第724回 「今は少し待った方がいいのでしょうか?」の問いが増えている

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。

・・・・・足元の新型コロナ禍が何やら国民を不安に陥れています。幸い筆者の知人・友人に罹患した人はいないらしいものの、自分も含めて「本当に大丈夫か」という不安感は拭えません。その一方で、自粛が飽きたのか、子供が騒ぐからか、小旅行をする家族も増えています。若者の中には、「自分は大丈夫」と高を括っている人、罹患しても重病にはならないと過信している人など、様々です。

 

この先、世界はどんなことになってしまうのでしょうか?経済活動もままならないという不安にも襲われます。しかし、世界中の人々がコロナと戦っており、やがて対応薬も登場して騒ぎは沈静化し、昨年までの日常が戻ってくることを信じて待つほかありません。

 

プラス思考の筆者などは、「しばらくの間は我慢だな。まあ、あと1年かなあ」などと呑気なことを口走ったりしています。

そんな中、マンション購入を考えている人の中にも、勤務先の経営悪化によって職を失い、当分は休止するほかないというニュースに触れることもあります。

 

そんな情勢の下で、筆者に届く「マンション評価依頼」や「購入のご相談」は、4月だけは落ち込んだものの、5月に入ってからは元に戻ったのす。契約したものの、勤務先が突然廃業することになったらしく、マンション購入も断念せざるを得ないとかで、解約に関するご相談の電話がお一人だけありましたが、あれは氷山の一角なのだろうとも思いました。

 

一方では強気な価格の中古物件の前で悩むご相談者も多く、筆者へのご依頼メッセージの末尾に「今、買って大丈夫でしょうか」というニュアンスの質問も少なくありません。

 

推察するに、勤務先の業況もさほど悪くなく、人員整理のような動きもないのでしょう。子供の学校や保育園への入学時期のこともあるので、計画通りにマンションを買いたいのだろうと推察したご相談者もありました。

急がないので様子を見ながら購入の検討を進めて行きたいと考えている人もありますが、このタイプの人は、コロナ騒ぎとは無縁なのかもしれません。

 

足元のコロナ騒ぎの影響から、「買って大丈夫か」、「少し様子を見た方がいいか」という質問が増えているのは確かですが、筆者は次のようにお答えしています。

 

●様子を見た方がいいのか?

様子を見るか見ないかは個人の事情、言い換えれば勤務先の動向によるので、一口ではお答えがしにくい質問ですが、「問題ないのでしたら迷うことはありません。買いたい時が買い時ですよ」とお答えしています。

 

筆者も、何度かマンションを買って来ましたが、いつも買い時と思う時期に買ったわけではありません。基本的に投資目的でマンションを買ったのではなく、家族と自分の事情から買い、そして買い替えて来たのです。

 

マンションは儲かると思って買ったことがないと言えばウソになりますが、基本は家族と自分の生活の必要から買ったと言えます。自分で住まないマンションを買った経験もありますが、仕事の兼ね合い、お付き合いのための消極的な選択でした。つまり、必ずしも儲かると信じて買ったわけではなかったのです。

 

気が進まない買い物も浮世の義理で買うことがあったと言い換えましょう。大損したものはなかったものの、早い段階で損切り処分してしまいました。正しい選択だったと今も思っています。

 

他方、自分で住むためのマンションでは、三つで儲け、ひとつは損をしています。「機を見て敏」のタイプでない筆者は、不動産投資も、株式投資も気が進まないのです。上場を予定していた不動産会社から割り当て増資の恩恵を受けて買った株も、上場直後は高値でしたが、お付き合い上、売り抜けず、しばらく保有したのち、結局損切りしています。

 

マンション投資も、研究を重ねて選択したわけでなく、お付き合いの色が濃い「消極的」な買い物でした。不動産会社が取引先に販売しようかというときは、大概売れずに困っているときです。つまり、優良物件とは言えない売れ残り商品なのです。

 

自分で住む目的で買ったマンションは、1件を除いて値上がり益を得ました。損をした1件は、子供の学校の関係から買ったマンションで、あとさきを考えずに選択したのですが、今思えば、一時的な都合で買ったものでしたが、思いのほか値下がりして損をしました。

 

それ以来、マンション購入は、「タイミングと購入額」に注意しなければならないと強く心に刻んでいるのです。実は、値上がり益を得た3軒も儲けを目論んで買ったわけではないのです。

ともあれ、筆者は損得両方の経験をしたおかげで「儲かるマンションの購入術」のような筆者なりの理論が構築できました。

 

筆者は、ご相談者に向かって、ときに「購買熱を冷ます」かのような箴言(しんげん)を述べることがあります。価格高騰が始まったころに多く発信した記憶がありますが、ご相談者の多くは購入寸前で「念のために」第三者の意見を求めようとするのでしょうが、同時に「素晴らしい選択だ」と同意を求めていたのかもしれません。

 

そこに、熱さましの意見が放たれて落胆し、怒り、中には議論を挑んで来る人もありました。あの人たちは、その後どうしたのだろうか?

