中古マンションの耐震診断と重要事項説明書

ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

不動産会社は法規によって、契約前に宅地建物取引主任者(2015年から宅建士と呼び名が変わった)をして、重要事項説明書を提示しながら、買主に「重要事項説明」をさせなければなりません。

この重要事項説明の項目に、平成18年から「耐震診断の有無」が追加されたことをご存知でしょうか?

耐震診断の有無(耐震診断をしているかどうか)、その結果はどうだったかを買主に伝えなくてはならないのです。

1981年(昭和56年)に建築基準法の耐震基準が改正され、新・耐震基準が誕生しました。新耐震基準と旧耐震基準との違いを簡単に言えば以下のようになります。

新基準では、地震による建物の倒壊を防ぐだけではなく、建物内の人間の安全を確保する、すなわち人命に危害がないことに主眼がおかれました。 旧基準の震度5程度の地震に耐えうる住宅との規定から、新基準では『震度6強以上の地震で倒れない住宅』と変わったのです。

●診断対象は旧・耐震基準のマンション

重要事項説明の中で、「耐震診断の有無」を説明しなければならない対象物件は「旧・耐震基準」に基づき建築された建物に限られます。「新・耐震基準」に基づく建物には説明の義務はありません。

旧・耐震基準の建物とは、具体的に言うと建築確認済証の交付年月日が昭和56年5月31日以前の建物が該当します。つまり、建築した時期ではなく、建築確認(許可と同義)が取れた時期が問題なのです。

中古物件の取引には、しばしば資料が揃っていない場合が少なくありません。建築確認通知書(=確認済証)がない例も珍しいことではないのです。

その場合には、登記簿の中の「建物の表題登記」をもとに判断されます。 マンション(区分所有建物)や事業用建物の場合、表題登記日が昭和58年5月31日以前のものが旧・耐震基準の建物となり、診断の対象となります。

建築確認済み証が56年なので、時間の差は2年ということですが、これは建築期間を2年見たということです。

●仲介業者の行動

説明義務を生じる場合、区分所有建物(マンション)の売買では、仲介業者は「売主、必要に応じて管理組合、管理会社」に対し、「耐震診断結果の記録」の有無を照会します。

耐震診断の記録とは、

1.(住宅ローン控除、不動産取得税などの税軽減の適用を受けるために必要な)地方税法・租税特別措置法に定める「耐震基準適合証明書」の写し、

2. 指定確認検査機関、建築士、登録住宅性能評価機関、地方公共団体が作成した耐震診断結果の写し、

以上のどちらかです。

これらの記録のどちらも存在しない場合は、重要事項説明書の「耐震診断の内容 □ 無 □ 有」の欄で、無にチェックマーク(レ点)をするだけで、仲介業者は義務を果たしたことになります。

●管理会社からの報告書

一方、仲介業者が照会する先(通常は管理会社)からは、「管理に係る重要事項 調査報告書」というタイトルの書面をもって回答してきます。

この報告書は、耐震診断以外の項目もあるので、ついでに紹介しておきます。

*売却依頼主(売主)の管理費・修繕積立金の滞納の有無

*.管理費の収入総額と総支出総額。管理費会計繰越額

*修繕積立金会計収入総額と修繕積立金繰越額

*管理費滞納額と修繕積立金滞納額

*管理費等の変更予定等
*修繕積立金の 変更予定

*大規模修繕計画関係:長期修繕計画の有無 (有の場合は「検討中」か「実施予定時期」などが記載されます)
*共用部分等の修繕実施状況(例:鉄部塗装 修繕工事 平成 〇〇 年 〇月実施 月実施)

*耐震診断の内容:耐震診断の有無 

*(有の場合):耐震診断の内容:「報告書添付」と記されます

*管理員勤務日:毎週 〇曜~〇曜。勤務時間  〇時~〇時

買主は、依頼すれば仲介業者が管理会社に問い合わせして上記内容の「管理に係る重要事項調査報告書」を入手し、提示してくれます。

●「管理に係る重要事項調査報告書」の見るべきポイント

この報告書で重要な点を繰り返しておきましょう。

◆耐震診断を実施しているかどうか? 

診断を実施した場合は次いで診断結果に関する添付書類を見て「耐震補強工事が必要かどうか」をチェックすることです。

建物の耐震性能は、建物形状と経年状況等を考慮して評価されます。

鉄筋コンクリート造等の耐震性能は、Is値(構造耐震指標)という指標で表し、値が大きいほど耐震性が高くなります。

Is値が0.3以上 0.6未満の場合は、 地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性があるとされ、Is値が0.6以上の場合なら、地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性が低いということになるのだそうです。

早急な工事は必要でないという回答内容(添付書類)であれば安心ですが、工事が必要とあった場合は「管理組合議事録」をチェックするか、改めて管理会社に照会し、大規模修繕工事の実施内容または工事予定の中に「耐震補強工事」が含まれているかどうかを確認することが必須です。

◆管理費等の滞納がある場合

それが売主自身であれば、売却によって清算されます。

というより、競売で競り落とした中古マンション、一般の市場で買った中古マンション、どちらの場合でも、前所有者が管理費を多額に滞納していた場合、新たな所有者は管理費を「特定承継人」として支払う義務を負うことになるのです。

ここから読み取れることは、次のようなものです。

売主が破産者か破産寸前の人である。

具体的には、住宅ローンの延滞があって、銀行との協議によって任意売却 (競売のような債権者の意思による売却と対極にある形) を図ろうとしている物件なので、銀行が強硬であるような場合は値引き交渉がしにくい。 

マンション全体に滞納者が多いケース(管理に係る報告書の中に金額と滞納者数の記載がある)は、管理組合の活動が良好でないことを暗示する場合もあるので、注意をしなければなりません。

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