第700回 「高い新築マンション。それでも買うべきか」

このブログは10日おきの更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。

人気マンションとは言うまでもないのですが、「即日完売」を連続させたことや、短期間に大量の戸数を成約させたといった事実で語られるものです。

「連続完売」とか「累計〇〇戸完売」といった広告のコピーも時々目にします。

こうした宣伝文句に誇張はないのでしょうか?誇張はないとしても、そのような好調販売のマンションを「資産価値」という観点でみたとき、将来は期待できるものなのでしょうか?

高値のマンション市場。今どう動くべきか?

●人気マンションの共通点は巧みな販売・広告戦略に負うところが大

  新築の人気マンションは、たくさんの見学者がモデルルーム見たさに集まり、販売センターはごった返します。賑わう販売センターは、商談席が満席状態になり、席が開くまで立ったまま待たせることになります。

  接客担当なのか、展示物の説明専門係なのかは分かりませんが、立ったままの係員が質問に答えてくれます。しばらくして、席が空くとそこに案内され商談へ進む流れとなります。そのとき係員が交替すると、「さっきの人は壁に掲示したパネルや模型類の説明係だったのだ」と気付かされます。

 販売センターは活気に満ち溢れています。熱気に包まれているとも言えます。広告を見て魅力を感じ、詳細を聞きたいと訪れた人たちですから、興味津々、あれもこれもと聞こうとします。

 新築マンションは、現地を見に行ってもマンションはまだ工事中なので、見学者は模型とモデルルームを見て商品をイメージするだけです。

  エントランスやロビー、買いたい部屋からの眺望、広さ、日当たりなどを実感することはできません。

室内の様子もはっきりとは分かりません。モデルルームによって、イメージはできるものの、買いたい部屋と展示してあるモデルルームとの間にギャップがあってイメージしづらいこともあります。日当たり、眺望などもドローンで撮った写真などから想像はできても実際との乖離に後で落胆させられることもあるのです。

販売戦略上、または広告表現上、ある程度の誇張は許されているとはいえ、建物が完成して確認したとき「想像していたのと違った」と落胆している買い手さんも現にあるようです。

無論、その反対に「素敵でした」と感激の面持ちで感想を語る買い手さんも少なくありません。

ともあれ、新築マンションの販売は昔から「モデルルーム」によって完成後のマンションをイメージしてもらいながら販売するのが一般的です。品物を手に取って形や色や大きさ、性能などを確認してから買うのではないのです。

高額商品のクルマでも実物を見て触って、ときに試乗させてもらってから購入を決めますが、分譲マンションの場合は実物の体感なしにパンフレットの図面と完成予想図などだけで購入を決断するのが長年常態化しています。

広告は誇張によって買い手を購買に誘導してはならないと定められており、誇大広告を制限するルールも取り締まり機関も存在します。従って、今日においては誇大広告によるトラブルも少なく、新築マンションの場合は実物を確認しないまま購入することについての大きなトラブルはなく、今日にいたっていると言えます。

とはいえ、広告の機能・役割とは、実際以上に商品の効能・価値を買い手に誤認させようとすることにあります。ウソ偽りは禁止されているものの、ここまでの表現は許されるというルールも設けられています。

最も分かりやすいのは、駅から徒歩で何分かという表現ですが、1分を80メートルで換算すると定められています。また、駅が大きい場合は「何番出口から何分」と表示するのが普通です。

さて、新築マンションで好調な販売状況を短いコピーで表現したいという場合、マンション業者が最も多く使いたがるのは「連続完売」、「1期・2期・3期 連続即日完売」、「第1期500戸完売」などですが、これは事実なのでしょうか?

