第705回 「優良な中古マンションを見つけるには?」

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。


新築マンションがない。良さそうな物件を見つけても、価格が高く手が届きそうにない。マイホームを見つけるにはどうすればいいの?

 こんな声がたくさん届きます。今日は改めて、中古マンション探しのお勧め策を徒然に書いてみることにします。

●新築マンション探しの利点

 新築マンションの長所について多言は要らないでしょう。しかも検討時間もたっぷり取れるのが新築マンションです。同じマンションの中に複数の住戸が並んでいるので、選択の幅も広いものです。

 対して、中古はひとつのマンションに売り物が1件しかなかったりします。そこが新築と大きく違います。つまり、新築は選択の幅が広いと言えます。

 しかも、繰り返しますが購入の受付期間に余裕があることが多いのです。中古マンションが常に先着順に買い手を決めるというのとは猶予時間に大差があるものです。

●新築マンション探しの壁

今の新築市場の難しさは整理すると以下のようになりそうです。

①品数が少ない(物件がない)

・・・地域によっては、全く売り物がない現況にあります。マンションデベロッパーが減ったからでしょうか?それも要因の一部ですが、根底には「用地がない」からです。売地は多数ありますが、条件の良い土地が枯渇しているのです。

このため、良いマンションの絶対数が大幅に減ってしまいました。

②用地費が高い

・・・用地不足がデベロッパー同士の競争を生み、買収価格が上がっているのです。都心の土地、駅に近い土地などは競争率が高く、一段と高値になっていると推測できます。買収費は急激に上がっています。

③建築費が高い

・・・用地費だけではありません。2011年の東日本大震災が起こってから、建設業界は激変しました。復興工事が建設会社の人手不足を生み、各地で工事費の高騰を呼びました。東日本大震災以来、年々工事費を上昇させました。3年くらい前には復興工事も山を越えたのですが、新たな自然災害が次々と日本を襲いました。2011年の東日本大震災によって生まれた復旧・復興工事のために人手不足が生じ、そのために人件費が上がりましたが、その後も熊本地震、西日本豪雨被害、北海道地震、北大阪地震など、次々に襲われた天災によって建設会社は慢性的に人手不足に苦しむ状況となりました。

加えて2013年に決まった東京オリンピックも人手不足に拍車をかけました。

マンション建築の原価に占める人件費の割合は50%近いと言われているので、建築コストの上昇は避けようがなかったのです。

買い手は価格が高いマンションは見送るしかありません。次の売出し物件を待つ流れが自然に生まれます。ご存知のように新築マンションは価格を中々明らかにしないので、買い手は検討期間を先延ばしされます。

社内的な手続きがあって、決定までに時間がかかるのは理解できますが、工事を始めているマンションはゼネコンとの工事契約も締結されているのですから、建築費が決まっていないわけはないのに、売り値が決まらないという理由が理解できないという声も耳に入って来ます。

原価が決まっていれば売り値を決める壁はないのです。社内手続きの時間もせいぜい1週間か10日です。

利益を減らすかどうかで手間取っているのでしょうか?いいえ、昔からマンションの利益率は企業経営の限界に近いレベルなのです。儲けを減らす「下げ余地」はほぼゼロです。

新築マンションの価格は、用地費+建築費+販売経費(広告費・販売手数料など)+利益という形になっています。利益がなければ企業経営は成り立ちませんから、これを圧縮することは困難です。

新築マンションを買いたい人は、高い価格を承知で選ぶしかないのが現実です。安い新築は、用地費の安い郊外マンションや都区内でも辺鄙な場所、環境に問題があるとされるような立地のマンションを選択するしかないのです。

マンションの原価は土地代と工事費ですが、工事費は郊外でも都区内でも変わりません。2大原価のうちの用地費は郊外が安いと言えても、建築費が変わらなければマンション価格は期待するほど安くならない構造になっています。

言い換えましょう。郊外マンションは、都心より安いことは間違いないとしても、物件価値の割には高いのです。

(ここは、別の機会に書くことにします)

●中古マンションの長所と短所

 中古マンションは、言うまでもなく誰かが住んでいるか最近まで住んでいた物件のことです。それを売るのは、住み替えるからにほかなりません。住み替えの理由や事情は人さまざまですが、多くの場合は転勤や勤務先の変更などです。

