第747回 「じっくり検討している間に値上がりしてしまいました」

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論「マンションの資産価値論」を展開しております。10日おきの投稿です。

 

ときどきタイトルのような声を聞きます。今日は、マンションの買い時はいつかという問題について考えてみました。

 

●マンション購入の動機ときっかけ

「子供が小学校に入るタイミングで買いたいと思っていたが、あと1年足らずになった」

「社宅の居住期限が到来する●●年までに買いたい」

「家賃が半年後に改定されるので、この機にマイホームを買いたいと思っている」

「結婚を機に新居を探す過程で買った方が得だと気づいたので検討している」

  ・・・・・例を挙げると、まだまだあるのですが、ご存知の通り東京圏は家賃が高く、安い家賃の家を探すと郊外の不便な場所に追いやられることに気付きます。職種や勤務先の事情などにもよりますが、通勤時間は軽視できませんから、便利な場所に居を構えたいと思うのが普通です。

 

  東京都心に職場があれば、都外で探すとしても自ずと制限されて来ます。筆者も、結婚当初は1時間半もかけて通勤したものです。

昨今は、コロナ禍が郊外居住を促進させているという兆候もあるようですが、在宅勤務が恒常化するとしても、週のうち2日なり3日なり都心のオフィスに通うはずであり、郊外居住が一般化するとは思えません。  

とすれば、都心に近いエリアの借家の賃料は今後も高い水準を維持して行くに違いありません。ということは、利便性の高い立地のマンションを買っても、毎月の返済額は家賃と大差ないことに気付くことでしょう。

 

早い人は結婚を機に、多少遅れても子供が小学校に入学するまでには買おう、などと考えるはずです。

家賃は捨てるだけだから節約しようと狭いアパート等で新婚生活を送ったとしても、家族が増えたときなどに広い賃貸マンションへの転居を検討すると、家賃は負担が大き過ぎることに気付き、ほどなく購入を考えるように変化します。  

今は頭金がなくても購入が可能であり、かつ住宅ローンの返済負担も意外なほど低いので、思い切って購入へ舵を切る人も少なくありません。近年は晩婚化が進み、30代になってからの結婚も多く、そのためか自己資金の多い買い手さんも多いようですから、選択肢は広くなっているようです。  

●マンション購入の準備とは?

購入を考えるようになると、先ずは本を買って読んだり、ネット検索で情報をチェックしたりと準備を始めます。

準備の仕方はいろいろですが、中には「参考までに」と近隣のマンション販売センター(モデルルーム)を訪問する人も少なくないようです。  

買う気は高まっていないものの、業者用語で「参考見学」し、質問を浴びせ、自分はいくらくらいの買い物ができそうかを知りたいと「資金計算」をしてもらったりします。

 

こうした行動を何度か繰り返しながら、お目当てを見つけようとするわけです。ところが、準備を慎重に進めるせいか、以下のような壁にぶつかる人も少なくないようです。

 

  「2年前からマンション購入のために準備をして来ましたが、中々これはと思える物件に逢えない。今後どのような方針で進めばよいか助言が欲しい」   筆者は、このような方のために敢えてこう言います。

過ぎたるは及ばざるがごとし」ですと。 準備をしっかりするする姿勢は大事ですが、方法を間違うと仇になることもあるということです。

   別の相談者の場合では、「理想を追い求めたための決断の先延ばし」と言えるケースもありました。百点満点のマンションはないのですが、それを頭では分かっていても、いざ決断というときに踏み切れない何かが邪魔するのかもしれません。  

●買い時はいつ?

ご相談メールの中には、もう少し様子を見ることにしようかと迷う声もときどき聞こえます。

筆者へのお便りは、基本が「このマンション買って良いかどうか」というご相談なので、いつが買い時かというご相談・ご質問は少ないものの、「こんな高値のとき買って大丈夫か」という疑念は多くの方にあると感じます。  

筆者の答えは決まっています。「買い時は今」なのです。待っていれば安いマンションが出て来るとは思えないからです。  

 

新築マンションの価格は、「用地費と建築費」の2大原価に「販売経費(広告費・販売手数料等)」とデベロッパーの「利益」の合計で決まります。  

2大原価は売り値の80%を占めています。販売経費は8%か10%を計上します。

利益率は10%が業界標準で、販売が伸び悩んで広告費その他の経費が嵩めば減ってしまいますから、計画利益を減らしても7%程度が限界です。

  用地費は大型マンションでは発売時点から3年以上も前、中規模マンションでも1年以上前に支出済みなので、動かしようがありません。建築費は着工直前に決まるので、足元でゼネコンが安値受注に動き出したというようなニュースがあれば、下がる期待はゼロではないものの、それでも当初予算の5%減が限界です。

 

