第676回 発想の転換とバス便マンション・晴海フラッグ

このブログは居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から「マンションの資産価値論」を展開しております。

     

10日おきの更新になりました。引き続きご愛読賜りますようお願い申しあげます。(次回は4月10日です) こちらのブログと5日おき、交互にアップしています 。(https://www.e-mansion.co.jp/blog/archives/author/mituikenta/

 

 

バス便とは、筆者の定義では徒歩15分を超えたものもバス便です。

最近、「損するかもしれないが、安いから」の理由でバス便マンションを選ぶ人が時々現れます。安く買っておけば、損失も大きくはないのではないか。そんな考えに基づく選択です。無論、不安は残るのでしょう。筆者に確認を求めて来るというわけです。

 

駅に近いマンションは買えない。賃料も高い。バス便なら中古はとても安い。ローン負担も楽だ。

 

バス便マンションは資産性の観点では最悪だが、交通便の悪さを補う要素があればいいのではないか? でも、買い物は?飲食は?ちょっと不便だな。でも、時代は変わったのだ。ネットスーパーに代表される宅配サービスを使えばいい。ウーパーもある。そんなふうに肯定的に考えてみた、と言うわけです。

 

確かに、これからはテレワークも増えるし、シェアオフィスを使っての仕事も可能だから、バスで通うのも不便ではないかも?筆者も毒されかける時があります。

 

これはある種の発想の転換です。新築から中古に目を向けてみることも発想の転換です。筆者も、発想を換えてみることで、たちまちマイホーム取得が実現したという成功事例に何度も関わってきました。

 

 何事も理想と現実の間にははるかな距離があるものですが、マンション探しの活動をしてみて、このことを実感している人も多いのではないかと思います。

 

最近は新築マンションの品数が少ないので、ますます距離が遠く感じられるようになったと嘆く人も増えているように思います。

 

もう手遅れかもしれないと諦めつつも、当分買わない選択をするには事情が許さない人もあるはずです。そこで今日は理想(希望条件)を妥協し、現実との距離を縮める方策について述べて行こうと思います。

 

 ●駅から遠い物件にも目を向ける

最初は、駅近という条件を捨ててみることのススメです。

 

マンションの価値は立地条件で決まるといって過言ではありません。

立地条件には、都心からの距離の差や鉄道が幹線と支線の差、最寄り駅からの距離の差、駅から物件までのアプローチの差、駅を中心とする街の持つ魅力の差、道路騒音や自然環境の差など多種多様の要素が含まれます。

 

この中で数値を用いて客観的に表すことができるものは、都心のどこかへ何分とか、駅まで何分・何メートルといったものです。他は主観の入りやすい項目ばかりです。

 

しかし、それゆえに、ここに注目点があるのです。 数字という絶対的物差しではない価値判断があるのなら、「近い」を捨てる代わりに他の主観的な価値判断で補える項目・要素を見直すことで理想と現実間の距離は縮まるのです。

 

筆者は、駅まで距離は理想が5分以内であり、妥協しても7~8分までと述べて来ました。10分では遠すぎると主張して来たのです。

 

その一方、10分でも駅からのアプローチに優れたものがある場合や、到達した現地環境がインパクトあるもの、例えばリバービュー・オーシャンビューなどに優れるとか大型ショッピングセンターに隣接する、有名大庭園に寄り添い、その緑の景観をわが庭にできるといったものであれば、距離の遠さはかなりの部分がカバーできるとも述べて来ました。

 

問題は、どのくらいカバーできるかという点にあります。資産価値に重きを置いた場合、極端な例を引くとバス便マンションは、どんなに環境が良くてもカバーしきれない、すなわち資産価値は下がるばかりで、こればかりは例外はないのです。 

 

何故なら、駅前マンションが購入価格と変わらない価格で売却できたとき、同時に売り出されたバス便マンションは購入価格から20%も値下がりしたという差が実態としてあるからです。

 

筆者は、東京都心にできるだけ近く、しかもダイレクトで繋がる幹線鉄道の駅が最寄りであること、駅からは徒歩5分以内の物件を選択することを勧めています。 これは今も変わらないのですが、その条件では不都合な人もいるのは現実ですし、絶対的なものではありません。

 

例えば、職場が千葉市やさいたま市に、あるいは八王子市や相模原市にあるという人は東京都心に近いエリアを選択しないでしょうし、その必要もないはずです。

しかし、最寄り駅から近いという条件は、どの都市を候補に選択する人にも共通するはずです。

 

