第759回「中古マンション・安心マニュアル」第5部~その価格は妥当か?

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論「マンションの資産価値論」を展開しております。10日おきの投稿です。

タイトルにあるように、このシリーズは「中古マンション」を検討する買い手の立場に立ち、注意点と選び方を細部に渡ってまとめたものです。

マンション購入を考える・選ぶ段階にある読者の安心につながる指針となるよう、日頃の活動の中からまとめたものです。 

今日は価格の是非について解説します。  

●中古住宅の価格は何で決まる?

新築住宅の価格は土地代+建築費+諸経費+利益から成り立っているのに対し、中古住宅は少し事情が違います。   中古マンションは、①物件個別の条件+②周辺の市場動向+③売主の事情=価格と考えられます。

それぞれについて解説します。  

①物件の個別条件

中古住宅は大半が個人売主ですから、事業として売買を行なっている業者のように、諸経費・利益を最初から見込んでいるわけではありません。また、建物も既に建っていますから、良い点もアラも見えてしまいます。

  基本的には、立地条件と広さなどによる土地評価額と、築年数や建物グレード、広さなどによる建物評価額の合計が中古住宅の価格と考えられますが、マンションの場合には、土地と建物を区分して評価することはしないのが普通です。 また、マンションの場合、管理状態が加味され、価格に影響します。

②市場動向

周辺の新築マンションの発売が多いとき、マンションを探している購入希望者の多くが新築に流れるため、中古マンションは値下りしやすくなります。   また、同じマンション内でいくつも売り出される住戸がある場合、急いで売りたい事情の売主が価格を下げてしまうことで値崩れを起こしやすくなります。  

付け加えると、周辺だけでなく、首都圏全体、あるいは全国の広域で需要が後退しているときも、中古住宅の価格は弱含みとなります。   一方、新築・中古ともに売り物が少ないというときは、価格は強含みになります。

 

マンションブームなどで、売り出す新築マンション・中古マンションが次々に完売してしまうといった状況のときは、思い切った強気の売り出し価格で出しても、あっと言う間に買い手がつくという場合もあります。  

③売主の事情

新築住宅は予め販売価格が設定されていますが、中古は売り出したあと、購入希望者との交渉で最終的な価格が決まる場合が多くなっています。

  そのため、売主が何らかの事情で早く売りたいと考えている場合には、かなり安く買えるケースもあります。買い替えなど、移転先の事情で売主が急いでいる場合などが、よくあるケースです。  

●掘り出し物はあるか

激安の中古物件は、購入した後に耐用年数の限界が近い設備を取り替えたり、床と壁の張り替えたりといった大きな修繕費が必要になるかもしれません。

  築年数が古いマンションを購入すると、古い設備の交換が間違いなく必要になり費用がかさみます。   共用部については、修繕計画書が作成されていなかったり、作成されていても長期計画に沿った修繕が行われていなかったりする物件は珍しくありません。

築年数の古いマンションは、大規模修繕が既に行われているかどうかが重要なチェックポイントです。   一見して安いと感じる中古マンションには、安いなりの問題があると思うべきと言えます。  

●格安マンションを探してはいけない

ときどき格安マンションについてのご相談を受けます。そんなとき、とても暗い気分になります。

 

理由は、格安物件なのに「良い物件を選ばれましたね。前進しましょう」と言えないからです。   客観的に判定すると、格安物件といえども「良い物件」にはならないことが多いのです。

  筆者は常日頃「格安マンションは止めた方がいい、高い物件を選ぶ方が正解」と主張しています。その理由を先ず説明しましょう。  

①格安マンションの多くは立地条件に問題がある

バス便マンションは、人気が二分されます。バス便に抵抗があるため、検討はしても最後は見送るという結論に至る人も多いのです。

 

売れ行きも芳しくない物件が多く、建物完成後は大幅な値引きを余儀なくされるというのがお定まりのコースです。 新築マンションのことですが、バス便マンションは、格安にしたつもりでも売主の期待を裏切る結果となってしまうのです。言うまでもなく、中古も同様です。

 

  これに対し、最寄り駅から近い、概ね5分以内であるのに格安という物件をときどき見かけます。例外もありますが、首都圏郊外の駅近・格安マンションは人気を集めて短期完売という、売主デベロッパーにとっては笑いを堪えられない良好な成果となることが稀に見られます。

 そのような立地なら、中古マンションとして売り出したときも比較的高値で売れる可能性はあるのです。  

 

さて、郊外の駅近マンションという、その駅はどのような駅なのでしょうか?格安価格で分譲できるということは、言うまでもなく、都心へのアクセスが良くない駅です。各駅停車しか止まらない駅、始発駅でもない、幹線鉄道でなく支線・枝線の駅、乗り換えの不便な路線etc.  

