マンション投資。ワンルームはやめた方が良い

このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

読者の皆さんなら、「ワンルームマンション」の販売広告や「ワンルーム投資」のセミナー開催広告、そして「ワンルームマンション投資」に関する出版広告などにお気付きだと思います。

筆者は、講師がどのような話をするのか、そして主催者が物件の紹介(セールス)をするのかどうか、そんな狙いで投資セミナーに参加したことがありますが、予想したような内容だったので、大して勉強になることもなく、おかしな納得感を抱きながら帰途についた記憶があります。

その後、セールスマンから度々電話攻勢をかけられることになり閉口したものですが、筆者の理論と信念はますます強固になったという意味ではセミナー参加の意義はあったとも言えます。

さて、実は筆者に届くご相談メールの中に、最近はマンション投資にかかるものが増えています。理由はよく分かりませんが、背景にはワンルームマンション投資が盛んに行われていることがあるのだろうということは確かです。

マンション投資に関するご相談は、ワンルームだけではないのですが、今日は「ワンルームマンション」に限定して「注意点」を述べたいと思います。

●ワンルームマンション投資のリスク

長期投資のつもりで購入したワンルームマンション。それを、何故か途中で手放す人が多いようです。多数の取引成立例もあります。

本来、サラリーマンが定年後の副収入源(第二の年金)として購入したはずのワンルームマンションを、その手前で売ってしまうのです。

その理由はどこにあるのでしょうかでしょうか?売却益が得られると考えて売りに出しているのでしょうか?どうもそうではなさそうです。

所有者個々の一身上の都合も当然あることでしょうが、自己居住マンションと違って、転勤や家族構成の変動、子供の通学といった事情で買い替えるというのとは異なります。

手放す理由には、家賃の滞納など入居者とのトラブルが上位に来ると聞きます。立地条件もいいし、建物も綺麗なのに何故か安値で売りに出されている物件は要注意なのだと知り合いの業者は語ります。

建物に欠陥があれば、業者に告知義務があるので比較的表面化しやすいのですが、入居者のクセまでは及ばないことが多く、滞納グセのある人が入居していることは伏せられて売りに出されることが多いそうです。

また、日当たりがとても悪い部屋である場合、そのことが理由で頻繁な転出入が繰り返されて来た物件は、壁の結露がひどく、毎回リフォーム工事をすることもあって、年間に空室期間が平均で1か月以上になるといった例もあります。

このような事情が、所有者に嫌気され、手放すことを決心させてしまう理由になっていると推測されます。

ともあれ、20年後、30年後の安定収入源とする、すなわち年金代わりとするマンション投資のリスクを整理してみましょう。本当に思惑通りに行くのでしょうか。

リスクその1:建物が劣化し過ぎて、借り手が付かない

老後といえども、寿命が延びて結構長い存命期間、ずっと安定して家賃収入を得ていくには、建物がスラム化しないことが前提です。建物の劣化が不具合を引き起こし、管理状態が悪ければ、入居者に不快感を与えることが多くなり、退去を促進してしまいます。そして、新たな入居者を募集する際の家賃の引き下げを招きます。

リスクその2:大規模修繕に計算外の出費

外壁や屋根からの漏水、配管の劣化が招く水道水の濁りなどといった不具合を補修するための資金が、積立金だけでは足りないことが分かり、臨時の徴収を行う必要に迫られることがあるかもしれません。

リスクその3:賃貸管理を一任していた管理会社が倒産

お任せ管理の賃貸管理会社、またはサブリースの会社が倒産する危険がないわけではありません。

リスクその4:家賃の滞納

管理会社が処理しきれない。借り主の連帯保証会社が倒産、連帯保証人の不履行といった問題がおきる危険はいつでもあり得るのです。

リスクその5:売却の必要が起きたが全く売れない

長い人生の中には、予想もしない事態が発生する場合があります。そのことで、保有する不動産の売却を余儀なくされるかもしれません。そのとき、スムーズに売却ができるかどうか。金融情勢、経済状況などが逆風となって不動産市場が停滞している時期に、運悪くぶつかるかもしれません。

リスクその6:金利上昇のリスク(借入金がある場合)

史上稀に見る低金利が続いていますが、国債発行が膨大に膨れ上がった日本の金利上昇リスクは日増しに高まっているとも耳にします。しかし、そんなエコノミストの声に逆らうように、低金利に慣れてしまった国民。そのために、このリスクはつい忘れがちです。
金利が上昇すると毎月の返済金が家賃収入を上回ることになるかもしれません。そうなれば、累積投資額が増加し、実質の利回りは低下することになります。

●人生計画が狂ったので処分したいというとき

サラリーマンのワンルーム投資の目的は、あくまで老後の収入源、永久(とわ)の保障です。しかし、完全な形で保障が始まるのは、ローンが終わる20年先か30年先のことです。40年払い続けてやっと年金がもらえるのと同じようなものです。