  コロナ禍のため様子見に転じた工事も少なくないと伝え聞きますが、景気の下支えに官公庁から発注される工事、継続的な再開発事業などもあって、建設業者は依然として多忙らしく、マンションの建築費が下って来たという情報は今のところないのです。  

そのせいでしょうか、2020年の東京23区の新築マンションの価格は前年比で11%も上昇したのです。1都3県の数値も5.5%の上昇でした。  

●用地難に苦しむマンション業界

筆者の体験も含めて、新築マンションの歴史を掘り起こすと、マンション業者は常に用地確保の戦いに追われて来たのです。 

ご存知のように、首都圏、特に東京は空き地が殆どなく、あっても駅からの距離が遠い、マンション建設には不向きな土地ばかりです。  

それでも、既存のビルや社宅などが老朽化すryと、建て替えの道を選ばず、売却を選択する所有者が現われます。現金化する方が、経営バランスが良くなるためでしょう。

廃業に伴って売り出す企業もあります。

個人経営の賃貸マンションの中からも、相続対策のために売却を選択るする個人オーナーもあります。

  住宅街に近い地域で操業して来た軽工業の法人などが、郊外に移転するために売却する例もあります。

  しかしながら、大型の敷地は2000年代初頭に大量に売り払われ、首都圏にマンション用地として好条件の土地は僅かになったようです。

 

大雑把に言えば、マンション開発に向く土地は、都区内に限れば港区、中央区の湾岸エリアに限られる状況になったのです。  

用地不足は、マンション業者同士の競争を激化させ、高値取得になりがちです。売りたい地主は高値を望み、買いたい業者は安値を望みますが、取引は高値になりがちです。

 

マンション用地は大型で法人所有が大半です。法人の場合、株主の監視もあるので安く手放すことはありません。   とりわけ、駅に近く環境も良い大型の土地は引く手あまたのため、落札する業者の購入金額は驚くほど高くなってしまうのです。

 

 一方、 入札でなく任意売却で買い手を探すケースは、規模、立地条件などで格別な土地でないことが多いのです。このような土地は、高くはないものの、魅力的なマンションにはなりにくいものです。 

共用スペースが狭く、例えば豪華なエントランスホールなどは造りたくても造れず、外観デザインも「威風堂々」から遠い、ごくありふれた建物に留まるからです。

用地が安く取得できたとしても、建築費はどこでも同じ、つまり安くならないので、割安な販売マンションにはなりにくいのです。  

●この先、マンション価格はどう動く?

新築マンションの価格は、過去10年のデータを辿ると、ずっと右肩上がりでした。2019年には久しぶりに頭打ちの傾向を見せましたが、2020年は再び上昇値を見せ、期待を裏切りました。

  2021年以降、新築マンションの価格はどう推移するのでしょうか?  

 

2006年から2008年にかけて、価格上昇が続いたときがありました。 2006年は坪単価@236万円(23区平均)だったのですが、2007年には@282万円に急騰、翌2008年も@281万円となり、売れ行きにも急ブレーキがかかりました。  

何とか価格を抑えようと業界全体が躍起になって、2009年には@263万円に下げることに成功しましたが、それが精一杯でした。それこそ「乾いた雑巾を絞る」ようなものだったのです。

  その後、5年ほどは価格が安定していましたが、2006年頃から再び上昇傾向を見せるようになって今日に至っています。  

 

価格の上昇も、最初は住宅ローンの金利低下によって相殺され、販売に与える影響は軽微でしたが、更に価格上昇が進むと、さすがに購買力とのギャップが大きくなり、売れ行きに急ブレーキがかかることとなりました。  

 

足元ではコロナ問題が郊外マンションの売れ行きを後押しする格好になっている一面も見られますが、都心・準都心での押し上げ効果は小さいようです。

 

  売れ行きが良くなれば、マンション業者は元気を取り戻し、価格設定に関して弱気になることはない、利益を確保するべしと本来の活動を続けることでしょう。つまり、安売りなどはあり得ないのです。  

かつては、中小の業者も多く、販売不振に陥るとやむなく値引き攻勢をかけたりしたものですが、近年は中小業者の倒産・撤退が進み、大手デベロッパーが大半の市場となりました。体力がある大手は値引き販売に舵を切るようなことはしないのです。  

しかも、低金利が続いていることもあって、販売期間は長くなるものの、売主企業が資金繰りに苦労することはないのだそうです。  

期間内の売り上げが大きく回復することはなさそうですが、それでも安値販売に舵を切ることはないはずです。

つまり、待って得することはないと言えるのです。まあ、供給戸数も大きく増えることは考えにくいので、待っていれば良いものが出て来る可能性も少ないでしょう。   絶対ということはないにしても、待っていたら理想の物件が出て来た、待ってて良かったなどということにはならないのです。

 

「待てば海路の日和あり」という諺がありますが、東京でのマンション購入に限れば、待つことは得策にならないと筆者は信じます。

 

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