第656回 高級住宅地ほど物件格差がものを言う

このブログは居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から「マンションの資産価値論を展開しております。

5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

 

 

この1ヶ月、何故か高級・高額マンションの評価依頼が続きました。新築の「THE COURT神宮外苑」、「パークコート渋谷ザタワー」、中古の「ザ・パークハウスグラン南青山」、「センチュリーパークタワー」、「広尾ガーデンヒルズ」、「パークコート青山ザ・タワー」、「プラウド南麻布」といった有名マンションです。

ようやく評価レポートが完成し、全てお届けは済んだのですが、このほかの一般マンションも多数重なって大忙しの10月、11月となりました。元々が多忙な日々を送っている筆者ですが、徹夜もいとわない強靭な体力もさすがに限度を超えてしまったため、一時新規のご依頼をお断りすることとなりました。

お申し込み下さった方には、この場を借りてお詫びしたいと思います。3日前に再開しましたので、どうぞお気軽にご相談・お申し込みをお寄せください。

 

さて、今日はこの1~2ヶ月の調査、評価作業から確信を持ったことについてお話ししようと思います。

 

●中古になっても高い価格を維持する物件

地域相場とから乖離した値動きを見せる物件があります。独歩高とでも形容すればいいでしょうか?

二つだけ例を挙げると、ひとつはの「センチュリーパークタワー(中央区佃島)」、もうひとつは「広尾ガーデンヒルズ(渋谷区広尾)」です。

センチュリーパークタワーは築20年になりますが、月島駅圏の新築相場@365万円を上回る@380万円が過去1年の平均取引実績であることが分かりました。以下は、その一部です。

13階 東向き 50㎡ 5500万円 362万円/坪
21階 東向き 50㎡ 5490万円 362万円/坪
32階 東向き 68㎡ 7200万円 350万円/坪
40階 西向き 81㎡ 10,350万円 393万円/坪
41階 北東角 81㎡ 11,100万円 455万円/坪
45階 南向き 97㎡ 11,880万円 406万円/坪
ほか多数・・・・センチュリーパークタワーだけの平均は約@380万円(筆者の計算による過去1年の実績)

 

月島駅エリアでは、センチュリーパークタワーを除く築20年前後の中古マンションの平均は約265万円/坪でした(REINSデータから筆者が計算)。つまり、同年数の中古同士の比較では、センチュリーパークタワーは@115万円(40%以上)も高いのです。

築20年のマンションが同地域の新築マンションの単価を上回っているという、あり得ないような実態が本当にあることが分かります。

 

よく、中古も結構高いという声を聞きますが、新築より高い中古には、そう評価されるだけの理由がありますし、そのような価値ある中古が少なくないことは読者の皆さんもご存知かもしれません。

しかし、築20年マンションが新築を上回ると聞くと、高過ぎると敬遠する人もあるようです。何故そうなってしまうのかをご理解いただくとともに、マンション選びの一助にしていただければ幸甚です。

 

センチュリーパークタワーは月島駅から徒歩8分と近くもありません。54階建て、755戸の大規模マンションで、豊富な共用施設、高級ホテルのようなロビーやラウンジなど、建物は確かに素晴らしいのです。維持管理に関しても申し分ないレベルにあるようです。

しかし、これらのレベルは並び称されるマンションがないというほどではなく、最近の大型タワーマンションなら遜色ない物件も少なくありません。

なのに、どうしてこんなに高く市場は評価するのでしょうか?

 

その理由は、

⓵経年劣化に連れて値下がりする一般マンションより維持管理体制が優れていると思われること、

②マンションの価値を左右する立地条件(土地)には、街が廃れない限り経年劣化がないからです。

 

センチュリーパークタワーの立地する街「リバーシティ(佃島)」は別天地(独立国)のようなもので、居住者は駅から8分の距離を全く気にしませんし、この街に住むことを誇りとして捉えているのです。

富裕層が多く住み、ここの住民になることは一種のステイタスシンボルを持つことでもあるのです。繰り返しますが、建物価値も54階建て755戸と大規模で風格がありますし、共用施設も豊富です。館内は高級ホテルのようなロビーやラウンジ、アトリウムなどが圧巻です。

これらが、高い価格維持率を誇っているのです。

(画像はウィキペディアから借用)   ※永代橋から望む。真ん中手前のタワーが本物件※

 

