第736回 「マンション選び・失敗事例に学ぶ」

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。

マンション探しの流れをそうぞうしてみると・・・・・ネットで良さそうな物件を探しては、仲介業者に連絡して現地見学に行くというマンション検討の流れが普通です。しかしながら、無駄な見学を繰り返している人が多いのが実態・・・筆者にはそう映っています。

そのうちに気に入った物件にたどり着けば、それで目的を果たせるわけですから、何も問題はないとも言えるのですが、多くの検討者が無駄を繰り返していることが気になります。他人のおせっかい焼きと言われれば、それまでのことではるものの、つい口をはさみたくなってしまう性分なのかもしれません。

ともあれ、今日はマンション探しの手順を考えつつ、基本的な問題についておさらいをしていこうと思います。

●現地見学に走る前に

マンションに住んだことがない人は、広い東京といえども殆どいないのではないかと思いますが、それでも、子供のときは一戸建て住まいだったし、家を出てからも会社の独身寮が長かった、結婚してからも狭い賃貸マンションなので、分譲マンションはどの程度のものか分からないという人がいるのも事実です。

・・・・・このため、「どんなものか一度見学してみよう。勉強のために」と動く人がいるのでしょう。

それはそれで悪くないのですが、「買う気のない物件の見学には注意が必要です」と筆者は言いたいのです。闇雲に見学へ出かける前に、この記事を参考にしていただければ幸いと思います。

後悔先に立たずと言いますが、慎重に検討したつもりでも「しまった」となることがあります。

 マンション購入は、大きな買い物であるとともに、気に入らないからといって直ちに交換することができるわけでもありません。売買契約をしても、引き渡し前なら解約も可能ですが、入居後時間が経ってからでは手遅れになりかねません。

 「しまった」にならないためにも、先輩購入者の失敗に学ぶことは有効です。

 以下に「失敗の具体例」を紹介しましょう。

●住戸選定に関して

 ※どうせ買うなら広い方をと選択した80㎡の我が家だが、50㎡台の賃貸マンションから引っ越して来た当初の「広々感」が、5年も経たない今、家財で一杯。 荷物は増えるものらしい。こうなるなら70㎡でも同じことだったかも。 今は無理して予算を増やし、毎月のローン返済の負担を後悔中。

 ※両親を呼ぶときに客間用の和室は有効と思ったが、両親は3年に1回しか来ない。 今は物置になってしまった。新築時チョイスの権利があったのだから、洋室に改造して 書斎にしておけばよかった。

 ※収納スペースが足りないため家具を購入。部屋が狭くなってがっかり。

 ※収納箇所が多いところを気に入って買ったが、それぞれが小さいため、分散して収納することになり、何をどこに入れたか分からなくなったものが多い

※体重100キロを越える主人の悩みはトイレ。かがむときにドアに頭をぶつけるのです。 広いトイレを望んだが、億ションクラスにしか存在しないことが分かり、契約後に 改造することに。工事中の契約なので改造費はただかと思っていたら15万円も請求されてショック。

 ※洋室がウォークインクローゼット付きで7畳もあるのに感激して購入したが、細長いためにダブルベッドの置き方が限られた。実際に置いてみると、壁に押し付ける必要があり、壁側に寝る妻は、足元から這ってベッドによじ登る形に。 不満たらたらの妻。ベッドは両脇が空くように置けないと不便と気付いたが手遅れだった。

 ※最上階を購入したが、バルコニーに出るのに50センチの段差があるため、またぐのが煩わしい。購入するとき図面の表示に気付かなかった。

●遮音性の問題に関して

 ※音の心配がなくていいと最上階を購入したが、横から音が漏れて来るのが意外だった。

 ※子供が飛び跳ねるので、下が玄関ホールの2階を購入したが、自動ドアの音が漏れて来て寝られない。

 ※「床の厚みが30センチもあるのはウチだけです」という説明に、「それなら遮音性能も高いだろう」と思い込んで購入。しかし、実際はそうでもなくて ショックが大きい。

30cmの厚さは別の理由で必要な寸法であったらしく、遮音のために厚くしたわけでないことが分かったものの後の祭り。

 ※多彩な間取りが売りのマンションを買ったが、住んでみたら、寝室の上が上階のリビングで音が気になる

●採光と通風に関して

 ※玄関側の洋室は窓があるから大丈夫と思っていたが、想像以上に暗かった。昼間でも電灯が必要になる。

 ※共稼ぎだから日中は誰もいないし、東向きでも構わないと思ったが、たまの休日にも遅い目覚めが許されないのは全くの計算違いだった。早く洗濯物を干さないと日がすぐ陰るのだから。おまけに夏は朝から暑い。営業マンは「心地よいお目覚めが楽しめます」などと言っていたのに。

