第731回 「マンションの資産価値って何?」



このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。

資産価値とは何でしょうか?そう聞かれた筆者は、直ちに「分かりやすく言えば、いくらで売却できるかということです」と答えます。

売却価格をリセールルバリュー(Resale Value)と言います。マンションの場合、建物が完成した、その時から老朽化の道をゆっくり歩み始め、徐々に建築物としての価値は減価する運命にあります。

しかし、その一方で、立っている位置(場所)が価値を高めてくれることがあります。地価の上昇ですね。

 

地価は、需要があって高まります。出店したい店舗が少ない、事務所を構えたい企業が少ないといった場所は、人口の流入が流出を下回っていたり、老齢化が進んでいたりして活気のない街である場合が多いと考えられます。このような場所の地価は、下落して行きます。

そのような街では、中古マンションも、売却価格が下がらざるを得ないのです。

マンションの場合も、リセールバリューは「需給バランスで決まる」ということです。人が集まる場所であることが、資産価値の落ちにくいマンション選びのポイントです。

 

中古になっても買い値を上回る価格で売却されるマンションが現実に存在します。東京に多く、残念ながら地方都市には殆ど見られません。東京圏でも、郊外になると値上がりしているものは少ないようです。

 

永住のつもりで購入しても、住み替える可能性があります。そのとき、少しでも高く売りたいと考えるのが人情というものです。

値上がりするマンション、または値下がりの小さいマンションの条件を考えてみましょう。

 

(1)中古マンションの価値は街・駅で決まる

マンションの価値を決めるのは、何と言っても立地条件です。人が集まる地域にあることが一番の条件です。立地条件が良いとは、具体的にはどういうことでしょうか?

 

①地域一番の立地条件かどうか:地方都市に行くと、鉄道の駅に近いことが必ずしも地域一番というわけではありませんが、買い物や病院、学校、役所などに「便利な場所」や、高級住宅街などであることが条件になるでしょう。

大都市圏は、鉄道の駅、しかも「ターミナル駅」か「ターミナル駅に近い駅」が条件です。駅から徒歩5分が目安となります。

 

②住みたい街・沿線ランキング上位のエリアにある:ネットで検索すれば直ぐにヒットします。ランキング下位、ランキング外の街・沿線は極力避けましょう。

 

③再開発地域:周辺一帯開発の効用は大きく、必ずと言って過言でないほど、人気が上がります。

 

④供給稀少地域:物件供給が少ない高級住宅地。周辺の街並みが整然として緑も多く美しい。こうした街は、再開発の余地が少なく、マンション供給は滅多にないものです。つまり、とても稀少価値が高いということになります。中古の売り物も少ないのです。

 

⑤都心にアクセスが良い:ビジネスの中心地に便利な場所であることも条件です。

 

――以上の5点が、立地条件の良さを示すものとなります。

 

交通が便利になったり、街の利便性や洗練性が向上したりすることで、そこに建つマンションの価値は高まります。

 

東京カンテイ社が調査しているマンション市場データのひとつに、リセールバリューと称するものがあります。

リセールバリューとは、新築時の価格と10年後の現在価格を比較したもので、10年前の新築時価格を100とし、現在価格(流通価格)がいくらになっているかを首都圏の駅ごとに算出しています。

 

また、東京カンテイ社の同種のデータは、複数の雑誌でたびたび使われていますが、そのデータを注意深く見て感じることは、以下のような点です。

 

※マンションの資産価値を左右する場所の要素※

①郊外よりは都心が値下がりしにくい(東京23区内が一番)

②駅から5分以内が最も値下がりしにくい

③駅前再開発で、大型SCがオープンしたり、街並みが整備されたりしても、その後の発展が伸び悩むと、あまり良い値をつけない場合がある

④新線・新駅の開通や延伸などがあっても、期待した以上の発展が続かない駅では、リセールバリューも下がることがある。

⑤どんなに人気の高い駅でも、開発ラッシュで新規供給が多い時期にぶつかると、中古の人気が低下し、一時的に値下がりすることもある。つまり、稀少性がなくなっているタイミングで影響を受けることがあるということになる。

⑥新しい街より、30年以上の歴史があり、成熟した街並みや集客装置となる商業施設が多数あるなど、人気を維持している街・駅の方が当たり外れは少ない。

⑦人気沿線・人気駅・人気エリアというのがいつの時代もあるが、変動もある。「廃れた街」、「発展途上の街」、「安定した人気を集める街」と区分して、10年後どうなっているかを見抜く目が必要になる。