特に、立地条件は別天地と書いたように近隣には類例が見当たりません。ウイキペディアによれば、佃島のリバーシティは住宅市街地総合整備事業の整備計画に基づいて、住宅・都市整備公団(現・都市再生機構)、東京都住宅局、東京都住宅供給公社、三井不動産によって進められた、石川島播磨重工業(現・IHI)跡地の再開発事業でした。

人工的に造られた街ですが、陸続きながら「島」はひとつの公園都市のようで、整備された街は美しく、まるで独立国です。もんじゃ焼きの月島のイメージとは似ても似つかわしくない姿です。ドラッグストア、フィットネスジム、医療機関、飲食店などはマンションの敷地内に、スーパー2ヶ所、ドラッグストア、公立小学校、公立中学校、児童館などは徒歩3分圏の島内に揃っており、利便性にも優れています。

 

マンション評価をご依頼下さった方のメールの文中には、「月島駅までは少し歩きますが、通り(島内)にタクシーが多く流れているので、東京駅など近場までタクシーを便利に使っています」とありました。

そう言えば、筆者が過去何回か訪れた際も、タクシーが入り込んでいました。確か、分譲時のパンフレットにも「東京駅まで直線で2キロメートル」とありました。

 

●別天地に建つ広尾ガーデンヒルズ

立地条件の希少性は群を抜くという意味では、「広尾ガーデンヒルズ」の方が上と言えます

(画像:住友不動産販売のHPより)

「広尾ガーデンヒルズ」は1984年(昭和59年)から1986年(昭和61年)にかけて竣工した、全15棟1181戸の億ション団地です。

広尾ガーデンヒルズの大きな特徴は、その環境の創造にあると言われます。

イーストヒル、ノースヒル、センターヒル、ウエストヒル、サウスヒルの5つにゾーニングされ、外観や植栽などでそれぞれに個性を出し、美しいスカイラインは、外壁の色、豊かな緑などが見事に調和し、70,000平米の広がりを持つ丘陵地という土地の形状とあいまって、ここでは都心にありながら自然を感じとれる別天地です。

 

大仰な言えば、公園の中の住まいというイメージすです。セピア色の外壁、ケヤキ並木、そしてペントハウスの屋根が形づくる美しいコントラスト。それぞれが個性的に調和し、落ち着きと華やぎが道行く人達と見事に風景と溶け合うさまは、映画のワンシーンのような鮮やかな印象を創り続け輝いていると称えられています。

 

10月25日の本ブログ(第650回)で筆者はこう書きました。

記憶では分譲当時(1982年~)専有面積坪当たりの単価が300万円前後だったのですが、バブル期には中古市場で何と10倍の3000万円にも跳ね上がったのです。

バブル経済が崩壊して値下がりしたものの、分譲時の価格を下回ったことは一度もなく、築35年を経た今でも坪当たり500万円以上もします(2018年10月25日現在の売り出し価格の一部)。80㎡クラスでも1億2000万円、条件の良い住戸は700万円近い流通価格になっています。新築で、これを超えるマンションは数えるほどしかありません。

 

上記の価格は売り出し価格なので、念のため過去1年の取引価格の実績を見たところ、1階で@439万円、12階で@513万円という高値で成約しています。A棟からN棟まであるので、幅は多少あるものの、@500万円前後の高値です。

 

@500万円台の中古マンションを近隣の実績から、築10年前後の物件に限って調べました。

・「パークコート赤坂ザ・タワー」 23階=@545万円

・「乃木坂パークハウス」 12階=@562万円

・「パークハウス赤坂氷川」 7階=@482万円

・「赤坂タワーレジデンスTop of The Hill」 9階=@575万円

・「ブランズ赤坂」 4階=@590万円

・「ミッドガーデン赤坂氷川」 7階=@520万円

青山一丁目から乃木坂までのエリアから高級マンションと言われる物件のうち、中低層階のみの取引をピックアップしたものです。タワーマンションでない広尾ガーデンヒルズとの比較では、その方が適切と思ったからです。

 

@482万円から@590万円の幅で成約になっています。築35年の広尾ガーデンヒルズは、これらに並ぶ価格なのです。

 

●築年数を重ねても価格が下がらないマンションになる条件

さて、築20年、築35年経て価値が下がらない二つのマンションと、一般のマンションとでは、どこがどう違うのでしょうか?既に述べた立地条件の違い以外にはないのでしょうか?

