第611回 リセールの損益分岐点は20%である
- 2018.03.10
- マンションの資産価値
このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論を展開しております。資産価値を重んじる方のための購入のハウツーをお届けするもので、お気に障ることもあろうかと思いますが、満点の家はないと思っていただき、失礼はお許し下さい。
5日おき(5、10、15・・・)の更新です。
高い時期だけに今マンションを買おうとしている人たちから筆者に届くご相談・ご注文の多くは、10年先の「リセールバリュー」を知りたいというものです。
毎日何件も書いて「レポート」をお送りしているのですが、お答えを出すためには様々な視点から調査をする必要があります。大別すると次のような項目になります。
*ご依頼物件の価値判断を行うための近隣物件調査(概要と販売状況など)
*ご依頼物件の概要の把握(交通・環境・建物規模・グレード・間取り・共用部・管理)
*ミクロ市場(ご依頼物件の地域)の供給状況
*ミクロ市場の需要ボリュームなど
そして、10年後の市場予測のもと、当該物件の価値が市場でどのような位置づけになるか、とりわけ高値掴みをしていないかどうかの視点を加えて筆者なりの結論を導きます。
この作業を毎日続ける中で、「共通の答え」がひとつあることに気付きました。今日は、それをお話ししようと思います。
●10年後のローン残債は75%
1000万円を35年ローンで借りた場合、10年経ったときの残債務はいくらでしょうか?
金利を0.8%と1.5%で計算してみると、次のようになります。
0.8%の場合:742万円(毎月の返済額:27,306円)
1.5%の場合:765万円(毎月の返済額:30,618円)
金利が高い場合は毎月の返済額が増えるので、10年後の残債は金利の安い場合とさほど変わらないことが分かります。74%か76%ですから、今後の金利が大きく上昇しなければ、つまり1.5%以内に収まっていれば25%ほど減るということになります。
これには、次のような意味があります。
10年後に、購入したマンションを売却するとしたら、25%値下がりしたとしても残債割れはないのです。これはフルローンで購入した場合ですから、仮に10%の頭金で購入した場合は、35%値下がりしても残債割れはないということになるのです。
●できたら、手許に何百万円か残したい
頭金10%を入れた人は言いました。「次のマンションを買いたいから売却するので、手許に少しでも残ると嬉しい」と。
なるほど、では25%の値下がりで済めばどうでしょう。10%の頭金部分が残りますね。
仮に15%の値下がりで済めば20%近い現金が残ります。「え~、そうなれば嬉しい」と反応した人がある一方、「え~、15%も下がるのですか」という反応もありました。
●諸費用を計算すると20%が目安
いずれにせよ、値下がりの分岐点は25%ということになります。ただし、マンションを売ったら、仲介業者に手数料を3%(+6万円+消費税)支払う必要がありますから、その分も計算しておく必要があります。
従って、ざっくりと言えば20%が目安、それ以上の値下がりのないものが望ましいということになります。
10年経て買い替えをするとき、どのようなものを選ぶことになるのでしょうか?手狭になったから一部屋広いものを買いたいのだ、という場合、場所の妥協をしないとすれば予算は増えると考えるのが普通です。
しかし、年齢が10歳加わったので住宅ローンが35年で組めないかもしれない。組めたとしても完済年齢が定年を超えることに抵抗を覚える人もあるでしょう。そのため、10年先は頭金を多くして短いローンで買いたい。そのためには、10年間に貯金もできるだろうが、売却資金が多い方が助かる。
こんなふうに考えると、値下がりはしない方が望ましい。頭金ゼロで購入しても購入額と変わらない金額で売れたらローン残債が減った分25%から仲介手数料を差し引いた22%がキャッシュして残ることになるので、買い替え資金としては有難い。そう感じるのではないかと思います。
●自宅が値上がりするときは、買い替え先も値上がりしている
地域の妥協をしないとしたら、自分の家が高く売れる市況にあれば周囲のマンションも値上がりしているはずです。
そんなことを思うと、自宅が値上がりしない方がいいのではという考えも浮かぶかもしれません。あるいは、残債割れは困るので値下がりしても20%以内で止まってくれるといいとも。
しかし、欲深い人間は次の買い物のことより、先ずは今の家の値上がりを期待するのかもしれません。
相場が上がっているときでも、例えば築10年の自宅を高値で売却し、買い替え先に築20年を選べば予算の大幅上昇を抑えることもできるかもしれません。
また、10年後に役職が一段も二段も上がって所得が増え、ローンを短く組んでも毎月の負担感は大きくないかもしれません。
場合によっては、少し場所を移動して安いマンションを探すことができるかもしれません。安く買える場所で買えば、将来の資産価値の上昇は期待できないかもしれませんが、その先は夫婦二人だけなので、もう値上がりはしなくていい。いざというときもローンが残っていないはずで、半分になってしまうようなことさえなければいい。こんな考えも生まれるでしょう。
つまり、先のことはわからないので、今の家が値崩れさえしなければいい。できたら値上がりして、手許に大きなキャッシュが残るのが望ましい。こう考えでも不思議ではありません。
100が120なり150なりになってくれたら望外の喜びだが、少しなら値下がりしても構わない。その分岐点は20%である。このような結論になって来ます。
●将来価格を左右する3要素
