築50年マンションを買った男の話

このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

知人のXさんは、最近ぼろぼろのマンションを格安で譲り受けたそうです。

マンション名は明かせませんが、新宿区内にある築50年の古いマンションで、戸数は30戸足らずです。専有面積は45㎡。レトロ感がいいと笑いながらXさんは語るのですが、管理は事実上放棄されているのだそうです。管理会社はとうの昔に契約を切り、今は清掃だけ専門会社に委託し、自主管理形態にしているようです。

所有者で居住している人は5人しかなく、賃貸している部屋が6割。残りは空室となっています。Xさんも、貸すかどうか迷っていると言います。

貸すには、多少でも室内に手を入れないと借りてもらえそうもないのだだそうで、その費用が惜しいわけではないが、一度入れてしまうと出て行ってくれないのではないかと心配して相談して来たのです。

よくよく聞いてみると、そのマンションは周囲の木造家屋・店舗とともに解体し、ひとつのマンションに建て替えたら儲けられるのではないかと考えて購入したのでした。

近所の不動産業者の話では、近く取り壊される家屋もあるとのことで、デベロッパーのA社が動いているのだとか。

「いずれは、マンションの所有者にも売って欲しいという話が舞い込むかもしれません」と不動産屋は耳打ちしたと言うのです。

Xさんは、高値転売を期待しているのですが、貸してしまうと、借家人に立ち退き料を多額に払う破目になる。そうなれば折角の儲けもなくなることを心配しているわけです。

そう、Xさんは素人なのです。このような案件に素人が手を出すのはいかがなものか、話を聞いて筆者はそう思いました。
マンションの所有者が不動産会社からの買収案に一斉に手を上げるでしょうか?買主は、所有者個々に「〇〇〇円で売って欲しい」と持ち掛け、安く手放す人から順に購入して行くことになるでしょうが、必要な数を取得するまで何年もかかることでしょう。

80%まで買収が進めば、反対者があっても建て替え決議はできるので、計画は一気に前に進むはずです。

Xさんは、不動産会社からの提案金額が高かったら売るが、安ければ売らない。積み増しがあるまで粘るつもりのようで、10年くらいの長期計画だというのです。

筆者は、容積率を調べてみたかと聞きました。すると、現マンションの実効容積率は160%、都市計画図の容積率は200%だから、将来の建て替えで40%分の余剰床が生まれると思うとXさんは、少し胸を張って言いました。

その程度の余剰床では、不動産業者の妙味はあまりないと思うよ。筆者はそう答えました。「それに、ここは200%の指定かもしれないが、道路幅が狭い関係で200%までは建てられない可能性が高い。周囲の建物の道路付けがどうなっているか見まないと分からないが、最悪は160%だね」と続けたら、Xさんはショックを受けたようでした。

さほど大きな土地ではないが、建物がない状態で買収できるならマンションメーカーにとってもメリットはあるでしょう。建物の解体費を計算しなければならないなら、かなり安く買わないと採算には乗らないでしょうね。そうも付け加えておきました。

「鍵は、マンション周辺の家や店舗がどのくらいの金額で建て替え(再開発)話に乗るのかと容積率がどのくらい伸ばせるかにありそうだねと、話はこれで終わりました。

先ごろ、都内の古い旧公団の分譲マンションを買いたいという単身女性から物件の評価を依頼されました。5階建ての5階でエレベーターがないタイプのマンションです。2DK。昔のファミリータイプです。

素晴らしい環境で住み慣れた地元の物件でもあるので、価格も安いし、買いたいというのですが、旧耐震基準の建物であるし、慎重な意見をつけてレポートをしましたが、その後、面談する機会があって計画を聞いたところ、20年くらい先に、建て替えになるかもしれないことに期待しているという本音を聞かせてくれました。

最近、このような築40年~50年の古いマンションを敢えて狙っていると思えるようなご相談事例が相次ぎました。といっても、上記の2件以外にはっきり断定できるのは1件あるだけなのですが、築40年超えの物件を検討している人からの相談件数はうなぎ上りです。

Xさんは別としても、うまく行けば、思いがけない利益を生み出す宝となりそうな話にすっかり感心させられてしまいました。

素人さんの発想ではあっても、ポイントを抑えておけば、時間はかかるものの、ワンルームマンションを定年後のために買うより、面白いかもしれない。賃貸が可能な物であれば大丈夫そうだ。しかし、こんなリスクはありそうだ。最悪はこうなるだろうが、その可能性は低い。うまく行けばこうなる・・・・などと筆者なりにケーススタディしてみたりもしました。

ぼろぼろのマンションを格安に買って賃貸し、マンションメーカー(デベロッパー)の買収提案に乗って売却益を得るか、もしくは等価交換の提案に乗って新築マンションを手に入れて住む、または、それを売却して利を得るといった長期不動産投資がサラリーマン投資家の間で、密かなブームになるかもしれないなあ、そんなことを想像しました。

下手なワンルームマンションに投資するよりリスクは低く、長期の投資として妙味があるかもしれない。安い家賃で社宅住まいを続けられる人や、マイホーム以外にローンを組める所得のある人、独身者などに向くかもしれません。

新たな研究テーマができた思いです。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。

「高いときに買ってしまったが売却時にいくら損する?」の答えを導く「将来価格の予測」サービス

将来の価格を当てるのは簡単なことではありませんが、三井健太のマンション相談室では、あなたの購入マンションの価値及び価格の妥当性を評価したうえで、将来価格をズバリ予測、根拠とともに精緻なレポートとして提供しています。

将来価格(リセールバリュー)を知っておきたい人はとても多く、そのニーズにお答えしようと始めた有料サービスですが、購入が得か損か、買い替えはうまく行くか、買い替え時までの収支決算予想は?――などの疑問があれば是非お試し下さい。

唯一無二のサービスのせいもあってか、おかげさまで大きな反響を頂いております。

★★★三井健太の「名作間取り選」はこち
https://mituimadori.blogspot.com

★★★「三井健太の住みたいマンション」はこちら
https://sumitaimansion.blogspot.com

◆差し上げています:初めてのマンション見学ツール集◆
内容:見学用セルフチェックリスト/モデルルームでの質問リスト/中古マンション室内観察ポイント/共用部のチェックポイント/パンフレットや広告に出て来る不動産・マンション用語集など
 こちらからご請求ください http://www.syuppanservice.com/mikoukai-siryou.html