第631回 高いものを買っちゃったと分かるのは10年後?
- 2018.07.20
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このブログは5日おき(5、10、15・・・)の更新です。
このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。
高値掴みと気付かずに買った人も、資金的な無理(ローン返済の無理など)がない限り、そこに住む喜びと快適な暮らしが送れるなら、それはそれで満足すべきなのかもしれません。
マイホームを取得することには、「経済的価値」と「使用(利用)価値」の二つの側面があると考えられます。後者は、個人の価値観や家族の事情などによって幅があるもの、その大きさは他人には測り知れないものがあるからです。
繰り返しますが、「経済的な損失」を被ったとしても、使用価値が高いことで大きな「精神的利益」を得て余りあるという場合があります。つまり、場所を含めて物件を気に入り、快適な暮らしができそうなら、その選択は間違いではないのです。
しかし、マンションは「生活の基盤」であるとともに、「資産」でもあるのです。その資産価値を意識して物件を選択するということは、とても大事です。ここを意識して選択している人は何割くらいあるのでしょうか?実は、正確なのところは分かっていないのです。筆者の「マンション評価サービス」をご利用くださる人だけに限れば9割以上であることは間違いないのですが。
「家は一生賃貸でよい」とする人が少ないことは過去に実施された各種機関の調査で証明済みですが、マンションを買う人の中に、資産価値をどこまで意識しているのかという調査は見当たらないのです。これを調査するのは難しいのかもしれません。
購入動機は様々ですが、低金利のため意外に少ない負担であることを知って、家賃を払っているより買った方が得だと考えて購入する人が多いのも確かのようです。
手狭になったので、広い賃貸マンションを探して見たが、高い家賃に驚くとともに、同じ広さの分譲マンションを買おうとすると、選ぶマンションによっては「家賃より低い負担になる」ことにも驚く人も少なくないのです。
しかし、検討する過程で「何年か先に売却することがあるかもしれない」と気付き、そのときローン残債を超える金額で売れるだろうか、購入価格より高く売れるだろうかなどと考え始めます。このような人はリセールバリューに並々ならぬ関心を持つわけですから、第一関門を突破することになります。
ところが、全く関心を持たない人もあることに気付くことがあります。
「家賃を払うより得だから」というだけで短絡的にマンションを買った人らしいのです。自分の家を持つことの満足感に浸ってしまうのでしょうか?
車を持たない人が最近は増えていますが、必要がないからでしょう。たまに使うだけなら、レンタカーやカーシェアリングが経済的と考えるのでしょうか?一方、車を日常よく利用する人は、マイカーを持つはずです。最近、再びボーリング人気が高まっていると聞きます。週2回ペースでボーリング場に通う知人は「マイボール」や「マイシューズ」を持っています。「月イチ」ゴルファーだった筆者も、ビギナーなのに安いとは言えないクラブセットを買ったものです。貸しクラブでなく。
こうした例は様々な世界に見られます。「リースやレンタルより所有が経済的だから」とか「所有欲があるから」だけで説明できるとは思いませんが、「借りるより所有する」ことが日本人は好きなのでしょう。
家も賃貸マンションより「マイホーム、マイハウス、マイマンション」を望む人が多いのは事実です。生涯、賃貸マンションやアパートで終わる人がいるのも事実ですが、若いうちは「老後のために家は持っておきたい」と考える人が多いのです。昔から「男子たる者、若いうちから柱の一本でも持つべきだ」と言われて来たのです。日本人の価値観や思想には「家を持ちたい」が根ざしているように思います。
●マイホームは財産になるという思想の誕生
こうした考え方の根底には、損か得かという発想がそもそもなかったのかもしれません。大昔は、嫁に行く女性を別とすれば、同じ場所で生涯を送る農民が多かったわけですし、商人も大工さんなどの職人(技能労働者)も「土着民」として暮らしたのです。住む場所を変えるのは一部の侍だけでした。
いつ頃からか、農家の次男、三男は会社勤めをするようになりました。いわゆる第二次産業の発展とともに都会に出て借家に住むようになりました。経済が発展し、都市が規模を拡大して人口も都会に集中します。戦後、高度成長時代となって、住宅難が社会問題となり、国策として住宅が大量供給されました。その過程で、賃貸住宅だけでなく分譲住宅も誕生することとなりました。
