新ブログ「間取り名作選」を始めましたが・・・
- 2017.03.05
- マンション設計
このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。
この記事はマンションデベロッパーの企画担当者並びに図面を引く設計士さんに届と願いつつ書き下ろしたものでもあります。
実務経験を持つ筆者は、したくてもできない制約の存在をよく知っています。法的制約は当然ですが、大きな壁はコストであることも。しかし、顧客ニーズを無視してよいわけはありません。
最近(2010~2015年)の間取りは、明らかに退歩してしまったように感じます。一部のデベロッパーに、コストの壁を越えて少しでも住みやすい快適なプランを提供しようという動きがあることは認めますが、ドラスティックなプラン、少なくとも昔から評判の高かった、今も変わらない優良な間取りプランは影を潜めているのが現実です。
マンションを購入する立場から見ると、立地条件が優先しますし、間取り選びは後順位になってしまう人が多いのであり、最後は妥協を強いられる要素になってしまうようです。買ってくれたとしても、決して満足して選択した間取りでないことに着目しなければなりません。
もちろん、作り手も「つまらん間取り」と自覚しているのかもしれませんが、実にありきたりの間取りばかりです。
筆者が別で運営しているブログ「三井健太の名作間取り選」を見て頂くと分かるはずですが、古いマンションの中に優良な間取りが多く見られます。
ときの移り変わりは、人の好みもライフスタイルも変わって行くことを示します。しかし、不易流行という言葉があるように、今も変わらないものがたくさん残っているはずで、マンションの間取りにおいても普遍的な要素は少なくないはずです。
どうして時計の針が逆回りしたかのような「つまらん間取り」ばかりが出て来るのか、理解に苦しむ物件を見かけるたびに残念な思いにかられます。
例えば、アルコーブを止めてしまった間取りを見ると、コストダウンのためだろうとしか推測できませんし、これだけでコストが一体いくら上がるのか、多額ではないはずだ、それでもそうしてしまうのは、きっと他もコストカットしているのだろうと疑わざるを得ないのです。
ゼネコンとのネゴシエーションに臨んだ経験から言えるのは、予算内にコストを抑える最後の策は設計変更になるのです。設備・仕様のランクをA級からB級に落すことや、採用そのものを止めてしまうことです。
その結果、遮音性能や断熱性の低い建物となり、ドアハンドルなどの金物のデザイン性が低くなったり、床暖房のない部屋になったりします。
ドアハンドルをA級からB級品にしたところで、1住戸にしたら僅か10,000円違いであっても、そうした設計変更を数多く実行すると全体では巨額となり、営業サイドから要望される販売価格に近付けます。
一方、アルコーブがない間取りや直貼り床などというのは、設計の初期段階から予算オーバーを見越してプランニングしたものである公算が高いのです。
敷地条件から羊羹切りになってしまうのは、ある程度しかたない部分であることも、理解はできます。昔から存在した課題だからです。
しかし、それでも課題を克服して優れた間取りプランを生み出すべく先人は努力をしたのです。あの精神はどこへ行ってしまったのでしょうか?
先に紹介させてもらった筆者のブログをご覧いただいた方から、いくつか感想を頂きました。「昔はこんなに素敵な間取りがあったのですねえ」――これが共通です。
アルコーブの取り方にもこだわろう――彫りの深い顔か平板な顔か。どんな表情の家にするかを考えてデザインしよう。
玄関灯のデザインもおろそかにしないで。
角住戸は門扉付きのポーチを取りたいものです。
子育て世帯にベビーカーの収納を考えてあげよう・ゴルフをしような世代が対象ならバッグを仕舞うスペースを考えよう・女系家族は靴が多い――だから「シューズインクローゼットが必要になるのです。
玄関の幅は廊下と同じ1000ミリ+下足入れの幅分、合計1400ミリでは魅力はない
玄関ホールと廊下の幅が同じ「寸胴型」はできるだけ避けたい。ホールは可能な限りワイドに。
玄関からストレートにリビングに向かう廊下は、奥が丸見えになってしまうので、可能なら「クランクイン」にしたい。
玄関脇の寝室のひとつが主寝室という場合、廊下から可能な限り遠ざける配置としたい。プライバシー確保のためである。
WIC(ウオークインクローゼット)より幅広のI型クローゼットの方が良い場合もある。
布団収納を忘れてはいけない。
ダブルベッドは必ず両側を40cm以上空けて置くのが基本と考えて主寝室サイズを決めよう。
リビングダイニングも寝室も、それぞれ家具配置をしてみて不都合があれば、レイアウトは見直そう。
大梁やダクトスペースなどによる天井面も軽視しない――折り上げ式にするのもいいが、何より大事なことは狭い個室に垂れ下がった天井によって圧迫感のある部屋を創らないことである。
――筆者はこんなふうに訴えたいのです。
・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。
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