第722回 マンション選び・究極の割り切り


このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。

今日は、市場の罠に嵌まらない「割り切り方」について語ろうと思います。市場とは無論マンション市場のことですが、新築マンションも中古マンションも、大きくは変わらないものの、少しだけある違いについても触れておこうと思います。

●安値のマンションを探してはいけない

価値あるマンションと安いマンションとでは何かが違うのは言うまでもありませんが、

多くのマンション探し人は「安いマンション」はないかと考えてしまうようです。

振り返ってみると、都心の一等地・赤坂や青山エリアなどで築30年以上を経過した中古に遭遇し、実物も確認して大喜びした人が、「待てよ。安いのは何かあるはずだ」と思い直して筆者に診断(マンション評価)を依頼して来たことが何人もありました。

赤坂以外にも、ときどき古いマンションの「評価サービス」と「将来価格の予測サービス」が届きます。

何十年も経過した古いマンションは、無論、売出し価格自体が安いので「場所・広さ・価格」のバランスから魅力を感じるのでしょう。SUUMOなどのポータルサイト上からピックアップし、その詳細ページへ飛びます。古いこと以外は、物件は良さそうだとなって、つまり写真では分からないから実物を見たい、そう感じた人が業者と連絡を取って見学へと進みます。

その結果「予想した通り、レトロ感があふれる建物、たたずまいでした。しかし、綺麗に管理されている印象で、室内で気になったのは●と●くらい。持ち主さんが、数年前に大掛かりなリフォームをしたとのことで築00年も経過しているとは思えない」などとと感想を抱きます。

筆者への評価依頼を送って来た時の心理は

「少し古いが、場所は最高だ。何せ安い。赤坂に住めるなんて夢のようだ。会社まで夫婦とも歩いて行けるほどだ。安いのは古いからだと承知している。だけど、これを買った場合、10年先、15年先に売却できるだろうか。できるとして、どのくらい損をするのだろう」

・・・こんな思いがあって筆者に「評価依頼」等をしてくださるのです。

数日で筆者からの「評価レポート」が届きます。その内容を読んで愕然とし、「レポート届きました」のメールすらも忘れてしまうようです。中には、腹が立ってしまう人も多いらしく、それが「届きました」確認メールすら無視するという対応になるようです。

(これは筆者の憶測ですが)

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極端な例だったかもしれませんが、マンション価格が高騰して来た過去数年、多くの買い手の行きついた先は、

買えるものがない、新築も中古も候補物件が中々見つからないので、ネットサーフィンを繰り返しているうちに危険なエリアに入り込み、そして罠に嵌まってしまうのです。

●「近所だから」の罠に嵌まるな

話題を新築に移します。

筆者が、かつて某デベロッパーに在籍していたころを思い起こすと、マンション販売は「物件の半径2キロメートル」を先ず当たれと教わりました。

その理由は、言わずもがな「最も濃い見込み客は現地周辺にいる」からです。

すぐ近くのマンションなら、子供を転校させることもないし、家族の生活をドラスティックに変える必要がありません。

今日も、購入者は足元にいるというのは真理であろうと思います。無論、物件規模によっては近隣客だけでは足りないはずだから、もっと広範に買い手を探さなければならないと推測して広告も広域媒体と呼ばれる「新聞広告」や「住宅情報誌(SUUMO)」を併用します。ときには、新聞紙面広告やテレビコマーシャルも使ったりします。

このようなデベロッパーの販売戦略はともかくとして、建設地の周辺住民にとっては自宅から徒歩10分圏のマンションは魅力あるものです。生活圏が変わらないのは「らく」だからです。人間は、そもそも保守的な動物です。未知の世界に飛び込んでいくことを好まないのです。慣れた道、慣れた勤め先、慣れた暮らしを自然に求めます。

この性癖から「買い手は近隣にいるはずだ」と狙いを付けます。その結果、この売り手の作戦にまんまと嵌まる人は多数います。しかし、買い手にとって、それは大きな間違いという場合があるのです。

ここなら、保育園にも入れそうだし、住み慣れたエリアだからと前向きに検討をする人が多数あるのですが、本当にここでいいのですか?