(低金利の現状では、毎月の返済金を家賃収入が上回るケースもありますが、その金額は高がしれています)

厚生年金でも、果たして将来どれだけ貰えるものか、少々怪しくなっているという状況で、政府が保証するものでもない市場経済下の不動産が、私たちにどのような恩恵を与えてくれるか、これを読むのは極めて困難です。

周辺地域の環境変化は、賃料の下落を招くかもしれません。そうなれば、ローン返済額に届かず、毎月いくばくかの金額を足す必要が発生するかもしれません。

また、先に述べたように、トラブルが頻発したからとか、その他、想定外の個人的事情が発生し、売却を決断するせざるを得ないこともあるでしょう。

ところが、売却処分しようとしたら、ローン残債以下の金額でしか買い手がつかない。それでも売却するとしたら、数百万円もの資金を用意しなければならない。そのようなことが買って10年もしないうちに起こるかもしれません。結局は、売りたくても売れないという八方塞がり状態に追い込まれる危険を抱えるのです。

現状はデフレに歯止めがかからないため、低金利が続いていく見通しですが、果たして20年後はどうなのでしょうか?優秀なエコノミストでも予測は困難なはずです。

金利が上がったら、毎月のキャッシュフローはどうなるのでしょうか?ぎりぎりの収支バランスでスタートしていたら、金利上昇が計画を大きく狂わせることは間違いありません。
仮に、残債が1500万円であるときに金利が2%も上昇したら、単純計算ですが、金利だけで年間300,000円、月々25,000円も増加してしまいます。

何より、リスク5として挙げた「売るに売れない」や「売れないことはないが、購入額を大きく下回る価格でしか売れない」事態が最も高いリスクとなるのです。

ワンルームマンションを自己居住用として購入する人はいないこともありません。例えば、子供の大学進学を期に東京都心で購入する地方の資産家と、独身サラリーマンが代表例です。しかし、前者はもともと大きな需要ではありません。後者は、ワンルームマンションに住んでいる階層なので、買うなら1DKか1LDKというニーズが強く、これまた大きな需要ボリュームではないのです。

単身者でマンションを購入する階層は、金利が5%も6%もに跳ね上がったら変化はするでしょうが、現在の低水準からさほど大きく上昇しない限り、1DKや1LDKといった少し広めを購入するでしょう。その力を持つサラリーマン・OLは少なくはありません。つまり、ワンルームは基本的に実需型ではなく、賃貸用不動産としての市場の中で動くことになります。

ワンルームマンションの買い手は、サラリーマン投資家が主です。投資家は利回りの良い物件を狙います。中古なら新築より高く、最低何%以上などと線を引いている人も多いのです。

マンションの価格は、新築の場合、地価と建築費の変動による影響を受けますが、中古マンションは新築価格に連動する側面が強いのです。つまり、新築価格が上昇すれば、割安な中古に人気が集まる傾向が現われ、やがて中古マンションの価格も上昇していきます。

また、新築マンションが供給不足に陥った場合も中古マンションに需要が集中して価格が上昇します。これは、ファミリーマンション市場で見られる傾向ですが、投資目的のワンルームマンションでは、少し様子が違って来ます。

地価や建築費、需給バランスで価格が影響を受けることは同じですが、ワンルームマンションの場合は、収益還元率(利回り)の与える影響の方が大きいと考えられます。

従って、賃料相場が上昇しない限り、売買価格が上がることは少ないのです。
立地条件が際立って良いとか、再開発などで街の人気が急上昇し、地価も高騰している地域は、家賃も高くなりますので、中古マンションでも投資家が注目することとなります。もし、そこで新築の供給もない状況なら、中古マンションの価格も高値となるでしょう。

しかし、購入価格を上回る水準、つまりキャピタルゲインが得られるかというと、それが期待できる物件はワンルームの場合、極めて希有で、普通はそこまでは行かないと考えるべきです。

今日はごく簡単にワンルームマンション投資のリスクについて述べましたが、補足説明はたくさん残っています。機会があれば、続きを書きたいと思います。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。

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ご検討マンションの価値はどの程度のものか、また価格は適正かを客観的に評価し、レポートします。
 評価項目:①立地条件(最寄駅までの距離・都心へのアクセス・生活利便性)②全体計画(配棟計画・駐車場・空間利用計画・共用施設・外観デザイン・セキュリティ)  ③建物の基本構造(耐震性・耐久性・遮音性能・将来の更新性) ④管理内容(管理体制・管理費・修繕積立金・管理会社) ⑤専有部分の計画(間取り・設備・仕様)⑥売主 ⑦施工会社
・・・・これらの項目を5段階評価(新築の場合)した後に、価格の妥当性を含め 総合的にコメントをつけて「マンション評価レポート」として、メールでお届けしています。どうぞご利用ください。中古マンションも承ります。

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