仲介業者の顧客争奪戦と中古価格の上昇

ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

最近、都区内広範に中古マンションの価格は上昇傾向にあるようです。特に顕著なのは、都心部と中央線や東横線、田園都市線などの人気沿線と言われます。

価格上昇の背景には新築マンションの価格上昇と供給量の減少という実態があるとされます。

23区の新築マンションの発売(供給)戸数は、2010年:20,393戸、2011年:19,410戸、2012年:19,398戸と20,000戸前後で推移していましたが、2013年は28,340戸と大幅に伸びました。

といっても、2003~2005年ごろの水準30,000戸に回復しつつあったというだけのことです。

ところが、2014年は20,774戸と再び低迷しました。

原因は、建築費の急騰のため工事発注先が決まらないことにありました。コスト上昇分を販売価格に転嫁すれば簡単ですが、それが市場で通用するかどうか、様子見せざるを得なかったこと、コスト引き下げのための計画変更に着手したことなどが着工の遅れにつながったというわけです。

住宅ローン金利は史上最低のレートをたびたび更新し、株価の上昇による資産効果や景気回復の傾向などが需要を拡大、加えて円安効果から外国人の買いも都心物件には目立って来たと言われます。

新築に思うような物件が見つからなければ、中古に目を向ける人が増えるのは自然の流れです。

ただ、中古の取引件数は目立って増えているわけではありません。成約単価だけがじわじわ上昇を続けているのです。

2014年の1月から12月までのデータを紹介すると、前年同月比で+8.6% 、+7.9 %、+5.5%、+ 11.4%、+ 4.8 %、+6.2 %、+3.7%、+ 7.6 %、7.3%、+ 8.7%、+ 4.2%、+ 8.5%と12か月連続で上昇しています。

件数が伸びないのは、売り出したい人が増えないことに原因があります。売り出し件数が増えないのは、売却後に住む家が見つからないからと考えられます。次の家がないのは新築の供給が少ないことと関連します。

結局、新築も中古も市場に品物が十分供給されていないため、価格が上がる傾向が続くことになっていると考えられます。
中でも、数少ない優良な物件に人気が集中し、中古市場ではある種の奪い合い現象が起こっているという声も届きます。

優良物件の奪い合いは、買い手同士の前に取扱い業者間で起こっています。すなわち、媒介受託の競争です。

中古マンションの売却は、売主が仲介業者に買い手探しを依頼して、つまり「媒介契約」の締結をもって始まりますが、その前に売主は何社かを指名して「いくらで売れるか」の査定を依頼します。

指名を受けた業者は、媒介契約を取りたい一心から「売りは当社にお任せ下さい」と査定額を高くして売り手にアピールします。高い査定額は、売主を喜ばせ、同時に高く売ってくれるという期待を抱かせます。

媒介契約をぜひとも取りたいと業者が熱心になる本当の理由はこうです。

売主は複数の業者に同時に依頼することもできるのですが(一般媒介契約)、仲介業者は自社単独の「専任媒介契約」の受託を熱望します。

専任媒介は、業者間のネットワークに登録するだけで左うちわでいられるからです。

買い手探しは全国の仲介業者が代行してくれるので、自社で買い手を探せなくても、成約すると同時に黙って手数料が入る仕組みになっているのです。

勿論、自社で買い手を探すことができれば、売主と買主の双方から手数料が入るので、当然それを狙うのですが、他社に買主分の手数料が行ってしまっても、売主分の手数料は無条件で手にすることができます。

この業界の仕組みが、業者をして「売りはお任せ下さい」や「当社なら高く売ってみせます」とばかりに売主からの媒介依頼の受託に懸命にさせるのです。

この仕組みは、ともすると売れそうにない高い査定額となって表れます。しかし、それで専任媒介契約の獲得に成功しても、売れなければ売り手の期待と信頼を裏切ることになりかねませんから、実際は極端な高い金額を提示する例は少ないのです。

売主が仲介業者に査定を依頼すると、査定者は依頼マンションに類似した売買事例を探し、それと依頼物件と比較し、項目ごとに点数化して金額を算出します。「取引事例比較法」という業界に定着した査定方法です。

この方法では、過去の事例に基づくわけですから急に売値が上がったりしない理屈になります。ところが、査定額は依頼を受けた業者によって背伸びしたものもありますし、売主の事情や欲から過去の事例を上回る価格で市場に出る場合が少なくありません。

高値で売り出しても、実際の取引価格は過去の事例のレベルになるかもしれません。買い手が値引き交渉を仕掛けて来るので、結果的に収まるところに収まるからです。しかし、最近の傾向は少し違っています。

先に見たように高く売れてしまう傾向が強く、高めの査定額で売主の歓心を買った業者自身もびっくりするくらい、価格交渉の暇も与えず売り手の言い値で買う買い手が増えているのです。

人気物件と言われる優良な中古の場合、より強気な査定額で登場して来ます。そして売り出した価格からさほど値下がりすることなく強気な成約価格が実現するのです。

成約すれば、その価格が取引事例として登録され、新しい指標に置き換わります。こうして、最近の中古マンションは値上がりトレンドを着実に記しているのです。

筆者に届く中古マンションの評価依頼では、様々な立地の様々な物件が対象なので、傾向的な差もよく感じ取れます。この立地、この物件なら価格は新相場の強気なレベルだろうとか、反対に相場は大きく変動していないレベルであろうとか、そんな感想を抱くのです。

人気沿線・人気の街(駅)では、業者間競争が売り物件を奪い合い、奪い合いが激しい人気物件は買い手同士が売り物件を奪い合うという構図ができ上がったと言えそうです。

このような状態を売り手市場と言えば良いのかもしれません。とはいえ、それは東京中で起こっているかというと、そこまでは拡大していません。限定的です。

今、読者が選ぼうとしている物件は果たしてどのようなマンションでしょうか?将来の売却時に強気の売り物件になり得るものでしょうか? 

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ。

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溢れる情報で混乱を来たしそうなとき、物件の価値を筆者の冷徹で公平・客観的な観点からの評価コメントをお読みいただいた結果、「頭の中が整理できた、先入観や固定観念、誤解などが氷解した、悩みがすっきりした、前に進めそうだ等のお声」をたくさん頂いています。

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