さて、「駅から近い」――この条件に縛られてしまうと、検討できる物件は限られ、あっても予算をはるかに超えてしまうとか、広さが足りないものばかりとか、「帯に短しタスキに長し」で検討対象の物件が出てこないと嘆くことになってしまいがちです。

 

そうであれば、対象を拡大し、駅から少し距離のある物件も候補に入れることが現実的な行動として検討しなければなりません。

 

駅から少し遠くなっても、その代わり何かメリットはないかと、物件のあら探しではなく美点・利点を探してみます。すると見えてくるものが出てきます。

 

駅からの距離は確かに資産価値に比例しますが、資産価値を決めるものはそれだけではありません。複数の要素が絡み合ってトータルの資産価値が形成されるのです。 

 

距離だけで比較すれば、徒歩5分以内と10分前後では、平均すれば3%か5%くらいの価格差しか生まれません。

 

つまり、同じ時期に建った駅5分にあるマンションと、駅10分にあるマンションでは、購入価格からの値下がり率は前者が5%ダウンのとき後者は10%か8%ダウンになるという程の差なのです。

 

ところが、距離以外の条件が全く同じ物件は現実には存在しないので、10分の物件でも5分の物件に劣らないケースはあるのです。

 

日頃の研究の中で、駅から遠いのに高いなあと感じた物件をつぶさに調べてみると、駅近の物件にはない魅力が溢れているケースがあります。

最もシンプルで分かりやすい例を引いて説明します。

 

東京都下(市部)の某駅は、駅から10分以内に限ると、住み心地が良い人気エリアなので手放す人が少ないのだそうです。売りに出て来る物件は、専有面積の狭い物件ばかりという実態にあります。

 

某駅では、広め(と言っても70㎡台の標準のファミリータイプですが)を望むと、駅から徒歩10以上を要するというのです。しかし、その「駅から遠い」物件は、どれも結構な値段で取引されています。

 

理由はお分かりの通り、駅近に物件がないからです。結構な値段と言ったのは、駅近のコンパクト物件の単価よりは低いものの、大きな差がないからです。購入時の価格から見た値下がり率も殆んど変わらないようでした。

 

例えて言うと、駅近の狭い部屋を4000万円で買う人と、少し遠いが広い部屋を5000万円で買う人、どちらの需要がどのくらいあるかという注目点になるのですが、某駅のケースは、新築・中古ともに駅近にファミリータイプの売り物がないことから、「遠い」物件でも苦労なしに買い手がつくのだと地元の仲介業者は口を揃えます。

 

この例のように、たとえ駅から距離があっても別の要素が資産価値を下支えしてくれる場合があります。

別の要素とは、既に述べたように、建物の中身より需給バランスのことです。モノの値段は需給関係で決まるという経済原則がマンション市場にも当然ながら生きています。

 

街・駅によっては、ファーミリータイプの新規供給がなく、中古も売り物がないなら、駅からの距離に関係なくファミリータイプの中古は売り手市場となるのです。

 

●マイナーな駅・不人気な駅では?

ここまで述べたことを立地以外の条件にも応用すれば、検討対象を広げることができるのではないでしょうか?

 

例えばタイトルの「マイナーな駅・不人気な駅」も、最初から捨てることはないかもしれません。このような駅では、マンションデベロッパーが進出をためらうために物件がそもそも少ないのです。

 

もっとも、需要が少ないから業者がためらうとも言えるわけです。従って、簡単に飛びつくわけには行かないのです。 新築を購入する場合でも、中古市場をよく調べて慎重に検討することが必須です。

 

また、街自体を好きになれないという根本の課題もあることでしょう。しかし、じっくりと美点を探せば変わって来ることもあるはずです。

 

●住み慣れた街から出てみる

住み慣れた街、なじみのある鉄道沿線などで探そうとする人が多いですが、可能であれば思い切って知らない街へ目を転じてみることも必要です。

 

その分だけ門戸は広くなります。

 

●面積・間取りの希望を捨てる

快適な住まいの条件のひとつが、面積であり間取りです。

 

子供のとき、兄と一緒の部屋だったのが嫌で、大人になったら広い家に住みたいという願望を強く持っている人や、家族が多いために部屋数は譲れないと考えている人、もう一人子供ができたときのために3LDKにしたいという人、ひょっとしたら親を呼び寄せて住むことになるから予備の部屋が要ると定めている人など、様々な理由や事情から希望の面積・間取りの条件が出てきます。