 

それだけではありません。郊外だから環境は良いだろうと想像しがちですが、実際に現地を確認すると、あまり好ましいロケーションではないケースも多いのです。 畑と雑木林、住宅地と工場や倉庫・資材置き場等が雑然と混在する未整備な街、ローカル色の濃い駅前商店街といった光景が代表的で、いわく言い難い風景・環境なのです。  

 

このような立地は、現地を訪れると落胆してしまうものですが、安さに惹かれて買ってしまう人がいるのも事実なのです。  

②格安にできる理由

そのような場所であっても「駅近で格安」、一見して「普通以上の価値ある建物計画」ゆえに、人気を集める物件は、何が魅力なのでしょうか?  

相場を下回る安値であること、具体的には、本線・幹線の物件に比べて20~30%も安い印象を与えています。本線・幹線の物件が4000万円というとき、同じ面積で当該物件は3000万円前後、1階住戸などは2800万円といった低価格です。  

 

さて、そのような価格はどのようにして実現したのでしょうか? 土地の取得費がとても安いこと、表面的な建物品質(モデルルーム)は普通レベル、見えないところでは低品質にしてコストを抑えています。

  土地代が安いのは、規模が大きいため買い手がつきにくいこと、環境的に難のある場所にあること、この二つが理由です。   広い土地であれば、スケールメリットが生まれて建築費も抑えやすいのです。駐車場も金のかかる機械式にせずにすみます。また、広い土地は買い手が少ないので安く取得できるものです。  

③格安マンションは将来の売却価格も安い

首都圏の新築、中古の両方を見ていると、大雑把に言って、高額マンションほど値上がりし、安値のマンションほど値上がりしないことに気付きます。

  その実態から、郊外の、立地条件に問題ありそうなマンションを安値に釣られて買ってしまうと、のちのち後悔することが多いと覚悟しておくべきと筆者は助言します。

 

  銀座の土地は売り地自体が滅多にないものですが、売り地があれば坪1億円出しても買いたい人(法人)が常にいます。そんなに高い価格で購入して採算が合うかと疑問を持つ向きもありますが、銀座は採算だけではないようです。

 

  マンションも同じで、換え難い価値の場所があり、その場所では、30年以上前の古い物件であっても、新築マンションと変わらない価格の人気マンション、今やヴィンテージと呼ばれる物件も都区内にはあるのです。

  坪単価で言えば@500万円以上、分譲時の価格を超える中古の億ションです。 それでも、「そのマンションに住みたい、価格はいくらでもいい」といった需要があるのです。  

 

この反対の位置付けにあるのが、格安・郊外マンションなのです。いくら安くても結構だ、というわけです。   高いマンションは、ますます高値になり、安いマンションは買い手を見つけることすら難しい。このように考えるほかないのです。  

●とびきりの安さは「安物買いの銭失い」の恐れも

不動産に限らず、価格の安さは商品を購入する際、確かに魅力のひとつになるものですが、安さだけで飛びつくと結局は後に大きな損失につながることもあるという「先人の知恵=安もの買いの銭失い」を思い出して、慎重に選びたいものですね。

 

  中古マンションで価格が飛びきり安い物件は、必ず安いなりのデメリット・短所があるものです。その疑いを持つことが大事です。 森羅万象、物事には、何ごとにも裏と表、メリットとデメリット、長所と短所、美点と欠点があるものです。綺麗なバラには、トゲがあります。その反対も当然あるわけです。  

 

マンションも同じで、安いのは何か問題があるのです。ところが、その問題に気付かないで買ってしまう人が少なくありません。正確に言えば、目で分かる問題点には気付くが、それ以外の隠れた問題点に気付かないということです。  

 