仮住まいのつもりで選んだ賃貸マンションだったはずで、そのままそこに向こう10年とか20年と根を生やしてしまって本当にいいのですか? 筆者は、そう思ってしまいます。

筆者は、「住まいはそれぞれの家庭の事情で選ぶものだから他人が口をはさむべきでない」という論者の考えに、「それは違うと思う」と感じて「マンション評価サービス」を始めたのです。

個人の事情を無視せよと言っているわけでなく、

あくまで「資産価値の観点から意見を言わせていただいている」のです。

郊外は郊外なりに、都心は都心なりに、マンションの価値評価をさせていただいています。

その結果、「あなたは好きでも、多くの人が嫌いと言っていますよ。だから、将来価格が心配」とか、「7~8割の人が好きと言っています。将来も人気は高いでしょ。従って、価格は落ちにくい」などという答えを書くののです。

近所のマンションは何かと都合がいいと思うが、賃貸マンションのようにたやすくは動けない分譲マンションを買ってしまっていいのだろうかと、立ち止まって冷静に考えてみることが大事です。

しかし、新築マンションの販売で用意される、ある意味で「罠にはまる」人は少なくありません。

一方、中古の場合は、新築とは少し様子が違います。無造作に・気楽に他人の家を覗くことができないからです。

新築マンションでは、非現実的なモデルルームの虜になり、売主業者の巧妙な戦術の罠に嵌まってしまう人も少なくないのです。見学はいいが、美しい女優さんかモデルさんのようなモデルルームの虜になってしまう人、言い換えると冷静さを欠く行動に走ってしまう人は少なくないのです。

モデルルームの残像を一旦消して、「本当にこの地で長く住む家を買って良いのだろうか」と考え直してみなければなりません。とはいえ、現実は難しいものです。

●マンションの価値判断。その基準

マンションの価値は、「一に立地、二に立地、三四がなくて五に立地」

と語った先輩がありました。うまいことを言うな、筆者は感じました。その通りとも思いました。そこから、筆者の研究はスタートしました。

しかし、都区内を広く見渡して東のA地区と北のB地区とを比較するケースと、西のC地区内のXマンションとYマンションを比較するようなケースでは判断基準が変わります。立地の良い都心の物件同士の場合でも、何をもって良い立地と考えるべきなのか、その基準は異なるからです。

先輩の某氏は、両方を重ねて発言したはずで、都心と郊外の比較について言うはずがない、「狭いエリア内の比較なら駅に近い方がいいですよ。広く見渡して言うなら、郊外よりは都心がいい」という意味だったのでしょう。

筆者は、毎月数十件のマンション評価作業をしていますが、その仕事を通じて確認できるのは、郊外よりは都心が高い、駅から10分よりは5分が高値になるといった物件価値の差異です。

立地評価の項目は無論それだけではありません。自然環境、公園、学校、買い物便なども当然ですが、隣接建物との関係による眺望・日当たり、道路や列車の走行音の懸念などにも目をやり、依頼マンションの適正価格を調査して行きます。

同一エリア内の比較をしながら「高いか安いか」、「適正価格はいくらか」といった判断になるのですが、同じマンションの中でも1階と10階では価値判断が変わりますし、角部屋か中部屋か、南向きか西向きかといった点も当然必要になります。

室内のチェックも可能な限りしなければなりませんし、リノベーション物件についての価値判断にも努めています。

その調査手法は「不動産鑑定」などとは異なります。言わずもがな、「いくらで売れるか」や「その価格は高過ぎないか」といった観点です。

●避けたい物件・買っていい物件

調査で出す答えは、常に厳しいのではと疑問を提起され、ときに避難されます。依頼者の立場に寄り添いながらも、おもねることをしない筆者は依頼者(お客様)の気分を害することが多いのではないかと推測しています。

ともあれ、対象マンションの評価項目は6種あります。

①立地条件(利便性と環境。マクロ的な人気度)、

②スケール(存在感)、

③外観・玄関・空間デザイン、

④建物プラン(共用施設、間取り、内装や設備など)、

⑤ブランド、

⑥管理体制です。

この中で一番比重が高いのは①の立地条件なのです。立地さえ良ければ建物は何でもいいという単純なものではないのですが、大きな要素であることは確かです。逆に、どんなに素晴らしい建物でも立地条件の弱点を補うことはできません。 

また、稀少価値の高い土地かどうかの観点で検討することも大事です。そして最も大事な要素は「価格」です。価値に見合わない高値で購入(高値掴み)すれば、将来価格は期待外れになるからです。

日々、この観点で物件調査を実施し、かつレポートをお届けするのを生業にする筆者は、「なかなか良い物件だな」と感じるマンションに出会っても、価格が強気過ぎることに驚くことが少なくありません。

価値あるものを適正な価格で購入するのが一番ですが、今は「安い物件は将来価値に疑問符」がつき、「高い価値を持つ物件も、将来の価格は高いものの、期待するほどではない」、という傾向が見られます。

