第748回 「新築マンション選びで大事な住戸選び」

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論「マンションの資産価値論」を展開しております。10日おきの投稿です。

ご相談者の質問を拝見していて気付くのは「お得な住戸はどれか」というスタンスの方が多いことです。   その声を聴いて、筆者は「お得な住戸なんてないのに・・・」という疑問が浮かびます。筆者がデベロッパーに在籍していたころの経験則から言えば、「お得な住戸を設定する」などという考えを持ったことはないのです。   ともあれ、今日は新築マンションにおける住戸選びについて語ろうと思います。  

●マンション購入の手順は予算を決めることから

マンション購入を検討する人で予算を無視する人はいないはずです。 とりわけ一般会社員なら、まずは予算を大まかに決めてから物件選び、住戸選定に移行するのが普通です。

  ただ、はじめのうちは自分がいくらのマンションが買えるかが分からないものです。 そこで、先ずは販売事務所(モデルルーム)に行き、いくらのマンションを買えそうかを探ります。

 

  モデルルームを見学した後に、「この部屋だったら、毎月の返済額は?」などと営業マンに尋ねます。営業マンは、あらかじめ用意したペーパーや商談テーブルの上などに貼ってある「返済例」を示します。

  そのとき初めて、買い手は価格とローン返済の数字を知ることになります。その数字を見て「これは少し無理かな」とか、「えっ、その程度なの? 意外に少ないな」と感じたりしつつ、購入可能な住戸に候補を見つけて行く流れになります。   昨今は金利の低下で、多額のローンも返済額は意外なほど少ない実情にあります。

ただ、気を付けなければならないの、「返済例」は最も低い変動型ローンの金利で作成されていることです。  

●予算の範囲で住戸を選ぼうとするときの壁

返済例を見て、「俺って、結構高い買い物ができるんだ」と誤解しないことが大事です。

見学者の心理を慮って(おもんばかって)、用意されたものだからです。気が大きくなって、無理な買い物をしてしまう危険に気付きましょう。   マンション業者から見れば、「購買意欲を高める」ことが大事なのです。

 

気分を害させて見学者が退散してしまうより、前向きに検討してくれる心理状態になってもらうことを狙っています。   しかし、スタート時点で売り手の思惑を知らずに購買予算を高めに設定してしまうと、条件の良い住戸を選択してしまいがちになります。検討を進めて行く過程で、背伸びし過ぎと気付いて予算を落とすと、候補住戸が狭くなったり、低層階になったりして、落胆する破目に陥ります。  

 

筆者のお勧めは、予算を低めに設定してから住戸選びを始めることです。その結果で選んだ住戸位置、間取りが気に入らないときは、頭金を増やせないかどうかの検討をします。

  気を付ける点は後述するとして、低金利で計算された「返済例」を鵜吞みにせず、固定金利で計算してもらうことを提案しておきます。余裕をもってスタートした方が良いからです。  

●間取り選びも大事だが

マンション選びで大事なことは、間取りの前に「立地条件」や「マンション全体の価値判断」が優先されるべきです。「着眼大局・着手小局」という格言がありますが、それにならうことを提案します。

  立地について、ここでは一言だけにしますが、「駅から5分まで・妥協しても7分程度」を目標にしましょう。  

建物については、「スケール感」や「ブランド価値」、隣地の建物との関係(距離感、眺望・日当たり)を把握することが大事です。  

 

スケール感とは、「大きいことはいいこと」で、戸数で言えば100戸以上が望ましいとだけ言っておきましょう。コンパクト住戸の多い物件では50戸あっても、スケール感はファミリータイプ中心のマンションの30戸以下であったりするので、小さすぎて貧相な例も少なくないことを見落とさないことが大事です。

 

  隣地の建物との関係は説明を省きますが、日当たりと眺望、特にプライバシーの侵害に気を付けましょう。安い部屋は、眺望と日当たりに問題があるものです。  

●選んではならない格安住戸

安い部屋は、日当たりや眺望・プライバシー性に問題があるものです。特に格安の部屋は大きな問題があるのが普通です。売主は目玉住戸と言うでしょうが、安い部屋は何かしら落とし穴があると考えるべきなのです。  

 

「安値のお得住戸は隠れていないかなどと宝探しは止めた方がよいと筆者は考えます。高い部屋は価値のある住戸、安値の部屋は欠点のある住戸と思いましょう。  

 

マンション業者の値付けの基本は「高い住戸はより高値に、安値の住戸はより安値に」基本においています。   角部屋やルーフテラス付きの住戸などは強気な価格にしても、必ず勝手は現れるから心配は要らない。