 

(2)立地条件を最優先に選択しましょう

マンションの価格には、随分と地域格差があるものです。新築価格を例に説明しましょう。

同じ23区内でも大きく異なり、例えば区別平均を比較すると、最高は港区や千代田区などですが、都心に近い割には安いと人気の高い江東区は上から10番目くらいで、港区とは大きな開きがあります。最下位23番の区になると、どれだけ安いか何となく想像していただけることでしょう。

 

また、駅別に見ると「六本木」、「渋谷」、「広尾」などが坪単価で@万円もしますが、人気の「豊洲」はおよそ半分の@万円と格安です。

東京市部では、「国立駅」が@220万円、「府中駅」@211万円、神奈川県に目を向けると「横浜駅」や「日吉駅」は@220万円、「大船駅」や「茅ヶ崎駅」が@160万円、埼玉県では「大宮駅」が横浜駅と同じ@220万円、千葉県では「船橋駅」が@200万円ですが、「柏駅」は@150万円といった具合に大きな差があるのです。

(以上は、過去5年間の平均)

 

このような差はどうして生まれるのでしょうか? 様々な理由・原因がありますが、簡単に言ってしまえば 「住みたい街としての人気度」 と 「商業集積度」から生まれるのです。

環境がどれほど良くても、通勤に不便な場所は人気が高まりません。また、新しい鉄道が完成し、都心へのアクセスが飛躍的に向上しても、駅周辺にスーパーが1軒できたというだけでは住まいの魅力は乏しいはずです。

通勤と買い物や飲食などの生活利便性が高いこと、更に暮らしを彩る各種施設が豊富に揃っていることが人気になる重要なポイントです。

 

人口が多い場所や、乗降客の多い鉄道のターミナル駅周辺には、魅力あふれる商業・娯楽施設が集まっています。金融サービスや教育産業、飲食業も多数あります。

これらが豊富に集まるエリアほど人が集まり、人が集まるから新たな施設やリニューアルされた施設が次々にできるのです。

 

東京に限らず、都心には職場(企業)があり、買い物施設、娯楽施設、飲食店があり、優れた教育機関が豊富に揃っています。そのうえ、意外なことに都心は公園や公共施設の自然環境も良く、足りないものはないと言って過言でないほど何でも揃っています。

それゆえに、都心の住宅は価値が高く、郊外は安いのです。

 

東京と他の都市では規模の大小や距離感が違うだけで、都心と郊外の住宅価格の差は同様です。上述のことが要因になって生まれるのです。

 

マンションの価値を決めるのは、その立地条件です。これに異論のある人は少ないでしょう。改めて言うと、立地条件が良いとは、交通便が良い、生活利便施設が揃っている、そばに公園などがあって緑地が豊富、といったことですが、その中でも交通便の良さが一番です。

 

最寄り駅から離れた場所でも、大型ショッピングセンターがあり、銀行や役場の出張所など出先機関も揃っていて、便利に思われる場所が稀にありますが、残念なことに、こうした場所は主婦には受けても通勤に不便なため、働き手には不評です。

 

また、駅に近くて買い物にも便利、おまけに、すぐそばには大きな自然公園が広がり、最高の立地条件だと売り手が自賛する場所もありますが、都心からはやや遠いという短所を抱えた物件もあります。

 

都心へのアクセスも良く、最寄り駅にも徒歩5分と近い、且つ、買い物ほかの施設もすべて揃っているマンションとなれば、ファミリー向けなら「億ション」になってしまうかもしれません。

そこで、都心に比較的アクセスの良い地域で探そうとすると、最寄り駅までは近いけれども、そこからバスに乗らなければならないとか、歩けるとしても10分以上かかるといった物件を検討することになるのでしょう。

 

こうした物件は、自然環境に恵まれていたり、大型ショッピングセンターがそばにあったりと、交通便の悪さを補う要素があり、購入判断を迷わせるものです。

しかし、交通便の悪い物件は、他の要素がどれほど良くても避けるべきなのです

 

通勤便が悪いマンションは、子供が高校進学などの年齢になったとき、今度は通学便の悪さを知ることになります。

 

このようなマンションは大規模で、比較的安く分譲するため人気になることもありますが、それも最初のうちだけで、完売までには、とても長い時間がかかっています。大幅な値下げをしても中々売れず、竣工後1年以上を要して、やっと完売。これが現実です。これは何を物語るのでしょうか?