さて、とびきり安い中古マンションは、どのような物件なのでしょうか? 築年数の古いものが中心であることは間違いありませんが、その中でも下記のような条件が売値を押し下げています。

 

 ◆立地条件に問題がある・・・最寄り駅からの距離が遠い。例えば徒歩15分もかかる。駅に近い商業地にある場合では、周囲の建物が接近していて、簡単に外部侵入を許してしまいそうな位置関係と建物構造になっている  

◆築年数・・・1981年以前の建築確認物件は「旧耐震基準」で建築されているため、耐震性に懸念がある  

◆共用施設・・・集会室すらない。ロビーやエレベーターホールなどが狭い。駐車台数は、ほんの2~3台分しかない。(自分はクルマを利用しないから関係ないという判断は問題あり)  

◆外観デザイン・・・30戸もないような小型マンションで、何の装飾もない平板な感じであるとか、タイルも張っていない、バルコニーの手摺りはアルミ製の安ものの印象であるといったもの。玄関の構えも貧相であるなど。  

◆共用設備・・・共用玄関がオートロック式でない、防犯カメラが未設置など、セキュリティに懸念がある。共視聴用のBSアンテナがなく、各人各様バルコニーに取り付けているため、美観を損ねている  

◆室内・・・・・日当たりが悪い。中には半地下のような物件もある。梁が低く下がり、部屋が分断されるように圧迫感ある構造。全体に天井が低い。玄関が狭く下足箱も小さいなど、顔が悪い。 古いから設備も悪いのは納得するとしても、インターホンがテレビモニター付きでないのは防犯上やや心配。バルコニー面のサッシ高が1.8メートル以下。 バルコニーの出幅は1メートル程度しかない。キッチンがオープン(丸見え型)。間口が狭く、居間が窓に面していないので暗い。洗面所やトイレが極端に狭い。収納スペースが少ないなど。  

◆その他・・・無名の売主が分譲したいわゆる「ノンブランドマンション」。施工会社も二流以下。管理人が常勤していない。大規模修繕工事が終わったばかりでもないのに、修繕積立金が少ない。

  ・・・・・こうした条件の内、中古である以上、いくつかは割り切って譲歩するしかないものもありますが、その中で「ここだけは妥協したらダメ」というのもあるのです。 ここでは詳細を述べませんが、長くこのブログをご愛読いただいている読者の中には、もうお分かりの方もいらっしゃることでしょう。

 

  内装だけ綺麗にリフォームして、例えばトイレはシャワー付きにし、台所はシステムキッチンに交換するなど、新築同様に化粧した中古マンションを見て気に入ってしまい、購入に走るという話はよくあります。   しかし、冷静かつ客観的な物差しで価値判断しておかないと、ただ安いに飛びつくと結局は高い買い物になる危険があるのです。  

●ワケあり物件にも注意

ワケあり物件にも注意しましょう。ワケあり物件とは、「事故物件」、「定期借地権物件」、「任意売却物件」などのことで、詳しく言えば次のようなものになります。

 

  「事故物件」は、室内や敷地内などで自殺、他殺、事故死といった死亡事故があったものです。心理的瑕疵物件とも言います。事故物件は業者から知らされないこともあります。業者自身も知らないことがあるからです。  

定期借地権物件」は、期限が延長される「普通借地権」と異なり、期限延長がないので、残余期間が短くなるに連れて物件価値は下がる一途だからです。  

任意売却物件」とは、住宅ローンの返済ができなくなった所有者が、債権者(銀行等)の意向に従う形で売却を急ぐケースの物件です。法的な強制売却に当たる「競売」の対義語として使われる用語が「任意売却」です。   事故物件とは言いませんが、上階の騒音など居住性が悪くなって転居を図っている場合もあります。これらを確認するのは大変難しいことです。持ち主に聞くのも抵抗のある問題かもしれませんから、管理人さんと、同階の近隣、上下階の近隣住人に尋ねるのが一番です。

仲介業者に依頼して調査したいものです。  

 

新築の場合は、工事中ということもあって契約や引き渡しまでに時間の猶予があり、ことなきを得る場合も多いのですが、中古物件は即時契約、短期引き渡しのスケジュールに乗せられてしまいがちです。そのために、「しまった」と気付くのが遅れるということがあります。   「冷静沈着、客観的に判断を」と言っても現実は難しいかもしれませんが、そんなときは、筆者のような立場の者を利用するのも方法です。  

●中古は買うなら高値の物件を!!

