第704回 「マンションの間取りについて改めて考えてみよう」

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。

あけましておめでとうございます。本年も変わらずご愛読を賜りますようお願い申し上げます。

早速ですが、今日はマンションの間取りについてのお話しです。参考になれば幸甚です。

最近10年くらいのことでしょうか? 魅力的な間取りが見られなくなってしまったなあと、とても残念な気持ちになります。デベロッパーさんは、意に反して魅力的な間取りを作らなくなったようです。背景には、建築費の上昇があるようです。直近では用地費の上昇も加わって、魅力的な間取りを創出できなくなったのです。

少しでもコストを抑えよう、縮減しようとしてきましたが、最近10年余の傾向は、間取りまで手をつけようになってしまったようです。要するに金のかかる複雑な間取りやコストが余分にかかる間取りは極力作らないというトレンドがマンション業界に定着してしまったのです。

かつてデベロッパーに在籍し、マンション開発(設計・企画)にも携わった筆者は、間取りを考案するのが大好きでした。詳細は割愛しますが、筆者の考案した間取りが業界で手本になり、やがて定着したアイディアもいくつか残ったことは密かな自慢です。

営業部門に居たときに買い手の声を直接聞いたことが、開発部門に異動してから役立ったものです。価格の壁を感じながら、また開発上の法的な制約を受けながらも、どんな間取りが売れるだろうかと日夜考え、設計に生かそうとしたことが思い出されます。

さて、最近の新築マンションの広告を見ていると、「魅力的な間取り」が少ないなと思ったり、全く進歩がないだけでなく、退歩していると感じることすらあります。建築コストの抑制が避けて通れない命題になってしまったからでしょう。

新築マンションは当分の間、優れた間取りの登場は期待できないのだろう、そう思わざるを得ません。マンション選びの条件は買い手の事情によって異なるものの、間取りは買い手共通の選択テーマのはずです。

小家族は小家族なりに、若い人は若い人なりに、またシニアはシニアなりに、望む広さや間取りの志向、好みは違いますが、そのニーズに応えていくのがデベロッパーの使命ではないかと思うのですが、最近の新築マンションには期待できないと言わざるを得ません。

一方、中古マンションに目をやると、ときどき「よく考えられた優良な間取り」に遭遇することがあります。マンションの間取りについて書いて行きます。

●玄関側の部屋の窓にある目隠しは何とかならないものか

縦長の長方形住戸がずらりと並ぶマンションでも、両端の部屋に限れば、左または右と、縦方向の計3面に窓が設けられ、いわゆる「三面採光」の優れた間取りになります。

そのせいで、角部屋は人気が高く、価格が少々高くても買い手が殺到します。

しかし、角部屋以外は縦長で、玄関側の個室と反対側のバルコニー面の個室・リビングルームの2面のみが窓付きです。玄関側は通行人の視線を避けるためにうっとうしい柵や目隠しが設けられています。

●全戸角部屋の問題点

ときどき「全邸角部屋」を謳うものに遭遇します。角部屋は魅力的です。しかし、「木を見て森を見ず」ではありませんが、全戸が角部屋マンションというのは問題物件であることが多いので、注意しなければなりません。

それに気付かない人もあるので、少し指摘させてもらいましょう。全戸角部屋というのは各階の平面積が狭いことを意味しています。1フロア当たりの戸数が2戸なら、どちらも角部屋です。3戸でも向きを変えれば3戸とも角部屋にすることは可能です。4戸でも同様です。

しかし、1フロアに3戸とか4戸しかないのは、要するに小型のマンションです。全体戸数で30戸前後なのです。その全体像を思い浮かべると分かりますが、ペンシルマンションと形容せざるを得ないのです。

分譲マンションは風格も重要なテーマです。価値あるマンションは威風堂々なのです。

●アルコーブのない間取り

アルコーブや専用ポーチ付きというマンションがあります。

一方、廊下から見て、全く窪みのないマンションがあります。最近の新築マンションの中には、アルコーブもポーチもない平板な間取りすも見かけます。

●室内廊下が短く狭い間取り

たまに見かけます。その分、居室が広いことを強調して販売しています。しかし、利点・長所があれば、必ず欠点・短所もあるのです。

●ホテルライクな内廊下タイプにも問題がある

ホテルライクな快適設計の「内廊下タイプ」をどう思いますか? 1階の共用エントランスに到着したら、あとは風雨にさらされずにすむのが「内廊下タイプ」のマンションの長所です。