 

そうです。やはり、交通便はとても重要な選択条件だからです。通勤・通学に不便なマンションは、やがて仕事を持たない高齢者ばかりのマンションになってしまいます。

このようなマンションは、中古として流通市場に出したときも、買い手を探すのに苦労することになるのです。

 

最寄り駅から近く、都心へのアクセスも良いという物件を探していくと、今度は広さが不満ということになるかもしれません。

そのときは、もう少し足を延ばすのです。そして、駅近の物件を選ぶことです。遠くまで行って、更にバス、歩けても10分以上かかる、などという物件は、たとえどんなに安くても選ばない方が賢明です。

 

都心へのアクセスの良さが同じ程度でも、人気の高い鉄道沿線とそうでない沿線があります。既述のように、高級住宅地が多いとか、おしゃれな街がいくつか点在している、周辺に自然が多く残っている、駅や駅周辺が綺麗、有名人が多く住んでいるといったようなことが背景にあるためです。

 

複数の調査機関がときどき公開する「住みたい街のランキング」があります。インターネットでも分かりますが、そうしたランキングの下位沿線・地域は避けるようにした方がいいのです。

下位にランクされる沿線は、たとえ価格が安くても、逆に言えば安いことが不人気であることを証明しているわけですから、手を出さないようにしたいものです。

 

(3)駅から遠い・近いは、何分が基準か?

マンションは立地条件がとても重要だと述べて来ました。

立地条件とは、都心へのアクセスがどうかや、最寄り駅までの距離、住環境などを指しますが、このうち、最寄り駅に近いことは最も重要なポイントとして挙げられます。最寄り駅に近いほど便利であるし、値打ちが高いから、どうせ買うなら駅近がいいと、誰もが考えるためです。

 

では、近いというのはどのくらいを指すのでしょうか?3分や5分は差がないと考えていいのでしょうか?10分ならどうなのでしょうか?

 

駅の改札口から80メートル以内は徒歩1分という表示になるのですが、1分までの物件は、近過ぎて電車騒音の問題がある物も含まれるため、平均値は2~6分より幾分低いという結果になるようですが、専用デッキで駅に直結しているようなものや、地下鉄の改札口と地下通路でつながっているなど、傘なしで玄関まで辿りつけるもの、それこそ「へばりつき」のマンションは、やはり値打ちが高いと言ってよいと思います。

 

バブル期のマンションは、駅から遠いものばかりでした。駅近の土地は一般法人が次々に買収して抱え込んだため、マンション業者は土地を購入できなかったのです。

当時は、駅から10分というと、「ほう、近いですねえ」と感心したものです。

 

最近はすっかり様相が変わり、むしろ駅前マンションが珍しくありません。

駅から遠い物件は販売しづらいので、マンション業者も極力近いものを開発しようとしています。その結果、3分、5分は当たり前になりました。7分、8分となると、ちょっぴり遠いという感じすらします。

 

マンション購入を検討している人の中には、この点に鈍感な人がいるようで、「徒歩10分」を近いと思っている人が結構目立ちます。

遠くても7分以内、できたら5分を目安に選定しましょう。将来、何かの事情で売却するときがくるでしょうから、そのときに「駅近」は絶好のセールスポイントになります。

10分ではインパクトが弱いのです。3分、4分と表示することができたら大いに強みになる。このことを覚えておきましょう。

 

例外的に、駅から少々遠くても(10分前後が限度ですが)、買って大丈夫というマンションがあります。

マンションの値打ちは、立地条件が一番で、次に建物の規模や外観と空間デザインなどのプランニング、更には維持管理体制などで決まってきます。

 

立地条件も、単純に駅に近いか遠いかだけで評価されるわけではありません。自然環境(公園や緑の多さなど)も影響してきます。

駅から徒歩10分と、やや遠いけれども、それに代わる大きな魅力があるならば、それでマイナスは相殺される可能性があります。

 

たとえば、東京ドーム1個分もある大きな公園に面しているとか、マンション自体が大型開発であって、敷地内に豊富に植栽が施され、建築後何年かしたら、まるで公園の中にマンションが建っている印象になる、あるいは駅前が公園になっていて、その公園を抜けた先に大型スーパー中心の商業施設が整備され、その先にマンションがあるといったロケーションは「やや遠い(徒歩圏)」というマイナスを埋めてくれるのです。

