新企画・防災マンション激増の2012年
- 2012.05.30
- マンション設計
ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。
3.11東日本大震災から1年以上が経過しました。一時販売がストップ状態だったマンションも昨年夏以降は回復傾向を見せるようになっています。
そんな中で特筆したいことは、地震関連の新企画が急増していることです。例えば、耐震性の問題から免震構造や制震構造を採用した物件も少しですが増えている印象があります。
大型の物件は当然としても、中小型の物件でも免震構造にしたものが見られるようになりました。ただ、期待していたほどの数でないのが残念です。やはりコストの問題と規模によっては許認可スケジュールが大幅に遅れてしまうことがネックなのでしょう。
急増したのは、防災用品の備蓄という企画です。こちらは導入が比較的容易だからでしょう。備蓄するには、そのスペースとしての「備蓄倉庫」を必要とするので、分譲する予定の住戸面積を削らなければなりません。そうなると、利益が減ることにもなるでしょう。また、当然ながら防災用品を提供する必要もあります。そのコストも利益を減らすことになります。
しかし、昨年3.11の時点で既に着工していた物件でも可能な限りの対策を追加してから売り出されたものが見受けられるほどで、顧客ニーズの変化を敏感に感じ取ったマンションメーカーの素早い行動であったと言えます。
代表的な物件が、野村不動産の「プラウドタワー東雲キャナルコート」でした。工事中に液状化対策の追加や、長時間稼働が可能なエレベーター用自家発電機の追加、5~8階ごと計9か所の防災倉庫の設置、家具転倒防止用金具を設置できる木製下地(したじ)を住戸内の壁に設置といった内容です。また、防災ガイドブックなるものを購入者全員に配布するというサービスも加わっています。
このような防災を意識した新企画は、新規着工マンションに例外なく取り入れられている印象を受けます。
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3.11地震は未曾有の津波被害と原発事故を招き、被害を拡大しました。その余波が今も続いていることは国民なら知らない人はいません。喉元過ぎて熱さを忘れた感のある人さえ、電力不足の影響に関しては意識せざるを得ないのでしょう。
「節電効果」や「省エネ」「創エネ」のマンション設備も、大いなる関心を呼ぶようです。マンションメーカーも、その面でのアピールに抜かりはなく、「年間電気料が〇〇円節約できます」と謳っています。
●玄関そばのトランクルームに防災用品をセット?
玄関横にあるメーターボックスを拡大してトランクルームとしている企画が時折り見られます。ここは本来、汚れたサッカーボールやベビーカーを保管することに使うものと考えられますが、いずれは防災用品の置き場にした企画が登場するかもしれません。
地震でドアが変形しても開かなくなる心配は少ない設計になっていますから、外へ避難する必要があれば、このトランクルームから備品を取り出すことができます。全戸同じ品が備えられれば、鍵をかけずに保管しておいても問題はないはずですし、真剣に検討しているマンションメーカーもあるようです。
●非常放送装置付きマンションも誕生か?
宮城県で自治体職員が「津波です。急いで避難してください」の放送を、危険を顧みずに繰り返して犠牲になったという悲しいニュースを覚えているでしょうか?
あの放送で助かった町民がたくさんあったという事実から、各階廊下などに非常用スピーカーを設けるマンションも現われるかもしれません。
防災マニュアルに基づき、放送を通じて避難誘導する役目が管理人に期待するようになるのかもしれません。
●見せかけだけのお粗末な防災対策マンションも
例外なく防災対策を施していると述べましたが、その内容はピンキリです。大型物件では本格的に、かつ大掛かりに装備していますが、中小型の物件では「ないよりはマシ」という程度のお粗末な内容も見られます。
1階の管理人室横に小型の倉庫を設け、その中に最小限度の防災グッズを押し込んでいる形態であり、どこまで議論して誕生した企画かは疑問です。
「他社がやっているからうちも」という横並び意識や、「最低限は無いと売れないのでは」という企業競争での恐怖感がそうさせるのでしょうか?
防災対策で優先すべきことは耐震性の強化など他にあり、備蓄倉庫を設置して終わりではないはずですが。
――――ともあれ、玉石混交ながら「防災対策済みマンション」が激増することになりそうです。トイレが当たり前に洗浄タイプになり、共用玄関が例外なくオートロック式になったのと同様に、「防災対策」はマンションの必須アイテムになるかもしれません。
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