第725回 「マンション見学のコツ」

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。

マンション検討に当たっては、「対称的なタイプの両方を見に行くのが大事という話をしたいと思います。

●感動する見学

ご相談者から毎日届く「マンション評価依頼」の対象物件を見て、筆者は「価値あるマンションと残念なマンション、その中間のマンション」といった色分けをするのが無意識の行動パターンになっています。

「高額なマンション」、「平均的な価格のマンション」、「格安なマンション」にも色分けされますが、ご依頼者は各々に物件を「気に入って、または良さそうだな」と感じて「購入を検討する」はずです。

文脈からも、それが伝わって来ます。無論、見学前の段階で評価依頼をくださる人もあるのですが、過半は既に見学を終わっていて、若干の問題点に気付きながらも前向きに検討したいので、念のため意見を聞きたいと連絡下さるのです。

中には、購買意欲が沸騰点に達している人もあります。それでも、「冷徹な第三者の評価を聞いてみよう」という動機があるのでしょう。また、「自分の考えに賛同して欲しい」と願っての依頼と認識できるケースもあります。

極端な人からは、「どうだ、俺が見つけたマンション。選んだマンションはいいだろう」と言わんばかりの添え書きすらあります。

筆者は、購買熱を冷ますような所見を添えてレポートを送ることが多く、ご依頼者はレポートを見て落胆し、ときに怒り心頭に発しているかもしれないなと、気をもみます。

買いたいなと思った物件を前に、「これは止めておいた方がいいでしょう」と批判されて気分のいいはずがないと知りつつ、それでも過去10年余、この姿勢を貫いて来ました。

見学前であろうと、既に見学した物件であろうと「良さそうだ」「良いマンションだ」と前向きな気分に浸っている人に「これはダメだ」とか「高過ぎるから再考した方が良い」などとレポートするのは、今も抵抗を覚えます。

ともあれ、感動する、しないは個人差があるわけで、同じマンションを見て「住みたい」と思う人と、「気に入らないなあ。これはダメだ」と思う人に分かれるのはなぜでしょうか?

一言で表すと「対比効果」が働いているためと考えられます。

対比効果とは、経験に照らして「良い・悪い」を判断することで、安アパートに住んでいる人なら、たいていの分譲マンションは「素敵」と映り、分譲マンションの賃貸住戸に高額な賃料を払って住んでいる人は「高級マンションにも感動しない」といったことです。

●知らないことは幸せなのか?

ある知り合いは言いました。「3LDKに住むのが夢でした。それまで住み替えて来た賃貸アパートは、どれも2DKでしたから」。

また、別の人は言いました。借家でなく自分の家に住みたかったのです」と。

「タワーマンションの上階に住むのが夢でした」と語る人もありました。

そうして選んだ素敵なマンションも、いずれも問題物件であるとき、筆者は言葉を慎重に選ぼうとしますが、その前に、その物件にたどりつた経緯や現在の住まいに関する情報、そして依頼者のプロフィールなどを尋ねます。

それらのやり取りを経て、依頼者の最適な答えは別にあることを添え、依頼物件の評価をレポートするように努めます。

レポートの結論は、「その選択は誤りだ。やめた方がいい」というものが少なくありません。買いたい・欲しいという気分を破壊するような言葉に抵抗を感じながらも、意を決して、ネガティブなレポートをするのは筆者自身にも勇気の要る行為です。

しかしながら、筆者に相談(物件評価依頼)をしなかったら、問題物件を買い、何年か後に臍(ほぞ)をかむことになった確率が高かったはずですから、筆者は失敗者を救うことに役立ったのだと信じます。

一生、そのマンションに住み続けるのであれば、他人が何を言おうと、選択は自己責任なのですし、将来の価値、すなわち売却価値を念頭に置く必要はないかもしれません。

筆者に「評価依頼」を頼む人は、「・・・の問題があるが、買っても大丈夫か」などと事由を添えて来ます。言い方を換えると「・・・という心配がある。損はないか」や「長く住むつもりだが、選んで問題ない物件か」といった評価依頼の事情や背景を添えて来ます。つまり、資産価値、将来の転売額などについて不安を覚えていると推察できるのです。

筆者は、ブログ上で具体のマンションについて論評することは避けていますが、個別の評価依頼に関しては、依頼者の意図を推し量りつつも、「冷徹な所見」を書いてお届けしています。

依頼者はマンションに関する基礎知識は、どの程度お持ちだろうかとおもんばかりながら、レポートしますが、それでも配慮が足りなかったと、ときおり反省させられます。

言葉を選び、平易な表現に努めていても、依頼者にとっては理解しがたいこともあるらしいからです。世の中には「知りたくなかった」と思わせる事象も少なくないのでしょうか。