 

ところが、この条件を一旦リセットしてみると、選択の幅が広くなってくるはずです。

過去のご相談を辿ると、筆者からの提案に賛同して条件・方針を転換し、購入へ進んだ実例は数えきれないほどあります。

 

●築古(ちくふる)の中古マンションに目を向ける

中古マンションを検討している人には、「築浅」にこだわらない検討を勧めます。リノベーション済みの物件という選択肢もありますし、思い切って古い物件を安く買い、自分で大がかりなリフォームをする道もあるはずです。

 

新築やリフォーム済みの物件なら手間いらずですが、逆に自分でリフォームを計画する道も検討してみるべきです。「物件探しの手間を減らした分、リフォームにエネルギーを向けることができたし、出来上がって行く過程は楽しいものでした」と語る人もいるのです。

 

●全部を一遍にリフォームするのでなく・・・

折角のマイホームだから、新築同様にして住みたい。中古は考えられないなどの新築こだわり派がいますが、中古を選ぶときはリフォームを範囲限定の「プチ・リフォーム」がいいです。筆者は、そう勧めています。

 

中古はリフォームが不可欠になります。しかし、リノベーションしようなどと大掛かりなリフォームは考えない方がいいのです。金額が大き過ぎるからです。度々の打ち合わせに時間も取られるし、費やすエネルギーも半端ではありません。

ようやく満足するプランができて工事に入っても、完成したときの失望感が大きいことも多いのです。

PC上で完成イメージを瞬間的に映し出すシステムもありますが、実物とのギャップは小さくありません。お金と時間をかけた割には出来上がりに不満を漏らす人が多いのです。

 

筆者のお勧めは「プチ・リフォーム」です。例えば、入居前はガスコンロとトイレだけ新品に交換し、壁紙もトイレの1面だけ、欲張っても玄関ホールの壁にボーダーの木パネルを張り付ける程度などと限定することです。

1年経ったら今度は寝室の壁紙を高級感のある布クロスにする、3年目はリビングの一角にミセスカウンターを取り付けるといった、分割リフォームを計画するのです。

 

程度問題ですが、中古物件にもきれいに使ってきたお宅をときどき見ます。見学すると、リフォームが要らないと思える物件も少なくないと聞きます。

しかし、築20年などになると、さすがに部分的なリフォームは必須です。

 

リクルート社の調査データなどを覗くと、年数に比例して費用がかさむようですが、それを一遍にやってしまうのではなく、発想を換えて購入時は最小限に抑え、後の楽しみに残すことをお勧めします。マイホームの楽しみは、賃貸では許されない室内のお化粧や模様替えにもあるのです。

 

●タワーマンションの下層階に注目する

タワーマンションの最大の価値は、天空から見下ろす眺望にあると考える人が多いのは事実です。しかし、その条件を満たす住戸は場所によっては限られます。そこで、発想を転換し、下層階に目を向けることをお勧めします。

 

眺望価値が上も下も大きく変わらないような開放的な場所もありますが、周囲に高層建物が多いエリアなら、下の方はそれら既存のビル・マンションの影響を受けるため、下層階には意外な割安住戸が隠れています。

 

もし、タワーマンションに住むということでなく、たまたまタワーだっただけで立地条件が希望に合ったから選んだマンションだと言えるなら、下層階でも問題ない住戸はあるはずです。そのような考え方をすると、検討対象がぐんと広がるはずです。

 

●マンション探しは確かに簡単ではないが

今、首都圏のマンション市場は「品薄感」が日増しに強くなっています。しかも、今後しばらくは新築価格が高いレベルで推移するでしょう。新築価格が上がれば中古物件の価格も連動して上がって来ます。

そんな情勢下でのマンション探しは大変だとお察しします。しかし、決断しなければなりません。

 

先行きが不透明で不安が消えない時代を生き抜くには、生活防衛の知恵と対策、良い意味での深慮遠謀が欠かせないということなのでしょう。そのための産みの苦しみを味わうということなのかもしれません。

 

また、何事も積み重ねが大事なので、未来図を手元に置きながらコツコツと資産形成を図るという考え方が根本にあるのかもしれません。

そのような人が増えた気がしています。相手が筆者ごときでも、マイホームと資産形成の絡みをご相談下さる人が年々増えているからです。

「住みながら儲けるマンション探しの秘密」という拙著もそうですし、「将来価格の予測レポート」のご注文なども、そのお申込み件数の増え方に驚くとともに、本当に皆さん「資産性」を考慮しながらマンション選びをなさっているなあという実感を持つのです。

