁は部分的に変色し、壁紙が何か所か剥離していました。喫煙の習慣があったらしいことも分かりました。フローリングの床は傷だらけで、部分的な変色もありました。

買手さん(筆者への依頼者)は、それらを見て、「これはひどい。最初に来たときの印象と随分違う」とだけ言って絶句したのです。

お住まいのときと空き家にしたときの印象が違うのは当然としても、これほど状態の悪いマンションは見たことがないと仲介業者の担当も後日語っていました。

荷物があったときを見ていない筆者は発言を控えましたが、「確かにひどい。生活ぶりが想像できる」と思いました。

結局、残代金の支払いを延期し、何か所かの補修工事をすることになったと、あとで聞きましたが、立ち会いの後に残金決済が延期になるケースは初めてですと、仲介業者の担当も困惑していたそうです。

●片付け上手の家族が居て成功した我が家

上記のようなことが何%くらいあるのか、そんなデータも見たことはありませんが、稀にあるのだそうです。

さて、全く反対のケースですが、我が家を売却したときの話をします。筆者は何回か自宅を買い替えていますが、一番長く住んだ家は16年余でした。気に入ってもいたのですが、23区内とはいえ、都心からは距離があったので、機会があったら便利なマンションに住み替えたいと思っていながら、チャンスがなくて16年以上も同じ家に住むことになったのです。

とまれ、久々の移転をすることが決まって、売りに出したところ、査定に訪れた担当者は「とてもきれいですね。最近リフォームしましたか?」と聞くので「7年前に床を張り替えました」と答えたところ、「7年前にしては綺麗ですね」壁も綺麗なので、このままリフォーム無しで住めそうですね」と査定員は感想を述べていました。

その時は単なるオベンチャラかと思いましたが、買い手が「リフォーム無しで住めるのは嬉しい」と言ったと聞き、まんざらでもないのだと知りました。

結局、一度も値下げをすることなく我が家は売却に成功したのですが、それもこれも妻のきれい好き・片付け上手に成功要因があったのだと思いました。

専業主婦の妻は、掃除を趣味のように楽しんでいました。家の中を整理整頓し、清潔な住処に保つことを生きがいにしていたような妻には何でもないことだと、後に長女は感想を語りました。

最近の主婦は仕事についている人が多く、家事も結構な負担になるのではないかと想像しますが、その我が家を売りに出すときは専門業者に依頼してでも整理整頓、掃除をしておくことが大事だと、筆者は思います。

10万円払っても、売却金額が100万円上回るなら安い投資と言えましょう。

●購入時に気を付けるべき「収納スペース」

話題は、マンションの購入時に移します。

私事ではなく、読者のみなさんがマンションをお買いになるときの留意点ですが、最も大事なのは「収納」がどこまで考えられているかのお話しです。

筆者は、かつてマンションデベロッパーに席を置き、営業もしましたが、最も熱が入った時期は「設計・企画」でした。設計事務所の一級建築士に任せていたのでは、売れるマンション、言いかえると、買い手から支持されるマンションはできないなどと生意気な持論を持っていました。

事実、設計段階で良いプランを懸命に考え、具現化した経験を持っています。特許を申請しようかと思うくらい、うぬぼれたプランもありました。

編み出したプランの中に「収納スペース」のアイディアもいくつかります。その実体験から、間取りを見るのは今も好きで、接する間取りを見てはその寸評を書くのも悪くない仕事と思っています。

さて、その収納ですが、購入時に最も注意したい点ではないかと思います。収納スペースは「このくらいあれば大丈夫」という基準が一応あるようで、広ければいいというものでもないようです。収納スペースを大きく取れば、他の部分が狭くなるため、バランス感覚が設計者には要求されます。

一方、買い手は検討時に住んでいるマンションを基準に考えてしまいがちなので、人さまざまです。ここで、収納論を語るわけではありませんが、玄関収納の大きさ、布団収納(押し入れ)の奥行き、洋服掛けの大きさと機能性などに注意したいものです。

●家具は増やさない?

