第673回 雲行き怪しい世界情勢に思うこと

このブログは居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から「マンションの資産価値論」を展開しております。

10日おきの更新になりました。引き続きご愛顧賜りますようお願い申しあげます。   三井健太

売れ行きが悪化し出して久しい新築マンション市場。比較的好調な中古マンション市場と対照的です。

それでも「マンション冬の時代到来」などという文字を見かけないいのはなぜか、そんなことを思いながら今日もマンション市場の変化に注視している筆者ですが、資産性の観点でマンションを見る癖があるので、価格動向にはとりわけ敏感です。

新築マンションの価格を構成する要素は地価と建築費なので、株価のような短期間に乱高下することはないものの、景気動向や金融情勢に左右されて動くのは間違いありません。

2008年秋のリーマンショックが世界経済に多大な悪影響を与えたことは記憶に新しいですが、その種の大きな経済事変がいつ勃発するか、国境がない今日は中々予想がつきません。年初に発刊される「20XX年大予測」を毎年読みますが、年末に振り返ると、当たっていることは少なく、当たらないことが多いと感じます。

*************

そんな中、2019年2月20日の報道「本田自動車が英国を撤収」は「とうとう来たか」と受け止めた人が多かったのではないでしょうか?英国が国民投票でEU離脱に舵を切って以来、こんなことが近いうちにやって来ると予想していた専門家もあったはずです。

**********************

一方、少し前に「高品質の日本製品が人気で需要が大きく伸びているそうで、増産のために工場を国内に造って対応する」というニュースが流れました。主に化粧品や日用品の類です。

思い起こすと、1985年の先進7か国会議(G7)でプラザ合意ができてから急激な円高に見舞われ、輸出企業は半端でない打撃を受けました。この難局を乗り切るため、輸出比率の高い製造業は、現地生産に転換しました。自動者産業ではトヨタも日産も、また本田もアメリカ本土やメキシコ、ヨーロッパ各国、東南アジアなどに製造拠点を築いたのでした。

それらの海外製造拠点が再び国内に回帰し始めたというニュースです。少し前にも実は予兆があったのですが、本格的な動きになったということかもしれません。

*****************

2008年に時計の針を戻します。この年に起こったリーマンショックは、サブプライムローンと言われる住宅ローン債権の下落がリーマンブラザース社の破綻、それが波及して世界の金融市場を揺さぶった事件でした。

日本の金融機関は、その種の不良債権を保有していないから関係がないなどと発言する政治家もいましたが、とんでもないことで、間接的には関係があったのです。ほどなく、燎原の火のように世界中に拡大して金融危機襲来と叫ばれました。そして、1900年代初頭の世界恐慌の再来をも予想する向きも現れ、百年に一度の不景気がやって来るなどと警戒されました。

****************

このような危機は、設備投資も、新たな買い物も控えるべしという風潮を生みます。その結果、土地の買い手も減って地価は下がり、オフィスビルや工場その他の建築物の着工も止める決断をした企業も増えて、建築費も低下傾向を見せました。

リーマンショックは、リーマンとは直接のつながりがないゼネコンや不動産会社の破綻も引き起こしてしまいました。破綻企業の保有していた土地は債権回収のために銀行主導で売却されましたが、それらをチャンスとばかり拾い集めたデベロッパーがあったのも確かです。しかし、その後マンション用地が安く買い集めることができたという噂は聞きませんでした。

****************

ともあれ、リーマン事件以降のマンション市場は僅か4年で危機を脱し、2013年から再び上昇気流に乗ったのです。2012年11月に誕生した安倍政権は「成長戦略・3本の矢」を旗印にアベノミクスを推進しました。3本の内の2本の矢(異次元の金融緩和と公共工事へ財政出動)が効果を表したとも評価されました。

企業業績は上向き、2014年4月からベースアップは再開されました。

そのおかげもあったのでしょう。マンションの売れ行きも持ち直しました。その状態は2015年まで続きました。ところが、2016年1月からは販売スピードが低下し、2018年末まで市況は一定レベルを維持しつつ、辛うじて命脈を保っているという状態にあります。

売れ行きが悪化しているのは、価格が上がり過ぎたためです。何度もお伝えして来たように、2012年を100としたとき、2018年の新築マンション価格は130以上です。

この先、市場はどうなるのか、オリンピック後に価格は下がるだろうか、それとも頭打ちの状態が続くのだろうか、様々な見方があるようですが、いずれにしてもリーマンショック級の経済事変でも起こらない限り、劇的な変動は起こらないはずで、筆者の弱気なシナリオでも、この先の低下率は最高で10%、強気なシナリオは値下がり率ゼロが数年は続きます。

*******************

さて、私たちの知らない地球の裏側や、もしかすると身近な東南アジアなどで突然発生する事件や天災地変の影響が回りまわって日本にやって来る可能性は常にあります。それが何なのか分かれば、あらかじめ対策を講じることができますが、想定外のことが起こる。それが世の中でもあります。

以前は「マンションを買うのに、何千万円もローンを組んでしまって先行き何かあったとき返済をしていけるか心配です。どう考えたらいいのでしょうか」というご相談がよくありましたが、最近はご無沙汰です。景気が悪くない証拠なのか天下泰平だからか、それともたまたま安定感のある相談者だけがご相談くださるのか、理由は不明ですが、何かが近いうちにきっと起こる。そんな予感もしています。

