割高と知らずに買う新築。割高では売れない中古

このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。
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筆者に届くご相談や物件の評価依頼のメール文から、「適正価格を知りたい。すご~く高いような気がする。高いけど気に入っているが、入居したとたんに値下がりするのではないかと心配です(新築)」や「中古も随分値上りしているようで、なかなか良い物件が見つかりません。今候補に挙がっているこのマンションについて評価を希望します」といった、価格が高いことを知っている買い手の声を聞くことができます。

しかしながら、相場が上がっていることを知っているというだけで、個別の物件が「割高」なのか、「高い相場の中にあって比較的リーズナブルな価格なのか」は分からないと受け取ることができます。

マンション・不動産は、そのひとつひとつが唯一無二の特殊な売買対象商品なのであって、価格も当然に差がつくのです。相場とは、単に「この辺で70㎡のマンションはいくらくらいが平均的な価格です」という目安に過ぎません。

昨年(2015年)業界人をも驚かせた「ブリリアタワーズ目黒」の坪単価は、目黒駅圏の新築相場の2倍弱の単価、約600万円で分譲されましたが、それでも買い手は殺到し、全940戸のうちの販売対象661戸が短期で完売し、またまた驚かせたのです。

70㎡で6000~7000万円くらいが相場の目黒駅圏でしたから、ブリリアタワーズ目黒は向きや階数などによって比較的安い住戸でも1億円を超える物件でした。

買い手も売り手も、言ってみれば相場無視の売買に同意したことになります。

ブリリアタワーズ目黒を例に使うというのは適切ではなかったかもしれませんが、価値があると判断できる、それだけの立地条件と建物スペック等を備えたマンションであれば、相場の2倍でも取引は成立するという事実を先ずはお伝え出来たと思います。

●新築マンションの価格は売主の都合だけで決まる

次にお伝えしたいことは、新築の場合、価格決定の主導権が売主側にあるという現実です。

新築マンションの価格は、原価(土地の取得費+建築費)に販売経費が加わり、最後に利益を取って決定されますが、販売価格が市場で受け入れられるレベルかどうかを土地取得の前で検討されます。つまり、販売可能な価格から逆算式に土地の取得価格の上限を決めるのです。

基本形は原価・経費の積み上げであり、企業存続に必要な適正利益をONして新築マンションの価格は決まるというわけです。

株式売買のように、1000円で取得した銘柄を800円で手放すというようなことはなく、殆どの物件が利益を確保した販売価格で市場に送り出されますし、かつ価格を下方修正したり、値下げしたりすることは原則としてありません。

一方的に定価表を作って、「価格はこちらの通りでございます。よろしければ買ってください」というスタンスで販売します。まあ、当たり前と言えば当たり前なのですが。

一定期間(普通の場合は建物完成時までに)売りきれなかった場合のみ、価格を下げたり、顧客の顔を見ながら値引きを営業の道具としたりはしますが、その前はあくまで定価販売を押し通すのです。

売主の中には、売れ残っても値引きは一切しないという某大手デベロッパーもありますが、殆ど「在庫処分」策を採用します。その対象戸数も平時は1割あるかどうかといった程度で、8割・9割を売主が決めた定価で販売するのが常識です。

手に取って重さを測るとか、食べて味を比べる、映してみて画像の鮮明さを見比べるなどといったことが非常に難しいのがマンションです。類似の商品はあるものの、目に見えない部分や管理・アフターサービス、ブランドなどの価値が加わると、どちらが高いか安いかの判断が難しいだけに、買い手は売り手の言いなりになるほかないのです。

高い気がすると思っても、「値引きはしないという以上、この値段で買うしかないよな」と買い手は観念します。

結局、物件価値と価格が釣り合っているかどうか分からないまま購入を決めてしまいがちになるわけです。同じように見えても微妙に異なる新築マンションという商品の価値。中には、価値が100であるものを120で買ってしまうことも少なくない。それが新築マンションというものです。

●中古マンションの成約価格は相対(あいたい)取引の結果である

一方、個人間取引である中古マンションは、新築マンションとは全く違った価格の成り立ちとなっています。

売主である個人は、5000万円で買った家だから、できたら5000万円以上で売れたらいいなと考えたとしても、「相場から見てお宅のマンションは4000万円が限度です」と仲介業者が言うので、仕方なく4000万円で売り出してみたが、希望者が現われないため、3800万円に下げて再度の売り出しに。ようやく買い手が現われ、3700万円にしてくれと要求される。時間がないので、仕方なく3700万円で取引したなどという経過は普通のことです。

「住宅ローンが4000万円残っているので、それ以下では困る。4500万円で売り出してほしい。価格交渉が入っても、4000万円は死守してくれ」の希望を仲介業者に伝えたが、引き合いは少なく、やっと現れた買い手の要求は3900万円であった。それを拒否すれば、次の買い手を見つけるのは困難などと業者は言う。住宅ローンの清算に追い銭100万円が必要になるが仕方ない。

中古マンションを売却するとき、上述のようなやり取りがあって、買い手に主導権を握られてしまうケースは普通にあります。

勿論、買い手(内覧希望者)が多く、かつ即日で決断してくれそうな人も複数あるといった場合においては、売主主導という逆のケースもないことはないのですが・・・

ともあれ、購入した金額、途中でかけたリフォーム代、残っている住宅ローンの金額、このような事情とは全く無関係に取引価格は決まって行きます。

売主が売りたい金額以前に、中古市場の相場があって、それを無視して売買することは難しいのが中古マンションであり、平時は買い手にも何割かの価格決定権があると言えるのです。

買い手の立場で考えると、中古の場合、市場で通用する値段がおおよそ分かっているものであり、相場が上がって高くなったということはあっても、特定の物件だけが相場無視の値段で売り出されることはないと思って大きな間違いはありません。

個人売主の立場では、相場から隔たりの大きな強気な価格、つまり割高な価格設定をしてみても買い手を見つけるのに苦労する、もしくは見つけられない(売れない)ので意味はないのです。

●新築マンションと中古マンションでは販売努力面で大きな差がある

最後に、以下もお伝えしてきたいと思います。

新築マンションは割高であっても、見えない付加価値の強調や、大仕掛けな販売ツールを用いるなどして懸命の販売努力が傾倒されます。営業マンは、特定マンションの専任者として様々な販売スキルを使って早期の完売を目指します。

販売スピードが少し遅いから値引きしたいと考えても、上司・会社が直ちに承認してくれないことは分かり切っています。 それでも打診をしてみると、上司からこっぴどく叱られたりもします。 営業マンの中には、ライバル物件の悪口を言うなどして担当物件の相対的な価値を上げようとしつつ懸命な努力をします。

これに対し、仲介物件は売れなければ売れそうな物件を先に売ればいいのです。担当する物件はひとつではありません。新築のように自社商品ではなく、単に商品を預かって店先に置いてあげているだけなので、売れなければ引き取ってもらえばいいのです。

それでも、引き受けた以上は売れるようにしなければなりません。そこで、売主との価格交渉にかかります。引き合いが足りないので、価格を下げてくれと。

買い手との交渉、言い換えると新築担当の営業マンがそのマンションだけを懸命に売ろうとする姿勢で営業するのではなく、全く反対の対売主交渉に走るというわけです。

このように、新築と中古では販売姿勢において、180度の違いがあるのです。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。

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