 

大胆な発想転換でなくても、ほんの少し着眼点を買えるだけでマンション選びのゴールに達することも少なくありません。

 

既に述べたように「3LDKを2LDKに変更する」とか「タワーマンションの上階希望を下層階に変更する」、「南向きを敢えて北向きにする」、「内陸部が安全と考えて見向きもしなかった湾岸エリアも見てみる」、「新築の売れ残りばかり狙ってみる」、「築浅でなく、築20~30年物件を狙ってみる」といったことです。

 

●悩ましいマンション選び

マンション選びは悩ましいものですが、何が悩ましいのか、突き詰めていくと、次の2点に集約されそうです。 

ひとつは「高値で買うのは仕方ないのだろうか」、もうひとつは「物件がない」です。

 

前者は、「今買うと、売却したときの損失額はいかほどか?」や「昨今の高騰はある程度は致し方ないかと考えるが、この物件がどのぐらいリセールバリューを保てるのか知りたい」、「そもそも今は購入時期ではないのでは?」というお悩みです。

 

後者は、「田の字の間取りが気に入らないけれど・・・」や「直貼りが気になる」、「梁が目立つ」、「駅から10分は遠いが仕方ないのでしょうか?」、「全く土地鑑がないのですが、この地域の将来性はどうでしょうか?」といった類のご相談物件についてですが、これはとどのつまり、「本意ではないが辿り着いた結論がこのマンションなのです。客観的な意見を聞きたい」ということです。これは、新築物件が非常に少ない(ひと頃の半分)という事実が背景にあるためです。

 

このようなお悩みには筆者のような第三者の意見は役に立つものです。これは自画自賛ではなく、立場の違いというものは時に有効だという真理に基づきます。他人だからこそ、冷徹な判断や所見を述べることが可能なのです。

 

現状のマンション市場は、新築・中古とも価格が急上昇し、2012年頃に比べて30%以上も高くなりました。

多少の差はあっても全ての物件が高値になってしまい、誰もが高値掴みを強いられてしまう時期に当たっているのです。

高値買いしてしまうとどういうことになるかも考えなければなりません。しかし、待って得策とも言えません。

 

筆者に届くご相談メールには、揺れ動く心境が行間から感じ取れるものが圧倒的に多いのですが、その中で特に目立つのが「2020年まで様子を見ようかとも考えています」です。

言うまでもなく、価格上昇が激しいため、「高値掴み」をしてしまうのではないかという懸念を抱いていることに理由があります。しかし、何年待てるのでしょうか?待って確実に価格が下がり、希望の物件に巡り合えると信じられるでしょうか?

 

●選手村マンション「晴海フラッグ」を考える

晴海フラッグという日本最大級の大規模マンションをご存知の読者は多いと思いますが、このマンションはバス便マンションです。しかし、バス便マンションといってもBRTという新交通システムが利用できる特殊な物件です。

 

 しかも、郊外マンションではなく、なんと東京都中央区に位置するのです。中央区は銀座や日本橋のあるエリアです。発想を換えてみると、存外選択肢になり得るのではないか?そんな思いに至ることがあります。

 

先ず「晴海フラッグ」について、商品内容を整理しておこうと思います。

 物件のホームページを覗くと特徴は十指に余るようです。 ホームページには、「コンセプト」がプロフェッショナルの巧みな表現術によって説明がなされていますが、ここは筆者ならではの短文で整理しました。

 

(1)晴海フラッグってどんなマンション

  晴海フラッグの特色は・・・

  • 日本最大級の大規模分譲マンションである
  • 土地のないはずの都心に創られるニュータウンである
  • 複数のマンション、商業施設、小中学校など街の機能が一通りそろう街である
  • ウオーターフロントの街である
  • リゾート的な要素を持つ環境のマンションである
  • 東京都中央区のアドレスである
  • 新橋駅にBRTで10分の近距離にある
  • 東京オリンピックのレガシーになる予定である
  • マンション開発業者大手11社の共同事業である
  • 中央区のマンションとしてはあり得ない価格(うわさ)で販売されるマンションである
  • 安いので、同予算なら広い我が家が手に入ることになる

 