しかし、何があろうと泰然としていればいい。筆者はそう思いますし、問われたら「考えても仕方ない」、「何があろうと心配ない」そう答えます。

地震でマンションが倒壊するなどということはないと信じますが、想定外の巨大地震が来たら、高さ30メートルの大津波が来たら、その時はこの世の終わり」と腹をくくるしかないのです。

経済的な問題でも、例えば「企業がドミノ倒しに破綻してしまうようなことが起き、自分の企業もまさかの事態になったら」という心配も、「そのときになってから考えても遅くありませんよ」ということにしています。

何かあったとき、未曽有の災害、未曽有の不景気が来ても日本にはみんなで力を合わせて危機を乗り切る国民性があるではありませんか?戦争でも起きない限り何とかなってしまうのです。いえ、なんとかしてしまうのです。

戦後の焼け野原から今日の隆盛を気付いた日本、二度の石油危機を乗り越え、激しい円高に見舞われたときも対策を講じて耐性を強めた日本、リーマンショックも克服しました。国際的な問題、気候問題、空き家問題、少子高齢化問題など、気になる問題は山のようにあるけれど、頼れるリーダーがいようがいまいが、同胞はたくましく生きているではありませんか。

1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災など、未曽有の災害で壊滅的被害を受けた、それぞれの地域が完全復興に至っているとは言えないものの、立派に立ち直り、形は違えどもたくましく暮らしを続けています。

***************

たまに批判されることはあっても、また、一部の国において日本に抵抗するグループがあっても、世界中から日本はリスペクトされることが多い国です。筆者なぞは「良い国に生まれてよかった」そう思います。

よく「自己責任」という言葉を聞きますし、「誰も助けてくれないのだよ」などの戒めの言葉もありますが、いざとなったらみんな助けてくれる、そんな国です。

住宅ローンだって深刻な状況を迎えたら「返済猶予」の制度もあるのです。「困ったときはお互い様」ともいいますね。

筆者は楽天家でもありますが、先行き不透明なのは今に始まったことではありませんし、様子見して良くなるとも思えないので、「ここに住みたい」「良いマンションだと思う」そう感じたら思い切って買ってしまうことを勧めています。「買い時はいま」と言い続けています。

低金利の住宅ローン、しかも収めた所得税が戻り、翌年からは収めるはずの所得税が毎年40万円も戻って来る税制の恩典、これを利用しない手はない。そんなふうにも思います。頭金があっても出さず、100%の借入でマンションを買う、それも結構。手元に現金を残しておくことは貯蓄好きの日本国民らしいとも言えますが、自衛の逞しさでもあります。

運用をしながら殖やすという知恵を持たない筆者には遠い世界の話ですが、お会いするご相談者には結構いらっしゃるなと感じます。マンションを事実上無利息のローンで買ってしまえば、返済した分がマンションの壁となり床となって見えない貯蓄になるのです。

気付いたとき、見えない貯金通帳の残高はびっくりするほど増えている。これが不動産貯金という妙味です。選ぶマンション次第では大きな財産に化けてくれるのです。

筆者は、今日もそのお手伝いに奔走しています。「マンション大全」を出版したためもあって、このところ直接お会いしてのご相談もうなぎ上りになっています。できることは限られますが、可能な限り世間の役に立ちたい、そう思いながら多忙を楽しみつつ、今日もマンション評価レポートと将来価格の予測レポートの作成に勤しんでいます。

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。(http://www.syuppanservice.com

 

※こちらのBLOGも是非ご購読ください 

https://www.e-mansion.co.jp/blog/archives/author/mituikenta/

◆◆◆ お断り ◆◆◆◆

5日おきに約9年間、書き続けて来た三井健太ですが、ブログ更新が負担になっております。最近は殺人的なスケジュールが続いており、肉体頑健な筆者ですが、とうとう限界を超えてしまいました。しばらくの間、10日おき(次回は3月10日)とさせていただきます。悪しからず、ご理解賜りますようお願い申し上げます。   三井健太

★★★三井健太の2大サービスはこちら★★★

「マンション評価サービス」と「将来価格の予測サービス」のご案内

http://www.syuppanservice.com/2dai-service-syoukai.html

★★★三井健太の「名作間取り選」はこちら

https://mituimadori.blogspot.com

★★★「三井健太の住みたいマンション」はこちら 

https://sumitaimansion.blogspot.com

※サービス中止のお知らせ※

2019年1月29日より、「マンション評価サービス」は中古マンションに限り「無料ご提供」を中止させていただくことになりました。お申込みが多くなって、サービスの提供が困難になったためです。

できる限り長く無料サービスを提供させていただこうと頑張ってまいりましたが、年中無休・1日15時間の活動も限界が来てしまいました。

これもひとえに、皆様がブログを愛読してくださっているおかげと感謝しておりますが、いかんせんアシスタントを雇える状況にもないため、3年前に決断した「地方都市の有料化」に続き「中古マンションの有料化」に踏み切ることといたしました。

引き続き新築マンション(バス便を除く)は無料サービス(初回のみ)を承りますので、ご利用賜りますようご案内申し上げる次第です。  三井健太