 

●新築マンションが値下げ販売に踏み切る確率は5%もない

新築マンションの売れ行きが悪化して久しいことは読者のみなさんもご存知と思いますが、売れなければ分譲業者は資金繰りに困るので値引き策を中心に販売促進を図るはずです。

ところが、最近は、その傾向が弱く、銀行も経営不安がない企業には金利さえ払ってくれれば返済はゆっくりでよいと決めているようです。金利が低い今日、借り手探しも楽でないこともあって、慌てて回収したりはしないのだとか。

このためもあって、利益を減らす値引き策は採らない売主が多いのだそうです。

 

マンションは多少時間がかかっても需要に事欠かないのだから、売り切るだろう・・・銀行もそんなふうに考えてもいるようです。売主デベロッパーも、利益を確保しなければならないので、販売促進のためには多少の値引き策はやむを得ないものの、利益確保が優先するのです。

 

売れないと、経営の根幹にかかわるためと、半ば投げ売り的な値引き作戦を採るデベロッパーはまだ見られないようです。何百というマンション業者が群雄割拠していた時代もありましたが、現在活動しているのは大手、準大手ばかりと言って過言ではありません。マンションの売れ行きが悪くても、別の部門が稼ぎ出す売り上げと利益があるので、存続の懸念は小さいようです。

 

●値引き販売やむなしと腹をくくるデベロッパーもゼロではないが

無論、マンション分譲が主体の中堅・中小企業もないわけではありませんから、その一部に販売促進のため「値引き作戦」を断行する例もゼロではないでしょう。

 

コロナ騒ぎが起こる前の2016年初頭から新築マンションの販売は急ブレーキがかかっていました。それが、コロナ問題によって一段と売れ行き悪化となった模様です。このため、郊外マンションの中には値引き作戦を採って来る例も現れるかもしれません。

 

しかし、都心・準都心には購買力もあって、買いたい人が分厚く存在するので、値引き販売が横行する可能性は少ないはずです。価格高騰の情勢に戸惑いながら模様眺めしていたり、検討時間が長くなっているだけのこと、減速しながら物色中という一面が色濃いのです。

 

価格高騰のトレンドも、この1年でようやく頭打ちになったらしいので、それを感じ取った買い手は、本格的に動き出すはずです。とはいえ、足元の景況悪化は、慎重な動き出しとなることでしょう。

 

●売れる物件、売れない物件の「優勝劣敗」が当分は続くだろう

今の景況、経済活動などとは無縁の職種・業種の需要層があります。例えば、公務員、弁護士・税理士などの士業の人たち、開業医・勤務医、銀行員などが代表的ですが、一般会社員でも取り扱い品目によっては業況に影響しない企業もあるようです。

 

こうした業種・職種の需要層は、多少の高値でも必要な時には多少の高値でも購買活動にブレーキをかけないものです。

 

その代わり、購入物件は偏ることになります。資金力のある階層は、価格優先では動かず、多少なら高値でも良いものを選択しようとします。

 

結果として、売れるマンション、売れないマンションの選別が進むことになるはずです。

言い換えると、売れ行きの良いマンションと売れないマンションの格差は広がると思わざるを得ないのです。

 

「売れ行きの良いマンションは良いマンション」と思う買い手心理があります。最近の売り手(デベロッパー)は、売れ行きを明確にしません。逆に言えば、今はどれも不調なのです。しかし、そんな中にも良いマンションが隠れています。

 

宣伝文句に驚されないで「良いマンション・価値あるマンション」を選択し、かつ決断することが大事ですが、売り手業者の販売員たちは売れ行きを巧みにカモフラージュしたり、誇大な宣伝で買い手を混乱させたりするのが常です。実態を探りながらも、売れ行きの良し悪しに惑わされずに、価値あるマンション・好きなマンションを選択するよう検討しなければなりません。

 

●中古マンション市場は?