答えは、半分正しく半分ウソと言っておきましょう。「完売」とは売買契約の締結という意味ではないからです。しかし、それが何であるにせよ、全くでたらめというわけでもありません。

たまに、筆者のところに「騙された。解約したい」という相談が届くことがありますが、数は少ないので、多くの買い手が信じてしまうか、誇張があっても5%か10%程度のことなのだろうと推測できます。

ともあれ、今日の記事で注意を促したいのは、好調完売が本当であっても、その広告に釣られて我を失ってはいけないという点です。

●人気マンションの共通点はインパクトある立地条件を持つ

大型マンションは、付加価値も多く、魅力的な物件であることが多いものです。マンションの価値を判定するとき、筆者は次の6項目に区分して検証しています。

①立地条件(利便性と環境。マクロ的な人気度)、②スケール(存在感)、③外観・玄関・空間デザイン、④建物プラン(共用施設、間取り、内装や設備など)、⑤ブランド、⑥管理体制です。

この中で一番比重が高いのは①の立地条件です。立地さえ良ければ建物は何でもいいという単純なものではないのですが、大きな要素であることは確かです。逆に、どんなに素晴らしい建物でも立地条件の弱点を補うことはできません。 

また、稀少価値の高い土地かどうかの観点で検討することも大事です。

最後に、最も大事な要素は「価格」です。価値に見合わない高値で購入(高値掴み)すれば、将来価格は期待外れになるからです。

ところが、マンション業者は価格を中々開示しません。最多価格帯や最低価格・最高価格は少し経てば広告に表示されますが、初期の段階では「未定」を貫こうとします。買い手が一番に知りたいはずの価格を中々明らかにしないのです。

それはともかくも、部分的な情報公開だけで集客しようとするのは、完売までには長い時間を要することをマンション業者も広告会社も知っているからです。建物が完成したときには建築費を工事会社(ゼネコン)に支払わなければなりません。その金額は10億円を下りません。金融機関からの借り入れという方法もありますが。できれば売り上げ代金を回収して支払いたいと分譲業者は考えます。

金利の安いいまどきのこと、一時的に銀行から借りてゼネコンに工事代金を払う方法もありますが、できれば売り上げ代金を充当したいのがデベロッパーの考え方であり、理想的なビジネスのカタチです。このため、昔から、マンション分譲ビジネスは建築代金を購入者からの最終代金(ローン部分)を充当するというビジネスモデルを定着させたのです。

即日完売を何回か繰り返して建物竣工時に全戸を完売させれば、建築代金の支払いに困ることはありませんし、土地購入費として借りた融資金も銀行に無事返済することができます。少し売れ残りがあっても、銀行への返済もゼネコンへの支払いも問題は起こりませんが、売れ残り多数の場合は面倒です。

多くのマンションデベロッパーは、建物竣工時に全戸完売としたいのです。しかし、竣工時までに完売する目標は簡単ではありません。戸数が少なければ易しいと思う人もありますが、戸数の少ない小型マンションの多くは集客力が低く、僅か50戸であっても竣工時に20戸も売れ残ってしまうといったことがあるのです。

大規模で付加価値も高く、評判になったマンションでも何百戸とあるので、完売までに3年もかかってしまうことすらあるのです。建物完成時まで売り切りたいデベロッパーは、販売期間をたっぷり取って備えたいのが本音です。

何百戸もある大型マンションで、かつ50階建てのタワーマンションであれば、工期が3年もあるので、着工間もなく売り出せば竣工までには完売できるものの、それすらも価格が高ければ竣工時に何割かを売れ残してしまうものです。

マンション購入者は、人口対比で年間に0,3%とか0.4%といった僅かな割合でしか現れません。無論、価格が高くなるほど購入者は減ります。金利の低下などで購買力が一時的に高まり、購入者が増える時期もありますが、10倍に増えたりはしないのです。

人気マンションには、たくさんの買い手が集まるものの、特定のマンションに集まる数には限界があります。買い手の勤務先の場所や家族の勤務先、あるいは通学先の関係などから、条件ぴったりの良いマンションと認める人もありますが、不都合と思う人の数の方が多いのです。

無論、価格が魅力的なレベルであれば、少しは集客エリアを拡大することができますし、広告の返済例を見て、「自分たちでも買えるぞ」と若い世帯を動かして人気になることもありますが、最近の作り手の事情では所得の低い階層を集めるのは殆ど無理と言って過言ではありません。

脱線しましたが、人気のあるマンションの多くは立地条件に優れています。価格が高くても集客力の高いマンショの共通点は「都心か都心一直線の駅の前」にあるのです。好立地のマンションには予算たっぷりの買い手も多く集まるものです。結果的に、比較的短期間で完売に至ります。無論、繰り返しますが買い手の数は世帯数比で見ると僅かです。

●価格高騰の主因は建築費?

