第742回 「新築が減ったため、リノベマンション検討者が増えている?」

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論「マンションの資産価値論」を展開しております。10日おきの投稿です。

今日はリノベーション物件の問題点についてお送りします。

先ず、新築マンションの市場データをご覧ください。 新築マンションの供給戸数がどんどん減っています。

一都3県の数値は以下のような経過となっています。

*2015年:40,449戸(前年比▲10%)・・・2014年44,913戸

*2016年:35,772戸(前年比▲12%)

*2017年:35,898戸       (前年比+0.3%)

*2018年:37,132戸(前年比+3%)

*2019年:31,238戸(前年比▲16%)

*2020年:27,228戸(前年比▲13%)・・・・・・2015年比▲33%

(データ出典:不動産経済研究所)  

このデータは「買いたくても、品物は店頭に並んでいないという状態を示しています。  

中古マンションの検討者が増えている

新築がなければ中古マンションでも仕方ないと考える人もあるのでしょう。 

新築希望から中古へ鞍替えした人も多いようです。   しかしながら、「直ちに中古へ向かうという志向変化」は起きていないようです。新築の落ち込み分を中古が8割・9割カバーしているというわけでもないからです。

  筆者は、ときどき書きますが、日本人は「新築絶対主義者」が多いのです。絶対主義でなくとも、できたら新しい家に住みたいと考える人が多数派を占めているのは間違いないのです。   それだけが理由ではないかもしれませんが、中古市場が活況を呈しているという印象は受けません。 

活気が伝わって来るのは、限られた人気エリアだけと感じます。 まあ、中古人気がじわり上昇中という感じでしょうか。  

中古は美しいものが少ない

中古人気が「もうひとつ」なのは、「優良な中古マンション」が市場に少ない為かもしれません。 

優良な中古とは、端的に表せば、「年齢を感じさせない綺麗なマンション」、もしくは「管理の行き届いたマンション」、「樹木が育って、林の中に見え隠れしているようなマンション」、といったことでしょうか?  

中古マンションを眺めてみると、上記と正反対の残念な建物が圧倒的に多いのです。誰かが言いました。「マンションは管理を買え」と。 管理の良いマンションは、年数を重ねても、それを感じさせないものだとも。  

筆者も長くマンション住まいをして来ましたし、何度か住み替えもしました。投資目的で購入したマンションもあります。その実体験と重ね合わせながら、マンションの「資産価値の研究」を続けて来ました。  

その成果を、提供している「マンション評価レポート」と「将来価格の予測レポート」に盛り込んでお届けする毎日ですが、意識しているのは「このマンションは10年後、20年後に市場はどう評価するだろうか」という視点です。

  新築当初は、どんなマンションでも美しく快適な暮らしを提供してくれるはずですが、時間が経過するに連れ、綺麗な建物も汚れが目立って来て、当初の美しさを保とうとする意識も薄らいでいきます。

  共用部は、管理会社に清掃を委託しているものの、居住者が汚し続けるのでイタチごっこになって、やがて汚れは落としきれない状態に至ります。「経年劣化」という宿命には抗しきれないのです。  

三井不動産が「経年優化」というキャッチフレーズで、マンションの維持管理についての取り組み姿勢をアピールしていたことがありますが、その三井不動産ですら、どうにも仕方ないと思われるマンションを作ってしまったという反省もあるようです。  

ともあれ、中古にしても新築にしても、マンションを選ぶときは管理の良さそうな物件かどうかの視点を外さないことが重要です。言うまでもなく、売却時の価格に影響するからです。  

せめて我が家だけは綺麗に保とう

買ったマンションを売るとき、少しでも高く売りたいと考えるなら、自分の部屋だけは綺麗に化粧をして見せたいものです。  

百貨店でも一般小売店でも商品の展示には神経を使っているはずです。新築マンションのモデルルームも同じで、買い手を感動させるための商品展示に知恵を働かせているのです。  

中古となった我が家を高く売りたいなら、室内に見学者を招き入れるときは知恵を働かせて、綺麗に見せることが大事です。家具や生活物資で「ごったがえしている」家では、見学者が感動してくれることはないはずです。

 無論、傷だらけの家具や壁、床では良い印象を与えることはないでしょう。   外観や共用部を見て少し落胆したとしても、室内の美しさに感動してくれれば購買意欲が高まり、売りたい金額で買ってくれる確率も高まるはずです。  

リノベマンションの魔力

中古マンションを買い取って内装に手を入れ、家具やカーテンなどで飾ったマンションを商品にしている不動産業者が増えています。物件数も増えているようです。  

筆者に購入相談をしてくださる件数だけをカウントしていると、着実に増加していることが分かります。

  リノベーション物件と銘打ったものは無論、部分リフォームして売りに出しているものも含めて、リノベーション物件は買い手を虜にしようとする狙いがあります。

物件の差異はあるものの、新築マンションのモデルルームにありがちなパターン化されたものとは全く異なる斬新なもの、異次元の舞台という、大げさなことを言えばそんな傑作も見たことが何度かあります。  

