新築に比べ成約率が低い中古。そのわけ

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

東日本不動産流通機構の統計によれば、2012年の中古マンションの新規登録件数は181,682件もありますが、成約件数は31,397件、成約率は17.3%に過ぎません。

一方、新築マンションは不動産経済研究所のデータで、2012年1年間の新規発売戸数が45,602戸、前年末在庫と合わせると51,768戸が市場に出ました。当年末の在庫は5,347戸でしたから、1年間に46,421戸が売れたことになります。
成約率はなんと89.7%に達するのです。

絶対数でも中古マンションの成約件数は少ないですが、成約率の低さが注目点です。

中古が新築に比べて人気がない証拠です。今日はこの問題について述べようと思います。
蛇足ですが、この傾向は一戸建て住宅も同じです。

新築信仰は中古不安の裏返し

優良な中古マンションは、市場に出るか出ないうちに買い手がついてしまうと言われます。しかし、これは例外です。冒頭で示したように、全体的には新築マンションの平均在庫が10%程度しかないのに比べて、80%以上もある中古。売れ足が遅いことを意味します。

その原因は、売り方の差(※)にもありますが、最も大きな原因は建物への不安が払拭しきれないことにあります。

※新築マンションは、大々的な広告宣伝と華やかな商品展示(モデルルーム等の演出)によって顧客動員を測ります。
特定マンション1件(戸数は多数)のためにスタッフを大量配置するなど、専従態勢を敷きます。その結果、短期間に100戸、200戸と販売が進むのです。
これに対し、中古マンションは物件個別の宣伝など殆んど行ないません。
販売担当者も1物件を専属的に売ろうとはしません。より売りやすいものへと意識も行動も移って行くため、並みの物件は中々売れません。わずか1戸が3か月たっても売れないのは、普通のことです。

新築マンションの販売現場では、あらゆる角度から買い手の不安を払拭する準備・営業努力が傾倒されます。

耐震性や耐久性などの基本構造をはじめ、建物の性能に関する説明を丁寧に行ないます。
床下や壁の内部など見えない部分については、断面模型などを使ってアピールします。

ガラスの断熱性や防音サッシの性能は、メーカーから借りて来た縮小版の実物モデルを使って体感できるようにしています。

免震構造の効果は、一般の耐震構造との差を模型の揺れで実演してくれます。

これらのデモンストレーションは、モデルルームを見学した経験をお持ちの読者ならお分かりいただけるはずです。

これらは全て買い手に「安心感」や「納得感」を与えたい意図から用意された仕掛けです。

これに対して、中古マンションは実物を目視するしかなく、建物内部がどうなっているかなど全く分かりません。

工事中の新築マンションを買うのと違って、実際の景色や日当たり、管理状態を確かめることができるという、一面のメリットがあるのは確かですが、それだけでは安心できないのでしょう。

また、新築マンションでは最長10年のアフターサービスと定期的な点検なども行なわれますが、中古はアフターサービス期間内でも分譲主からの保証を受けることができないのです。瑕疵担保についても同様です。対象者は、あくまで分譲時の買い手に限られるからです。

自分が購入した後に、これまでに表面化しなかった欠陥が出てきたらいやだなと思っても、対策はありません。

「現状有姿(げんじょうゆうし)」という、買い手の見たままの実物取引が中古売買の常識なのです。見えない部分に関して売主は全く関知しないというわけです。

引き渡し後3か月以内なら、修理や交換に応じるという瑕疵担保責任を明記する売買契約もありますが、その範囲はコンロや給湯設備に限るのです。

これでは不安を拭いきれないのも道理です。

購買者の不安心

物を買う人の不安心理は3つあると言われます。購入する品物への不安、売主への不安、そして営業担当者への不安です。

「この品物を買っても大丈夫か、期待する効果は得られるか、欠陥商品ということはないか、万一の場合、売主は返品や交換・修理などに応じてくれるか、この売主はそもそも信用できるか、担当者の説明に誇張やウソはないか」などのことです。

購買を決断するときの心理は、「立派な品物のようだ。期待する効果・利益も上げられそうだ。売主は信用できそうだから、万一の欠陥・不良はないだろうが、万一あっても交換や修理に応じてくるはずだ。この売主の社員なら説明にウソもあるまい」です。

さて、中古マンションを購入しようというときに当てはめてみましょう。上記の安心感は生まれるでしょうか?甚だ心許ないとは言えないでしょうか?

そうです。営業マンの対応にウソはないと信じられや場合でも、その営業マン自身が紹介物件の基本構造などに必ずしも精通しているわけではなく、事実や確認できることのみを情報として提供してくれるに過ぎません。

中古マンションを購入するときの拠り所は

では、中古マンションを買った人たちは、どこに安心の拠り所を求めたのでしょうか?あるいは、どのような考え方をして決断に至ったのでしょうか?

これは個人差のあることで、また調査データのようなものも発見できず、分かりにくいテーマですが、例示してみましょう。

①大手マンションメーカーの分譲したマンションだから大丈夫だろう
②大手ゼネコンが施工したマンションだから大丈夫だろう
③先の大地震でも特に修復が必要な箇所はなかったと説明を受けた
④内見中、室内はとても静かだった。遮音性も悪くはないのだろう
⑤清掃が行き届いており、管理状態も良さそうだ
⑥管理人さんの目が光っているし、オートロックなのでセキュリティも良さそうだ
⑦管理費等の滞納者がゼロと説明を受けた
⑧売る人が少ないというから、きっと良いマンションなのだろう

大体こんなふうに考えて自身を納得させたのだと思います。

ここで気付くことがあります。売主と施工会社が大手というくだりです。逆に言えば、大手の物件以外は不安が解消できないことになります。

ところが、気に入って買いたい欲望が強まると、マイナス思考よりプラス思考というか、楽観的というか、そのような心理状態になるようで、
⑨疑ったらキリがない。まあ大丈夫だろう
⑩住んでみて不具合があったら売ればいいさ

などと自分に言い聞かせて不安を打ち消すのです。

●中古マンションを検討するときのスタンスは?

今日は述べませんが、中古マンションを買おうかというときは、内覧の際の観察ポイント、見えない部分の指摘事項、調査方法など、一定の予備知識が必須です。
しかし、それでも十分に納得できる回答を得られない可能性が高いのです。

2000年から始まった「住宅性能表示制度」によって、建物品質に関する客観的指標が新築マンションの物件ごとに提示されるようになって来ました。最近は80%くらいに普及して来たようです。
今後は、中古マンションの紹介の中にこれが増えて来ます。また、仲介業者が一定範囲で品質保証を行う例も出てきました。しかし、いずれも、緒に着いたばかりです。

まだ当分、自己の目利きや知識が中古マンション選びで鍵を握りそうです。

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ。

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