 ※家を買うなら絶対南向きと決めていたが、北側の部屋は永遠に日が入らないことが分かった。西南向きがいいらしいと知ったときは手遅れだった。

 ※学校が夏休みになると、中学生の娘は1日中エアコンを回して部屋にいます。風通しがよいと信じて14階を購入したのですが、バルコニー側だけ開けても、反対側の窓を開けなければ風は通りません。娘に窓を開けろと言うのですが、廊下を通る人の気配がいやだと拒むのです。電気代が嵩んで困っています。

※50万円の差を嫌い、3階をやめて2階を購入。日当たりは問題ないが、目の前に一軒家が建っていて屋根がうっとうしい。3階だったら抜けるのに。50万円増えても毎月のローン返済額にしたらいくらでもなかったのだ。

●光熱費の問題

 エコマンションと聞いていたのに、毎月のランニングコストが予想以上に高い。広い家、暗い個室、便利だからつい使ってしまう浴室の暖房乾燥機と食器洗い乾燥機。

前の家ではなかった機能がたくさんあるせいでこうなると気付いたが、思惑違いだった

●セキュリティの不安

 ※2階住戸を購入。敷地境界ギリギリにベランダが来る位置に建っている。境界線に沿って植えられた樹木が成長し、木に登って泥棒が来ないかと心配している。

 ※未完成マンションを契約したが、内覧会でびっくり。裏のビルの通路からマンション側まで僅か2メートルしかすき間のない箇所がある。板を渡せば簡単に乗り移れそう。 これでは共用玄関の出入りを厳重にしても意味がない。

「商業地域だから仕方ない」って、そんな説明にあきれて絶句した。

●壁構造の問題

 乾式壁工法の意味を知らずに超高層マンションを購入。地方都市で大地震が来て、家具の固定を検討したが、それができないと分かってがっかり。

乾式壁とは、要するにお隣との壁がコンクリートでなく、石膏ボードだったということ。遮音性は低くないらしいが、そんな問題が潜んでいるとは知らず落胆。

●エレベーターの不便

 ※エレベーターの数が少ないため、ラッシュアワーには5分も待たされる。忙しい朝に 忘れ物をしたときなど、取りに行く時間がない。タワーマンションは台数が問題かも。

 ※震災でエレベーターが停まり、21階まで何度も階段で往復することに。 タワーマンションの盲点だった。幸い、電機は3日で復旧したものの・・・・

●立地条件や環境変化の問題

 ※マンションを買ったら子宝に恵まれた。しかし、子供が6歳になったときに「まさか」の問題にぶつかることに。 問題とは、学校までとても遠いことであった。しかも、大きな国道の横断歩道を渡る必要があった。歩道橋はあるが遠回りのため、最短コースの信号付き横断歩道を利用するのだが、事故が心配と悩む日々。学校なんて、どこに住んでも近くにあるものというのは、大きな誤解であった。

 ※前面道路は広くないのに、クルマの交通量が意外に多いのにびっくり。幹線道路の渋滞を避ける抜け道だった。モデルルーム見学の日は日曜日だったので、たまたま少なかったらしい。

 ※前面道路の交通量が多いのは分かっていたが、営業担当が「ペアガラスだから大丈夫です」と言うので購入したが、思ったよりうるさい。その後、ペアガラスは遮音性能には無関係と分かった。

 ※大型スーパーが近隣にオープン。便利になったが、クルマが増えて周辺道路の渋滞を引き起こす。外出もままならないことがある。

 ※駅から徒歩2分と近いのが気に入って購入。ところが、徒歩10分ほどのところにある競艇場に向かって、ぞろぞろと歩く人の波にびっくり。毎週のように開催される競艇。 娘は怖がって外に出たがらない。

 ※高速道路からできるだけ遠い位置の部屋と思って上層階を買ったが、うるさいのでびっくり。音は上に向かうものらしい。

 ※南側が一戸建ての密集地。古い家が多いので最初から少し心配ではあったが、5年後再開発でマンションが建つことになった。7階建が建つらしい。5階の我が家も影響を受けることになりそうだ。

 ※7年前に買った郊外マンション、半額以下で売りに出してもなかなか買い手がつかず、苦労している。やっぱり、少し狭かったけど駅前マンションを選んでおけばよかった。

 ※最寄り駅までは徒歩15分と距離があるのは気になったが、すぐ側に大型スーパーをはじめ、生活利便施設のほとんどが揃っていて便利なので、それが気に入って購入。しかし、雨の日の徒歩15分は辛い。梅雨どきはうんざりする。バスもあるが、交通渋滞で悩まされることが多い

 ※郊外の空気の良い場所にと選んだマンション。契約後、風向きによって、養鶏場と養豚場のにおいがすごいことを知った。購入前に知っていたら絶対買わなかった。

 ※35階の超高層マンションを購入。18階の我が家からの景色はなかなかのものと秘かな自慢だったが、最近新しく建った新築ビルのおかげで景色が一部変わってしまった。眺望が魅力の超高層マンション。その眺望が悪くなったら資産価値も落ちるのだろうね。