 子供の通学のために家族ぐるみで移転するという例も現実にあります。

 中古マンションを売り出すと、山の中のマンションでない限り、買い手がほどなく現れます。

 買い手から見れば、中古マンションは何年かそこで暮らしていた事実があり、しかもマンション全体で見れば何十人、何百人の人々が今日もそこに居るのです。住むのに問題があるマンションなどとは露とも疑わないはずです。

 そのマンションの長所も短所も、未完成の新築マンションと違って全て明らかになっているはずです。これほど安心な材料はありません。日照、騒音、天井高といった点も明快です。

 短所は、ただただ汚れていることです。誰と知らない他人が今も、または最近まで住んでいた家なのです。

 しかし、これもクリーニング作業をしっかり行えば問題ないはずです。ホテルに泊まるときを思い浮かべてみてください。清潔な客室が用意されていますね。購入したマンションを同じような状態にすればいいだけです。

 無論、そのためにはクリーニング代もかかるでしょうし、物件によってはリフォーム代がかかるかもしれません。新築マンションでは不要な出費です。

 しかし、その費用をかけても価値ある買い物と言える中古は少なくないのです。

●優良な中古マンションを見つけるための事前準備

気になった物件を全て見て、ゆっくり比較検討してから結論を出そうなどと言っていたら物件がなくなってしまうものです。対して、新築は予告広告から始まって申込受付が1か月以上先という例が普通です。随分差があるものです。そこで、少し事前の準備が必要になります。

以下のようなものです。

①情報を他の購入希望者に先駆けて取得し、判断のタイミングを早める

②申込や契約時に必要な書類を把握し、手元に用意しておく

③各社の住宅ローンを比較し、事前審査の段取りをたてておく

 事前の準備をしておけば、見学後に素早く答えを出すことができます。

●WEBと足の両方を上手に使いたい

中古マンション探しは少々手間がかかります。新築でもモデルルームの見学は予約制になっていますが、大して手間はかかりません。

中古の場合は、仲介業者を通じて居住者の都合を聞いてもらうことが必須になります。

消費財の買い物をするために、店をふらりと訪れるようなわけには行きません。

また、複数の物件を見て検討したいからといって、やたらと見学に出かけるのも考えものです。ネット上で大まかな見学は可能なので、候補を絞って見学に出かけることを勧めます。

今日は、ネット上で80%近くを見学することも可能です。10も15ものマンションを現地に出かけ、かつ室内の見学までする必要はないのです。

●新築と違って知識が足りない営業マンが多い?

知識が豊富な営業マンの多いのが新築マンションです。反対に、売り物件の概要を細部まで把握しきれていない営業マンが多いのが中古マンション。 乱暴な言い方をすれば、そんな対比が可能です。

新築は、見えないところが多いので、販売担当も専属にして事前の準備を抜かりなく行おうとします。

物件ごとの販売マニュアルを準備したりもして、顧客に対応します。従って、新築マンションの担当営業マンは、担当マンションと新築マンション全般に精通しているものです。

これに対し、中古マンションの営業マンは、長く業界に居れば、一般の不動産知識・マンションの知識は豊富ですが、過去に何件か扱ったことのある中古マンション以外の知識は足りないことが多いものです。

労働が過酷と言われる不動産業界なので、新人営業マンも多く、このため知識の足りない営業マンに当たると悲劇的です。 物件知識に関しては、はなはだ心もとない営業マンが多いのが実態なのです。

特定の物件となると、深い知識は殆どゼロと思った方が良いくらいです。 無論、仲介業者によっては、そのあたりの対策・教育をしっかりと行っているケースもあるようですが、まあ大して期待はできないと思っておいた方がよいでしょう。

●瑕疵に対する不安が解消しにくい中古だが・・・

新築なら瑕疵担保責任が業者に法律で義務付けられています。つまり、売主は保険に加入するなどの方法で、買い手にとって万一の場合も安心できる制度が用意されています。(但し、住宅の基礎構造、雨漏りなどの重要部分に限られる)