このような実情を見ながら、レポートの最後に付ける一言はこうです。

安い物件ですが、割り安とは言えません。つまり、一見安そうですが、その価値に見合っているだけのことです。安い物件の多くは将来価格に期待が持てないものが多いのです。

「高いかなと思っても、値崩れしない、むしろ値上がりが期待できるマンションです」という答えは滅多にありません。

ともあれ、郊外よりは都心・準都心がいいのですし、郊外都市で選ぶほかない人は、その郊外都市で一番と言える物件を選択するべきなのです。

●広さを割り切る

予算の増額ができない人が、広さを固定して探すと、避けたいエリア(駅から遠いなど)から拾い出したり、避けたい1階住戸を選択したりしがちです。

この罠につかまらないためには、住戸面積を妥協することです。3LDKと短絡的に考えずに、子供部屋は何歳で必要になるかを考え、当面10年(4年生)になったら一部屋は要るのだから夫婦の寝室と合わせて2寝室あれば足りる、二人目の子供が誕生して、もう一部屋が必要になったら、そのときに広い部屋(3LDK)に買い替えればいいのです。

こう割り切ると、選択肢は俄然広がります。そうすれば、

青い鳥を探し続ける長い旅をしなくて済むのです。

●新築にこだわらない

新築マンションしか考えられないとおっしゃる人に時々お会いしますが、昨今は新築にこだわっていたら、良い買い物はできないことを助言するようにしています。

なにせ、新築マンションの供給戸数はひと頃の3分の1に減っているのですから。

スーパーマーケットに行ったと考えてみてください。閉店間際の生鮮食品売り場には、陳列棚から品物は消えて空っぽです。選びたくても品ものがない。新築マンション市場はこれと同じです。

しかし、マンションは陳列棚に並んでいるわけではないので気付かないのです。探している人は、ネットサーフィンしながら、自分の希望を満たす物件はないかと物色しますが、中々巡り合えないでいます。それもそのはず、陳列棚に品物が置いていないのですから。

このことに気付いた人は、並行して中古マンションも探しています。

ところが、中古も良いものがないとこぼします。

陳列棚(SUUMOなどのWEBサイト)長く留まっている物件は、問題物件ばかり、たまに良さそうな物件があっても短時間に消えてなくなるものです。よさそうな物件はほどなくサイトから消えるので、中古探しは難しい、考えられないとまで言う人もあります。

「良い中古は市場に出る前に売れてしまいのではないか」との疑問さえ抱きます。聞いてみると、ごく一部に、市場に出す(SUUMOやHOMESなどのサイトに乗せる)、または大手なら寺社のホームページの物件紹介サイトに載せる前に買い手が付くということもあるようです。しかし、その数は微々たるものです。

中古は、こまめにSUUMOなどをチェックして行くほかないのです。

筆者のご相談者の大半が半年もしないうちに希望条件の物件に辿り着いています。平均は3か月です。一度おためしあれ。

●中古は「プチリフォーム」がお勧め

綺麗な家、設備のいい家に住みたい。日本人共通の願望ですが、特に女性は新築にこだわりが強い感じがします。

中古になると、部屋を見た瞬間に「汚いなあ」と興ざめするのでしょう。そこは見学前から覚悟しておくことが大事かもしれません。

ともあれ、中古はリフォームが不可欠になります。しかし、リノベーションしようなどと大掛かりなことは考えない方がいいでしょう。金額が大き過ぎるからです。度々重なる打ち合わせに時間も取られるし、費やすエネルギーも半端ではありません。

ようやく満足するプランができて工事に入っても、完成したときの失望感が大きいこともとく聞く話です。

PC上で完成イメージを瞬間的に映し出すシステムもありますが、実物とのギャップは小さくありません。お金と時間をかけた割には出来上がりに不満を漏らす人が多いのです。

筆者のお勧めは「プチ・リフォーム」です。

例えば、入居前はガスコンロとトイレだけ新品に交換し、壁紙もトイレの1面だけ、欲張っても玄関ホールの壁にボーダー状の木パネルを張り付ける程度など、最小限に留めることです。

1年経ったら今度は寝室の壁紙を高級感のある布クロスにする、3年目はリビングの一角にミセスカウンターを取り付けるといった、分割リフォームを計画するのです。

程度問題ですが、中古物件にもきれいに使ってきたお宅をときどき見ます。見学するとリフォームが要らないと思える物件も少なくないと聞きます。

しかし、築20年などになると、さすがに部分的なリフォームは必須です。

リクルート社の調査データなどを覗くと、年数に比例して費用がかさむようですが、それを一遍にやってしまうのではなく、発想を替えて購入時は最小限に抑え、後の楽しみに残すことをお勧めします。

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マイホームの楽しみは、賃貸では許されない室内のお化粧や模様替えにもあるはずです。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「対面相談」もご利用ください。お申込みはこちらから(http://www.syuppanservice.com

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