収納スペースは、広ければ広いほど良いという一面もありますが、寝室やリビングダイニングなどの広さを犠牲にするわけにも行きません。広い家は広い家なりに荷物は増えてしまうものでもあるからです。

70㎡や80㎡のマンションでは、大差ありません。結局、室内にはモノがあふれて足の踏み場もないという状態になってしまいます。

マンションは、収納スペースが小さいなりに、荷物を増やさない暮らしをしていくほかありません。収納場所がなくて、タンスを買ったりすれば、結局は同じこと、足の踏み場もない家になるのです。どのようなマンションを買っても、荷物で埋まってしまっては台無しです。

●売却を決めたら片付け準備

そうはいっても、人が暮らした家は何かと荷物が増えているものです。思い出の品もあるので捨てるに捨てられず、ついつい戸棚の隅にしまい込んでしまうのが常です。

着もしない服もタンスの肥やしになって家の中に留まります。

これらを思い切って捨てる勇気も必要です。しかしながら、荷物を整理するというのは難しいもののようです。断捨離(だんしゃり)という言葉が一時はやったことがありました。モノへの執着を捨て不要なモノを減らすことにより、生活の質の向上・心の平穏・運気向上などを得ようとする考え方のことだそうですが、言うは易く行うは難しです。

●多すぎる荷物は一時退避させる?

家の中には捨てがたいものが多数残ってしまいます。普段は使うことのないモノが隠れてしまうのです。これを思い切って捨てるのは、言うは易く行うは難しです。新しい家では再び使う可能性も残っています。

それらを片付ける時間もないという人も少なくないのです。そこで、筆者の提案は「一時避難」です。トランクルームを借りて、そこに収納する方法です。

マンションの売却を決意したら、見学者対策に励むことも大事です。見学者に心地よさを味わってもらうこと、言い換えれば「ここに住んでもいい」と思わせることです。

狭い家でも、快適な空間が演出できれば買い手の購買意欲がわきます。

新築マンションのモデルルームのような生活感がないのは極端ですが、初めての購入希望者を向かい入れるときは、それなりの演出が必要です。

できるだけ室内をスッキリと整理整頓し、生活感はほどほどに抑えて見学者を向かい入れましょう。見学者をこんな暮らしがしたいと思わせるような「キレイ」な空間演出をしましょう。

*  *  *  *  *  *

購入者の立場に戻りましょう。価格が高いが広さは理想にほど遠い。これが現実の状況です。予算を抑えて広さを求めれば、きっと立地条件の悪い物件を選択しなければならないでしょう。

立地条件を妥協するのは本末転倒になる場合が多いと思います。できるだけ良い立地で、広い部屋を狙えば、結局古いマンションに行きつきます。それもいやだなと思う人は、狭い面積で妥協するほかないのです。

結局、マンション探しは「あちら立てればこちらが立たぬ」という葛藤の中で選択するほかありません。しかし、立地条件だけは妥協しない方がいいのです。

広さは最低でもこれだけ欲しいです。共働きなので、遠方は困ります。子供は今1人ですが、そう遠くない将来、2人にしたいと思っています。妻の勤務先は●●●線の●駅です。夫は●線●●●駅です。

さんざん物色して来た結果、今の候補物件はXとYです。心配な点は・・・です。

このようなお悩みに日々お答えしている筆者の責任は重たいものです。これが正解というのはあってないと思うこともあり、慎重すぎて「ダメ出し」ばかりになってもいけないとも思いながら、そうかといって「どっちつかずの意見」を述べることにも抵抗を感じます。

しかしながら、ご相談者の強い意欲に冷水を浴びせて不愉快な思いをさせることが本意ではないと言い聞かせつつ、否定的な意見を言わざるを得ないことも多く、葛藤の日々を長く送って来ました。

今日お送りしたレポートも2件ありますが、2件とも、残念ながら依頼者を喜ばせる結論には至りませんでした。ご相談者に寄り添いながら、一方で冷徹な意見も述べるという日々の葛藤と今日も戦っています。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「対面相談」もご利用ください。お申込みはこちらから(http://www.syuppanservice.com

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第226回は 「中古マンションを購入するときの5大ポイントと選び方」です。