オーシャンビュー、リバービューが優れている、駅からのアプローチ道路がまっすぐのケヤキ並木などで美しいなども「遠い」を帳消しにしてくれます。

(4)「管理状態」が価値を決める

立地条件が良いこと、言い換えれば、人気のある街・駅に建つマンションであることがリセールバリューを高める条件の一番ですが、もちろん個々のマンションが持つ建物としての価値も軽視できません。

老朽化するのは建物の宿命ですが、それを遅くする、若しくは改修工事によって新築に近づけることは可能です。それが「管理」という概念で、「マンションは管理を買え」などという格言があるほど重要な要素になっています。

 

では、管理の良いマンションと良くないマンションをどのように見分けるのでしょうか?

新築の場合は管理が始まってみないと分からないとも言えますが、ある程度は推測することができます。

 

管理費の額、修繕費の額、戸数、管理人の駐在時間や管理会社の経験などから、総合的に判断するのですが、少なくとも、金額が安いもの、管理人が常勤しないマンションは目配りが足らないために管理状態が悪くなって、値打ちが下がると思って間違いありません。

戸数が少ないと管理費が高くなるため、大抵は巡回管理になってしまいます。これは、避けたい条件です。ちなみに、戸数が少ない高級マンションは毎月10万円もするような高額管理費を設定しても、管理人を常勤としているものです。

 

マンションは古くなれば、建物としての価値は当然落ちていきます。しかし、敷地内の植栽が見事に育ち、景観が優れたものに変わることで、新たな価値を加えることがあります。

このように、建物の劣化を補ってお釣りが来るような要素があれば、マンションのトータル価値は上がるのです。

 

また、建物の老朽化を遅らせることも条件です。管理とは日常の点検業務や清掃業務だけではありません。「長期修繕計画」に基づき、屋上の防水は何年ごと、エレベーターや駐車設備は何年ごと、給排水管は何年ごとなどと決めて、周期的な大規模修繕や設備の交換をしていくことが必須です。

こうしたメンテナンスをきちんと行なえば、「古い割には綺麗であり、不具合も少ない、住み心地のよい中古マンション」という評判を得ることにつながり、リセールバリューも下がりにくいことになります。

 

首都圏の場合、マンションの管理費の平均は、専有面積1㎡当たり約230円、という調査データがあります。70㎡なら164,000円です。建物の規模によって差があり、50戸未満の小型はやや高くて250円、100~200戸台は230円、300戸以上の大型も高くて260円というデータがあります。

 

この差は、管理内容の違いが反映されたものです。大型マンションは、近年コンシェルジュサービスやら、24時間有人管理といった管理サービスを競う傾向が強まって高くなっています。

一方、小型マンションは、どうしても割高になるようで、特に管理人の人件費が高くつくことが影響しています。

100戸程度のマンションでも、30戸のマンションでも管理人は一人です。仮に管理人の平均月収を30万円としたら、100戸のマンションでは1世帯あたり3千円の負担ですみますが、30戸のマンションでは、7,000円も多い1万円の負担となってしまうからです。

 

買い手の負担が大きいと売りにくいから、管理費を安くしようと販売サイドは考えます。結果として、管理人を置かない巡回式にしたり、置いても週に2日だけであったりの、手抜き管理で出発することになります。

この傾向は、小型のマンションほど高まります。

 

また、修繕費用が充分に積み立てられない危険も小型マンションには多いと考えられます。割高になる管理費を削ることと併せて、修繕積立金の額も抑え気味にして販売してしまうのです。

こうしたマンションは、老朽化が早まる危険を抱えることになります。

 

30年先までの長期修繕計画は、今では大抵のマンションに販売時点で既に用意されています。エレベーターは何年で取り替えるのか、屋上の防水加工は何年周期かといったことが、こと細かく計画されているのが普通です。そして、その費用がいくら位か、それを賄うための積み立て計画も管理会社から提案という形で提示されています。

 

積立額は、途中で増額する計画になっているものが殆んどですが、どのくらい上がるのかをよく見ておくことが必要です。心づもりをしておくためです。

ただし、そのとき、途中の増額があまりにも頻繁に行われるような物、金額が大きく跳ね上がるような物は避けるほうがよいかもしれません。

 

マンションの管理の良し悪しを測るのは、管理人が常駐していればよいという単純なものではないのですが、少なくとも管理人が毎日目を光らせておくことは必須条件なのです。

管理人の目が光っていない上に、修繕費も少なく、そのために適切な修繕が行われないマンションはどうなってしまうのでしょうか?