しかし、メリットがあればデメリットもあるのが世の常です。内廊下に面して窓を取ることはできないので、窓無し「行灯部屋」ができてしまうことが多いのです。

●来客時、立ち話の玄関から居間が見えてしまう

玄関に訪問者が立ったとき、ドアを閉め忘れて、中が丸見えになる瞬間に遭遇することがあります。このような間取りは多いものです。リビングルームの扉を閉めればいいのですが、「うっかり」は人の常です。

「どうなっていれば覗き見が避けられるか」ですが、その答えが「クランクイン」です。しかし、これを採用すると廊下が長くなってしまい、全体の面積を広く設定しないと良いプランになりません。面積を広くすれば価格が高くなり、販売が難しくなる場合があります。マンション業者の悩みどころです。

●玄関が狭いと、家全体が狭く見られる

限られた面積の中に効率よくレイアウトしようとする結果、しばしば玄関スペースが犠牲になります。高級マンションでは、幅も広くて大きな玄関の靴脱ぎスペースがあり、かつその先(ホール)にはソファを置いてちょっとした接客ができるくらいの面積があります。

そこまでは必要ないという方でも、「せめてもう少し」と感じる幅の狭い玄関が多いのが実態です。

●デッドスペースのリビング内廊下

マンションの間取りをよく見て行くと、やがて誰でも気づくのが、畳数表示の錯覚です。リビングダイニング約13.5畳などと表示してあっても、これには実質的に通路でしかない部分もカウントされているということです。

つまり、13.5畳と書いてあっても、使えるスペースは11.5畳しかないといった例は普通にあります。これを「リビング内廊下」と呼びます。。

これができてしまうのは仕方ないのですが、一見してリビング内廊下がなさそうなタイプでも、考えてみると、各個室に向かうには居間の中に通路を確保しなければならないので、実際はたいして変わらないのです。

●間取りのチェックポイント

ここからのは、間取りを見る際に注意したい点を紹介して行きます。

①正方形のLDKは家具配置がしにくい・

②壁面が少ないと家具が置きにくい

③Wベッドは両脇40cm以上のスペースが必要

シングルベッドなら問題はありませんが、ダブルベッドの場合、片側を壁に押し付けて置くとどうなるでしょうか?想像していただければ分かると思いますが、奥に寝る人はベッドの上を這う恰好になる場合があります。

④トイレは便器の先端から壁またはドアまで55cmが最低の基準。

長身の人や体の硬い人の場合は、できたら65㎝は欲しいものです。普通の体格の人でも、65㎝以上が望ましいのです。。

⑤物入れは全部の大きさより、必要な場所にあるかどうかが大事

⑥角部屋は窓が多いため家具が置きにくいこともある

⑦個室が連続していると家族間のプライバシーに問題が生じる?

子供が小さいうちは、二つの洋間を一つにして使う方が良いかもしれませんが。

⑧廊下側の居室は声が外にマル聞こえ

気を付けたい点です。

⑨南向きの場合、共用廊下側の北向き居室は暗くて寒いと思いましょう。

⑩女性の多い家族の下足箱はすぐ一杯になると思いましょう

⑪洗濯機置き場は扉を設ける方が上品

扉は邪魔だという声もありますが、できたら扉付きが「綺麗」を保てるはずです。

⑫トイレに手洗い兼化粧台(鏡付き)があると訪問客に喜ばれる

⑬玄関が狭いと、家全体が狭く見られる

 採光窓のある明るい玄関は狭さも緩和してくれるのですが・・・

⑭大梁が部屋の真ん中近くを走っているのは最悪

梁下の寸法は2,000㎜程度しかないと圧迫感が生まれる。背の高い人は、頭がぶつかりそうに感じることも。「梁下寸法」のチェックは怠りなく・・・

⑮柱は部屋の外が基本(アウトポール設計)

 柱の出っ張りがない間取りもあるのです。家具配置がしやすくなるでしょう。

⑯サービスルームやフリールーム表示は、窓が小さく法定の採光量が不足していることを意味している

新築マンションの場合、実物の確認ができないため、購入時点ではチェックできない場合があります。

⑰ワイドスパンは廊下が短くなる

リビング内の廊下がないので、デッドスペースが少ない。しかし、必ず居間を通らないと自室に行けないデメリット(メリットと言える場合も)がある。

 

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「対面相談」もご利用ください。お申込みはこちらから(http://www.syuppanservice.com

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