第784回 「中古は安い」の誤解と「リノベーション」

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論「マンションの資産価値論」を展開しております。10日おきの投稿です。

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言うまでもなく、中古マンションは建物の経年劣化と設備の陳腐化、外見の古さなどが、物理的価値と心理的価値の双方で新築マンションより低く見られるのが普通です。

 

築後20年も経過すると、地域によって差はあるものの、新築の半値くらいになるのが中古マンションの相場です。

 

そこまで安ければ、思い切った予算をつぎ込んで自分好みの間取りや最新の設備で内装を一新しょうと考える人もあって当然とも感じます。お仕着せの新築マンションより満足度が高くなる場合もあることでしょう。

 

最近、いわゆるリフォームを超えるリノベーションに挑戦する人が増えていると聞きます。

例えば、新築が5000万円する地区で、2500万円の中古を購入し、リノベーションに1000万円を投資しても3500万円なので、新築より1500万円も予算を抑えられるというわけで、中古人気は徐々に高くなりつつあるようです。

 

●格安中古マンションのメリット・デメリット

かつて、リフォーム代金は自己資金で用意するか、金利の高い、かつ短期ローンを組むしかなかったのですが、最近は購入代金とセットで低金利の長期ローンを組むことができるようになっています。それが人気上昇の後押しになっているのでしょう。

 

セットローンは、購入代金とリフォーム代金の融資を分割実行してくれるので、使い勝手も向上しています。リフォーム工事を開始するには、物件を引き渡してもらうことが必須なので、先ずは購入代金を融資してもらうことになりますが、リフォーム代金の方は工事が最短でも1か月以上を要するので支払いも後になり、従って、融資も後となるのです。

 

さて、リノベーションは、室内を新築と変わらぬ快適空間に生まれ変わらせることができます。

 

新築マンションでも、セミオーダー的な販売手法を採用している例は少なくありませんが、いずれも用意されたメニューからセレクトする方式です。好き勝手にプランできるわけではなく、売主が用意したお仕着せには変わりないのです。

 

その点、リノベーションは自分の趣味やセンスを具現化することが可能になるので、高い満足度を提供してくれます。

 

ただ、玄関扉や窓ガラスなどには変更を加えることができません。共用部分に属するからです。同様に、共用廊下に接する玄関ポーチまたはアルコーブの床を変えたりすることもできません。

 

築後20年を経過したマンションでは、古いとか汚いとか、デザインが陳腐化しているといった印象があったとしても、共用部はそのままです。リノベーション志向派にとって、そこは妥協というか割り切ることが必要になるのです。

 

●リノベーション対象マンションは見つかるか?

さて、思い切った予算でリフォーム、すなわちリノベーションを決断するには、購入価格が格安であることが前提となるはずです。しかしながら、格安のマンションは築年数が少なくとも20年を経過しています。リフォーム紹介事例を見ていると、築30年を超えたものも目立ちます。

 

ここが一番の問題です。耐震性に不安が残る築30年超の物件は論外なので、30年未満で物色したとしても、満足できる物件に遭遇するのだろうかという疑問が残るからです。

 

先に述べた通り、外観をはじめとして共用部分の劣化や陳腐化には目をつぶるといっても限度があるはずです。少なくとも、管理状態は良好でなければならないと考えるでしょうし、いずれ売却するときもあろうから、そのときに首尾よく売れそうな物件であって欲しいと期待したりもしましょう。

 

築20年、30年を経過していても、管理状態が良好で、大規模改修工事も定期的に実行しているので、築後10年くらいしか経過していないように見える。このようなマンションは格安ではありません。

 

また、立地条件にこだわると築年数の割には高いと感じる物件ばかりで、思い切ったリフォーム予算をつぎ込むことに抵抗が強いなどとなりそうです。

 

モノの値段は、マンションに限らず需要と供給の関係で決まるもの。良い物件は古くても高いのです。反対に、格安な物件は、何かと問題がある、若しくは格安なりの価値でしかないと思うべきなのです。

 

建物状態か立地条件かのどちらかに何らかの問題や欠陥・欠点があるからこそ格安価格になっているのです。

 

結局、ここがダメ、あそこが不満などと言っているうち、格安中古マンションを買って大がかりなリフォームを施して住むという計画は、対象物件に巡り合えないまま頓挫してしまいがちです。

 

●多額投資したリノベ物件は売るときが問題かも

ともあれ、どこかを割り切り、どこかを妥協して中古マンションを取得できたとしましょう。念願の、そして自分好みの内装と間取りに大胆転換することにも成功したとします。

 

それで満足度が高いマンションライフが長く送れたら、それはそれで結構なのですが、永住することが難しい、若しくは計画の中にリセールがあるのであれば、将来価格についても一定の腹積もりなり、覚悟のようなものを持っておくことが必要です。

 

つまり、築20年なり30年のマンションを10年後、20年後に売却するとき、期待外れになるかもしれないということです。理由は次の点にあります。

 

リノベーションしてできた間取りや内装が個性的過ぎると、同じ感性を持つ買い手とめぐり会う僥倖がない限り、非常に売りにくいのです。

 