 

例えば屋上の防水工事は15年に1回の割合で周期的に修繕する必要があるのですが、それをしなければ漏水して各居室に湿気がこもります。外壁のクラック(ひび割れ)も同様です。また、排水管にコレステロールが溜まり、流れが悪くなるという現象も。

 

こうした結果を招けば、日常生活において不便を感じる、不快感が募る、従ってストレスが溜まるということになるでしょう。

 

管理組合では、修繕費の臨時徴収などが議論されます。しかし、一時金の支払いができない所有者もあって、さっぱり修繕が実施されないまま、時が経過するとします。

そうなると、、ますます、居住性が悪化します。やがて、らちが開かないと見た入居者は、売却して転居する道を選択します。

 

マンションは一段と老朽化が進行し、売却も困難になって行きます。仕方なく賃貸に回して転居する所有者も現われます。大規模修繕推進派は減り、賃貸マンション化したマンションの修繕に関する意識は更に低下して行きます。

こうして、満身創痍の老朽マンションとして、さらに寿命は短くなってしまいます。しかし、既に半数以上の所有者が転居しており、建て替えの声すら上がりません。こうなると、完全にスラムです。

 

毎月のランニングコストが大きいと購入しづらくなる買い手に配慮し、入居時に「修繕積立基金」という名の一時金を取る形態が普通になっています。20万円とか、50万円といった額です。これによって不足を補うわけです。

 

こちらの方が、買い手の抵抗は小さいという売り手の感覚や経験則からか、定着しています。買い手は、登記料など諸経費を予定しているので、そこが少し膨らむ程度という印象なのでしょう。

 

管理費が比較的低く設定できる中規模マンションでも、分譲価格の安さを「売り」にして企画したと考えられる物件では、管理費も意図的に抑えているケースがあります。こうしたマンションは要注意です。

 

決断する前に、「管理業務仕様書」を見せてもらうか、少なくとも管理人の勤務態勢だけは確認しましょう。そして、常駐(日勤)しないマンションは、できたら購入を避けたほうが無難と覚えておきましょう。

 

中古マンションの場合も、管理状態を目視するだけではなく、管理人の勤務時間を確認し、「長期修繕計画書」を見せてもらい、かつ過去の修繕履歴などの教えてもらいましょう。

 

(5)「外観・玄関のデザイン」が価値を決める

マンションの外観の印象は、資産価値を決める大切な要素です。外観が威風堂々か、貧相な姿かは意外に見落としている人が多いものです。

 

工事中マンションを購入した場合ですが、完成したとき、少し離れた所からどう見えるか観察してみましょう。威風堂々か、貧相な姿かは意外に見落としている人が多いものです。これは、完成予想図しか見ていないので仕方ないのですが、値打ちを決める要素のひとつです。

 

物の価値は、その見た眼の美しさによっても左右されます。そのひとつが、既述の適切な管理を行なうことによる美しさであり、もうひとつが「デザイン」です。デザイン性に優れたマンションは、それだけでも買い手の心を引きつけるものです。

外観、玄関、ロビーが主要な部分です。室内だけでなく、これらのデザインにも目を配りながら選ぶようにしましょう。

 

大型マンションの場合には、さほど心配いらないのですが、問題なのは50戸未満の比較的小型のマンションです。

売り手は、小さなマンションが大きく立派に見えるように、完成予想図をデフォルメ(仏語:意識的に変形させる描画手法)しておきます。ここに落とし穴があるのです。

 

新築マンションは、大抵が青田売りと言って、工事中に販売を始め、完成までに売り切ることを狙います。このため、買い手はモデルルームを見て自分の購入する部屋を想像しながら判断することを求められます。

 

青田売りは業界の常識になっていますが、買い手はそこでミスを犯しやすいと言えます。住戸もさることながら、マンション全体、なかんずく外観のイメージが正確につかめない場合があるからです。モデルルームに目を奪われて、見落としてしまうのでしょう。

 