同時に、地価が高騰して職住近接が次第に困難になって行きます。都心から郊外に押し出されるようになりました。1980年代後半、バブル経済が勃興し、地価高騰に拍車がかかったころは、もう庶民には家は持てないのではないかという危機感さえ生まれました。バブル期の後半、宮沢内閣は年収の5倍の価格で買えるように目標を設定しました。やがて、バブルが崩壊し、地価は下がり、再び手の届く住まいが都心で供給されるようになりました。
そして、バブル後、2度の住宅(主にマンション)の価格急騰を経験したのです。二度めは将に今です。
このような時代の変遷を経て、多くの日本人はマイホームが値上がりしたり、値下がりしたりするという現実をこの目で見て来たのです。書き漏らしましたが、田中角栄さんが総理大臣だったころの1970年代はじめ、同氏が唱えた「日本列島改造論」がブームとなって全国の地価を押し上げたことがありました。都会の土地に限らず、別荘地のような所まで、新幹線や高速道路が通る計画や構想が地価上昇の元凶でした。この時代は、「1億総不動産屋」などと言われ、一区画100万円とか200万円とかの土地を一般庶民が買ったのです。
こうした経験や歴史を通じて、不動産は財をもたらすものらしいと国民の多くは知ったのです。株は怖いが、不動産は堅いといった観念も生まれたのです。そこから、マイホームも財産になる、どうせ買うなら価値あるものを買いたいという購買心理が波及したのです。損をすることもあるが、無理なローンを組んだりしなければ、株と違って大損をして家を取られることもない。そんな発想から、マイホーム選択を資産性の観点から意識する人も増えたと考えられます。
●財を成すマイホーム選択の難しさ
筆者に届くメールの中に、〇〇地区は再開発によって発展するので購入マンションの将来性(リセールバリュー)に期待しているというフレーズを度々目にします。ところが、その期待を見事に裏切ってくれるマンションが多数あります。
一方、最近(2015~18年)の売却者の何割かの人は購入価格より高く売れて喜んでいます。東京都心や郊外の中核都市、ビッグターミナル駅の近くのマンションなどを保有していた人は、みんな儲けたのです。5000万円が6000万円にもなって、ホクホクだった人が大勢いるのです。中には、僅か5年で40%も上がった物件もあります。
つまり、みんなで喜べた反面、物件固有の格差が大きかったことも事実です。中には、全く値上がりしなかった再開発マンションもありました。
売却のタイミングによって、あるいはそもそもの購入額によって儲かることもあるし、損をすることもある。はっきりしていることは、場所によって格差は生まれるということです。
それを知ってか知らずか、「危険な買い物」をしてしまう人が、首都圏の新築・中古マンションを買う年間7万人以上の何割もいる。筆者にはそう映るのです。
難しいことかもしれませんが、値上がりが期待できそうにない場所で選択した場合や、浅い知識で将来に期待して買った物件が、10年先の価格を織り込んでいたと知らずに買った場合などは経済的損失を被ると思うべきです。。
しかし、ものは考えようと言いますが、同じマンションの同じ間取り、同じ階であったとしても、購入する方が賃借するより充実感は大きいはずです。なぜなら、賃貸では得られない周囲の賞賛などから来る満足感、快適な暮らし、幸福感、老後の安心感などを手に入れることができるからです。それがマイホーム購入の最大のメリットでもあるのです。
こうしたものを筆者は「精神的利益」と言っているのですが、これは経済的利益(得失)とは比べようがない、測り知れない大きな価値と考えます。最後はこう割り切るしかないのです。というより、本来ここにこそマンション購入の目的を見出すべきとも言えましょう。
「賃貸か購入か」をトコトン突き詰めると、答えは購入に軍配が上がるのです。
現金購入でなく住宅ローンを利用した購入でも、返済を終了したときには僅かにせよ資産が残ります。その金額が5千万円になったか、1000万円にしかならなかったかの差はあるものの、何がしかの資産(財産)が残るからです。
これは、賃貸マンション住まいの人には絶対に得られないものです。ボロボロの借家にただ同然の家賃で長く住み、その間に巨額の貯蓄をすることに成功したという人がいるでしょうか? もし、そのような人がいれば、借家住まいも資産を残せるという反論にはなるでしょうが、現実的な話ではありません。
借家暮らしは家主の資産形成に貢献できることはあっても、自分の資産をつくることには雀の涙ほども貢献しないのです。
以上のように考えると、資産価値という観点では選択を誤った人も、若しくは事情が許さなかったために買いたいマンションを買うことがかなわなかった人も、いずれも悲観するには及ばないことが分かって来るのではないでしょうか?