そんなリノベマンションの虜になってしまう見学者も多かったはずと推測するのは容易です。無論、買いたい気分が高まり、ときに冷静さを失う見学者も多いのでしょう。リノベーションは業者の販売戦略として威力を発揮していると感じます。  

リノベマンションの問題点

しかしながら、リノベマンションには問題もあるのです。それを整理してお知らせしましょう。

①価格が割高なものが多い

リノベマンションは、仲介手数料より儲かるからこそ、手を出す業者が現われるのです。

仲介なら、手数料には法的制限がありますが、一旦自社物件としてしてしまえば利益は10%でも20%でも構わないのです。

  しかし、近隣の中古と比べてみたとき、素人目にも高い商品に手を出す人はいません。消費者(買い手)とは賢明なものです。そんな手は通用しないのです。  

そこで、業者は「商品に紅をさす」という戦法を採ります。すなわち、リノベーション商品とする策です。たとえば、3000万円が相場の中古マンションの内装を一新し、4000万円で販売するという「リノベーション事業」です。  

相場3000万円のマンションも、新築同様の内装に生まれ変わったマンションが相場の3000万円より高くなっても不思議ではありません。 ただ、1000万円高が適正かどうか、そこに焦点を当てると疑問に感じるケースが少なくありません。

2割高なら納得できるが、3割高、4割高と知ったら、買ってくれる人はないでしょう。  

某業者は、「相場が3000万円の中古物件を2500万円で買うことができたので、リノベーション工事をしても3500万円で販売にかけることができたのです。これはお買い得です」・・・・・こんなふうに胸を張ってアピールしていました。  

しかし、そのようなケースは稀有だと聞きます。中古マンションを売りたい人が、相場より5%か10%程度の安値なら構いません、などという売り手はありません。誰でも、高く売りたいはずですから。

  中には、急いでいるので即金で買って下さるなら安くても構いませんという売り手もあるのは確かですが、その数は僅かです。つまり、リノベマンションは仕入れが難しいのです。優良マンションほど仕入れは困難です。  

②立地条件が良くないものが多い

仕入れが難しいので、リノベ業者は売れずに困っている売主を探す方向に向かいます。

行きつく先は、中々売れない不人気中古です。具体的には、駅から遠いマンション、古過ぎるマンションなどです。

  売れないからこそ、業者の買い取り要請に応じたのでしょう。駅から遠いマンション、古過ぎるマンションは売りにくいものです。 そんな中古なら、業者の要求にも応じたのでしょうし、買取業者側も、安く買えれば、リノベマンションとしても高過ぎる商品にはならないと踏んでの仕入れを決断しているのでしょう。

  「駅前のリノベされていない中古マンション」と、駅から距離はあるが「同額で新品同様のリノベ中古」が並べば、見た目の感動が大きいリノベマンションを選んでしまう買い手もあるのでしょう。

  つまり、駅から遠いことで安値になってしまう中古も、内装を一新させて売り出せば、駅近マンションに負けない価格で買い手を見つけることができる。そうと知った業者と、内装が汚いままで売り出して売れずに「困っている個人オーナーの思惑が合致し、そこに売買が成立するのです。  

こうして、「駅から遠いが新品同様の内装に仕上げられた中古」が商品として市場に登場するのです。リノベマンションは、立地条件に問題があるものが多いのです。   駅に近いなど立地条件の良い中古物件は、リノベーション工事などしなくても買い手は多いので、価格も高く、かつ売買の成立に時間を要しないのが普通です。  

③古過ぎる物件が多い

古過ぎるマンションも、中々売れないという問題があります。

立地は悪くないものの、築30年、40年となると、中々買い手が付きません。 そのような中古物件が、業者の買い取り要請に応じることにしたのでしょう。

  古過ぎるマンション、中でも「旧耐震基準」のマンションのことです。安くても売れないと嘆く個人オーナーは、とどのつまり「業者に売り渡す」道を選択するのです。  

「旧耐震基準のマンション」が全て耐震性に問題があるわけではないものの、専門機関の診断を受けて安全とされた物件でない建物を買うのは、内装だけ新築同様に模様替えしてあっても、決断は慎重にしなければなりません。  

④リセール価格に落胆するかも

一番の問題は、割高なリノベマンションの将来価格です。

リノベマンションは割高な物が多いのです。リノベ業者の利益がたっぷり乗っているからでもありますが、古過ぎることや、立地条件の悪い物件も多いからです。  

リノベーションによって、価値を上げてくれたものの、10年、15年と経過すれば、当初のバリューアップ分はそぎ落とされてしまいます。

従って、マンションの価値の重要な根幹部分で変わらぬ部分、すなわち立地条件やマンション全体の価値がどうかという視点を落とさないで購入することが重要です。   言い換えましょう。内装の美しさに目を奪われてはならないのです。  

・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談のお申込みはこちらからhttp://www.syuppanservice.com

 

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