マンションは立地条件が全てと言っても過言ではないのです。 都心は高い。駅近は高い。人気のある街は高い。みんな場所の値段です。  

大手デベロッパ―の手になる優良な物件だから建物コストもかかっている、だから高いということもありますが、ここでは立地条件だけに限定して説明します。  

 

人気のある場所では、なかなか売り地が出て来ません。たまに出たら、競争入札で高値の取引が成立し、取得したデベロッパ―はそれでも強気に企画し、高額マンションを売り出します。すると、滅多に売り物のない新築物件ということから、あっという間に完売してしまいます。  

 

こうした場所は、需要に比べて供給が少ないのですから、当然の結果でもあるのです。人気の街では、新築がないなら中古というわけで、中古マンションも高値取引が当たり前になっています。   また、そのような街では中古の売り物も実はあまり出ないのです。高く売れることを知った所有者は、売ってしまうと次にここで買いたいというとき買えなくなる恐れがありそうだと考えます。こうして、売らずに賃貸して転居する人も多いからです。

 

  場所が良ければ高いけれど、それを買っておけば将来の資産価値は高くなる。だから安い物件を探すのではなく、高い物件を探すスタンスが望ましいと言えるのです。  

勿論、人気エリアというだけで建物プランがよろしくないものもありますし、価格も妥当とは言えない物件もあります。また、人気の街とはいえ、ピンポイント的に良いと言えない場所もあります。そうした基本のチェックは必要なのですが・・・  

●高いと感じた物件を買う前に

中古マンションは、価格の妥当性が分かりにくいと聞きます。WEBサイトに出ている情報は「売出し価格」であって、成約価格でないからです。

 

 成約価格は一般に公開されていないので、指標探しは同時期に売り出されいる近隣物件と比較してみるほかありません。   しかし、これを実際にやってみると明快な答えにはならないと感じるはずです。

同時期に、同一エリアで、同年代の物件が都合よく売り指されていることは稀だからです。  

 

国道交通省の公開データ(下記のwebページ)から丹念に事例を拾って見当をつけることは可能ですが、この情報も個人情報秘匿の観点から不明箇所が多く、検討している物件情報にたどり着くのは簡単ではありません。 (https://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet)  

 

では、どうやって調べればいいのでしょうか?方法はREINZの成約済み情報を把握できる不動産流通業者か当職のような関連事業者に調べてもらうほかありません。

中古の売却を持ち主から依頼された仲介業者は、売り出し価格を決めるに当たってREINZで調べ、「この価格で売り出されてはどうでしょう」と提案するのが常道です。

  売り手は、もう少し高く売れないのかと打診し、依頼を受けた仲介業者は「では、5%オンでいかがですか?」などとやりとりして、売り出し価格を決めているので、相場より高めで売り出されている中古物件も多いのですが、ざっくりと言えば売り出された価格の95%が適正な市場価格と見て良いのです。  

●はじめから安い物件を探す行動は間違いを犯すかも?

「高いと思う物件は、高いなりに良い物件」なのです。ただし、念のため添えますが、新築の話ではありません。新築は売主デベロッパーの採算を重視した価格と言えますが、中古は、買い手主導の価格と言って間違いではないのです。  

言い換えれば、買いたい値段・買っても良い値段を買い手が決めているようなものであり、購入価格がいくらであったかなどは、買い手は斟酌しません。

5000万円で買ったから6000万円で売りたいなどと売り手が希望しても、相場が4000万円なら4000万円前後が市場の価格なのです。

 

売り手は、それに従うしかないからです。   相場として新築並みの高値の中古物件もありますが、その価格は売主の一方的な思惑で決めた価格ではなく、ほぼ市場で通用する価格なのです。

高値の中古は、価値ある中古、大勢の買い手が集まる価値ある中古なのです。   安い物件はないかと探し回る行動は、ときに間違いを犯す危険があります。誰もが認める優良な高値中古マンションを探す行動が求められます。 「掘り出しものはない」そう思うべきです。  

・・・第5部はここまでです。次回、第6部をお楽しみに。

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