15年経た中古。分譲価格の2割高と聞いて

ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

中古物件を購入すべく検討中の物件を調べているうちに、新築時の価格から500万円も高値で売り出しているという話を聞いて複雑な想いに駆られる買い手があります。

「いまいましさ」のような感情が湧いて来るというのです。

「15年も経っているのだから分譲価格より下がるのは当然なのに、どうしてこんなに高いの?強気過ぎでは?」と思うらしいのです。昨今の値上がり急な市況に嫌気しての腹立たしさのような心境から出た言葉とも受け取れます。

一方、自分が買うマンションの将来価格については値上がりしてくれることを望みます。

立場が変われば当然とも言えるのですが、この相反する願望は人間本来の通弊なのです。

●仲介業者のお節介

冒頭の「500万円も高値」という情報はどのように入手したのでしょうか?答えは簡単です。仲介業者の担当営業マンが、提携している調査会社に問い合わせて買い手に伝えたのです。

買い手が調べてくれと依頼して調べる場合もあるのですが、多くは営業マンが能動的に提供していると言われます。

営業マンいわく、「築〇〇年経っても価値が下がらない。素晴らしいマンションです」。そう言いたいらしいのです。

続けて、「だから、貴方が将来これを売却するときも価値が下がらない」とセールスしたかったと。

しかし、冒頭の感想は、逆効果になったことを指しているようです。余計なお節介だと言った買い手さんもありました。

●分譲時の価格を上回る価格になったのは、分譲時が安かっただけかも

買い手の中には、「本物件は分譲価格を上回る売り値がついた。それだけ価値あるマンションということを聞いて、そんな物件をわが手にできるのは誇らしいことかもしれません。しかし、その上乗せ額が妥当なものか」という質問を寄せて来た読者もあります。

次は、都区内のあるマンションでの疑念でした。買おうとしているマンションに関し、「価値がある」と聞いて悪い気はしませんが、「築12年の物件が分譲価格の3割高なんて、過大評価なのではないか」というお尋ねでした。
その質問者は、「この1年、中古は安いはずだと信じ、新築を諦めて中古を探して来ました。、ようやく辿り着いた物件なので、分譲時から30%も上がった」と聞いて、複雑な心境になったようです。
その事実をどう捉えたらよいのか分からなくなったのかも。筆者はそう感じました。

筆者は次のように答えました。

本物件が販売されたのは、2002年か2003年のことかと思いますが、その頃はバブル崩壊後の値下がりが止まった底値圏、つまり最も安い時期でした。

現状は、ご存知のように、価格急騰期(新築に連動して中古相場も急上昇)にあるので、中古の経年劣化分を勘案しても分譲価格より上の値が付く中古物件は多いのです。

ちなみに、2002年の23区の分譲坪単価は@211万円(70㎡換算4467万円)でしたが、2015年の坪単価は@326万円(同、6903万円)でした。新築マンションの値上がり率は実に54%です。 

一方、築10年超の中古は、調査会社の統計によれば新築対比で約80%です。新築と10年超えの中古を比べたら2割程度の差ができるというわけです。

新築が6903万円に上昇した現在、築10年超の中古は2割安が平均なので、5522万円(6903×0.8)になるというわけです。

5522万円は、分譲時の4467万円から見れば23%の値上がりです。新築が54%も値上がりしたので、中古も連動して値上がりし、結果的に分譲価格を上回ったという理屈です。

しかし、これはあくまで統計分析に過ぎません。どのマンションも同じ比率で値上がりするとは限らないのです。

築12年のマンションは、新築相場が12年後の現在も12年前と同じであるなら、2割ダウンとなるのです。しかし、物件によって1割ダウンに留まっている物件もありますし、中には新築相場を超える中古価値を持つ物件もあるのです。

マンション・不動産は個別の条件を無視して語ることはできません。ご検討マンションは分譲時の価格から30%も上がったそうですが、30%は平均を上回っているわけで、それが妥当かどうかは具体の物件をお知らせ頂き、調査をしてみなければ分かりません。どうぞ、「物件評価サービス」をご依頼下さい。

ご質問に対する筆者の答えは、ここで終わっています。

●マンション固有の条件で大きく結果が変わる

統計データというものは、あくまで平均値です。平均で10%下がったというような場合でも、その平均値には、30%下がったものもあり、30%上がった物件もあったという事実が隠れているのです。

仕事がら、よくデータをチェックします。統計的なものから、物件個別のデータまでの幅があるのですが、いつも驚かされるのは、同じ時期に分譲時の50%高になった物件がある一方、50%も値下がりした物件が存在する事実です。

立地条件の差と建物価値の差、ブランド価値の差などによるのですが、50%の値上がり、50%の値下がりは稀有なものですが、同じ最寄り駅の物件で、分譲時の価格から30%も値上がりした物件と30%ダウンの物件は現実にたくさん存在するのです。

築後20年マンションが、新築相場の半値に相当する相場のエリアであっても、その中には半値以下の、例えば30%もの低いレベルの物件もあれば、80%相当に評価される優良物件に分かれるという事実を知っておかなければなりません。

物件固有の条件によって差が大きく出てしまうというわけです。もう一度説明しましょう。

◆新築時に相場の100で購入。20年後、新築相場が200に上昇したとします。 そのときの中古(築20年)相場が、新築の価格に対して半値とするなら100です。 100は、新築購入の価格とイコールです。

◆20年後の新築相場が50%アップの150ならどうでしょうか? 20年中古は半値の75評価になるわけですから、購入価格の100から見れば25%の値下がりということになりますね。

◆では、仮に新築時に相場の2割高という高値掴み(120で購入)してしまったらどうでしょうか? 20年後に新築相場が150になったとするなら、相場の半値となるような平均的な中古物件は75となり、これは購入価格120から見ると、38%の値下がりになってしまいます。

◆次に、この中古物件が20年後に新築相場に対して80%くらいに高く評価されるような優良なものだったとしたらどうでしょうか?

新築相場150×0.8=120ですから、購入価格120と同じです。結果から説明すると、120で買っても、高値掴みとは言えないわけです。ただ、買い値を超えないのですから、値上がりを期待していたとしたら、裏切られるということでもあるのです。

最近3年間は建築費上昇の影響を受けてマンション価格は急騰し、多少の差はあっても全ての物件が高値になってしまい、誰もが高値掴みを強いられてしまう時期に当たっています。

ざっくりと言えば、どれを買っても高いのです。しかし、将来の価値を考えると、結果的に「高値掴み」にならない買い物ができるケースもあります。

「高値の中のマンション選び」という難題を突き付けられている買い手。大事なことは「快適な住まいと資産価値の高いマンション」の双方を見る目にあります。

 ・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ。

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