コンパクトマンションは将来高値で売却できるか?

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています

2000年頃から、都区内中心にコンパクトマンション(専有面積30㎡台~50㎡台のマンションと定義される)の供給が増えて来ました。毎年8,000戸前後(2003年が13,000戸だったが、これを除くと毎年5,000戸台~8,000戸台)の新規供給があり、着実に単身者のニーズを獲得して来たと言われています。

ご承知のように、日本では初婚年齢が年々上昇し、また結婚しない男女も増えています。男女雇用均等法が誕生して以来、女性の総合職の道が開かれ、管理職に就く女性も増えました。相対的に高所得の女性が増えているのでしょう。
そうした女性の中からマンションを購入する人が増えて来たのです。もちろん、結婚しないのは男性側も同じですから、独身男性が購入する例も増えました。
特例措置で住宅資金に関する贈与税が大幅に軽減されたことで、親等から頭金の援助が受けやすくなったことも一因です。

●購買動機
ところで、かつては少なかった独身者のマンション購入。その動機は、どのようなところにあるのでしょうか?
男性と女性とでは若干異なりますが、「資産を持ちたい」や「老後の安心感を得たい」、「家賃が勿体ない」が動機3本柱と言われています。
「資産を持ちたい」は、結局「老後の安心感」につながるので、動機は二つかもしれませんね。
ある人がこんなことを言っていました。「長い人生を共に歩む伴侶がない人は、代わりに心の拠り所としてマンションを持つのだ」と。

●購買物件の傾向
東京圏でのことですが、購入する対象マンションは、結婚した場合を想定してファミリータイプの3LDKを選択する男性も少なくはないものの、一人暮らしに大きな家は要らないとコンパクトタイプを購入する男女独身者の方が多いようです。
特に女性のほうは結婚したら不要になるので、貸しやすさを考慮して便利な立地でコンパクトマンションを選択する傾向が強いと見られます。
実際にも、結婚を機に賃貸に出したり、売却したりという例がたくさんあります。
さて、売却する場合ですが、コンパクトマンションは高値で売れるのでしょうか?その点を検証してみましょう。

尚、結婚という動機に限らず、何年か経つと売却の希望が出て来ることもお伝えしておきますね。それは、もっと広いマンションに移りたい、地震が怖かったので「より安全なマンション」に住みたい、この二つが2011年の買い替え理由で目立ちました。

●コンパクトマンションの中古価格
専有面積別の価格維持率という統計があります。これは、東京カンテイ社が提供しているデータの中に登場して来るものです。
およそ10年前に分譲された23区のマンションが中古として今いくらしているかを調べたもので、分譲時の価格を100としたときの現在価格を百分率で示しています。それを面積別に示したのが以下のデータです。
(注)このデータは、それぞれの年における市場全体の平均価格を比較したもので、特定物件の10年後価格を調査したものではありません。

30㎡未満:68.1%/30㎡台:82.8%/40㎡台:98.7%/50㎡台:101.0%/60㎡台:98.2%/70㎡台:96.5%/80㎡台:98.0%/90㎡台:100.4%/100㎡以上:104.9%

10年を経た中古物件が、総じて今も高価格を維持していることを示していますが、その中にあって30㎡未満、40㎡未満の物件は水準が低いですね。しかし、40㎡を超えて来るとほぼ分譲の価格と変わらない売値で売却ができていることになります。
(正確に言えば、この数字は売り出し価格なので、実際の取引価格はこれより5~10%下となります)
この数字から何を読み取りますか?
コンパクトマンションも、狭過ぎるのは不人気ということでしょうね。

●東京圏はコンパクトマンションの需要が増える
中古マンションの価格は、需給関係によって決まる部分が大きいと考えられます。それはファミリーマンションであろうと、単身者用マンションであろうと同じです。では、コンパクトマンションの将来はどのような需給関係を形成するでしょうか?
先ず需要ですが、東京都の推計人口予測では、今後、単身世帯と夫婦のみ世帯が増えるとあります。特に単身世帯は、2005年時点の約250万世帯から、20年後の2025年(今から13年後)には約290万世帯に大幅増となっています。
高齢化と人口減少が社会問題と言われる日本ですが、東京に関しては全く逆の動きになると見込まれています。このため、マンションの需要に関しても増加傾向を予測することに無理はないと言えます。特に単身者が増えると予想されているのです。
ここの単身世帯とは、高齢者も含むため、必ずしも全てがコンパクトマンションの購入予備群とは言えませんが、結婚しない若者の増加もあると予測していることから、大きな需要増加を予測することはできそうです。

●供給量が増えて、中古市場にも多数流通するようになったら?

一方、新規供給はどうでしょうか?新規供給とは、新築マンションの開発と中古流通量の増加の両面を見る必要がありますが、市場変化を嗅ぎ取っているマンション業界は新規供給を増やして行くに違いありません。
東京では超高層マンションの供給が主流になっており、下層階にはコンパクト住戸を配置する傾向が続くでしょう。
一方、まとまった大きさのある建設用地の取得に悩む業界各社は、100坪を切るような狭小敷地も拾い集め、そこにコンパクト住戸ばかりを商品化する傾向も続くと考えられます。
コンパクトマンションは、昼間いない住人を対象に販売するため、交通便さえよければ向きや環境などは二の次でよいと考える傾向が強いため、都心部の商業地のヘタのような用地を取得して開発することでしょう。

中古マンションの流通戸数も、これまでの新築供給が少なかったために売り出される中古も少ないと考えられます。そのことが高い中古相場を形成して来たのですが、今後は次第に状況が変わって来るでしょう。
新築の供給が増えて中古の買い手が新築に流れることが予想されること、新築が増えれば数年遅れで中古も出物が増える可能性が高くなると予測できます。

新築と中古の合計で供給が増えれば、価格は弱含みになることが考えられます。

●これからは、よく吟味して選択しましょう
業界各社の動きを見ると、交通便さえよければ何でも良かったコンパクトマンションが、最近はファミリーマンション同様の差別化が研究され、工夫の足りないコンパクトマンションは販売が困難になっています。
特に付加価値を付けにくい小規模マンションは売れないのです。
タワーマンションの中に配されたコンパクトマンションは、建物全体が豪華で立派であるうえ、共用施設・設備が全く異なるため、付加価値は高く、比較にならないほど値打ちがあります。
そのような物件は、少々価格は高いかもしれませんが、将来の売却を考えるとお得なケースが多いものです。その逆に、購入時に安い物件を選択すると、そのツケが将来回って来ます。
今後は、利便性や価格、専有部分の内装や設備だけでなく、マンション全体のグレードや共用空間などにも目を向けて選ぶようにすることが肝心になるでしょう。

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