最初から高級マンションだったからでしょうか? 確かにそれもあります。

 

オフィスに近い都心のマンション、邸宅地のマンション、客を招いたときに恥ずかしくない構えとグレードを持つマンション、眺望が良く寛げる空間、癒しをもたらしてくれるような共用施設を擁するマンション、そこに住むことで誇りを持てる格の高いマンションといったように富裕層は言葉に出すか出さないかは別として、このような物件を望みます。

 

しかし、建物は必ず老朽化していく。それを放置しておけば、コンクリート住宅が本来もつ寿命を縮めてしまい、最後はスラムと化すのです。高級マンションとて変わりはありません。

ところが、既に「ヴィンテージマンション」と言われる「広尾ガーデンヒルズ」のようなマンションは、そこに長く住む人が多く、長く住み続けるためにメンテナンスに力を入れている点が共通してクローズアップされます。

 

また、外構部分の、例えば植栽は、時が経てば経つほど木々が育って豊かな緑を蓄え、建物を包んでくれる場合があります。その結果、近くに行ってみると分かるのですが、古さを全く感じさせないだけでなく、緑の多さが目立ち、安らぎ感がある、潤いがあるとでも言えばいいのか、こんなマンションに住んでみたいと万人に思わせる雰囲気があります。

 

広尾ガーデンヒルズも、建物自体は、センチュリーパークタワーとは異なりますし、優劣をつければ広尾の方が劣りますが、立地条件(高台・樹木などが作る環境)はセンチュリーパークタワーを凌ぐ「独立国・別天地」の趣きです。

 

こうした特別の価値を持つマンションは、建物も素晴らしいのですが、それ以上に立地条件(街全体の雰囲気など)が素晴らしいものであることが価格の維持を支えているのです。

 

マンションの価値を左右する立地条件には経年劣化がないこと、すなわち何年経とうと場所の価値は減価しないからです。むしろ、場所の価値は時を経て上昇するのかもしれません。

 

●平凡な物件との差は築年とともに開く

平凡なマンションは、同じエリアにあっても、築年とともに減価して行くので、センチュリーパークタワーや広尾ガーデンヒルズのような減価しないマンションと比べると、その差は開く一方です。

 

広尾ガーデンヒルズとの比較で取り上げた築10年前後の上記物件も高級マンションであり、将来 Vintageマンションになる可能性のある物件も含まれています。築35年を迎えたとき、広尾ガーデンヒルズのような高い価値を市場が認める可能性はありそうです。しかし、立地条件だけに目を向けると、そこだけ別世界とは言い難いのです。

 

差し障りがあるので、具体のマンション名は伏せますが、青山・麻布・赤坂、その他の邸宅地にあっても、価格がとても安いマンションがあります。分譲時も安かったはずですが、リセールバリューは意外なほど低く、ここまでかと感じるほど安いのです。具体的に言いましょう。20%も30%も安いのです。

 

価格の安いマンションはリセールで一段と安くなり、高単価のマンションの方がリセールでは高い価格が維持されるものです。分かりやすく言えば、優良マンションを100で買ったらリセールで150になり、同エリアに80で買ったマンションがリセールでは70になるのですが、邸宅地では、この数字のような極端な差異ができるのです。

 

何が違うのでしょうか?

駅から遠い。谷地にある。首都高速に近接。首都高の下をくぐる。周囲の建物が迫っている。他にもあったと思いますが、このどれかが該当します。

 

どの地域にもありそうなことですが、邸宅地という前提を置くと、買い手の期待を大きく裏切る要素なのでしょう。言い換えれば、邸宅地に求める階層は妥協をしないのです。最後は、安くすることで、邸宅地のアドレスのみに憧れる階層が買ってくれるのですが、結局リセール価格はひどい数字になってしまうというわけです。

 

他の住宅地でも、駅から遠いとか高速道路沿いであるとか、眺望・日当たりが悪いといった条件の物件は安くなってしまうのが普通ですが、条件の良い物件との差異は最高でも20%程度です。地域によっては15%程度の差という例も少なくありません。

 

何処で購入するにしても、物件格差があるのは事実ですが、高額マンションほど選別の目は厳しいことを覚えておくと良いでしょう。

パーフェクトなマンションはありませんから妥協をして選択することになるのは現実ですが、立地条件に関しては極力妥協しないことが大事だと言えましょう。

 

 

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