  晴海フラッグの心配な材料は・・・

  • 鉄道のない街である。最寄り駅には徒歩なら20分もかかる
  • BRT(高速バス輸送システム)がどのようなものか。よく分からない
  • 買いたい部屋をうまく買えるか
  • 引き渡しまでの時間が長い
  • 事業主が単独でないこと

 

 

画像:東京都都市整備局HPより

 

他のマンション、過去の大規模マンションと何が大きく違うのでしょうか?事業主の某氏から以下のような説明がありました。(筆者が加筆修正しまた)

 

 商品としての差別化がなされていると考えております。三方海に囲まれた景観の良さや、コミュニティが自然と生まれるように計算された広場が多数点在していること、都心でありながら本物の森のような自然を楽しむことができるなど、晴海フラッグならではの良さがございます。

 分譲街区には50もの共用室があり、住人が自由に使うことができ、多様なライフスタイルにも対応するなど、街全体が長期にわたり住みやすい設計となっています。

 また約85㎡が最多専有面積となっており、都心と比較して広めの部屋となっています。

 選手村の跡地であるということに関わらず、ユニバーサルデザインとして、共用部の廊下が広くし、大型エレベーターを用意しています。また各住戸もメーターモジュールとなっており生活しやすくなっています。さらに改修後は、分譲の全住戸に日本初となるエネファームと蓄電池が導入され、環境にも配慮され、家計も助かる形になっています。

 BRTという新交通が活用されるということ自体も、移動手段の多様化が図られており、晴海フラッグのメリットとして考えております。

 極力多くの住戸から海の景観を享受していただきたいと考えて配棟計画などを行っておりますが、一部住戸については広場など緑を楽しめる部屋となっております。

 

   これを聞いて、筆者のへそまがりな見解はこうです。

1.海浜都市としての景観は湾岸マンション共通のものです。魅力ではあるものの特別なものでないとも言えます。

2.足元の広場、公園が森のようになる(?)素晴らしい環境の中のマンションであることは、都心ではありえないものなので高い評価ができそうです。

3.自由に使える共用施設が50もあることは、他の大規模マンションを圧倒する数なので、使い勝手はともかく、おそらく付加価値として高い評価をしてよさそうです。

4.85㎡の広さも、せいぜい70㎡中心のマンションが多い中では魅力的です。単価が安いので総額を抑えつつ広く作ることが可能になったということでしょう。

5.メーターモジュールの家は、簡単に言えば室内の廊下も90㎝でなく100㎝と広くしているということでしょう。何㎝かは分かりませんが、共用部の廊下が広いことやエレベーターが大きいのは、選手村ならではの魅力と言えそうです。まさにレガシーです。

6.また、全住戸に日本初となるエネファームと蓄電池が導入されるのも画期的と言えます。

 

(2)発想の転換が価値を見い出す「晴海フラッグ」

高くなったマンション。都心のマンションには手が出ない。かといって、郊外は値下がりが怖い。仕事で遅くなったとき、あまりに遠いのも困る。 

中間地も結構高い。都心よりは安いので買えないこともないが、面積に不満が残る。中古マンションも探したが、適当な物件が見つからない。

 

(3)BRTによって変わる人の流れが晴海フラッグの地位を高める

環状2号線は信号がほとんどなく、ここを通るBRTは新橋から晴海まで10分で移動できるそうです。環状2号線の開通とBRTの運行開始は、都心と湾岸エリア間のアクセス向上に大きく寄与するのは間違いなさそうです。 

これは湾岸エリアの住民はもちろん、豊洲市場へ買い付けに行く人も、東京ビッグサイトのイベントへ参加する人にとっても、新たな交通手段が誕生するのはメリットです。

晴海フラッグには、商業施設が用意される予定です。どのような内容になるのでしょうか?現段階では何も決まっていないようです。ただ、近郊では最大級のスーパーマーケットを誘致するということらしく、おそらく専門店や各種レストランも同時に出店するでしょうから、晴海フラッグ以外の地区から訪れる人もあるかもしれません。そのときの来訪者の足としてBRTは威力を発揮することになるでしょう。

 

来訪者が多ければ多いほど街は賑わい、晴海フラッグは広く認知されて「結婚したらここに住みたいね」と語る若いカップルや「ここならリゾート地で暮らしながら都心の利便性も共有できるなあ。老後はここで暮らすのも悪くない」と感想を漏らすシニアカップルが増えるでしょう。