完成したとき、当然ですがマンションは外も中も何もかもが綺麗です。その美しい建物を見た買い手は、それだけで満足します。間もなく、ここで新しいマンションライフを始められるのだという喜びで一杯になるためです。

 

しかし、購入者以外の人が外観を見たとき、「何と貧相な建物か」と冷めた評価が下される物件があります。これは、将来売却に出したとき、見学にやってくる買い手さんも同じ感想を持つはずです。そのことは、売却価格に影響を与えます。

 

分譲マンションというのは、区分された1室と共用部を合わせて売買されます。1室を購入したようでも、マンション全体を買っているわけです。

自分のマンションはこれだというとき、室内と一緒にマンション全体を思い浮かべるイメージがあるはずです。エントランスやロビーなども、自分の家の一部です。

これらが立派であれば、きっと自慢の家ということになるでしょう。

 

駅から徒歩で帰る途中、やがて見えて来る我が家の外観は周辺を圧倒するような異様を放つ。そうしたマンションの方が、賃貸マンションの陰に隠れるように建っているようなマンションより誇らしいはずです。

 

玄関を開けると直ぐ目の前にエレベーターがあるような狭いロビーしかないよりは、象徴的なオブジェがあり、広くて天井が高いロビーには立派なソファが置いてある。このようなマンションがいいはずです。

 

日本という国は、物質に恵まれた経済大国であり、近代国家として時代の先端を行く国であるわけです。便利なモノは、そこいら中に溢れ、必要なものは何でも揃います。

機能だけを求めたら、ない物はひとつもないと言ってよいでしょう。そうしたレベルに至ると、人間が次に物に対して求めるのは、機能ではなく見た眼の良さ、すなわちデザインです。

 

これはマンションでも同じです。かつては「住めたらいい」だったのが、今は、「見映え・デザイン」にこだわるようになっています。

デザインの良さはマンションの価値を高めます。昨今、「デザイナーズマンション」という言葉、広告のキャッチフレーズをときどき見かけるのは、こうした欲求レベルの変化を証明しているのです。

言い換えれば、デザイン性は、マンションの価値を大きく左右するようになってきたのです。その意味から、貧相なマンションは避けておきたいものです。

 

貧相なマンションとは、例えば、300㎡未満の狭小敷地にペンシルのようにひょろひょろと建っている高層マンション(商業地に建設されたものに多い)は、どう工夫しても立派な風格を持っているとは言い難いものです。

 

背も低く、横幅もない小型マンション。こちらは、住宅地の狭小敷地に建つケースです。道幅が狭いせいで、建物の一部が欠けて斜めになっているものが多く、デザインというより建築規制によってできた産物。しかも、重厚感も風格も感じられない。中には、これが分譲マンションかと疑いたくなるような物も少なくないのです。

 

もちろん、小型マンションがすべて貧相に見えるわけではなく、敷地に緑をふんだんに配置し、一定のコンセプトによって美しいマンションに仕上がっている物もあります。しかし、これを工事中に自分の目で確認することはできません。

パンフレットにも販売事務所(モデルルーム)にも、外観パース、エントランスパースなどが大きく掲げてあります。立派に見えます。しかし、出来上がりとはギャップがあるかもしれません。

 

そこのところを、パースと図面から想像できるでしょうか。想像できたとしても、それがどれほどの価値を持つものかを判断できるでしょうか。

簡単ではありませんね。デザインの良し悪しには、数値的な基準はありません。「豪華」、「上質」、「格調」、「立派」、「威風堂々」、「恰好いい」といった形容詞で表わされるだけです。結局、完成したマンションをできるだけ多く見て、感覚を磨いておくしかないのです。

そのうえで、図面から出来上がりを想像し、たとえば「恰好いい」マンションかどうかを判断していくほかありません。

小型マンションのデザインには特に注意しましょう。

 

外観と併せて、玄関部分のデザインも大事な要素になっています。大きく張り出したキャノピー(天蓋てんがい)とクルマ寄せがある玄関、2階までの吹き抜けになっているロビー、木製の大きな玄関ドアといった造りは、高級なホテルにも匹敵するものですが、こうしたマンションも値打ちを感じさせるものです。

 

(6)建物の規模は軽視できない

物件の規模が大きいことで様々な不可価値を生んでいるケースがあります。

様々な共用施設、広く立派なエントランスロビーなどを持ち、居住者サービス (24時間有人管理、コンシェルジュ対応など) にも優れるからです。

 

