第771回「30戸以下の小型マンションを考える」

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論「マンションの資産価値論」を展開しております。10日おきの投稿です。

最近のご依頼は、何故か「小型マンションの購入相談」が続いています。 今日は、改めて小型マンションの良し悪しについて述べようと思います。  

 

小型・中型・大型に定着した基準があるわけではありません。地方都市では大型でも首都圏では中型と言うべきマンションも多いのですが、ここでは50戸未満のマンションを小型として先に進めます。  

●同じ30戸でも低層か高層かで見映えは変わる

小型マンションとひと口に言っても、その形状によって大型に見えるものがあります。同じ30戸でも、例えば「ワンフロア3戸並び」の11階建てマンションでも、街並びによっては威風堂々の姿に映ることがあります。

 

結局、大小は相対的なものとも言えます。   ともあれ、小型マンションは存在感が薄いものが多いのです。とりわけ、東京都区内では、高層マンション・ビルが林立している街が多いため、30戸程度のマンションでは、存在感の観点では残念なマンションというほかないのです。

 

  法的用語でマンションは区分所有建物ですが、所有権はマンション全体に及びます。要するに、外観もエントランスホールも、エレベーターもひっくるめて自分の家なのです。「登記上、区分されるだけ」と言って過言ではありません。  

 

そう考えると、マンション全体の大きさも価値の大小に結びついて来ることが理解できるはずです。個別の住戸がコンパクトでも、マンション全体の外観やエントランスホール、共用の庭や共用のスタディルームや子供の遊技場といった共用施設が付加価値として評価されていることも理解できるはずです。  

●小型マンションのデメリット

今日は小型マンションの話題なので、まずは小型マンションのデメリットを挙げてみましょう。  

 

第一に、日常管理が万全とは言えないことを挙げるべきでしょう。 管理人が滞在していない「巡回管理」体制である場合が多いからです。  

 

管理人の給与は、管理会社から支給されますが、支払い原資は管理費収入です。大型マンションなら、全住戸から収受できるのでトータルの収入も大きいですが、小型マンションは収入が少ないので、管理報酬も少なく、管理人給与分に回せる予算が取れないのです。  

 

例えば、管理人さんの1か月平均給与を30万円として、30戸のマンションなら平均1万円以上の管理費を各戸から取る必要があります。100戸のマンションなら平均3000円ですみますが、30戸のマンションの場合は7000円も高い管理費を設定しないと、管理人への給与支払いができません。  

 

大型マンションなら、毎月15000円で済む管理費も、小型マンションでは22000円にしなければならないのです。   マンション管理には、管理費だけでなく修繕積立金も必要です。管理費との合計で3万円にもなります。それが4万円、5万円ともなると、販売にブレーキがかかるという理由から、管理費等を極力抑えたいという発想が生まれます。

 

そこから、管理人給与の少ない「巡回方式」にするのです。   巡回管理でも大きな問題が直ちに発生するわけではありませんが、細やかな気配りが行き届かないことから、長い間に建物の劣化は進み、また居住者サービスの行き届かないマンションは評判を落とし、売却する際に安値になってしまう可能性が高まるのです。  

 

例外があるとしたら、超高級住宅地の中の、いかにも邸宅と言える戸建てが並ぶ一角の低層マンションです。 このような立地では高級高額マンションとして建てられることで、購入者も高所得者が多くなります。そのため、管理費等が高く設定されてあっても、販売に与える影響度は小さいので、管理人の勤務が8~10時間体制であったりするのです。  

 

富裕層が買うような高級マンションでない場合は、毎月負担の管理費等を抑えようと管理人不在マンションにして見かけの管理費等を抑制してしまう分譲業者が多くなっているのです。  

●小型マンションのメリットは?