そうなったとき、晴海フラッグは「住みたい街ランキング」上位の街に昇格するかもしれません。

 

(4)職住近接の晴海フラッグの住居費

 もともと家賃が高い都心部に移住者が増えれば、ますます家賃は上がることになります。家賃があまりにも高いので、分譲マンションを買ってしまった方が良い、このように考える人も増えて、都心部のマンションの値段は中古も下がりにくいという循環ができます。

しかし、家賃にしても中古マンションの価格にしても高過ぎるレベルに至ると、借り手も買い手も敬遠するようになることが考えられます。

 

ここからは中古・新築を問わず、分譲マンションに限っての話です。

この数年で30%以上も高くなったマンションですが、さすがに敬遠する買い手が多くなりました。しかし、価格はようとして下がらないのです。高くなったマンションに手の届く人たち、どちらも正規雇用のダブルインカム世帯が増えて世帯単位の購買力が高くなったので、辛うじて販売が進んで行きます。

 

新築マンションの品数が少ない状態が続いているため、中古人気も高まっています。価格も高いまま推移しています。

中でも都心部では、まだ上昇する傾向すら見えます。断片的な現象ですが、筆者のご相談者からの話では中古マンション購入を決心した人の多くが価格交渉に入れないとこぼしています。つまり、売主の言い値で買うしかないというのです。

昨年7月頃に筆者はブログにも書いたのですが、値上がり相場に便乗して高く売りたいという強気な売り主が目立っています。例えば、5000万円が相場と思われる物件を5800万円で売り出すような例は枚挙にいとまがありません。こうした売り手、買い手の行動が相場を吊り上げてしまうのかもしれません。

 

戦後の一時期、マイホームといえば庭付きの一戸建てが庶民の共通の夢でした。しかし、経済発展に伴って地価は上昇し、庭付き一戸建ての敷地は年々狭くなって「猫の額」と揶揄されるようになりました。

やがて、郊外に大規模な一戸建て専用の住宅地が開発され、150㎡以上の区画の整然とした街並み(ニュータウン)が各地に誕生しました。千葉や埼玉、神奈川、一部は茨城県に多数造成されました。多くは山林だったところを伐採し、道路を作り、ガス・電気・水道を引いて街が作られたのです。

郊外に行けば、邸宅に住むことができた反面、通勤時間が2時間などという住まいは普通のことでした。日本の働きバチと言われたお父さんたちは、満員電車に揺られながら遠距離通勤に堪え、家族のためにと庭付き一戸建てを取得したのでした。

 

90分、120分の通勤に堪えられない人たちは「西洋長屋」と呼ばれたマンションに注目するようになりました。そして、やがてマンションの大衆化時代を迎えます。庭もないし、広さも十分でない、それでもマイホームが買えるならとマンションを選択する人たちが増えて行きました。

大衆化と断ったのは、それまでのマンションは特定の階層だけが手にするものだったからです。海外駐在経験者や大学教授、自由業、芸能人、会社経営者などが主体でした。用途もセカンドハウス(別宅)の人が多かったと聞いたことがあります。

 

地価が上がったことで影響を受けたのはマンションも同様でしたが、通勤の便が良いことが新しいマイホームの形として認知されるようになり、一般サラリーマン層も目を向けるようになりました。やがて、マンションは一戸建ての代替品ではなくなって行きます。

その後、サラリーマン世帯には二度目の試練が来ます。マンションも郊外に行かなければ買えない時代が来たからです。バブル期のことでした。

 

バブル崩壊後、地価は大きく下落しました。そのおかげで、郊外に押し出されていた私たちは都心回帰を果たすことができるようになりました。いっときでも郊外にマイホームを買った人が増えたのは価格高騰の犠牲になることを受け入れたことを意味しますが、その後の動き(都心回帰)からホンネは職住近接の住まいが欲しかったのだと証明されました。

 

現在、マンションは都区内でも一般サラリーマン層が購入可能な状況にあります。再び高値になったものの、バブル期のように誰もかれも郊外に押し出されているとは言えないからです。23区のマンションの東京都区部の1戸当たりの平均価格は7,000万円を超えてしまいました。都心部は1億円もします。

にもかかわらず、手が届くサラリーマン層が少なくありません。つまり、買えるなら都心に買いたい。昔は、夫だけ我慢すれば郊外の広いマンションを買えたが、妻にとって郊外は困るのです。だから少し狭いが都心か準都心で買う。このような志向がはっきりしています。

妻が正規雇用で働いている。結婚しても仕事は辞めない。子供ができたら、保育園に預けるが、子供を迎えに行って帰宅し、家事に育児にと多忙な妻の発言力は強い。Wインカムなので、資金も出すが口も出すという事情にあるカップルは職住近接のマンションを選ぶのです。

 

(5)晴海フラッグは噂通りの安値なのか?