ところで、マンション価格の高騰の原因はどこにあるのでしょうか? そんな質問が出て来そうなのでお答えしておきましょう。

人気あるマンションの多くは、大規模で都心立地か近郊の場合でも鉄道の駅に徒歩5分以内と近く、利便性で優れた物件に限られます。

新築マンションの価格は、土地代(用地費)と建築費が2大原価で、この合計が価格の80%に相当します。土地代も建築費も最近7~8年の動向を見ていると、うなぎ上りです。

建築費は、都心だろうと郊外だろうと大差はありませんが、用地費は都心に近いほど高くなっているという印象です。

そのため、多くのデベロッパーは苦悩していると聞きます。建築費が高くなったのは、東日本大震災以降のことですが、復興工事に人手を取られ、関東のマンション建設ができなくなったのです。地方からも人手を集めて対応しているものの、それでも足りず建築費はうなぎ上りだったようです。

最近はようやく落ち着いてきたものの、オリンピック関連工事と各地で災害が続き、その復旧工事が増えて、マンションの建築費は高くなってしまったのです。ときどき、建築資材(鋼材など)がいくらか値下がりしているという報道に触れることもありますが、建築費の45%は労務費(人件費)と言われるだけに、建築費が大きく下がる材料とはなりにくいのです。労務費の上昇が一服したという声もありますが、人手不足は解消されていないために、建築費が値下がりに転じることにはならないようです。

工事はマンションメーカー(デベロッパー)から施工するゼネコンへ発注されますが、マンションメーカーには当然ながら予算があり、その範囲で受注してくれるゼネコンを探します。

普通は「指名入札」方式で、複数のゼネコンを指名して見積もりを依頼します。過去数年間の傾向は、予算内に納まるゼネコンがいなくて当たり前、予算を2割、3割上回る見積もりが普通。そのような状況にあります。

国土強靭化政策によるインフラへの公共投資も急増しているうえ、東京オリンピック関連需要が本格化しているからです。

オリンピックは、国立競技場の建て替えや各種競技の会場建設、老朽化した高速道路の改修をはじめとする道路工事などが、合わせて兆円単位で発生すると言われます。

また、業界人が最も興味を持っているのが、中央区晴海に予定されている選手村の建設です。これは、オリンピック終了後に民間に払い下げられます(正確には土地の売買契約は締結済み)。取得する民間企業は、選手村を住宅に改修して一般に分譲または賃貸することになりますが、建設費は全部で5600戸もの大規模なものだけに、周辺整備費も含めると数千億円にもなると見込まれています。

建設需要はオリンピック開催の直前まで続くことでしょう。来年以降は東日本震災、熊本地震、その他の復興関連も終盤に差し掛かっているはずです。建設業界には一服感が出ていると予想されます。従って、2年先には建築費も低下傾向に転じるかもしれません。そんな意見も見聞きします。

しかし、筆者は高原状態が続く確率の方が高いとも思っています。

●用地費も高い。マンション価格は下がらない?

マンション2大原価のもう一方の土地代はどうなっているのでしょうか?

