問題ありと分かっていても価値あるマンションとは?
- 2012.12.25
- マンション購入アドバイス
ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。
理想的ではないものの、自分にとって優先条件を満たす物件だから決めたという人がいます。これは個人の自由ですから、他人がとやかく言うべき問題ではありません。しかし、優先条件それ自体が、どれほど重要なものなのか、ここをよく考えてみる必要があるように思います。
●経済合理性に優先する条件もある
「建築には人を変え、人を豊かにする力がある」―この言葉は、NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」という番組の中で、ある建築家が語った名言です。
注文建築で家を建てる注文者と設計者との交換から紡ぎ出された「こだわりの家」は、住まう家族を幸せにする側面が確かにあるようです。番組から、親子関係、嫁姑の関係、祖父母と孫の関係、子供の教育の関係などを「豊かに変化させる」とでも表現すればいいでしょうか、そんな建築の役割を改めて感じたものでした。
マンションの購入でも、同じようなことが言えるように思います。例えば、「スープの冷めない距離にあるから」、「親が今は元気だけれど、もうかなりの高齢なので側にいてあげたい」――このような動機から選択する人があります。
これらは、他のどんな条件より優先すると言ってよいかもしれません。
一般に、選択条件には下記のようなものがありますが、こうした動機で選択した物件は、経済合理性に反する場合もあることでしょう。
◆子供に転校させなくて良いから
◆通学距離が長くて可哀相だから
◆住み慣れた好きな場所だから
◆友達と離れたくないから
◆小規模マンションが好きだから
◆人気の駅だから
◆ステイタスを感じる場所だから
◆住んでみたい憧れの場所だから
◆売主や施工会社が信頼できるから
◆維持管理が期待できるから
◆自然環境が素晴らしいから
◆部屋が広いから
◆購入予算が少なくて済むから
◆管理費等が安いから
◆どうせ長く住むつもりがないから
これらの選択条件がひとつだけでないことは確かです。複数の条件が絡み合って選択されるはずです。しかし、その優先順位には「ちょっと待って」と言いたくなるケースが見られます。その優先条件は問題あり、と感じる物件を選択している人もあります。
しかし、他人の私がそう思っても、買い手さん(ご相談者)にとっては優先する条件なのでしょう。その選択は間違い、とは誰も言いきれないのかもしれません。
●人生観や価値観には個人差がある
マンションに理想のものは存在しません。どこかを妥協して選択することになるものです。問題は、どの部分を条件から外してはならないかという点です。その視点から見れば、疑問に感じる選択をしてしまう人が少なくありません。
「それでも構わない、この土地・街が好きだからここに住みたい」という人もあるでしょうし、管理費と修繕費の高さも、その人の金銭感覚や価値観によっては高くないという場合もあるのです。
品質はさほど悪くないが値段は驚異的な安さのユニクロ製品を買わず、1着何十万円もするブランド服しか目に入らない人も少なくありません。カローラよりBMWを選択する人もたくさんいます。
これらと同じで、好きな物は高くても高いとは思わないのが「価値観」ではないでしょうか? 人間は経済合理性だけでは行動を決めないものです。
結局、何を基準にして選ぶかは人それぞれなのです。
●好き嫌いの問題もある
満点のマンションは存在しませんから、部分的に妥協するというスタンスが必須です。ただ、他人が何と言おうと嫌なものは嫌という「好き嫌い」は、妥協できない問題でもあります。
ある人は、建物の外観が「何となく昔の公団住宅みたい」と言って、8000万円もする高級マンションを買わなかったという例があります。
設備・仕様もハイグレードの大型マンション、環境も良く利便性も高い建設地、文句なしの物件と言えなくもないのですが、外観デザインに工夫が足りないというか、センスがないなという印象は同感でした。
要するに、その人にとって「恰好の良い」マンションであることが重要な問題で、機能や利便性、品質レベルは高くても、色・テイストが好きでないから「欲しい」という気になれなかったということなのです。
販売員は、設備や仕上げ材の高級感を、また場所の稀少性を懸命に訴えたかもしれません。
しかし、現住居が築10年未満の分譲マンションであったことや、モデルルームを何件も見ていたということから推測すると、おそらく目の肥えた人なのでしょう。また、住まいはステイタスシンボルとしという考えが前提にあったのかもしれません。販売員の説得に耳を貸さなかったのです。
生い立ちや交友関係、育った環境などが影響している可能性もあり、他人には分からない世界です。
適当な言葉が浮かんで来ないので少し飛躍するかもしれませんが、「蓼(たで)食う虫も好き好き」という格言があるように、他人では量れないのが好き嫌いの問題です。
駅近にあり将来のリセールバリューが高い物件になりそうと分かっていても、商店街の一角に立つようなマンションは嫌いだという人がいます。小規模で管理費が高い、駅からも距離がある、けれども区画の大きい一戸建てが並ぶ住宅地の一角に建っているから好きという人もいます。300戸を超えるメガマンションやタワーは絶対いやだ、買うなら30戸以下のこじんまりした低層マンションが好きという人もいます。
また、三菱や三井の物件しか検討しない、盲心的なファンも少なくありません。
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その選択の仕方は問題あり、そのマンションだけは止めた方がいいという感じるケースはご相談・評価依頼の中に多数あります。私は率直に所見を述べて来ましたが、いつもこれで良かったのだろうかと回答書を送付した後も自問自答しています。
人それぞれの考え方を何も知らない他人が左右しようなんて、何と傲岸な所作であろうか。そんな反省もあります。しかし、その所見が役に立つこともあるだろう。そう信じて続けようと思い直しているところです。
・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ。
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