●中古マンションの場合

 ※中古マンションを買ったばかり。でも、トイレの中が何故か朝だけくさい。 ベランダは水を流すと下の階にもれる。新築だったら売主業者に文句も言えるのに。やっぱり新築にすればよかったと何度も後悔。

 ※築25年の中古マンションを購入。大手の施工であったし、管理もよく行き届いている印象だったので安心して購入。ところが、1年後の管理組合総会で機械駐車をやめる(撤去する)か、費用を臨時徴収して機械を交換するかという議論が持ち上がってびっくり。

 ※築30年のマンションを相場よりも格安で購入。悦に入っていたが、東日本大震災で損傷。 駐車場のピロティがいけなかったと説明を受けたが、いまさらそんなこと言われてもと悔やむ。 

修復工事と耐震補強工事を併せて実施する話になっていて、その費用が積立金と自治体の補助金では足らないため、銀行から借りるのだという。 でも、返済のための管理費値上げが我が家にはずしりと重い。

●マンションの管理に関して

 ※管理会社がいい加減だったのか?いままでの理事が怠慢だったのか? 私が理事を引き受けたときには、管理費等の未集金が1千万円に達していた。 こんな高額になるまで放っておいたなんて、これからどうしたものか、管理会社とも話し合っているのだが・・・

 ※必要な費用だとは分かっているが、管理費+修繕積立金+駐車場料金+自転車置場使用料を合計すると、毎月大変。 しかも来月から値上がりする。 もったいない。修繕積立金は別として、その他の「費用」は一戸建てでは不要だから。 これらは住んでいる間ずっと支払わなければいけないのかと思うと気が重い。

 ※キッズルームにスパ、豪華な共用施設に惹かれて買ったが、使わない割に管理費や 修繕費がかさむ。庭の噴水も勿体ないからと管理組合で決議し、水を止めてしまった

※駐車場の問題・・・機械式駐車場はトラブルが多くて時間がかかる。維持費も高い。耐用年数は短く、 あと15年で交換と聞いて頭が痛い。平面駐車場を選べばよかった

 ※敷地内駐車場が、必要としている居住者の半分もない。隣地で借りていた駐車場がなくなり、今、管理組合は大もめにもめている

●その他の注意事項

 ※繁華街に近いマンション。投資用に買った人が多いせいか、いろいろな人が出入りする。高級マンションと思っていたが、その割には雰囲気が良くない。

 ※マンション買ったけど一戸建てに買い替えたいと査定してもらった。 だが、売れても売値がローンの残金より下回るため借金が残るという。 もっと頭金を貯めてから購入すればよかったのだろうか?

●建売住宅を検討している人へ

 ※3階建ては階段の昇り降りが思った以上にキツイ。年をとったらと思うと気が重い

 ※隣家との間が狭くて音が筒抜け。夫婦げんかもできない。おまけに、人ひとりが入る隙間もないので、外壁のメンテナンスもできない。

 ※大雨の時、駐車場が浸水して大変だった

 ※「残り2棟ですよ」と業者にせかされて、十分調べもせずに契約してしまったが、あとから近所にもっと良い物件が発売されてショック。「残り〇棟」は常套句だったと知った。

 ※3階建ての100㎡。階段や廊下にスペースを取られて実質80㎡くらいの感じだ

 ※管理費も駐車料も要らないから得だと思ったが、10年経った頃から不具合が続出して大あわて。修繕積立金は一戸建てでも必要と思った

●最後に「後悔しないための方策は?」

 ここに紹介した後悔事例は、ほんの一握りかもしれません。ここまで、失敗しないための方策を考えてきましたが、絶対的な答えはないようです。しかし、次善の策としては次の二つが挙げられるでしょう。

 ①冷静な第三者に意見を聞くこと

 但し、相談する相手を間違うととんでもないことになります。無責任な第三者の意見、悪意や無責任の極みとも言えるネットのクチコミ掲示板の意見などを鵜呑みにはできません。

 また、似非(えせ)専門家も世間では大勢闊歩しています。銀行員や司法書士は不動産の専門家ではありません。仲介業者は新築マンションには疎いものです。建築家も設計上のことは専門でも、不動産価値の判断基準を持っているわけではありません。また、超高層マンションの設計をしたことのない建築士に超高層マンションのことがどこまで分かるでしょうか? 

 いろいろな人の意見を聞くのもいいですが、知ったかぶりの意見や、ピントのずれた 意見は混乱を招きます。

  ともあれ、最後は自分の責任です。売り手責任もありますが、買い手責任ということもあるのです。

 ②上記の事例をチェックリストにすること

 では、どのように自衛したらいいのでしょうか?答えは、上に連記した他人の失敗例を記憶しておくことですね。PC上のどこかにこの記事へのアクセスコードか、記事のコピーを保存しておくのがお薦めです

③三井健太の「ショートコメントサービス」もお役に立つでしょう。

※詳細はホームページで・・・(http://www.syuppanservice.com

・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談のお申込みはこちらからhttp://www.syuppanservice.com

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