新聞に発表される地価統計は全般的な傾向を示すもので、東京都心の商業地は前年比でプラス2%であったが、郊外の住宅地はマイナス3%だったなどという僅かな変化にしか見えません。

2019年3月発表の「公示地価」でも、地域格差はあるものの全国的な上昇傾向が明らかになりました。しかし、東京の商業地でも4.7%、住宅地で1.3%の上昇でした。

これらの数値と比較すると、マンション用地の取得額は地価調査の数値とは大きな隔たりがあるのです。前例から20%も30%も高くなった土地取引の実態を一般の人は殆んど知りません。

マンション用地は、ある程度まとまった大きさが必要であり、かつ交通便が良いことや環境が良いことなど、マンション建設にふさわしい条件を具備している必要があります。ところが、そのような土地はそうそう沢山あるわけではありません。

工場や倉庫、社宅、ガソリンスタンド、運動場などが企業のリストラの一環や移転、廃業といった事情で売り出されると、マンションメーカーはこぞって入札に参加します。そして、一番札を入れた企業に高値で売却されます。

マンション市況が良いときは、マンションメーカー各社は土地取得に積極的になります。高い札を入れてでも優良な土地は何とかして確保しようと前向きになるのです。その結果、新聞発表の地価上昇率3%などとは大きく隔たりのある高値取引が成立してしまいます。

先に述べたように、市況が悪化しているため、今後は少し様子が変わってくるかもしれません。しかし、業界が一斉に土地取得を手控える状況に転じる様子は見られません。

一方、土地の需要はマンションデベロッパーだけではなく、例えば都心の商業地などはホテル用地と直接競合し、ホテル業者に競り負けることが多いと聞きます。東京オリンピックに備えてホテル建設ラッシュは続くと見られるので、今後も用地難に業界は悩まされることでしょう。

こうした動向を注視していると、当分の間、安価なマンション用地を取得できる状況にはならないと見るほかありません。

2~3年先でなく10年先までの価格を読むのは簡単ではありませんが、多くの識者が語るように2021年以降はオリンピック投資の反動減によって景気が後退局面に向かうことから、マンション需要も減退し、オリンピック以降は価格調整期に入るかもしれません。

景気対策が新たに取られるなどにより、極端な不況に陥ることはなくても、建築費が下がる可能性も低くないでしょう。

とはいえ、品川駅のリニア新幹線関連工事や山手線「高輪ゲートウエー駅」の開設と関連工事、浜松町駅周辺再開発、東京駅北口・常盤橋再開発、虎ノ門~麻布台開発、「虎ノ門ヒルズ駅」の開設、首都高日本橋地下化工事、渋谷駅周辺再開発工事など、都心の再開発が目白押しに予定されています。五輪後も訪日客の増加が見込まれるのでホテル建設需要も続くに違いありません。

加えて、過去6年財政バランスのために6兆円に抑制してきた規律を破り、2019年度から3年間にわたり、公共工事費を毎年1兆円増やして7兆円に増やすと政府は発表しました。

これらを俯瞰して行くと、建築費の大幅な低下はないと見なければなりません。

用地取得がたやすくなって廉価なマンション用地を各社が次々に仕入れられるようになるとも思えないのです。

●価格下落に期待できるのは中古マンション

新築マンションの売れ行きが悪くなって4年も経った印象ですが、今年は一段と悪化したようです。詳細データは省きますが、毎月の契約率の統計も、売出し戸数のトレンドを見ても市況は最悪に近づいている印象を持っています。

しかしながら、マンション業者は体力のある大手か、中堅ぎ業者親会社に体力がある企業が多いので、売り上げを伸ばすための値引き販売が常態化しているという印象はありません。

多少時間がかかっても、値引き販売を最小限におさえつつ販売促進を図ろうとしているように見えます。

一方、個人の売主が圧倒的である中古マンションは、売れないと困るので売り出してみて反応が悪ければ価格を下げることに柔軟です。ある時期までに買い手が決まらないと困る事情の個人が多いからです。

売れなければ値段を下げるという決断も、法人と異なり早いのです。しかも、価格を下げる余地も十分あります。買ってから10年も経っていないとしても、この間に市場価格はうなぎ上りだったので、下げ余地もたっぷりあるからです。

新築マンションの売出しが少ない。魅力ありそうなマンションも偶に現れるが、価格が高過ぎると知って断念。そう思った人たちが中古に向かい、結果的に中古も高くなってしまった。中古もやがて価格は下落方向に向かうだろう。値動きは新築より早い。ならば、ここは少し模様眺めしながら進むという態度が良さそうだ-――今、筆者は多くの検討者にこう伝えています。

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