第703回 「竣工時に1/3売れ残っているマンション購入の是非を考えてみよう」

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。

今日は年末なので年明け以降のマンション探しについてのご質問の中から、標題の売れ残りマンション購入の是非について書くことにしました。

●港区3Aエリアの高額・高級マンション

マンションの黎明期から「3A」と呼ばれた青山・赤坂・麻布の高級住宅街、このエリアには、高額マンションが建てられ続けています。今も、その人気は衰えず、たまに登場する新築マンションはご存知のとおり億ションばかりです。

住戸単位の坪単価で言えば、1000万円を超えるマンションも珍しくない現況にあります。マンション全体の平均では700万円台~900万円台ですが、例えば、2014年以降を見ると以下のような物件が発売されました。

2014年発売「パークマンション三田綱町ザフォレスト・98戸」が坪710万円(平均110㎡台・平均価格:23,900万円台)、2015年発売「フォレストテラス鳥居坂53戸」が坪@840万円台(平均177㎡・平均価格45,400万円)、2016年10月発売「パークコート青山ザ・タワー163戸」が@950万円台(平均95㎡台・平均価格:27,500万円台)、2017年12月発売「ブランズ六本木飯倉片町33戸」が坪@750万円台(平均113㎡・平均価格26,000万円)、2015年6月発売「ザパークハウスグラン南青山101戸」が坪@740万円台(平均104㎡・平均価格24,800万円台)、2018年12月発売「ザコート神宮外苑409戸」が@890万円台(平均97㎡・平均価格26,200万円)、2018年12月発売「パークコート渋谷ザ・タワー505戸」が@790万円台(平均85㎡・平均価格20,400万円)、2018年10月発売「ザ・パークハウス渋谷南平台100戸」が@850万円台(平均93㎡・平均価格24,000万円)2018年10月発売「パークコート青山一丁目46戸」が@810万円台(平均87㎡・平均21,500万円)、などが有名です。

億ションの中でも2億円を超える物件を「スーパー億ション」と呼んだ時代もありましたが、最近は聞かれなくなりました。ともあれ、億ションの購入者は金に糸目はつけないのです。中でも、2億円クラスの購買層は、条件が悪ければ少々安い程度では購買に動きません。

金銭感覚も筆者のような庶民とは全く異なるようで、独自のモノサシで物件価値を判断する特性があるのです。しかも、簡単に表せば、100点満点を要求するのです。

廊下の幅も天井高も、キッチンや洗面化粧台のサイズも、無論寝室の広さもリビングルームの広さも、何もかもビッグサイズです。筆者の知り合いの社長宅は200㎡もあり、拝見して驚いた記憶があります。

さて、高級マンション、中でもスーパーと称されるようなマンションは外観や共用部のしつらえから異なります。先に挙げた「ザコート神宮外苑409戸」や「パークコート渋谷ザ・タワー505戸」のような例外もありますが、スーパー億ションが建てられるような高級住宅街で広大な用地を取得することは困難なので、大抵は20戸台、30戸台の小規模タイプが多いものです。

そんな中で、ここに挙げたような100戸を超える、比較的大規模な高級・高額マンションは共用部の広さや豪華さも手伝って付加価値も評価されるのでしょう。例外もありますが、長い時間を要せずに完売してしまうことが多いのです。

話題になった高級・高額マンションの売れ行きを見ていると、日本人もお金持ちが結構いるものだと今更ながら驚き、感心します。

無論、妥協をしてまで気に入らない物件を買うことのない富裕層ですから、そのことをよく知る大手デベロッパーは、商品企画にも手を抜かず、価格が高くなっても品質の良い、妥協しない商品企画に努めます。

条件の悪い位置の部屋などは設けません。条件の悪い住戸は価格を下げれば売れるなどという一般マンションとは違うからです。そのせいか、億ションは意外に早く売れてしまうことが少なくありません。

●売れ残るマンション

ここからは、話題を転じて一般的なマンション、言い換えればサラリーマン層が求める大衆マンションについて述べることとします。

2011年の東日本大震災を機に、新築マンションは価格の急上昇という現象に見舞われました。

新築が上がると、中古も連動して上がるという市場の動向は2019年まで続いて来ました。東京23区内に限って言えば、2014年の平均坪単価が@300万円でしたが、2019年には@375万円に、5年で25%も上昇したのです。毎年5%ずつ上がって来たということになります。