「隣の人は何する人ぞ」・・・がマンションの良い面であるものの、大規模マンションになると、廊下やエントランスホールで出会っても挨拶も交わさないような例も少なくないのが実態です。その点、小型マンションは時間の経過に伴って隣人としての程よい関係も構築できて行くものです。  

 

大型マンションでは「隣の人は・・・」をなくすために、ときおり住民同士の交流会イベントを催すのが一般化していますが、共働き世帯が増えているせいもあって、積極的にイベントに参加する人はあまり多くないとも聞きます。

 

  その点、小型マンションは自然に全世帯と顔なじみになって行くようです。筆者も一時、小型マンションに住んでいたことがありますが、深夜帰宅の多い筆者は感じなかったものの、妻はほぼ全住戸の住民と挨拶を交わし、何階の誰それと認識していたようです。  

●小型マンションを建設するとき;デべロッパーの立場から

マンション開発の側に立って「小型マンションの功罪」を整理してみましょう。

①建築費が割高になってしまう

小型マンションは、どうしても建築費が割高になってしまいます。

 

例えば、60戸のマンションも30戸のマンションもエレベーターは1台なので、小型マンションは建築コストが割高になってしまうのです。   エントランスのロビーや集会室といった共用部も1戸当たりにすれば僅かなものが、小型マンションでは軽視できない面積比率になってしまうため、切り詰めを図ろうとします。

 

その結果、通過するだけの省スペースの共用部分に成り下がってしまうのです。  

②販売費用が少ない

マンション販売に必須の広告費や販売資料(パンフレット等)は、小型だから少なくて済むというわけではないのです。大型マンションは戸数が多いので、長い時間を要しますが、小型だから短時間で完売できるというほど単純でもないのです。  

 

別棟のモデルルームを用意する費用が取れないケースも少なくありません。仕方なく、建物が完成してからの「本体内のモデルルーム」で販売を始めたりしますが、これが功を奏するとは限らないのも事実です。   むしろ、欠点・弱点のある住戸を露呈させてしまうので、全戸完売までに長い時間を要することも少なくないのです。

 

  経験則として、それを知る売主業者は、早い段階で近くの貸しビル等に「サンプルルーム」と称する小型の「モデルルームまがい」を設営する道を選択したりします。この分の経費が販売価格にONされ、割高な商品となってしまうことも少なくないのです。  

④分譲価格が高くなりがち

マンションの価格は「土地代(用地費)+建築費+広告費等の販売経費に期待利益を加えて設定されますが、土地代が小型だから安くなるとは限りませんし、建築費に至っては先述の通り割高になりがちです。

 

  このため、小型マンションは割高になって行きます。付加価値が少なく、価格だけが中型マンション並みになってしまえば、割高と見なされてしまいます。  

⑤工事期間が短いが、実物を見せながら販売を進められるのがメリット

小型マンションは施工期間も短くなるのが普通です。マンション販売は戸数が多いほど長い時間がかかるので、工事が完成するまでに完売させたい売主は、工事が始まって間がない段階から売出しを始めます。

 

  30階建ての超高層マンションでは、3年余の工事期間があるので、販売期間も長く見ることが可能ですが、30戸足らずの小型マンションでは、長くても1年程度の期間しかありません。   戸数が少ないのだから、短時間で完売可能と思われがちですが、コトはそう単純ではありません。工事期間が短いため、竣工時期までに完売できないことも少なくないのです。  

●小型マンションの資産価値

買い手の立場に戻りましょう。 小型マンションの場合、外観から受ける印象は「威風堂々」からは遠く、建物が竣工したときに、残念な思いを抱くことになりがちです。  

 

ところが、新築住宅を手に入れた高揚感から冷静さをなくしているためか、そこに気付かない買い手さんも少なくありません。 残念な思いを抱くとしたら、それはずっと後のことで、人によっては売却に出したとき気付かされたという例も少なくありません。  

 

売り出し価格は売り手の希望で決められるとしても、買い手が現われなければ希望価格を下げざるを得なくなります。 威風堂々から遠い外観、狭い共用部などを見せられた見学者は落胆し、「価格が安ければ・・・」という気分にさいなまれます。  

 

結局、売り手は価格の下方修正を強いられるのです。  

●安値で買えるならリセールも心配ないのでは?

こうした心配をしなければならない小型マンションは、買うとしても「より安く」を目指す、すなわち価格交渉がカギになるのです。これが上手に、力強くできるならば、買っても良い物件もあるかもしれませんが、売り手デベロッパーの壁は厚く高いものです。  

 

チャレンジしてみて難しければ手を出さない方が良いというほかありません。少しくらい安く買えても、小規模マンションの市場評価は低く、将来価値に期待を持てないことが多いからです。  

 

ここでは具体のデータをお見せすることはできませんが、大規模マンションは分譲時に高くても、売却時の価格上昇率が高いので、損する確率も低いことがデータで証明できるのです。  

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