どのようなマンションが値下がりしにくいのかについて説明しましょう。
(第603回の記事から流用しています)
中古マンションが新築と同額で売れるということは本来あり得ないことです。築2年、3年と若い物件でも、買い手から見れば手垢がついた建物なので、機能は変わらないとしても心理的な価値のダウンが避けられないからです。
ところが、周辺の新築マンションを上回る価格で買い手がつく中古マンションも現実に多数あります。一方、10年も経たないのに購入時の半値になってしまうという実例も多数あるのです。
以下は、値上がりしやすいマンションの条件等について解説したものです。
(1)物件の魅力の差
値上がりするマンションの条件の第一は、周辺の新築物件にない特長や利点があって、中古であることのマイナスを補って余りある物件だからです。
例えば、小型物件の多いエリアにおいて、所有マンションが大規模で様々な付加価値を有する物件であれば、その差別感や存在感が新築・中古を問わず特別なものと認定され、高い価格を付けるのです。
駅直結マンションであるとか、駅に近い立地は便利なものの雑多な環境である場合が多いですが、例外的に緑多い住宅街の入口にあるとか、或いは隣が大型スーパーである、大規模公園に接している、遮るものがない一面オーシャンビュー、といった格別な立地条件の物件も同様です。
これらは、物件固有の条件が中古マンションの将来価値(リセールバリュー:RV)を決めるものであることを指しています。その条件をもう少し分解して説明します。
将来価値を決定する要素は、①立地条件(利便性と環境)、②スケール(存在感)、③外観・玄関・空間デザイン、④建物プラン(共用施設、間取り、内装や設備など)、➄ブランド、⑥管理体制です。
この中で一番比重が高いのは①の立地条件なのです。立地さえ良ければ建物は何でもいいという単純なものではないのですが、大きな要素であることは確かです。逆に、どんなに素晴らしい建物でも立地条件の悪さを補うことはできません
(2)需給バランス
また、当該エリアで新築の供給が殆んどないとか、あっても比較対象にならない物件ばかりという場合は、期待以上の価格になることがあります。
例えば、80㎡以上の広さを求めても、新築に70㎡台までの売り物しかないという場合や、駅近の物件を探したが、徒歩15分以上の売り物しかないというとき、80㎡以上の物件所有者、あるいは徒歩5分の物件所有者には有利に働きます。
これらを一言で表すと、「希少価値」ということになります。
中古マンションの価格は需給関係で決まります。新築の供給が少なければ、中古が取引の中心になり、上質な中古物件は新築並みの価格になるものです。人気の高い街や駅周辺で、新築の供給が何年も途絶えていたりすると、過去の新築相場を超えてしまう高値の中古マンション取引が生まれます。
また、ある面積帯の物件が稀少という場合、上述のように、その面積帯だけが高い価値をつけることもあります。
(3)価格変動のタイミング
中古マンションは、平均的には20年もすると新築相場の半値くらいになるものですが、タイミングによっては需給バランスが変わり、高値になったり安値に戻ったりするのです。
新築価格が急騰している時期に売り出すと、割安な中古に需要が向かうので、中古が引っ張り上げられる恰好となって上昇するのです。固有の条件は「平凡」の域を出ていない物件であっても、期待できるのはこのケースです。過去にも、その恩恵に浴することができた人・物件は多いのです。従って、売り出しのタイミングが重要と言えるのです。
ただ、市場全体で価格が上がってしまうと我が家が値上がりして喜んでも、買い替え先の物件も値上がりしている可能性が高いことを忘れてはいけません。しかし、タイミングと買い替え先の選定によっては、恩恵に預かれる可能性が残ります。例えば都心のマンションが値上がりしていても、横浜はまだ値上がり前夜ということもあるからです。
つまり、不動産は広域で一斉に値上がりすることはないのです。
繰り返しますが、中古マンションの価格は新築価格に連動します。新築が上昇中のときは、割安な中古に需要が向かいます。すると、やがて中古も値が上がるのです。築20年の中古マンションは新築の半値程度になるとはいえども、新築相場が2倍になっていれば、購入価格から見れば値下がりしない理屈になります。
(4)購入価格
最も大事な要素は「購入価格」です。価値に見合わない高値で購入(高値掴み)すれば、どれほど立地が良くても、また建物が立派でも将来価格は期待外れになります。
今(21018年)は2013年から続く高値の時期に当たっているので、例外なく高いマンションを買ってしまうことになりそうです。
反対に底値のような時期に購入した物件なら、次の上がり相場のときに売れば、平凡な物件でも値上がり益を得ることができるのです。
最近の売却者で2005年ころに購入した人は、購入価格より売れて喜んだことでしょうし、もっと極端には2012年ころ(今回の上がり相場の前夜)に購入し、4年後の2016年に売却した人は20%も高く売れて(5000万円が6000万円になって)ホクホクだったはずです。しかしながら、それでも物件固有の格差が大きかったことは事実です。
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さあ、あなたが選ぼうとしているマンションの将来価値はいくらか。その課題にぜひ取り組みましょう。
・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。
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