(7)建物のスペック・クオリティ

マンションには、アパートや賃貸マンションなどに比べて、様々な機能が付加されています。

コミュニティルームやパーティルームなど、キッズルーム、ゲストルーム、防災倉庫といった共用施設、設備的には、宅配ボックス、セキュリティシステム、太陽光発電システム、電気自動車の充電器などです。

管理サービスの分野にも、「24時間有人管理」や「ライフサポート」、「カーシェアリング」などが見られます。

 

こうした機能やサービスは、物件によって異なります。大型物件ほど充実していますが、小型マンションではコスト増を吸収しきれないため限定的です。大雑把に分けると、大型物件は高機能マンションと言えるものが多いのです。

 

専有部分にも機能性の高いものと低いものがあります。いくつか、例に挙げてみます。

先ずディスポーザーですが、これにも普及タイプと高機能タイプがあるのです。

ディスポーザーは水を流しながら使うのですが、スイッチを押すと自動的に水が流れるようになったものがあります。これが高機能タイプです。

普及タイプの方は、まず水道のレバーを上げて水を出してからディスポーザーのスイッチをオンにするという2段階の作業が必要です。

 

便器でも高機能タイプと普及タイプがあります。トイレに足を一歩踏み入れるだけで便器の蓋が自動的に開くものと手動式のもの、自動洗浄機能がついたもの、そうでないものなど、幅があるのをご存知と思います。

 

住宅資材としては、「複層ガラス」が挙げられます。一枚ガラスではなく、空気を間に挟んだ二枚ガラス仕立ての窓サッシは、断熱性が高く結露ができにくいことで採用例が増えていますが、その複層ガラスも3ランクくらいに分かれるのです。

 

機能とは別の概念でも、質の高い・低いがあります。

例えば、高級マンションは、外周のフェンスやゲート、中庭などの外構にも力を入れています。 フェンスは簡単に乗り越えられない高さがあり、赤外線センサーで防御していたりもします。フェンス自体もネットフェンスなどではなく、レンガの土台と重厚感のある鉄製・鋳物製などのフェンスにしたりします。

 

また、敷地のオープンスペースは花壇や植栽で埋め尽くさんばかりとし、機械式駐車機が鎮座していたりはしません。車はすべて地下格納式としています。

 

共用玄関の扉は重厚感があって中が覗けないようなデザインになっていたりします。勿論、車寄せやキャノピー(天蓋てんがい)は当たり前にしつらえられます。

 

エレベーターは、額縁、籠の中ともに、5つ星ホテルで見るような上質で高級なデザインになっています。エレベーターホール全体も、特別な印象を与えるデザインと仕様にこだわります。

 

専有部でも、仕様は明らかに違ったものとなっています。洗面台とボウル、建具とドアハンドル、水栓金具などの材質とデザインは高級というだけでなく洗練されたものが選ばれています。

また、床材もグレードが違います。玄関や廊下は天然石貼りが普通で、タイル貼りとフローリング貼りの一般マンションとは一線を画すものです。洗面所の床でも、一般マンションはCFシートですが、高級マンションではタイルや天然石貼りにします。

 

居室に使うフローリングでも、一般マンションは、木目模様が印刷された「オレフィンシート」という合成樹脂を張り付けた「シートフローリング」であるのに対し、「無垢材(1枚板)のフローリング」や、複合(合板)でも表面は薄くスライスした天然木の「挽き板」のフローリングを採用します。

 

高級マンションは共用部の仕上げ材も違うものです。

高級マンションは内廊下式が当たり前ですが、その仕様も一般のマンションとは異なります。

床はタイルカーペットなどでなく、ホテルなどで使われる大盤の絨毯、勿論グレードの高いものが使われます。タイルカーペットを使う場合でも、グレードは一般マンションより上級です。

また、壁や天井も仕様に手抜きはありません。壁はビニールクロス張りなどではなく、板張りであったり、特殊な壁紙を張ったりします。

 

エントランスホールやロビー、ラウンジといった共用空間の仕上げはこだわり方が特に強いものです。 これはデザインなので、パターン化したものはありませんが、イタリア産の天然石やカナディアンメープルやチーク材などの高級材を用いたりします。

また、彫像やソファ、照明器具なども良い物を厳選して配置します。

 

