営業マン諸君、耐震性の説明を省いてくれるな

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

筆者に届く数々のご相談。その中に多いのは「耐震性」に関するものです。単に「耐震性が心配です。この物件はどうなのでしょうか」というものです。

基本的には、「耐震性に限らず、建築基準法に基づいて設計され、かつその点を行政が確認した後に工事が行われています」から何も問題ないのですが、買い手心理としては「本当に大丈夫か」ということなのでしょう。

そうであるなら、プロの営業マンは買い手の気持ちを汲んで安心を届けなければいけません。しかるに、それを省いている営業マンが多いのです。

ある販売現場で質問してみました。「耐震性は大丈夫ですか?」 「はい、大丈夫です。耐震構造になっていますから」 
やり取りは、これだけでした。

「何故そんなことを聞くの?大丈夫に決まっているじゃないの」表情はそう語っていました。

●建築基準法の耐震基準

学習なさった読者も多いことと思いますが、おさらいの意味でお読みください。

1981年に建築基準法の「耐震基準」は強化されました。それ以降の新築マンションは、震度6強の巨大地震にも倒壊・破壊しないこととされたのです。

筆者の知る限り、1995年の「阪神淡路大地震(阪神大震災)」でも2011年の「東北太平洋大地震(東日本大震災)」でも、新基準で建てられた建物に大きな被害はありませんでした。基準通りに(偽装や手抜きなく)建築したら問題ないことが証明されたのです。

地震に対する構造の形は、大別して3つあります。ひとつは、いわゆる「耐震構造」で、他に「免震構造」と「制振(震)構造」があります。

3種のうち、あとの二つは「揺れを軽減(減衰)することができる」という点で「耐震構造」よる優れた構造と言われます。

説明が複雑になるので割愛しますが、免震も制振(震)も、どちらも耐震性能が高いということではありません。極論ですが、地震の揺れを特殊装置が吸収してしまうので揺れない(揺れが減る)構造になっている、言い換えれば地震波を受け流す構造になっているということです。

「免震構造」と「制振(震)構造」は、揺れが激しい「超高層」マンションに採用されることが多く、「中高層」や「低層」には大幅に採用例が少なくなっています。

タワー型の超高層マンションは、例外的に不採用もありますが、「免震構造」か「制振(震)構造」にしなければ住めたものではないと言えるのかもしれません。

一方、超高層タワーマンションでないマンション、すなわち15階建てまでのマンションは、逆説的ですが、「免震構造」や「制振(震)構造」にしなくても大丈夫ということなのでしょう。

「建築基準法をクリアした耐震構造」は、相撲に例えると、突っ張られたときに体に力を入れて踏ん張るというイメージ、すなわち何度突っ張られても、そのたびに体を反らせながら耐えるという感じです。地震波を建物ががっちり受け止めるということですね。

●揺れは避けられないが大丈夫と思いましょう

震度3や4と聞いても、地震国の日本では大して驚きもしないレベルですが、さすがに5クラスになると個人差はあるものの恐怖感に襲われます。ガタガタと音が鳴るかどうかは別として、体が揺さぶられ、立っていられないので、そばの物につかまろうとします。

筆者の経験では、阪神大震災のときは寝ていたホテルで、ベッドの縁をつかもうとした記憶があります。

別の地震では、スタッフの女性が「怖い」と叫びながらしゃがみこんでデスクの縁にすがっていた光景などが思い出されます。

大きな揺れは人を恐怖に落とし入れますが、「大丈夫。この建物は倒れない・壊れない」と思えれば冷静でいられます。

2011年の3.11のとき、筆者は東京の仕事場で、「お~!これは大きいぞ」などと心の中で叫びながらも落ち着き払っていました。それでも、机の横にある書棚が倒れないかと、瞬間的に手で押さえたりしていました。

心配なのは、家具や冷蔵庫などの転倒や走りによる怪我です。その対策だけはしておく必要があります。

●ひび割れができても大丈夫

巨大地震に襲われると、壁にクラック(亀裂)が入ることがあります。これを見ると、大丈夫かと不安に思う人も少なくないようです。

実は、マンションの壁の大半は耐力壁ではないのです。耐震性に何ら影響しない「雑壁」と呼ばれるもので、早く言えば、その壁がなくても構造上は問題ないのです。

マンションの1階が柱だけの空間(ピロティという)になっていて、駐車場などとして使われているものをご覧になったことがあるでしょうか?各住戸も、構造的にはあれと同じと言えます。

従って、ひび割れが発生しても問題はないのです。

●営業マン諸君、当たり前のことと思わないで

解説はここでやめますが、マンション購入者は本を読んだりネットの掲示板を利用したり、あるいはマンション広告を見たり、販売事務所などで説明を受けたりして勉強をしているものですが、学習度には人によって幅があります。

上記のような「耐震性」に関する知識は殆んどの買い手が持ち合わせているのかもしれません。それでも、絶対大丈夫と確信できているかは別問題です。

賃貸マンションにいても、一戸建ての家に住んでいても、過去に地震を体験して来たはずですから、説明がなくても、ある程度は「大丈夫」と思っている人も多いのは確かです。

安普請の賃貸マンションに住んでいて怖い思いをしたので、安全な分譲マンションに住み替えたいと新築のマンションに対する信頼を寄せる人もいます。 

しかしながら、そう思って買った分譲が同じ程度だったら困ると考える人もあるでしょう。

また、賃貸なら被害があっても経済的負担は家主にかかるだけで入居者は何も心配しなくていいが、分譲となると万一の場合の補修費用などを心配しなければならないなどと、心配の幅が広がってしまう人もあるはずです。

こうした買い手の深層心理をおもんぱかると、売り手には丁寧な説明が求められるのではないかと思うのです。筆者が営業マンなら、たとえ「普通」の耐震構造のマンションであっても「震度5や6クラスの地震が来た場合ですが・・・」などと前置きして「本マンションは・・・云々」と説明するでしょう。

営業マンには、この大事なテーマを「常識」で片づけたり、「不安を募らせるから逆効果だ」などと説明を忌避したりしないでほしいものです。

●耐震性の説明を求めましょう

筆者は「新築マンションが倒壊してしまうようなときは、この世の終わりだ」と達観しています。

振り返ると、交通事故も大病も縁がない人生を送って来ましたが、その代わりに地震と津波には不思議と縁がありました。しかし、それでも無事に生きて来たからです。

心配したらキリがないのですが、それでも個人差があって、石橋を叩いても渡らない慎重な性格の人もあります。心配な人は尋ねましょう。「耐震性はどうなっていますか?」と。

また、「構造計算を担当した設計事務所は信用できますか?」や、「耐震等級は1ですか、2ですか?」などでもいいですね。

狙いは、営業担当者から「安心感」を持てる言葉が聞けるかどうかです。「工事監理(品質管理)の体制に関して、当社は・・・」と別の角度から安全性を説明してくれるかもしれません。さらには、売主に対する信頼感が増す可能性もあるのですから。無論、その反対もありましょうが・・・

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