第745回 「持ち家希望者が増加中。コロナ禍の副産物か?」

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論「マンションの資産価値論」を展開しております。10日おきの投稿です。

三井不動産リアルティ社では、昨夏ころから同社にアクセスする購入希望者が30%余も増えているのだそうです。     これは、筆者宅に投函された同社の「中古物件売出し広告(チラシ)に記載された情報です。筆者の調査では、中古マンションの成約件数も売出し件数も増加していないので、希望者が増えているだけということになります。     買いたいが、良い物がないという状況にあるということかもしれません。ともあれ、中古市場が活性化しているのは確かです。  

●コロナ禍が郊外居住を後押しするか?

コロナ禍が在宅ワークを推進し、持ち家希望者を側面から応援するなどという皮肉な現象をもたらしているようです。というのも、在宅ワークが増えて、現在の住まいは狭すぎると感じて広い家への転居を考える人が増えているからです。    

*近年、広さを犠牲にして都心や駅への近さを優先して来た住まい選びに変化が見られる昨今ですが、今後は都心志向から外周部志向へトレンドが大きく変わるのでしょうか?    

*筆者は、外周部志向というトレンドが進むという意見に与(くみ)しません。 一部で、郊外居住を志向する動きがあることは確かなようですが、その部分だけを見て全体を語るのは早すぎると考えるからです。      

*一部の企業で郊外拠点を設けているという情報もありますし、インターネット&PCの活用でコミュニケーションを図りながら仕事を進めているのは確かですが、都心の本社や中核拠点への通勤がなくなるわけではないはずです。    

*住まいは郊外でよいと割り切ることができる人は、果たしてどれだけ増えるのでしょうか?足元では結構な数であるとしても、首都圏住民の郊外移住の大きな波となるかはまだ見通せません。バブル期にも郊外移住の潮流はありましたが、結局は都心回帰となって今日に至っているのです。    

*IT化が進み、自宅でも仕事ができる時代となって、様相は大きく変わりました。社内会議も一堂に介しないでできる時代ではありますが、直接会って顔を見ながら、話をしたり、部下に指示を出したり、仕事の進め方を教えつつ成果を出して行く旧来型の仕事に慣れて来たビジネスマン・ウーマンが、成果を求められる社会では、在宅ワークで全てOKとはならないはずです。    

*また、職種的に在宅ワークが困難な人も少なくないはずです。共働き夫婦にあっては、夫が在宅ワーク可能としても、妻は困難な職種という場合もあるはずです。  

●在宅ワークに伴いマイホーム購入を考え始めた人が増えているが

ともあれ、在宅ワークが週2日なり3日なりと、足元では普通のこととなり、そのために狭い家から広い家に転居を考えている人が増加中――この傾向は間違いないようです。    

*また、広い家を探す際に、賃貸マンションを見たら家賃のあまりの高さに驚き、買った方が得策かもしれないと「購入」へ舵をきった人も増えているようです。    

*毎月のローン返済金額を見たら、家賃と変わらないか、むしろ少ないこともあると気づき、大きく購入へ傾いて行きます。しかし、検討始めの初心者ですから、判断基準も確固たるものではありません。どんな点に注意したらいいのか、五里霧中の状況にある人が多いはずです。    

*目先のことだけで選ぶというわけには行かないが、かといって、どんな物件が価値の高い物件なのか、予算はどの程度にしたらいいのか、いざというとき転売は容易か、転売できるとしても大幅安などということはないか等々、不安の種は尽きません。  

●マンション選びは「出口」を考えて

コロナ問題が在宅ワークを促進させ、会社員のマイホーム購入熱に火をつけたのは確かですが、購入に当たって忘れてならないことは「出口戦略」です。不動産の欠点は、売却が簡単でないことです。また、首都圏には大きな需要があり、買い手には困らないというものの、物件の選別の目は厳しいのです。    

*年間の新規売却登録件数は不動産流通機構(レインズ)によれば、2020年の場合で、18万件もあった一方、成約件数は3.6万件に過ぎないのです。 つまり、売れたのは20%だけだったのです。    

*買ったマンションを売却する必要に迫られたとき、いつまでも買い手が付かず、たな晒しになる危険があることを知っておかなければなりません。そのリスクを大きく下げたい人は、購入時に価値ある物件を選択しておくことが大事になります。  

  *「駅から10分」を選択条件に挙げる人に何百人も接して来た筆者は、「駅から5分。他の条件との絡みで妥協するとしても7分」と決まり文句のようにお伝えして来ました。価値あるマンション、競争に勝てるマンション選びの条件は、他にもいくつかありますが、駅から遠い物件は避けなければならないのです。  