はじめは、金利の低下もあって値上がり分を相殺する形になりましたが、2017年以降の3年間を見ていると、買い手の購買限度を超えてしまったらしく、マンション販売はスローダウンしてしまいました。

好転する材料は生まれず、マンション販売は不振に陥ってしまいました。売れなければ、在庫は溜まって行きます。必至の販売努力を重ねているものの、販売促進の最後の策は価格の引き下げしかありません。新築マンションのデベロッパーは窮地に追い込まれています。

しかしながら、新築マンションの最終利益は10%しかないので、残った住戸を値引き攻勢で売り切るのが単純かつ効果的な早い策と知っていても、現実には簡単にできるわけではありません。

最後の僅かな売れ残り住戸だけなら思い切った値引き処分も可能ですが、4割も5割もの売れ残りを抱えてしまうと、値引き販売の決断はしにくいのです。言うまでもなく、企業は利益を追求しているのですから、利益を捨てる覚悟はしにくいのです。

1プロジェクトだけの失敗ではすまない影響を売主デベロッパーは考えます。今は、販売中マンションの大半が売れずに残ってしまう情勢にあるからです。

1件の値引きを許可すれば、他のプロジェクトも右ならえになってしまう危険があるからです。

それに、値引き販売は大々的には挙行できない事情もあります。値引き販売が知れると、「値引き要求」が定価で購入した先行契約者にから殺到する恐れがあるからです。マンション分譲企業は、その要求を恐れ、水面下で僅かなサービスによって販売促進を図ろうと考えます。

最後の在庫10%くらいは多い切った値引きも辞さない覚悟を決めるとしても半数も残っているような状況下では、値引き販売に及び腰です。

つまり、大きな値引き交渉は期待外れの可能性も高いということです。

●売れ残りマンションの購入判断について

新築マンションにせよ、中古マンションにせよ、売れ残るマンションは「価格が高いからだ」と考えるべきです。

売れないマンションは、「駅から遠い」や「間取りが悪い・天井が低い」、「設備が不足・高級でない」、「日当たりが良くない・眺望が悪い」などの分析がされますが、筆者は「要するに価格が高いから売れないのだ」と説明します。

先述の億ションと違って、一般マンションの購入者は「欠点ゼロ」を求めていないのです。駅から近い方が良いのは分かるが、探しているエリアに「駅前マンションはない」と知れば、少し離れていても仕方ないと考えるものです。間取りや設備が最高級でなくても妥協してくれる買い手は少なくありません。

多少の不足、弱点があっても妥協範囲の物件と思えば選んでくれるのです。そのときの最終決断で決め手になるのが「価格」です。「価格が予算内だったから」、「価格が安かったから」、「無理しないで買える物件だったから」というものです。

一度でも現地まで足を運んだ検討客の中には、価格が安ければ買ってくれたはずの人が何%かはいるものです。なにかしら問題点や気に入らない部分があったとしても「魅力的な価格」であれば納得ができるものです。現実は、際立つ特徴・魅力もなしに、価格が他社並みゆえに購入を見送ったのです。

商品企画にはどの企業も真剣に取り組むのですが、その企画を採用するとコストが跳ね上がるからと、最終的には不採用となり、ありきたりの平凡なマンションになってしまうのも事実です。特に最近10年くらいの動向を見ていると、筆者の目には「実につまらない平凡な企画・設計のマンションばかり」と映ります。

構造面などでは、二重床をやめてしまった例も目立ちますし、間取りも平凡な「田の字型」が圧倒的に多い現状を残念に思う人は筆者ばかりではありません。

ともあれ、予告広告の段階で現地を見て落胆しない限り、間取りを選び、住戸の階数・方位などを選択して、購入意欲を高めて行くものですが、最近は、価格を聞いて購買意欲がなくなってしまう人の割合が増えているのでしょう。

もう一度言いましょう。最近の新築マンションは「立地もプランも平凡、それでいて価格だけが独り歩きして高い」のです。ある検討者は言いました、「私たちが望む条件のマンションは予算オーバーばかりです」と。

●価格決定に柔軟な中古マンション

新築マンションの価格高騰に伴い、中古マンション検討者が増えました。しかし、中古マンションも新築相場の上昇に伴って随分と上がってしまいました。不動産流通機構のデータを見ると、新築マンションの価格上昇と変わらない値上がり傾向が明白なのです。

