進化しないマンションの玄関とトイレ
- 2012.01.20
- マンション設計
ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。
「住んで気付くマンションのダメ間取りと名作間取り特選50」はご案内済み(こちら)ですが、その中で「玄関」と「トイレ」に関して触れた部分があります。
今日は、そこに付随するお話しをします。
先ず「玄関」です。広告で間取りの魅力をアピールするとき「〇〇メートルスパン」と表示している例にお気づきかと思いますが、これはワイドな間口のプランが少ないことの裏返しなのですね。つまり、マンションの間口(スパン)は、6.5メートルから 高々7.0メートルくらいしかなく、極端に言えば「うなぎの寝床」などと揶揄される細長いタイプが多いのです。
玄関ドアをはさんで左右に個室を配するレイアウトの場合、間口が狭いと、どうしても玄関と奥のリビングに至る廊下の幅が犠牲になってしまいます。(下図参照)
間口が広ければ、玄関の幅も思い切って広げることができます。全体の面積に余裕があれば、幅だけでなく玄関の靴脱ぎスペースと玄関ホール全体を広げることもできます。
玄関部分や廊下を広く取れば、その分だけ他の面積が犠牲になってしまいますから、限度はありますが、設計者や企画担当者は、そのあたりをバランスよく決めているのですが、簡単な接客にも使える椅子を1脚置けるくらいのホールが理想的です。
理由は、以下のようなものです。
①玄関は家の顔だからです
玄関が広いと、さぞ家全体も広くて立派に感じてもらえるもの。それが単なる見栄だと批判する向きもあるでしょうが、人間の普通の心理です。住まいに限らず、人はお洒落に暮らしたいという欲求があるはずです。また、賃貸住宅では味わえない贅沢気分を具現化するためのマイホームであっても良いはずですし、それを取得した人が満足感に浸ることを誰が非難できるでしょうか。
②帰宅した瞬間の開放感を得られるからです
玄関ドアを開けると、いきなり贅沢な空間が広がり「ウチに帰ってきた~」という感覚に包まれ、リラックス気分に浸ることができるというもの。
できるだけ「玄関」のワイドなマンションを見つけるようにしましょう。
次は「トイレ」です。
他のスペースが極端に犠牲になるほどアンバランスにトイレを大きく作る必要はないですが、マンションの間取りを長年見ていて、いつも「のけもの」扱いで、最も貧弱。それがトイレのしつらえの実態です。
水を溜めるタンクの上に手洗いが付いている昔のタイプは、さすがにモデルルームでは見られなくなりました。代わりに小さな手洗い器が脇の壁に付けられています。さらに、少しグレードの高いマンションになるとお洒落な「タンクレストイレ」が装備されています。
しかし、トイレのルームとしてのサイズは相変わらず昔のままです。幅は90センチメートル、奥行きは1.35メートルという標準サイズから抜け出ていないのです。
このサイズは、便器の端からドアまでの距離が55センチから60センチという最低の寸法を確保するに過ぎません。つまり、用を足す最低限の広さしかない。それが普通のマンションの姿なのです。
マンションの場合、トイレは旧式の日本家屋のように陰にあるものではありません。大体が部屋の真ん中か、玄関に近い位置にレイアウトされています。そして、常に清潔に保たれています。予備のトイレットペーパーや掃除用具は収納庫に隠され、臭いもなく、花で飾ったり、手洗い器の前の壁に鏡を張ったりする家庭もあります。トイレで新聞を読んだりする人もあると言います。こうして、トイレは「不浄」の場ではなく、小さな個室のひとつのような扱いを受けます。
そんなトイレなら、訪問者に使ってもらっても恥かしいことはなさそうです。しかし、「狭さ」だけは、もてなしの気持ちと合致しない気がするのです。
私の個人的な特異な思想でしょうか?「トイレは少し贅沢にすべきだ」と思うのです。
これも単なる見栄でしょうか。トイレは英語でRest roomと言います。つまり、休憩する部屋なのです。用を足し、化粧を直したり、みづくろいを確認したり。本来は、そんな場所です。客にくつろいでもらうホスピタリティの精神から、家庭のトイレも少しはRest roomの雰囲気があってよいのではないかと思うのです。
ウチは来客がないから不要という人はそれでも良いですが、たまのことでも客を迎えることがある人は、トイレの在り方を考えておくべきと思うのです。「いくら立派な居間や応接室で接遇しても、裏に回ったら粗末な部屋(トイレ)だった」となるのは、いかがなものでしょう。
最初から最低の大きさしかないという物件(大半がそうですが)の場合は、できたら設計変更を要求してみましょう。さまざまな制約があるとは思いますが、「玄関」同様に「トイレ」は、住まいの満足度を高める重要な部分です。是非検討してみましょう。
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