●立地条件の良し悪し。そのほかのポイント

立地条件の良し悪しは駅からの距離だけではありません。 沿線の人気度=駅力(えきりょく)も軽視できません。23区内でも、気を付けたいエリアや駅はないわけではありません。    

*駅に近い・環境が良いというミクロの条件も大事なのですが、それ以前に「街の魅力・人気度・将来性」というマクロの尺度が大事です。それが駅力です。    

*駅力とは、人気沿線かどうか、急行停車駅かどうかなどですが、駅周辺に豊富な買い物施設、飲食店等が軒を並べているかどうかなどとのトータルで計られます。一言で表せば「賑わい」です。  

  *ちなみに、リクルート社が毎年調査して公表している「住みたい街ランキング」の上位に挙げられているような駅が良いと言えます。首都圏は駅の数が多いので、ベスト100以内にあるような駅が良いと言っておきましょう。  

●建物条件は?

立地条件が良ければ建物はどんなものでも良いのでしょうか? そういって過言ではありませんが、将来価値に影響する建物条件もあります。    

*第一に挙げたいのは、「スケール感」です。大規模な建物が良いということです。例外もありますが、小型マンションの多くは貧相です。大きいほど、堂々として存在感を発揮します。    

*「大きい・小さい」の基準ですが、「高さ」と「戸数」で表すこともできますが、絶対的な基準があるわけではありません。 周辺の街並みとの関係で、大規模のようでも目立たない物件もありますし、中規模でも非常に目立っている例もあるからです。 とはいえ、敢えて言うならば「10階建て・百戸以上のスケール」が最低条件と言えるでしょう。  

●将来価値(リセールバリュー:RV)を決定する要素

将来価値を左右する条件を整理すると、①立地条件(利便性と環境。マクロ的な人気度)、②スケール(存在感)、③外観・玄関・空間デザイン、④建物プラン(共用施設、間取り、内装や設備など)、⑤ブランド、⑥管理体制です。    

*この中で一番比重が高いのは、繰り消しになりますが①の立地条件なのです。立地さえ良ければ建物は何でもいいという単純なものではないのですが、大きな要素であることは確かです。  

  *逆に、どんなに素晴らしい建物でも立地条件の弱点を補うことはできません。 また、稀少価値の高い土地(環境・スケール等)かどうかの観点で検討することも大事です。  

●最も大事な要素は「価格」

物件価値が相対的に高いと思われるマンションも、価格が高過ぎれば将来価値は期待薄です。高値の物件が、10年経て人気が高まり、一段と高値になった物件もないことはないのですが、これは例外中の例外です。  

  *相場が既に高い人気エリアの物件は、何年か経過して高値を維持し続けていても、期待したほどではなかったとするなら、分譲時の価格が数年先の先取り価格だったということになります。  

  *ときどき発表される「駅別のリセール価格&値上がり率」を眺めて分かるのは、人気エリアの人気物件でも、一本調子に値上がりするわけではないということです。分譲業者は、人気を煽るために都合の良いデータを探して買い手向けに提示しますが、それを鵜呑みにするのは危険です。   

*人口が頭打ちになり、減少方向に向かう日本では、たとえ首都東京といえども、成長する地域、人気上昇の駅は多くありません。雑誌等に「将来が期待される街」として紹介されたときは既に高値になっていると思った方が良いのです。    

*賭けの類を苦手とする筆者は「無難な選択を推す」傾向があると、知人がコメントを寄せてくれましたが、それはともあれ、既に人気のある街を選べばケガはないはずです。    

*新築マンションの販売広告には、売り手のセールストークがふんだんに盛り込まれていると言えますが、中古マンションの広告ではセールストークは抑え気味です。少なくとも派手な煽り文句は滅多に見られないのです。

    *高値をつけて売り出しても、買い手が付かなければ下げざるを得ず、結果的に中古マンションは適正価格に収斂(しゅうれん)して行くものです。そのためもあって、中古マンションは「高過ぎず・安過ぎず」の価格で成約して行きます。    

*一方、新築マンションの価格は一旦公表して契約がある程度まで進んでしまうと、それ以降の値下げはできないのです。安めの価格が好評で契約が思いのほか早く進んだ場合などは、値上げする例があっても、その逆はないのです。先行契約者からのクレームを恐れるためです。    

*昨年の統計数字を見ると、新築マンションは一段と高くなりました。なかんずく23区内は前年比11%(単価比較)も上昇したのです。 買いたいが買いにくい、今はそんな時期に当たっていると言えるのかもしれません。  

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