室内はリフォームすれば、高級なもの、高機能なものに変えることができます。しかし、共用部分は変えることができません。資産価値は、この共用部のスペックとクォリティの高さで決まるとも言えるのです。

 

(8)経年が資産価値を高める「緑地スペース」

立地条件、管理、デザイン性以外に、資産価値に影響する要素として、「緑地スペースが多いかどうか」 も挙げられます。

ときが経つに連れてマンションの価値が上がるとしたら、植樹した木々が成長し、マンションを包み込むようになったとき、あるいは敷地内道路が緑のトンネル状になったときなどです。豊かな植栽のあるマンションは、穏やかで優しさに溢れ、そして美しいマンションとして、高い評価を受けるでしょう。

 

植栽計画がどのようになっているか、パンフレットや図面などで確認しましょう。敷地が駐車場で埋め尽くされるような設計のマンションは値打ちが下がるものです。

言うまでもないことですが、規模が大きいほど緑地面積は広いと言えますが、規模の大きいマンションは価格が下がりにくいという傾向があります。このことは、データにもはっきりと表われています。

特に、500戸以上の物件が10年後にも分譲価格を大きく上回るというデータがあります。

 

(9)マンションのブランド

最後はブランドです。ブランドは「安心」や「高品質」をイメージさせるものです。長い時間をかけて作り上げた事業者の信用力の結晶と言ってよいでしょう。

 

マンションの場合、大手の分譲、大手の施工になるものが、資産価値の高い物件が多いことを付け加えておきます。「財閥系企業またはメジャー7が売主」、「スーパーゼネコンによる施工」なども、資産価値を上げる要素になっています。

メジャー7とは、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、住友不動産、野村不動産、東急不動産、東京建物、大京の7社を言います。また、スーパーゼネコンとはご存知の鹿島、大成、清水、大林、竹中の大手5社を指します。

マンションのような高額商品では、簡単に返品したり買い替えたりすることができないだけに、慎重な購買態度になるのが普通です。最近は東日本大震災の影響もあって、建物の耐震性や耐久性などに格別の懸念を抱く買い手が増えました。

 

しかし、外から見ただけでは、耐震性も耐久性も簡単に分かるものではありません。また、瑕疵とは、隠れたキズというほどの意味ですが、これは発見が難しく、何年か経って偶然に発見されることはあっても、大半は大きな事故や天災が来るまで表面化しないものです。

中古マンションを買う人から見ると、どこかに瑕疵があるのではないか、震度4や5では大丈夫だったかもしれないが、震度7が来たらどうなっていただろう?そのような事は分かりようもないのです。

 

建築基準法に従って適正に建築されていれば、一応は大丈夫かもしれないが、果たして施工は設計図どおりにきちんとなされたのであろうか?その監理は厳しく行なわれただろうか?そんな疑問に一応の答えをくれるのが売主のネームバリューです。言い換えれば、長年の経験と実績がもたらす企業としての信用です。

 

勿論、施工するゼネコンの技術力や自己管理能力なども重要ですが、それを発注者として監理(監督・管理)するのが売主でもあり、結局は売主への信頼こそが決め手になるのです。

 

メイドイン後進国の電化製品でも、現地の合弁会社に技術を供与し、製造過程を日本人スタッフが常駐して監理している日本ブランドであれば、日本人は信頼して購入します。

マンションの場合、それとは違うにしても、「売主が〇〇社だから」というのは、やはりマンション選びの決め手のひとつであり、これは中古マンションの場合もあてはまると言ってよいのです。

 

ブランド力・売主の信頼度が購買決定の何%を占めるかなどという話はできませんが、大きな位置を占めることは間違いありません。

 

個人所有者が中古市場に売りに出したとき、信頼される売主が建てたマンションでない場合、買ってくれる人が中々決まらないということがあるかもしれません。そうなると、買い手を探すのに手間取り、時間があまり長くかかるようなら、値を下げるしかありません。

 

その意味で、できるだけネームバリューの高いブランド物件を購入しておいた方が将来も安心、売却も有利という結論になるのです。もちろん、上位の売主のマンションならどれでも高く売れるというわけではありませんが、同等の物件との比較で有利に働くことは間違いないのです。

 

勿論、マンションの価値を決める要素は、既に見て来たように他にも多数あるわけで、ただ有名売主の物件だからというだけで選んだのでは、本末転倒ということもありますが、売主名やブランドは大きな要素であると覚えておきましょう。

 

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