安いと感じた人が飛びつく最大の動機、決断の根拠は「安く買えばきっと儲かる」という資産性にあります。それゆえに、価格を下げれば飛ぶように売れるものです。晴海フラッグも、噂通りの安値だったら、バスでもいいと考えて購入する人は多数に上ることでしょう。

元選手村であることの付加価値も十分にありそうです。例えば、買った部屋は「〇〇国の〇〇選手と〇〇選手が使っていたらしい」などのことでしょうか?あるいは、「このマンションは東京オリンピックのとき、世界中の選手たちが泊まったのだ」というだけでも誇らしいと考える人が大勢いるかもしれません。

 

このようなことを考えてみると、分譲事業は成功するだろうと思わずにはいられません。

しかし、「安く買えば儲かる」は果たしてどうでしょうか?近隣マンションだけでなく、首都圏広範に比べても、単純比較では安く売り出されるのは間違いないと思いますが、それが物件価値と見合っているかどうか、ここは慎重に判断しなければなりません。

 

過去の歴史を紐解けば、大規模複合開発のマンションは多くが付加価値を伴って高く評価されてきたのは確かです。言い換えると、街ぐるみの成長があったのです。晴海フラッグはその価値がどれほどのレベルになるでしょうか?この点を見極めることが必要です。

街ぐるみの成長で資産価値が向上した、つまり短時日で儲かる状態になったのは、最近では川崎市の武蔵小杉、東京都江東区の豊洲の街が浮かびます。以下で、発展した街の条件について考えてみました。

 

(6)1万2千人という人口規模の意味

 ときどき大規模マンションの分譲が話題になることがあります。ここでいう「大規模」とは、500戸以上とご理解下さい。

スケールの大きなマンションは、付加価値が高く、魅力たっぷりの物件になっていることが多いものです。

敷地が広いので、子供が走り回れる広場や花壇や樹木を配したプライベートガーデンが設けられていたりします。駐車場も自走式の立体駐車場になっており、出し入れに時間がかからないのが利点ですし、デザイン的にも武骨な3段式機械式駐車場よりはスマートです。地下にに格納されている例も少なくありません。

そのほか、防災用備品が専用倉庫に納められてる、太陽光発電システムが搭載されている、ペット用のグルーミング施設があるなどと、至れり尽くせりの感もあります。隣接にスーパーがある例では、ショッピングカート用の駐輪場まで備えられています。

間取りも多数のバリエーションがあり、「よりどりみどり」の感もあります。さらに、マンション以外に保育園やカフェ、各種ショップが設けられたりする例も見かけます。

 

こう書いて来ると、話題になるだけの魅力があるマンションだなと思います。

関心を持った人の中から届く「マンション評価サービス」の依頼の際に添えてくださるご質問から「将来性」に注目していることが窺えます。期待しているということかもしれません。

確かに、大規模開発は街のイメージをがらりと転換します。大規模な土地は、そもそも工場跡地である場合が殆どで、多くは用途地域が「準工業地域」になっているからです。

大規模マンションができて街並みが綺麗になって、人口も増え、ショップに人が集まって賑やかになるという姿をイメージするのでしょうか、将来性が高いと思い込んでしまうように感じます。

しかし、その期待は裏切られることもあるのです。

街のイメージが大転換し、大きくバリューアップするためには、どんな条件が必要になるでしょうか?実例を挙げてみましょう。

 

広大な工場跡地を開発し、短期間に大きな発展を見せて来た代表格が「豊洲」と「武蔵小杉」です。

豊洲は2000年から2017年までの17年間で人口が6889人から37,034人に5.4倍になりました。2007年が16,530人だったので、直近の10年では2.2倍です。

武蔵小杉も単独データは見つかりませんでしたが、川崎市中原区全体を見ると、再開発が始まった約10年前から毎年1000人から5000人超の勢いで人口が増加、川崎7区の人口順位で2005年から1位を続け、15年の国勢調査では10年と比べた人口増加率が5.8%と県内市区別で1位だったとあります。