そんなことを反芻しつつ、「マンション評価レポート」をお届けして10年以上の時間が経過しました。

●数をこなせばいいというものではない;マンション見学のコツ~

住宅を探すとき、最終決定までに何十か所も見学してようやく決める人がある一方、1件か2件見ただけで、あっさり決めてしまう人がいます。熟慮型と衝動型とでも言えばよいでしょうか、それぞれに功罪があるようですが、ここではタイミングよく効率的に、できるだけ理想の住まいに到達するための方法を伝授しましょう。

様々な住宅を見て回ることは、知識を深め、目を肥やすことに役立ちます。しかし、毎週休みの度に見て回るというのは、忙しい人ほど現実的ではないですね。これはという住まいが見つからなくて疲労してしまうこともありますし、購買意欲が薄れてしまうこともあるようです。

また、手が届かないモデルルーム、モデルハウスばかり見過ぎて、理想の住まいが残像となって邪魔し、現実的な段階になると決断が鈍るという人もあります。

そこで、「希望しない反対のタイプも見ること」をお勧めしたいと思います。例えばこうです。

①新築と中古の双方を見る

②タワーマンションと中高層マンションを見学する

③場所を変えて見学する

・・・「住めば都」と言われるように、知らない街でも住んでみると意外に馴染む街になることがあります。また、先入観から敬遠して来た場所も、現地に行ってみると意外な良さに気付くこともあります。

家探しは、住み慣れた場所から近い所で選択しようとする傾向がありますが、視点を変えてみたら、気に入るエリア・沿線が見つかることもあるのです。

④一戸建て・マンション・新築・中古の複数種を見学

・・・近頃は、マンション価格で買える建売住宅も登場しています。豪華な造りではないものの、割り切ってマンションから建売住宅に方針変更する人も多いそうです。

また、新築マンションの供給が大幅に減少した最近、マンションを欲しくても買いたいものがないということから、中古マンションへ流れる買い手も増えつつあると聞きます。今まで考えて来なかった対象も最初から検討してみてはいかがでしょうか。きっと、見えなかったメリットや美点を発見できるかもしれません。

⑤タイプの違うものを比較

・・・マンションなら、小規模タイプや大規模タイプがありますし、低層と中高層、超高層もあります。一戸建てなら大規模開発のニュータウン物件とミニ開発と呼ばれる10棟くらいまでの小規模団地があります。

小規模マンションは、住宅街にひっそりと建ち、何となく落ち着いた暮らしを連想させるでしょうし、大規模マンションなら敷地内に公園・庭園があり、建物内部には様々な共用施設が用意され、また、コンシェルジュを置いて入居者サービスに当たるなどの付加価値もあることでしょう。

一戸建ての場合は、最寄り駅までの距離や勤務先まで遠いことに落胆するかもしれません。その反面、自然環境に恵まれた場所かもしれません。また、庭が広いことや駐車場の使用料、管理費がいらないことを喜ぶ結果になるかもしれません。

⑥近くのライバル同士を見学

これは、新築物件の場合ですが、同じエリアのライバル同士、類似物件を見学することも理解を早めることに役立ちます。ライバル同士は、相手を意識して自社の長所をアピールしますから、それによって互いの欠点が見えて来ます。

それぞれの長所、短所が価格にどう影響しているかも理解できるはずです。

⑦マンションなら完成済みと未完成物件を比較

・・・マンションの工事が完成していれば、購入したい部屋を確認することができます。すなわち、眺望や日当たり、道路騒音などを実際に確かめることが可能ということです。

未完成マンションは、設備・仕様をモデルルームで確認することはできますが、眺望もドローンを使って撮影した映像である程度は分かりますが、日当たりは想像するしかないわけです。その代わり、未完成マンションでは、オプションを付けたり、間仕切りの変更をする、収納スペースを拡大するといった、自分好みを採り入れることも可能です。

●蛇足;同種のマンションばかりを見てはいけない

以上に述べたような比較をすることで、やみくもに見学してしまうような遠回りを避けることができるでしょう。あえて検討対象外のものを見ることで、結果的に無駄な動きをしなくてすむということかもしれません。

「急がば回れ」ですね。

多くの検討者は、予算を組み、その範囲で候補物件を探し、「彼方立てれば此方が立たぬ」という経験を持っています。

少しでも理想の家・マンションを、できるだけ価値あるものを安く買いたいという姿勢は間違いではありませんが、「青い鳥を探して行きつ戻りつ」という人を少なからず知る筆者は、敢えて希望しないものも見てみることをお勧めします。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談のお申込みはこちらから(http://www.syuppanservice.com

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第三者の公平な目でマンションを評価する「マンション評価レポート」

※ご検討中マンションの価値を客観的に評価し、適正価格かどうかの判定を含めてレポートにし、短時間でお届けしています。「将来価格の予測レポート」は「評価レポート」より1日遅れとなります。

 

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紀伊国屋書店(新宿)にて撮影

三井健太著「マンション大全」

全326ページ・定価:1800円+税。朝日新聞出版より。