第675回 新築以上の中古を探しましょう

このブログは居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から「マンションの資産価値論」を展開しております。

10日おきの更新になりました。引き続きご愛読賜りますようお願い申しあげます。      三井健太

ご相談メールをいただいて、とても不快な思いになるときがあります。それを具体的に記述することは憚りますが、新築志向が強い人や、単に中古は安くないから損だという偏見を文章の行間から感じるときです。

筆者は中古礼賛派ではありませんが、新築マンションに失望することが多い昨今、傍らで優良中古に巡り会って幸福感をお伝えくださった数多くの声を聞いているうちに、中古マンションの方が素晴らしいものが多いと思うようになったのかもしれません。

 今日は、優良中古のススメと探し方などについて再び書こうと思います。

●中古も安くない・・・それは事実だが、だから新築がいいとは限らない

中古マンションを個人から購入する場合(大抵そうだが)、住宅ローン控除は最大で200万円、つまり新築の半分です。新築と違ってリフォーム代もかかるし、仲介手数料も払わなければならないから、もろもろ計算すると中古は高くつく、それなら新築と変わらないので中古は考えないという人が少なくありません。

一理ありますが、多分に誤解があります。新築より高い中古、そんなことは経済原理から見てあるはずがないのです。どうしてそう思うのでしょうか?不動産は二つとない商品なので、比較がしにくいということもあって、誤解してしまうのも無理はありません。

詳しくはこちらをご参照ください。

「スムログの第112回 中古が新築より高いなんて。そんな馬鹿な事あるわけない」

https://www.sumu-log.com/archives/9172/

●新築で良いものはない。たまにあっても「メチャ高い」

極端な表現をお許しいただき、敢えて「新築にろくなものはない」と筆者は考えます。正確には少ないという意味ですが、建物価値は昔に比べれば立派ですし、物件よっては駅から2~3分と近くて、立地条件も悪くないものが僅かながらありますが、それすらも良くないというのは価格が高過ぎるからです。

マンションは芸術作品ではありませんから、価格あっての評価になります。価格を無視して「良いマンションだと褒めるわけにはいかない」のです。

●新築には期待できない時代なのです

スムログで5日前に書いたので、https://www.sumu-log.com/archives/14428/

詳細はそちらに譲るとして新築マンションの開発は極めて厳しい時代になりました。

希望地域に希望条件で新築マンションを購入することは至難の業です。デベロッパーの立場から言えば、なにしろ用地がないのです。良い売地があっても競争が激しく買収価格はどうしても高くなりがちです。

社内では、高くてもここなら売れるから買って来いと号令がかかることもあるでしょうが、判断を間違えば2年かけても売れず、最後は大幅な値引きをしなければならない事態に陥ることがあります。

そんな他社の失敗例を横目で見て、マンション業者の多くは失敗したくないと萎縮し、マンション開発の情熱を失って行きます。

高くても構わないと強気に商品化しても、結局は販売が長期化してしまうので、業界各社の共通の悩みになっている昨今です。発売当初(第1期販売)は、華々しいのですが、やがて尻すぼみになって、条件の悪い住戸はいつまでも売れない状況を迎えてしまうのです。

条件の悪い住戸について補足しましょう。平均単価より格安にしても売れない「ひどい住戸」を作らざるを得ない事情が理解できる筆者ですが、そんなことは買い手には関係ないことで、条件の悪い住戸(例えば、半地下住戸や隣地の建物と向かい合う住戸など・・)は少しくらい安くしても売れないのです。

強気になれる好立地のマンションでも、「高過ぎる」のが最近の実態です。しかし、地価は下がる気配がなく、建築費も相変わらずです。

郊外なら安く買える土地はあるが、建築費は郊外だから安くなるわけではない。バス便マンションも同様だ。とにかく安くしないと売れない。徹底的にコストダウンを図って価格訴求をすれば何割かは売れるが、完売までは長い時間がかかる。販売員のモチベーションは上がらない・・・これがデベロッパー各社の悩みというわけです。

●優良中古に目を向けても実は売り物がない

中古マンションを一度でも検討した人なら感覚的にご理解いただけるかもしれませんが、ときどき良さそうなマンションに遭遇することがあります。ところが、中古の選択肢は1住戸に限定されます。新築マンションと違って何十も部屋があって「より取り見取り」ではないので、見学したが、たまたま前面の建物(略称:まえたて)があって、それが気に入らなかったものの、外観の立派さ共用部を見て「素敵なマンション」と記憶に刻まれることがあります。そして、仲介業者に「このマンションの中で良い部屋が売りに出たら教えて」と依頼するのです。

ところが、優良マンションは売りに出す人が少なく、大規模マンションでは活発に売買が行われているように見えますが、買い手個々の条件に当てはまる売り物は存外少ないのです。

従って、「出たら教えて」の登録をしても、情報はときどき入るものの、食指が動くことは少ないのです。

優良中古のターゲットは、ひとつや二つでは足りないということになります。

●検討時間がたっぷりある新築、時間がない中古

しかも、たまに条件に合致する部屋に遭遇しても、少しもたつくと他の買い手に取られてしまうので、決断は素早くしなければなりません。即決か翌日、長くても1週間以内には「購入意思」を伝えなければならないのです。

一方、新築マンションは、例外もありますが、ゆっくり考える時間が設けられています。同じタイプの間取りも複数あるので、階数差で妥協できれば検討時間はゆとりがあるものです。大抵は「予告広告」を繰り返しながら集客し、一定の数が集まったところで発売というスケジューリングなので中古マンションより検討時間がはるかに長くもらえます。

●優良中古の買い方

瞬間判断を求められる中古マンションを手にする方法はあるのでしょうか?

