第753回 「コンパクトマンションはここを見る」

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論「マンションの資産価値論」を展開しております。10日おきの投稿です。

最近、単身者からのご依頼が、立て続けに届きました。 いわゆる「コンパクトマンション」のご相談でした。   今日は、単身者のための「コンパクトマンション選択の留意点」について語ろうと思います。  

●戸数100戸は多いとは言えないかも

筆者が最初に注目するのは戸数です。マンションの価値を左右する条件、そのひとつは規模・スケールですが、ファミリー向けのマンションと単身者向けのマンションで、大きく違うのは全体のスケール感です。

 

指標のひとつが戸数ですが、単身者用のマンションは、戸数の割にスケール感は乏しいものが多いのです。   フォミリー用マンションは平均70平米前後の住戸で構成されますが、単身者用マンションは平均35㎡程度です。

つまり、住戸面積で半分の単身者用マンションは、100戸あっても、フォミリーマンションの50戸規模なのです。  

 

100戸あれば、まずまずのスケール感があって、それなりに見栄えもしますが、半分の50戸のコンパクトマンションは、フォミリーマンションの25戸相当と小型です。  

後に述べますが、100戸規模のコンパクトマンションは実際には殆ど存在しないのです。ということは、大型マンションを狙えと言ってみたところで、商品は存在しないことになります。

 

筆者の記憶では、100戸を超える大型のコンパクトマンションは過去に2件か3件でした。   小型マンションのどこがいけないのでしょうか? そう、見栄えがしないからです。

 

マンションの価値は、姿・形によっても左右されるものです。「威風堂々」の外観にしたいと、作り手も意識しているはずですが、そもそも素材(土地の面積)が悪ければ自ずと限界があります。  

それを知りながら、デベロッパーは狭小敷地で計画します。なぜかというと、大型マンションを計画したくても用地がないからです。用地がなければマンションという商品は製造できません。マンション業者にとって用地取得は最重要課題なのです。  

 

売地情報は、毎日もたらされますが、玉石混淆で、マンション用地として魅力的なものは存外少ないのです。それでも、マンションデベロッパーは土地を買わなければ商品を製造できませんから、磨けば光る玉の石を物色し続けます。しかし、条件の良い土地は中々見つかりません。

 

とりわけ、大型の用地は稀有です。   そんな土地情勢の中から苦肉の策として生み出されるのが、狭小の敷地でも商品になり得る「コンパクトマンション」の企画なのです。コンパクトマンションは、用地難が生み出した商品とも言えるのです。  

●売る苦労はファミリータイプもコンパクトタイプも差はない?

100戸のコンパクトマンションと50戸のファミリーマンション、全体のスケールは同じでも、戸数が多いコンパクトマンションの販売は苦労が多いと聞きます。  

戸数が多いだけではなく、単身者相手の販売は苦労が多いのだとも聞きます。単身者は決断に至るまで、用心深くて長い時間がかかるのだと現場の営業マンは言います。相談者が身近にいないことや、内密にしておきたい事情などがあって、相談相手がいない人も少なくないのです。  

 

戸数が多く、決断までに時間のかかる買い手が多いとしたら、単身者向けの商品開発はやめておけという声もあがるのだそうです。それでも、一定のニーズはあるのだからと、商品開発は続きます。   しかしながら、売る苦労は大差ないのだとしたら、売上金額で半分もないコンパクトマンションは割に合わないということになるようです。それでも、コンパクトマンションは用地難の中で、あだ花のように生み出されます。  

●混在型がいいのかも

マンションの価値を左右するのは、第一に立地条件ですが、コンパクトマンションの大半は駅前立地だったりするので、その点では合格点を付けられます。 とはいえ、駅前立地、駅近立地なら何でも価値があるわけではありません。   やはり建物が大きくて立派な方が良いのです。

 

 とすると、コンパクトマンションの買い手は、大型マンションの中にある「コンパクト住戸」を探すほかありません。実は、その方が探しがいもあるのです。  

筆者は、かねて「大型マンション狙え」と言い続けて来ました。大型マンション、なかんずく、タワーマンションの下層部分には、ずらりとコンパクト住戸が並んでいるものです。  

 