また、設備はいずれ陳腐化するもので、設備の一新に〇〇〇万円もかけたと主張しても、次の買い手が最新の設備に換えたい人であれば、何ら価値はありません。

 

マンションの価値は専有部分だけで決まるものではありません。むしろ、マンション全体の価値、すなわち外観・玄関・空間(敷地のオープンスペース)が重要です。勿論、それ以上に重要なのは立地条件です。

 

専有部分を新築同様にするだけで価値が上がり、価格も投下資金に見合って上がるなら結構なのですが、実際はそうならないという現実を認識しておかなければならないのです。

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中古マンションの価値を判断するのは簡単ではありません。相場を大きく下回る格安マンションに出会う幸運な人がいないとは言えませんが、稀有なことですし、優良な中古マンションは新築並みの価格であったりします。

 

格安マンションに巡り会えたとしても、リフォームの投下資金の大きさによっては、リセール時に大損するかもしれません。

 

結局、長い目で見たとき「中古マンションは安い」のかどうか、疑問なケースもあるということになるのです。

 

ただ、金銭的な損得ばかりを考えていたら、家は買えないのかもしれません。そこに住んで得られる精神的な満足にも着眼しておかなければなりません。資産価値と使用価値の双方をバランスよく考慮して選ぶというマンション選びは中々厄介なものです。

 

筆者の役割は、10年先、15年先に売るとき大損しないマンションかどうか、その判定をすることにある。10数年前に、そう思って始めた「将来価格の予測サービス」の提供は、生涯続けようと思っています。

 

●安くなってもいいがその限度は?

安い中古を買って、リフォームに金をかけ、満足度の高い住まいを手に入れても、売るとき期待外れの価格になってしまうとすれば、リフォーム資金の投入も控えにしておきたいところです。

 

しかし、それでは満足度が低いという場合、どうすればいいのでしょうか?

この質問に筆者は次のように答えるのが常です。

 

何事も過ぎたるは及ばざるがごとし」と言います。結局、どの程度に抑えるかという点がカギです。そこで補足します。10年後に売る可能性があるなら、住宅ローンの残債は25%減りますから、値下がりしても25%以下に収まるかどうかの見極めをしてみましょう・・・筆者はそういいながら、物件ごとに答えをお伝えしています。

 

15年先の売却の場合、20年は売却しないという場合、転居しても当分は賃貸する場合などによって、答えは様々です。無論、物件よっても限度額は変わります。これらの変動要件によってリフォーム費用のかけ方も変わっていいのかもしれません。

 

いずれにしても、ここでは後先(あとさき)考えずにリフォームに多額の費用をつぎ込むのは問題だとだけ言っておきます。

 

●新築並みに高値の中古。そのわけは?

話を戻しますが、築後30年も経過したマンションが新築並みに高いという事実。これは何故なのでしょうか?また、高い価値を維持し続けてい要因はどこにあるのでしょうか?整理しておきます。

 

「抜群の立地条件」を真っ先に挙げなければなりません。好立地とは、駅に近いことや人気エリアであることですが、抜群とは、駅から5分ではなく、1分・2分の「駅前」と表現できる立地で、隣がビルやマンションではなく公園になっている、大学のキャンパスが広がっている、有名な図書館や博物館といった稀有なものを指します。

 

都心・準都心の駅に限るとも言えるでしょう。郊外の都市では、街一番と言えるような大きな駅で、人口集積地であり、かつ近隣都市から買い物客や通学・通勤客も多く集まる駅、夜も賑わいが続くような、そんな駅が良いのです。

 

街そのものが魅力的で、買い物、ウインドウショッピング、飲食、映画鑑賞など、それこそ1日過ごしても飽きない街、そこが徒歩10分か15分圏に広がっている街が良いのです。

 

昔の都市計画は、ビジネス都市、商業都市、住宅都市と区分けする考え方が普通でしたが、時代は完全に移り変わり、職場の近くに繁華街があり、少し歩けば住宅街もあるといった「すべてが揃う街が良い」のです。

商・住・職・遊・学などの全てが揃う街が理想と言えるのかもしれません。

 

ところが、既になんでも揃った街に新築マンションが建つ可能性は殆んどありません。いきおい、中古マンションを探すしかないのです。その中古も売り出し戸数は少なく、住みたいと思えるマンションに出会う確率が極めて低いのです。

 

住みたい街なら、古くても構わない、このように希望する人も多く、結果的に高値の売買が成立してしまいます。マクロ的に高い人気の街、その中で目立つ人気マンション・・・当然に価格も高いけれど、10年先に売却するとき、その値段は10年後も変わらないか、むしろ値がりしている・・・このように期待できるのです。

 

マンションの価格は、建物価値によっても左右されるけれど、何といっても立地条件の良し悪しが優先するのです。建物は劣化しても、土地(立地条件)の価値は変わらないからです。

 

無論、土地の価値が低下してしまうこともあります。人口が減り、街が廃れていく街もあるのです。ご存知のとおり、東京圏にも人口減少時代が来てしまったからです。街同士の優勝劣敗が今後はいっそう鮮明になるはずです。

 

廃れ行く街のマンションを買ってしまうと、我が家の価値も下落することになりかねません。その意味で、街によっては「街一番のマンション」を選んでおくことが必須と言えるのです。

 

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