判断するための学習をして知識をため込んでおく必要があるでしょうが、一般の買い手には本業のかたわら深い知識と情報を的確に集めるのは至難の業です。

提案する方法は、インターネットで情報を集めることではなく、市場に精通しているうえに、物件価値を客観的に評価・分析できる者を利用するのが賢明です。

 筆者は不動産業者ではなく、あくまで買い手サイドのサポーターであり、ナビゲーターです。僅かな調査・相談料で答えを導くことができます。我田引水で恐縮ですが、利用しない手はありません。

●仲介業者と濃密な関係にあっても期待はしない方がいい

ところで、仲介業者に「出たら教えて」と頼んでおいたらどうかという質問がよくあります。

筆者は大概、「期待はできません」と答えます。なぜなら、ライバルが多いからです。個人的に親しい間柄の営業マンでもいれば、売り物が出た瞬間、いの一番で知らせてくれるかもしれませんが、まあ期待はしない方がいいのです。

物件探しは、誰かにゆだねて「待てば海路の日和あり」とはいかないのです。自ら労を惜しまず、探しに行くべきです。とはいえ、後述しますが、週末ごとに見学に出かけましょうと勧めているのではありません。

見学前に有力な物件を絞り込み、これは良さそうだというものだけを見に出かけることが大事です。無駄もときには必要ですが、多忙な人ほど効率を考えるべきです。

●綺麗な室内に感動することも稀にあるが・・・

ところで、中古マンションは新築マンションのモデルルームのような飾りつけをしていないことが多いので(例外もありますが)、部屋を見てトーンが下がったという声をよく聞きます。それはそうでしょう。中古マンションも売り物です。その売り物が、傷つき汚れたままで買ってくれと言っているのですから。

反対に、運が良ければ中古とは思えない美しい物件に遭遇することもあります。ちなみに、筆者が17年住んだマンションを売ったとき、買い手さんはリフォームを一切せずに住むことができたと喜んでいたことを後で聞きました。

しかし、綺麗な物件に遭遇する確率は10%以下と思った方がいいでしょう。室内にはあまり期待しないで見学した方がよいのです。目の付け所は、室内の状態ではなく、街・駅・外観・玄関・共用部です。そして眺望・日当たり・プライバシーです。

●1か月以内の購入を実現した事例がたくさん

無駄足をしなければ、1か月以内に購入まで進むことが可能という話をします

自慢話になって恐縮ですが、筆者がナビゲーターになってマンション探しをお手伝いした人は数知れずですが、最も早い人で2週間という例もありました。平均的には1か月、候補物件は平均10件、見学物件は同5件といったところです。みなさん、共通して「信じられない」とおっしゃいます。スピーディに契約までたどり着くのです。

●1年間マンション見学に勤しんだ人がたどりついた結果がこれかと絶句

あと先になりましたが、筆者の「マンション探しのお手伝いサービス」は限定的です。お会いしてご相談の機会を持った方だけを対象にしているからです。

このサービスを始めたきっかけは、「2年も3年も数えきれないほど新旧マンションを見て来たがいまだに決めかねている。最終的にこれが良いと思うが専門家の意見を聞きたい」という人に多数お会いし、そのたびに「たくさん見て来た割に、選んだ物件がこれか?」と声が出ないことが何度かあったからです。つまり、このような人の力になれないかと考えたのです。

耳年増」という言葉がありますが、物件名とその批評は筆者も顔負けの人で、表面情報通とでも言うべき人がこの言葉にぴったりのタイプです。なぜ、何十軒も見て歩くのだろう、もっと効率よく、無論適切な選択のうえで、購入というゴールにたどり着くことはできないものか?そんなことを何度も思いました。勿論、探し始めの人も「転ばぬ先の杖」ではありませんが、筆者を大いにご利用いただきたいと思います。

日頃の作業は「マンションの評価レポート」と「将来価格の予測レポート」を書くことですが、もっと踏み込んだサービスをできないかと模索して来た筆者がたどりついた答えです。そして実行し、成果もあげてきました。筆者は仲介有業者ではありませんから、物件を自ら探してお勧めするというようなことは一切いたしませんが、結果的に自画自賛のサービス形態が完成形に近づいたと思っています。

おかげさまで、ご依頼も増えて多忙を極めています。今年、書籍を出版したこともあって、その反響の数は予想外でありました。来月には次の出版も控えており、殺人的なスケジュールをこなす毎日ですが、可能な限りお役に立ちたいと今日も奮闘中です。

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。(http://www.syuppanservice.com

※こちらのBLOGも是非ご購読ください。

https://www.e-mansion.co.jp/blog/archives/author/mituikenta/

◆◆◆新刊書籍 おかげさまで好評重版◆◆◆

 紀伊国屋書店(新宿)にて撮影

三井健太著「マンション大全」販売中。2019年1月18日発売。

全326ページ・定価:1800円+税。朝日新聞出版より。

一般書店、アマゾンなどでお買い求めください。

<主な内容>第1章 選手村マンションに思う/第2章 東京オリンピック後のマンション価格/第3章 コストカットマンションと業界の苦悩/第4章 中古マンションの価格の成り立ちと変動要因/第5章 マイホームが持つ二面性。居住性と資産価値/第6章 マンションの価値判断と探し方のハウツー/第7章 初めてのマンション購入・タブー集

※お知らせ※

長年続けてまいりました「無料・マンション評価サービス」は2019年3月26日をもって終了させて頂きました。今後は、資料の無料提供を除き、三井健太のサービスは全て有料となりますが、今後ともご利用をくださいますようお願い申し上げます。