新築が上がると割安な中古に買手は向かう傾向を見せます。そうして、中古相場も上がって来ました。ご相談者のお便りを読むと「中古も新築並みに高い。だったら新築を選んだ方が得ではないか」という感想を何度も何度も聞きました。しかし、同じ価格の新築と中古を二つ並べて比べてみると、決してそのようなことはないのです。

全般的な傾向を見ると新築価格の高騰を追いかけるように中古マンションも随分高くなり、安いだろうと中古を探してみるものの、意外な高値に驚き、落胆している人も多いのは事実です。

高くなった中古も、今のところ売れ行きが悪化しているという声をあまり聞きません。しかし、これも十把一絡げに見ると誤るので、あえて補足しますが、「中古マンションの価格は市場が決めているのです」。

売出しのときは、売り手の希望で決めたとしても、または仲介業者の査定や助言で決めたとしても、売れなければ引き下げるほかなく、やがて我慢の限界を超えた売主は売れそうな価格まで下げるのです。その新価格で買い手が決まれば、取引成立となり、REINS(不動産流通機構)に成約データとして登録されます。

このデータが同マンションの次の売り手の指標になるのです。

ところで、売り手に値下げの猶予はどのくらいあるのでしょうか?

新築マンションの売り手は土地代と建築費、販売経費などの総原価・販売費に10%程度の利益を乗せて売り値を決めるのに対し、中古マンションは原価(購入価格等)がいくらだったかに関係なく、流通市場の売買事例が指標となります。

中古市場では原価も経費もいっさい頓着されません。言い換えると、いくらで買ったかは無関係なのです。広尾ガーデンヒルズのように築後35年以上のマンションでも周辺の新築マンションを上回る価格で売買が成立している物件もあれば、まだ10年も経っていないのに、購入価格から20%下の価格でも買い手が現れない物件もあります。これが中古市場の現実です。

つまり、その価値判断は買い手がしていることになります。新築マンションは売主の決める価格ですが、中古マンションは買い手の決める価格と言えないこともないのです。

売れ残っている新築マンションに、気に入って買いたいが価格が問題というとき、筆者は値下げ交渉をお勧めしています。竣工後なら交渉が成功する確率は高いからです。無論、竣工前でも決算期が直前に迫っているようなときなら、交渉は上手く行くかもしれません。

中古マンションでも、値引き交渉をしたいところですが、見学者多数の人気物件では諦めた方がよい場合があります。頃合いを計っているうちに買い手が決まってしまうリスクもあります。仲介業者と相談しながら決めることをお勧めします。

しかし、特別な物件以外、指値は通ることが多いのです。全く通らず、別の買い手で契約の方向に進むようなら諦めるほかありません。優良中古は他にもあります。チャンスは直ぐやって来ます。

●「売れ残り新築」より「優良中古」

価格が高過ぎる新築、それでも買って間違いないと思われる優良新築はないこともありません。しかも、価格が高いとしても人気物件は、将来の売却で損をする確率も低いものです。
しかしながら、大抵は高倍率抽選になって現実には買えないことも多いものです。

売れ残りの新築マンションでお勧めできるものがあるとしたら、その多くは販売戸数が多過ぎたための長期化であって、価値がないわけではないのです。長期化している優良中古、大抵は大型マンションですが、そのような優良中古も多くはありません。

特殊なお勧め新築がないわけではないと考えますが、あまりにも物件数がが少なく、こ希望エリアにはないかもしれないのです。

としたら、中古マンションの出物をうまくキャッチした方が現実的かもしれないと思うのです。優良な中古マンションは多くはありませんし、一定期間に売り出される物件数も多くありません。うまくキャッチできたとしても、素早く見学に出かけて素早く結論を導くスピードが必須です。

どのような手順と検討過程を経て素早く結論を出したらいいのかに悩む人も少なくないのだろうと筆者は推察しています。そのためのお手伝いをしてきた筆者ですが、責任も重く、どこまで手を伸ばすべきか日々悩みます。

今日の最後に一言

新築価格は中々下がらないと思った方がいいですが、タイミング次第で10%上限に可能性はあるでしょう。中古は価格交渉が難しい物件もありますが、気に入った物件が見つかったときは仲介業者と相談しながら作戦を立ててみましょう。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「対面相談」もご利用ください。お申込みはこちらから(http://www.syuppanservice.com

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副題(1)首都圏マンション市場の現状分析と近未来展望

・・・・※2020年のマンション価格・新築供給の見通し

・・・・※新築か中古か?

副題(2)これからのマンション選び、その要諦

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