第618回 仲介業者の熾烈な戦いの陰で!!

このブログは5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論を展開しております。資産価値を重んじる方のための購入のハウツーをお届けするもので、お気に障ることもあろうかと思いますが、満点の家はないと思っていただき、失礼はお許し下さい。

 

(株)大京穴吹不動産は4月1日、同社が仲介するマンションの売り主を対象に、無償インスペクション付き仲介サービス「住まいるチェック」を開始するというニュースがありました。

 

「構造耐力上主要な部分」「雨水の浸入を防止する部分」「給排水管路」に対し、インスペクションを無償で実施。建物引き渡し後に不具合が見つかった場合の補償費用をまかなう「既存住宅売買瑕疵保険」の基準に合格しているかについても無償で調査・判定するとしています。

新規に専属専任または専任媒介契約(3ヵ月)を締結し、初媒介価格(売出価格)が同社査定額の120%以内であることなどが条件。インスペクションサービスについては広さや築年数は問わない。調査は、大京グループの(株)大京リフォーム・デザイン一級建築士事務所が実施するとのこと。

 

仲介業各社は、他社との差別化を次々に打ち出してきましたが、大京の新サービスもその一環です。

今日の記事は、このようなサービスの裏側を筆者なりの視点で覗いてみたものです。

 

●大京の買い替えサポート

大京穴吹不動産は、買い取ったマンションに最長2年、そのまま住みながら次の家をゆっくり探すことができるというサービスも

打ち出しています。

良いサービスではあるのですが、買い取り価格のレベルが問題です。住み続ける間は賃料を払うのは当然としても、大京は高く買ってくれるわけではないからです。大京は安く仕入れてリニューアルした後に販売するのが目的です。

 

単なる仲介は最大6%(+12万円)と法律に定められていますが、買取再販の場合は仲介でなく自社物の販売なので利益を20%なり30%取っても違法ではありません。利潤を追求する企業の当たり前の行動です。

 

リニューアルするとバリューアップされた商品になるわけですから、相場より高くなってもおかしくはないのですが、仕入れを安く、リニューアル費用も安く抑えることが必須です。しかし、元の所有者は安く売るでしょうか?

高く売りたいが、即金で買い取ってくれるなら安くてもという人もあるようです。

 

●仲介業者の付帯サービス

仲介サイトでは、三井不動産リアルティ社(リハウス)が画像のような「360度サポート」をはじめとして、東急リバブルも住友不動産販売も類似のサービスを打ち出していますから、大京穴吹不動産のニュースは驚くに値しないのです。むしろ遅いくらいの感じもします。

 

(画像出典:三井不動産リアルティ社のHP)

 

これらの仲介付帯サービスの目的は顧客獲得作戦の一環であることは間違いないのですが、ここで言う顧客とは買い手だけのことではありません。

 

仲介ビジネスは、売買が成立すると、売り手からも買い手からも手数料3%(+6万円+消費税)を受け取ることができます。

 

売り手と媒介契約を交わした業者が買い手を自ら見つけることができず、他社が買い手を見つけた場合でも、成約になれば売主から仲介料を受け取ることができます。

もし、買い手を自ら探すことができれば、買い手からも手数料を受け取れます。これを両手取引と呼び、最大の6%(+12万円)を取得できるのです。

 

大手仲介業者はその知名度を生かし、常に両手取引を狙います。売りの依頼(媒介契約)を多数取れれば、買い手を見つけられなくても、星の数ほどある同業他社が見つけてくれるので、それこそ寝ていても3%の手数料は稼げるというわけです。

 

売主から見ると、大手の方が顧客の獲得も上手だろうし、希望に近い価格で売ってくれるのではないかと期待し、大手に依頼を出す傾向があります。買い手も、大手の方がたくさんの売り物件を抱えているだろうし、大手の店舗と接触をした方が得ではないかと考えます。

しかも、先述の各種サービスがあるので安心して購入できると考えるでしょう。売主も仲介大手が引き渡し以降のクレームや補償なども引き受けてくれるなら面倒がなくていいと考えます。

 

こう考えると、仲介の世界はますます大手の寡占化が進んで行きそうな予感すらします。しかし、コトはそう単純ではありません。

 

中小・零細仲介業者も様々な営業努力を続けていますから、それなりの顧客を獲得しています。1社あたりにすれば少ないかもしれませんが、業界全体としては大手数社を超えるに違いありません。

大手の打ち出している各種サービスにしても、様々な条件があってキャッチフレーズから受ける印象と実際は乖離がありますし、高く・うまく・スピーディーに売ってくれる業者を求めていますから、全ての売主が大手に売却依頼を出すわけでもありません。

 

買い手の立場でも、インターネット時代の今日、物件を探すにはSUUMOやHOMESなどのポータルサイトを利用するのが一般化しているので、大手も中小もサイト上では公平に扱われます。サポート付きか否かについて軽視はできませんが、優先するのは物件価値の方です。つまり、業者ありきではなく、物件ありきなので、大手のHPにアクセスして物件を選択するとは限らないのです。

 

結局、仲介業者にとっての生命線は優良物件の媒介契約をいかにたくさん取って来るかに懸かってくるのです。言い換えれば、優良な物件の売り依頼を獲得するかに業者同士がしのぎを削っているのです。

 