それより、注目すべきは条件の悪い部屋だ、下手すれば最後まで売れ残るから、早めに売り切ることが大事だ。そこで、思い切り安値にしておこう。売り手は、こう考えます。

 

  条件の悪い部屋が残ってしまうと、「・・・だから売れないのだな」と言われてしまい、最後まで売れずに残る傾向があることをマンション業者は知っているのです。  

●3LDKにこだわらないことが大事

「広さのご希望は?」と尋ねられると、多くの見学者は「できたら70㎡以上」と答えるようです。

 なぜ70㎡なのでしょうか? 実はあまり根拠がないのです。間取りも「3LDK」と答える見学者が多いのが実態です。   購入した人へのアンケート調査などでも70㎡以上を選択している人は確かに多いのです。 

しかし、これから選ぶ人へ筆者が助言するならば、「60㎡の2LDKにしておきましょう」です。

  無論、家族構成によって60㎡では困る人も少なくないわけですから、あくまで小家族の「初めての購入者」の場合です。 予算に余裕があれば、70㎡でも80㎡でも良いのは言うまでもありません。  

筆者が言いたいのは、広さを先に決めると、望ましくない住戸(日当たり・プライバシー)に問題があるもの)を選びがちだから、広さを先に固定してはならないということです。

 

先に階の位置を決めましょう。間取り選びは、その次のステップですよ・・・・・こう言いたいわけです。  

●方位は後順位でも良い

次に、住戸の向きについて述べましょう。高温多湿の日本jの家は、昔から「南向きをむねとすべし」と言い伝えられてきましたが、エアコンの進化もあって、現代は重要度が低くなったようです。

  特にマンションは、南向きにこだわったら購入できるものが少ないこともあって、方位へのこだわりは結果的に後順位になっています。むしろ、眺望(開放感)やプライバシー性を優先して選ぶ買い手が増えて来たのです。

 

  東京なら、東京タワーやスカイツリー、レインボウブリッジなどが望める向きが好まれます。結果的に日当たりは後順位です。   大事なのは、眺望です。 

買ったマンションを売るときをイメージしてみましょう。筆者は、よくこう言います。見学者は必ずカーテンを開けて外を見るはずです。バルコニーへ出る場合もあるでしょう。

そのとき、景色がどうかについての感想を持つはずです。   「前の家が近いなあ」とか、「前のマンションの外廊下を歩く人の視線が気になるなあ」、「学校の運動場が目の前だから、元気な声が聞こえそうだ」、「東京タワーが見える」、「目の前は公園だ」などです。   見学者が購買意欲を高めてくれるかどうか、この視点は軽視できません。

価格が安くても手を出さない方が良いケースは少なくないのです。安値の部屋は、眺望価値にも問題がある。そう思いましょう。  

●玄関わきの個室に注意

間取りを見るときの注意点をひとつ付け加えましょう。

 実は、「ないものねだり」と言えなくもないのですが、玄関脇の個室には「日当たりとプライバシー性」の問題マンションが数多くあります。  

玄関側の個室はシャッターを閉じていることが多いので、「プライバシー性に問題がないと思っている居住者も多いのですが、うっかりすれば廊下の通行人に声を聞かれてしまうこともあるのです。

  角部屋は別として、共用廊下が採光を制限していることもあって、明るい寝室は少ないのですが、そのうえにシャッターを閉めてしまうと、快適な部屋とは言い難いものです。  

●買い替える可能性を考慮して選ぶべき

マンションは永住できないと思うべき・・・筆者の日頃の主張です。

長く住みたいというお考えは分かるのですが、地方都市と異なり、東京圏のように広いエリアでは、転職や支店・営業所への配置換えによって通勤が問題になるものです。

  また、転職のつもりがなくても勤務先の都合によって、職場が変わらざるを得ないときもあるはずです。また、こどもの学校や就職の関係から、買った家が不都合になることは少なくないのです。

 

  この意味から、家はいつでも売却処分または賃貸できるものを選んでおくべきと筆者は常に主張します。 かく言う筆者も、何回かも買い替えをして来ました。 市況の悪いときに買い替えを考えたものの、結局はやめたこともありました。  

また、子供の進学「の関係から買い替えの「待ったができなかった」もありました。

 

  いずれにしても、買い替えるとき、良い条件の物件を持っていれば思わぬ高値で売却ができます。そのためにも、「立地を第一に、次に建物全体の価値」を優先して物件選びに当たるべきです。 住戸選びはその次です。  

・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談のお申込みはこちらから(http://www.syuppanservice.com

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