凱旋気分にさせてくれる「エントランスの引き」と「内廊下」の美学

このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています

筆者は建築家ではないので、この分野は素人ですが、長年マンションの企画開発に携わった者として意識して来たことがあります。

そのひとつが「道路からエントランスまでの距離=引き」と「雨が差し込まない廊下」、そして「仕立てのよい注文服のような家」でした。

今日は、マンションの価値をこの3点から説明してみたいと思います。

●道路からエントランスまでの距離=引き

「グランドメゾン白金の杜ザ・タワー」というタワーマンション、「パークマンション三田綱町ザ・フォレスト(東京都港区三田。11階建て98戸)」という超高級マンションを例に挙げます。

二つの物件の共通点は道路境界からマンションのエントランスまでが長く、かつ道路からエントランスが見えそうで見えない点にあります。

下の2枚の絵は、グランドメゾンのゲートとその奥のエントランスを表しています。

グランドメゾン白金の杜ザ・タワーgate.jpg

グランドメゾン白金の杜ザ・タワーentrance.jpg

分譲時のパンフレットには、「敷地の約43%を緑化し敷地外周を1次セキュリティで確かに包み込みます。エントランスには守衛が迎え、その奥には住人専用の森があります」と記しています。

次は、パークマンション三田綱町ザ・フォレストのゲート付近の絵です。こちらもゲートの奥のエントランスは見えません。

パークマンション三田綱町ザ・フォレスト.jpg

長い時を積み重ねた三田綱町に堂々と佇む、高さ約7mの荘厳なゲート。それは、護られた安息を象徴し、パークマンションとしての誇りが込められています――これも同マンションのHPにあった広告コピーです。

ゲートを設け、そこに守衛・門番を置いて居住者以外をシャットアウトするのは、単にセキュリティのためだけではありません。

見えそうで見えない、あるいはどの辺りに玄関があるかが分からない、すごく長いアプローチらしいという設計は、外部の人間を遠ざける仕掛けのようでもあります。ここからはオーナーである自分たちの「プロパティ」なのだ。許可なく入るべからず。そう語っているようです。

言い換えると、特権意識や優越感のような買い手心理を満足させる仕掛けなのでしょう。古い英国を舞台にした映画などに出て来るシーンには、日本では考えられない広大な敷地のお屋敷があって、多くの場合ゲートから車で5分もかかりそうなところに館は建っています。
便利だからと、敷地の入口に一番近い所に館を建てるようなことはしなかったはずです。

商業地のマンションで、狭い敷地いっぱいに建てたケースなどは、エントランスの位置も道路境界ギリギリにあるので、通行人がガラス越しにエントランスホールやロビーを覗きながら通過して行きます。このマンション、中はどうなっているのかな、どんな人が住んでいるのだろう。そんな好奇心に対してプライバシーをさらけ出しているかのようです。

商業地の小規模マンションでは仕方ない一面なのですが、道路境界からエントランスまでの「引き」が取りたくても取れません。

そこで、下の絵のような形を設計家は考えています。

プラウド人形町パサージユ.jpg

(プラウド人形町パサージュ平成30年8月竣工予定の公式HPより)

道路境界とエントランスまでの距離が近過ぎるので、あえてデザイン壁のようなものを設けて玄関ドアを隠し、脇に通路状の空間を取ってアプローチとした例です。

●内廊下がもたらす「くつろぎ」

内廊下.jpg

昔のことですが、あるデベロッパーの社長さんが言いました。帰宅した瞬間に「ほっとする」、「くつろぎタイムが始まる」ことが我が家の条件ではないのか。それなのに、マンションは1階の玄関に着いてほっとしたのも束の間、エレベーターを降りたら再び外へ放り出されるように思えて仕方ない。風雨の強い日なんか、廊下を歩くとき、もう一度濡れてしまう。

考え方の相違と言えばそれまでかもしれませんが、マンションには共用部分にも「くつろぎ」とホテルのような「ホスピタリティ」が必要なのではないかと教えてくれた人でした。

簡単に言えば、家とはマンションの場合、共用部も含めてのことです。決して何階の何号室という特定住戸だけの価値ではないのです。先に述べたゲートやアプローチ、エントランスも加わっての値打ちなのです。

筆者は長年、買い手の「購買心理」を研究して来ましたが、「買い手は部屋を買うのではない、マンション全体の立ち姿を見て買う」という揺るぎない持論があります。

新築マンションの場合は、ときとしてモデルルームの演出に惑わされてしまいがちですが、中古になると全体が丸見え状態になってしまうので、売却時に訪れる買い手の購買意欲に外観やエントランスや共用廊下などが影響を与えるものです。

それゆえに、新築を購入するときは完成後の全体像、なかんずく外観・エントランス周りと共用部分の姿を鮮明にイメージする冷静さが大事になるのです。

●マンションは利便と機能だけが価値ではない

こんな広告のコピーがあります。どの物件で使われたものか記憶から消えてしまいましたが、売主は三菱地所レジデンスだったはずです。

「洋服のように簡単に替えのきかないのが住まいであろう。貴方の人生を纏う住まいだからこそ、選び抜かれた生地で仕立てにこだわり着心地が良い、そんな住まいでありたい」

このコピーに触れた瞬間、筆者が連想したのは見えない所にこだわる職人のモノづくり姿勢でした。背広で言えば、何十工程も経て、体にフィットし、何度洗っても型崩れしない、そんなオーダースーツを想像します。背広だけではなく、注文から半年も待たされるような人気の手作りカバンや靴のイメージです。

見た目は変わらなくても、長く使って行くほどに品質の良し悪しは分かると言います。設備・仕様はさほど変わらないように見えてしまう新築マンションのモデルルームも、目の肥えた人が見れば違いが分かるものです。しかし、構造的な部分の価値は、そもそも隠してあるので分かりづらいのも現実です。

パンフレットやHPなどでは一応の説明が付いていますが、それがどれほどのものかが分からない人が多いのです。

例えば、当マンションは遮音性を高めるため、次のような素材によって二重三重に排水管を囲んでいますなどと図解しています。また、二重床・二重天井とし、遮音効果を高めていますなどの図解もよく見かけます。

しかし、それにも等級はあるのです。どの程度の品質なのか、長く住んでも飽きが来ない価値か、見た目だけの高級マンションではなく、本物の高い品質のマンションかどうか、こうした問いかけが重要です。

先に述べた内廊下にしても然りです。ホテルライクな内廊下というキャッチコピーにもグレードの差があります。人手を極限まで排した「格安ビジネスホテル」の内廊下なのか、「ラグジュアリーホテル」の内廊下なのかに注目すべきなのです。

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上質なマンション、高級マンション、豪華なマンションを作ればコストもかかり、販売価格は上がります。立地条件とセットでマンションの価値は判断されるものなので、どこであろうと高級な建物、本物志向の建物を建てることが良いとは思いませんが、ここに掲げた3つの要素を可能な限り意識したマンションをデベロッパーには提供してほしいと願います。

もちろん、買い手の皆さんにも上記視点をお持ちになることが大事ではないかと思うのです。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。

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