中古マンションの市場は、ある意味で新築市場とは別のところにあるので、どうなっているかが分かりづらいという声も届きます。

 

そこで、いくつかの法則があることをお伝えします。

 

(法則1)・・・中古マンションは新築価格に連動します。

新築マンションの価格が上昇すると中古マンションも値上がりするのです。

2012年頃から上昇が始まった新築価格は、2019年まで上がり続けましたが、中古も連動するように似たようなカーブで上がり続けたのです。

 

新築が高い。仕方ないから中古でもという動きが目立つようになり、中古の価格が上方に振れました。高くなったにも関わらず、スムーズにも売れると知ると、次々に売り手が現れ、呼応するかのように高値の成約が実現しました。

 

価格上昇傾向を見て取った買い手は、急いで買おうとし、「買うから上がる。上がるから買う」というスパイラル現象が起きたのです。

 

(法則2)・・・反対に、新築が値下がりすれば、中古も下がるはずです。しかし、実態としては、値上がりが止まると言い換えましょう。すると、中古もやがて値上がりが止まるはずです。そもそも新築が高くて手が出ないために中古に目を向ける人を増やして来たのです。その中古も、価格が高くなってしまえば、やがて売れ行きにブレーキがかかります。

新築価格が上がり過ぎると、中古価格の上がり幅が緩やかになるのは当然というわけです。

 

今、中古マンション市場は分水嶺に差し掛かっていると見ています。しかし、中古を扱う業者の中には、「価格上昇は続く」と見ているところもあるようです。主に都心マンションの動きを指してのことですが、売り物が少なく、短時間で買い手が決まってしまうというのです。都心の特定地域では売り物がなく、成約件数が増えないのだという声も届きます。

首都圏全体を見れば、売り物件が大量にあって成約率が中々高まらないのですが、その要因を分析すれば、優良中古が少なく、問題マンションばかりが長く店頭に並んでいるということでしょう。

 

つまり、優良中古は相変わらずの高値でも売れるが、あまり条件が良いとは言えない中古は売れないので値を下げる方向に変化しつつあるというわけです。上がり過ぎた中古も、全体的には値下がり方向に変化しつつあるものの、優良中古は今後も強気な価格が通用しそうと思われます。

 

●買って大丈夫なマンションは?

「買いたい時が買い時」と言いました。しかし、買いたいマンションをうまく見つけられるでしょうか?大型ショッピングセンターのような所に出向いて品定めするような方法が取れない不動産という商品は、どのような方法で、「より良い品物」を選択したらいいのでしょうか?

 

インターネット時代になって、在宅でも一定範囲の品定めができるようになったとはいえ、マンション・不動産は現地に出向いて自分の目で確認しなければならないと考えている人が多いようです。

そんな面倒や難しさを感じながらも、研究熱心な人は、たくさんの候補マンションの現地に出向いて自分の目で確かめつつ品定めをしようとします。これは見る目を養うための助走のようなものです。うまくやれば、そう長い時間をかけずに目的地に到達できるでしょう。

 

その一方、見過ぎて混乱してしまった人も大勢いるようです。目を肥やして、不動産業者も顔負けの知識と物件情報を収集して満足しつつも、どのマンションが良いのかの判断ができずに右往左往している人もあります。

 

情報は集めるだけではダメで、「取捨選択」の技術が不可欠です。

 

あれもいいがこれもいい、だが何か決め手に欠ける。これまで見て来た中では、これが一番と思っているが、もっと待てばもっと良い物件に巡り会えるのではないか。買うならこれだと思うが、価格が高い気がする。これで決めて大丈夫か。予告広告を見たが、素晴らしい物件だと感じた。ただ、価格が未発表なので決められない。価格が分かるまでは決めかかった物件の結論も出せないなあ・・・こんなふうに悩み、迷ってばかりではいつまでも決められませんよ。筆者がそういうと、「わかっていますが、高い買い物だから少しでも良い買い物をしたいので」などと言い訳するのです。 どこかで、何かをもって決断しなければいつまでも買えません。

 

そこで、筆者は相談者の事情や状況を見ながら最も的確なアドバイスの言葉を探します。ときには勇気が湧いて来る言葉を、ときには欲張りな心を捨てるように仕向け、シンプルな選択基準を提案します。セミプロのような人が自分の家を決められないのは何故かということまで踏み込んで説明しつつ、「あなたの場合は、OOには目をつぶって●●だけで選択されてはいかがですか。マンションの価値は、一に立地二に立地、三泗がなくて5に立地と言われるほど立地条件が大事なのです。中途半端はだめです」などと解説したりもします。

 

同時期に完成したAマンションとBマンションの最寄り駅は同じです。分譲価格は10対8の差がありました。安いB物件は駅から徒歩10分、高い分譲価格のAは徒歩3分でした。10年経った今、中古市場でBは100で売買が成立しています。他方のAは200です。つまり、2倍の価格差となってしまったのです。

 

安いBマンションは、Aマンションより広い部屋もあったので、駅近のAを選ばず広さに釣られて広いBを選んでしまった買い手さんは、高く売れているAマンションのことを知って後悔したそうです。 マンションは立地選定が肝要なのです。

 

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「対面相談」もご利用ください。お申込みはこちらからhttp://www.syuppanservice.com

 

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