平成17年からの10年間に中原区は21万人から25万人と4万人も増えています。

 

 豊洲も武蔵小杉も短期間に大量のマンション開発が進み、並行して「ららぽーと豊洲」や「グランツリー(武蔵小杉)」をはじめとするショッピングモールが出店して魅力を増し、それが更なるマンション開発を促すという好循環をもたらしたのですが、その発展に連れて価格もうなぎ上りとなりました。

それでも人気は衰えず、新たな人口流入をもたらしたのです。二つの街の強みは東京都心に近いことです。豊洲は交通手段が地震や事故で利用できなくなったとしても帰宅難民にならないですむ絶対距離の近さ(東京駅から5km圏)にありますし、武蔵小杉はJRなら東京駅も新宿駅も20分程度で到達します。

 

 豊洲も武蔵小杉も、万単位の人口増になったことに気付きます。マンション開発は、広大な土地に複数のデベロッパーが挑みました。名だたる不動産会社だけでなく、準大手・中堅の会社も多数参画したのです。 

1社単独で万という単位の開発は困難です。できるとしても長い時間がかかるはずです。

ひるがえって、500戸か1000戸、高々1500戸という規模のマンションが新しい駅の近くにできるとして、その将来を占うとき、筆者の将来像は懐疑的です。

この程度では、豊洲や武蔵小杉の街のような発展は望めないと思うからです。周囲に空地が広がっているでしょうか?先々も伸びて行く可能性はあるでしょうか?その可能性が薄ければ、期待はできないと思った方が良いのです。

 

そうは言っても、工場中心だった街が住宅(マンション)と店舗、保育園などの街に変わるのだから期待できる余地もあるのではないか、そんな声も聞こえます。

美しい景観・街並み・環境になるわけですから、とても良いことです。しかし、街の価値(駅力)は高くなりますか?その点に注目してみましょう。

新開発のマンションが駅近くに建設されるとしても、生活インフラが十分とは言えない駅、すなわち駅力が高くないものです。駅力が低い場合は、ローカル駅と変わりなく、結局ここに住みたい人を増やすことは難しいのです。

 

最寄り駅の駅力が高いとされる場合でも、マンションの建設地から徒歩10分以上と距離があるとしたら、期待度は低いと言わざるを得ません。駅とマンションのアプローチ上に生活インフラが豊富にできない限りマンションのバリューアップは期待が薄いのです。

要するに、豊洲や武蔵小杉のように短期間に人口が増える見通しがなければ、ショップの採算は合わないと経営者は判断することでしょう。積極的に出店を検討するとしても、広範囲に来店客を増やす戦略が必須になります。

 

遠くまで買い物に行くより、近くで済ませたいというニーズの方が大きいので、遠くまで行くには、大規模なショッピングモールのような魅力あふれる複合型の施設が必須です。その進出予定はあるでしょうか?期待できそうですか?

魅力的なショップやグルメ店が多数あれば、買い物に来た人々の中には、この街に住みたいと思う人も現れます。そうして人気の街になれば、マンションのリセールバリューも上昇するはずです。

しかし、そうした開発が見込めない街は「駅力」も高まりません。1000戸か1500戸程度のマンションができたくらいではショップ飲食店も僅かしか増えません。

 

鶏が先か卵が先かという問題ですが、マンションが万の単位で増える可能性がある地域か、ショッピングモールなどの店舗群が大量にできない限り、将来価値に期待を寄せることはできないと思った方がよいのです。

もちろん、多少の不便を承知で、またはリセールバリューも期待しないで買うという選択はあっても不思議ではありません。ただし、価格の安さが条件となるでしょう。つまり、その物件価値に見合う価格で分譲されるかどうか、その判断が重要になります。

 

晴海フラッグは豊洲地区(37,000人)の3分の1しかない規模(計画人数:12,000人)です。晴海フラッグにスタバは来るか?ファミレスは何軒できる?寿司屋は?スポーツクラブは?

 晴海フラッグというタウン内で、すべてが完結するのでしょうか?どこに行くにもBRTに乗らなければいけないのでしょうか?

 街の魅力が高ければ需要が大きくなって、バス便でも買い手に困らない状態になる可能性があるでしょうが、豊洲のような人気になるとは思えないのです。

晴海フラッグは、隣地開発と豊洲や新橋、銀座、日本橋などとの連携がどう作られていくか、東京都の開発・整備構想と深くかかって行くのです。

 

 

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