対して、中古は売り主が個人の場合が多いため、現状有姿で引き渡すのが取引の基本。つまり免責特約付きの契約なのです。 中古は買い主自身が頼りというわけです。

これらの不安に対して有効な解決策は、「信頼できる不動産会社の営業担当」を早く見つけること、です。物件情報の収集からその値引き交渉、契約に必要な書類の有無と段取りの立て方などは経験豊富な担当者なら、こちらが都度確認しなくても、先まわりして動いていてくれます。これは中古住宅の売買にあって情報のスピードが重要なことを、その担当者が誰よりよく知っているからです。

建物の検査は専門家に依頼する手もあります。建物検査(インスペクション)は、1件3~5万円かかるのが難点ですが、心配性な人は利用する手もあります。

良い物件にはすぐに人が集まるのが中古市場の特徴です。そこで、 物件に対する情報収集力と購入を決める際の決断力・行動力・交渉力などが非常に重要になります。良い物件に出会うため、また出会ったときに一気にスピードアップできるような事前の環境づくりが大切なのです。

住宅購入は“信頼できる会社選びで8割決まる”などと言われるのもこうした理由からです。できる限りの準備をして、最良の物件との出会いに備えることが、自身の「買い時」を逃さないために一番大切なことです。

(信頼できる仲介業者も大事ですが、もっと大事なのは担当です)

話を戻しましょう。三井不動産や三菱地所のような超大手で長い歴史と経験を持っているマンションメーカーでも、出来上がったマンションに欠陥が見つかり、取りこわして建て替えた例があります。

スーパーゼネコンの施工マンションでも欠陥や施工ミスなどに気付き、工事を1年も止めて部分施工のやり直しをした例があります。

工事中の露見ならまだしも、築後何年も経てから欠陥が露見するなどという前代未聞の事例も稀に起こります。そうしたマンションに遭遇したときでも、分譲主が大手企業なら購入者の利益は守られるものです。中には、のらりくらりと逃げ回った大手もないことはないのですが、たとえ10数億円かかろうとも大手企業は信用保持のために購入者の利益を守ろうとしてくれます。

その意味では、大手企業のマンションが良いということになってしまいますが、ここで一言、建物の欠陥は「10年もしないうちに露見するものだ」という点です。従って、10年以上を経過した中古マンションには重大な欠陥はないと見て良いのです。

●築10年を超えた方が選択肢は多くなる

新築志向の強い日本人の性癖からか、新築がなければ中古でもいいと言うものの、できたら築浅(ちくあさ)物件が望ましいと語る人が多いようです。

そういうニーズが多いせいか、築浅の中古は人気があって売り手も強気です。それ以上に、買い手が多いので「言い値で決まる」傾向も強いのが現状の市場です。短い時間の中で買うか買わないか結論をくれと言われてしまうことも多いのです。

ゆえに、築浅の中古はすぐに売れてなくなります。人気エリアの人気物件になると中々買えないという実態もあるようです。

そこで、筆者の提案は「築10年以上20年未満を狙え」です。

古くなればなるほど人気薄なので、逆に築浅物件を捨てる人もあります。その方が時間にゆとりができるし、価格交渉も実効を得る確率が高いからです。筆者のお勧めも同様です。

「築20年のマンション、それって大丈夫ですか」などと尋ねられますが、「かつて筆者が住んでいたマンションはもう築20年を超えています。しかし、何も問題はないのです。また、一時住んでいた渋谷区のマンションも築25年ですが、近隣の新築マンションを超える高値で今も取引が成立しています。

考えてみると、マンションの寿命は良いものなら100年です。短くとも80年もあります。築20年の段階では、少なくとも余命60年です。維持管理体制を信頼できるなら、長く住んでいけるのです。

●新築が足りないから中古を選ぶほかない

最後に、筆者は「今の時期は新築を捨てて中古を狙え」と言いたいのです。新築価格が上昇したので、中古も連動して高値になっています。しかし、それでも中古の方が安いのです。

「中古なのにこんな高いのは何故?」という質問をいただきますが、それは単なる錯覚です。比べる新築より立地条件も建物価値も高いと世間(市場)は評価している何よりの証拠なのです。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「対面相談」もご利用ください。お申込みはこちらから(http://www.syuppanservice.com

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