とはいえ、経済的な利益があるに越したことはありません。それを購入前に予測できる(期待できる)ことが一番です。少なくとも、「先のことなんか分かるはずがない」などと言うべきではないのです。
そう思って気にせず買ったら大儲け。そんなこともないとは言えませんが、間違っても10年経って後悔しない選択をしておきたいものです。
●いつの間にか資産形成になるのがマイ・マンション
「賃貸か分譲か50年比較」といった記事が雑誌に載ることがあります。損得計算を実に細かく試みていますが、最近は「新婚当初から買った場合・40代後半で買った場合・定年後に買った場合・一生賃貸の場合」といった多数の設定で比較したものもありました。
いずれの答えも「買った方がお得」という結論になっています。
計算通りに行かないのが人生ではありますが、こうした試算は無意味ではありません。筆者の経験と不動産・マンションの歴史を振り返って得られる結論のひとつはこうです。
毎月の負担感にも慣れてしまい、払った住宅ローンも累計いくらだったかも無関心のまま時が経過して行き、あるとき売却することになったら、手許に残る金額を見てびっくりということになる。これが不動産の面白いところです。言い換えれば、いつの間にか(知らず・知らずの内)に財産ができていたというわけです。
預貯金のように、通帳があるわけでなく、株のように銘柄ごとの価格を毎日確認できるわけでもないので、自宅マンションの資産価値について日ごろは関心が薄れてしまいます。そもそも、マイホームは売れば住むところがなくなってしまうので、株のようにタイミングを計って売るということもできません。
売らなければ、損も得もないので、長く住み続ける人には「資産価値」や「リセールバリュー」に興味がないのかもしれません。しかし、そう思って買った人も、いつか売却するときがやって来ます。住宅ローンが完済していれば、いくらになろうと、売却で困ったことになることもあるまい。そんなことを言う人もありました。
住宅ローンが完済してから売るとは限りませんよ。筆者がそう言うと、「自分の場合、当分は売らなければならない事態は起きそうにない」と反発する人もいます。「20年過ぎたら、ローンも半分は減っているはずだし、売却価格が半分になっても大丈夫ですよね?」と質問で切り返して来るのです。
なるほど、20年過ぎたら半値なら売れると思っているのですねえ。果たしてどうでしょうか?ある大手のマンションの10年後、一方は65%も値上がりしましたが、もう一方は40%も値下がりしたという事実があります。20年後はどうかというのは別ですが、物件によっては20年後に半値でも売れないことがあり得るのです。
人口予測で将来が悲観的なエリアとそうでないエリアがあることにも注目しなければなりません。人口が減れば、住宅需要も減るのです。将来、中古マンションが全く売れないという事態も場所によってはあり得ます。いえ、既にそうなりつつあるエリアは首都圏にも出始めているのです。
二束三文でも売れない。子供に住まわせようとしても「要らない」と言い、賃貸もままならない。こんなこともあるのです。そうなると、空き家のままになり、管理費・修繕積立金、固定資産税だけがのしかかって来ます。自分は払い続けても、他の所有者から滞納者が現れて管理はままならなくなるかもしれません。そうなったとき、そのマンションを買いたい人が現れる確率はゼロに近くなるでしょう。
貴方のマンション、いま貴方が検討しているマンション、その将来を「資産性」の観点からもう一度考え直してみましょう。
◆その街・その駅は20年後、30年後も住みたい人が続いていますか?人口が減る心配はありませんか?
◆そのマンションは、近隣のマンションに比べてどれだけの差別感がありますか?スケール感・存在感とデザイン性の観点ではどうでしょうか?グレード感の観点ではどうですか?
◆そのマンションは駅から5分以内ですか?5分超でも、5分圏のマンションに負けない要素はありますか?
◆そのマンションの維持管理は大丈夫ですか?長く資産価値を保てそうですか?
etc.
こうした点検をしたうえで、購入したマンションであれば将来リセールバリューがどうなっていても納得できることでしょうし、「しまった高いものを買っちゃった」とほぞを噛むこともないのです。
・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。(http://www.syuppanservice.com)
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選定基準:➀立地条件が良い(駅に近い。または抜群の環境。都心や中核都市にあるなど)②デザイン性が高い ③ある程度のスケール感・存在感がある④売主または施工会社に信頼を置ける ➄総じて特徴が明確な物件
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