大手の中には、ホームステージングという新築のモデルルームのように室内を飾って販売を請け負うことを他社との差別化策として実績を上げている業者もあります。

しかし、大手が絶対とは言えないのではないか、そう考えている売主も少なくありません。実際にも、大手が3か月の媒介契約期間中に売り切れなかったため、失望した売主が中小業者と契約を結び直した例は無数にあるのです

 

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閑話休題。仲介業者の行動を見る機会が、この数年増えた筆者ですが、この業界には制度的に矛盾する問題と体質的に古臭いと感じる部分があります。前者は「双方代理」であり、後者は「営業マンのコンサル能力の不足」です。以下で詳しく解説しましょう。

 

●双方代理の矛盾

正確には民法の規定する代理人ではないのですが、それに近い利益相反の行為が普通に行われています。

 

不動産仲介業は売主の依頼を受けることで、買い手に対しては売主に委託された販売員となります。売主の立場で物件のセールスをするだけなら何も問題ないわけですし、オーナーは何とか高く売って欲しいと期待し、販売を任せます。

そこに、その物件の引き合いが入り買い手と対面します。ところが、内覧してもらったが気に入らないという、営業マンは売り手の立場で説得を試みるものの、うまく行かない。買い手は、値段を下げてくれたら買ってもいいという。そこで、営業マンは買い手側に立ち位置を転換し、売主に「000万円にしてくれたら買ってもいいと言っていますが、どうしますか?」などと打診します。

 

売主も多少の額は覚悟していたが、金額が大きい場合は拒否します。営業マンは取引を成立させようと売主を説得しかけます。すると、売主は「いったい君はどっち側の人間かね。買い手さんを説得して、満額とは言わないが希望価格に近い値段で売るのが責任ではないのか」と指摘します。

「短い期間に15人も引き合いがあって、内覧者も12人だったよね。なぜ売れないの、価格が高過ぎるというのなら考えるがね」

 

この話は、筆者が相談を受けた実話です。

 

筆者は仲介業務の実務は経験したことがありません。しかし、いろいろな機会から実務の断片は知っているつもりです。仲介営業と新築マンションの営業はまるで違うということも理解しています。と同時に、売主の立場、買主の立場を使い分ける仲介営業に違和感を覚えるのです。

 

どうやったら高く売れるかという立場の売主と、どうすれば良いものを安く買えるかという立場の買主は利害が対立するのですから、仲介の営業マンは行司役になるということでしょうか?それは違うような気がします。

 

仲介営業とは、売主の立場でできるだけ希望条件で売れるよう努力し、買い手さんに対しては、条件と合致しなければ別の物件を懸命に探して紹介をし、期待に応えることです。無論、紹介する物件は他社が扱うものや自社の他店が取り扱うものにすることにするべきなのでしょう。

 

●仲介営業マンのコンサル能力の不足

広告を見た顧客から問い合わせがあったとき営業マンは当該物件を直ちに内覧へ誘導するのでしょうか?

問い合わせ客には、「直ちに内覧したい」という人もあれば、内覧の前に予算や希望条件のことで相談したいという人も多いようです。そこで担当者は先ず来店を促します。

来店時に問い合わせ物件は内覧できるようにしておきますが、その前後にコンサル営業を行います。

 

ここが問題の場面です。というのも、顧客(買い手)の基礎知識がどの程度のレベルなのか、問い合わせ物件が顧客にふさわしいものなのかといった把握・分析が的確にできる営業マンは果たしているのだろうか?そんな疑問が消えないからです。

 

買い手に予備知識がないのに、これは良い物件ですよと言ってみても何がどう良いか分からないのですから、説明の方法に工夫が必要です。

今、買うべきときなのだろうか、少し待った方がいいのでは、このマンションは本当に安全なのか、価格は適正なのか、高過ぎるような気もする」といった疑問を持っている買い手も多いのです。その疑問に的確な回答を与えることも必要なのです。

 

例を挙げるとキリはありませんが、営業マンの多くが「腑に落ちる答え」を導けないようです。というのも、筆者のところに寄せられる相談の多くは、営業マンが担うべき類だからです。

営業マンは、本質的に「自分に不都合なことは言わないもの」です。嘘は言えないが「ダンマリを決め込む」のです。それは、そういうものだと理解できても、買い手が求めているのは隠す必要がないテーマなのです。

 

「インターネットに今は買い時ではないと言っている人がいますが、どうなんでしょうか?」と尋ねられた営業マン何と答えるのでしょうか?「そんなことはありません」くらいは言うかもしれませんが、その根拠を納得できるように理路整然と説明できる営業マンは少ないようです。

 

高くないですか?と聞いたときも、長所のみを強調して高いという買い手の思い込みを打ち消そうとするようですが、買い手は納得していないのです。

営業はある意味でコンサルタントです。中古であろうと新築であろうと同じです。買い手のあらゆる悩みと迷いを解消しつつ、まだ見えない最適商品を探し出して勧める。商品を勧めてからも買い手から新たに発生する疑問・不安を全て取り払うのが本来の仕事ではないかと思います。長い間、筆者はそう考えて来ました。

 

しかし、その期待は長年裏切られて来たのです。だから、筆者は「代わりを務めよう」と考えて「三井健太のマンション相談室」を始めたのです。読者の皆さんも、営業マンには期待しない方がいいのかもしれません。専門家に聞けというブログの中で、営業マンも専門家のひとりと書きましたが、たまたまの担当者が専門家と言える資質・知見を持っているとは限りません。

筆者のブログのご愛読と相談室で用意した各種メニューをご利用になって後悔のないマンション選びに役立てて頂ければと思います。

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。

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