大型マンションの多くが、立派な共用施設を持ち、何より堂々たる外観、広大なエントランスホールとロビーなどによって威容を誇っています。 中にはエスカレーター付きの豪華な物件もあります。 また、コンシェルジュが世話役のように滞在しています。   無論、二重三重のロックが掛けられ、セキュリティも万全です。24時間ガードマンが滞在しているマンションも大型ならではです。 小型マンションではできようのない管理体制が敷かれているのです。100戸程度のコンパクトマンションではあり得ない管理体制とも言えます。  

●コンパクトタイプだけのマンションの問題点(その1)

子連れの居住者がいないマンションが希望という声を何度か聞いたことがありました。その理由も聞いていますし、分からないではありませんが、多種多様の世代・世帯が混在している方が人間社会としては自然です。

 

災害があったときなどには、人生経験の異なる多様なコミュニティの中で暮らすことは安全にもつながるはずです。   同世代ばかりが暮らすマンション、同じような境遇の単身者ばかりが寄り添って暮らすマンションは、お叱りを受けるかもしれませんが「同病相憐れむ」になるのではないかと、他人事ながら筆者は心配してしまうのです。  

●コンパクトタイプだけのマンションの問題点(その2)

コンパクトタイプばかりのマンションは、早い段階で賃貸マンション化するという懸念もあります。 家賃がもったいないからとコンパクトマンションを買ったが、いずれ不要になるときが来るかもしれない。その時は売却するか賃貸すると決めて購入する単身者用のマンション。  

 

何年か経過して事情が変わり、転居することとなったとき、持ち家のマンションを貸すか売るかに思案しますが、賃料が思いのほか高いので住宅ローンの返済もラクと知って売却しない人も多いのでしょう。 こうして、マンション全体の賃貸比率は高くなることとなります。

 

  分譲時の段階に戻りますーーコンパクトマンションを投資目的で購入し、最初から賃貸に出す購入者も多いのです。結局、数年後に賃貸するオーナーも含めると賃貸比率は一般マンションの比ではなくなります。   賃貸中住戸の多いマンションは、ルールを守らない居住者も多くなると聞きます。居住しているオーナーの声を聞くと、分譲マンションなのに、賃貸マンションのようだと語る人も少なくありません。  

●チェックポイント・・・駅からの距離は5分まで

コンパクトマンションでなくても、東京圏のマンションを検討するとき、何より立地条件が重要です。

ファミリーマンションの場合は、駅前に大型の用地が売り出されることは滅多にないので、徒歩5分を超えるのが普通ですが、コンパクトマンションは駅前の小さな敷地でも商品になると見て、獲得するマンション業者が多いのです。  

 

ここまでに述べて来たように、大型マンションの中に設けられるコンパクトマンションを駅から徒歩圏で見つけても、駅近物件にはならないかもしれませんが、できるだけ駅近、具体的には徒歩5分を目安に選ぶべきです。

 

  駅近マンションを絶対条件とすると、小規模なマンションを選んでしまいがちですが、優先するのは建物全体の大きさの方です。近いことに魅力を感じたとしても、建物が貧弱では、トータル評価は限定的です。  

 

しかしながら、駅に近いことを絶対条件にしている単身女性も多いのは確かです。夜道は危険と感じる女性も多いのです。仕事の帰り道、遅くなっても夜道に危険を感じない駅のそばに建つ物件を買いたいのでしょう。   その事情を鑑みても、建物価値を後回しにして良いわけではありません。

駅に近いだけで全てが決まるわけではないことを肝に銘じて検討をして欲しいと願うものです。  

●貸すことも想定しておくべし

コンパクトマンションに長く住むことになる人もあるようですが、転勤その他の事由によって転出する人も無論あります。 

転出する人の中には、それまでの家を賃貸する人も少なくありません。   そのとき、持ち家はいくらで貸せるのか、その賃料で住宅ローンを払って行けるのか。そこに留意して購入物件を選択する人は少なくありません。

 

未来のことは誰にも分からないことなので、予想していなかった事由で転出することになるかもしれません。 そのとき、買った家をどうするか考えておく必要があります。   売るか貸すかのどちらかですが、例えば10年後に売るとして果たしていくらで売れるだろうか、貸すとして月々いくらで貸せるだろうか、これを考えてから購入することが大事です。  

 

ここでは、賃貸する場合の話に留めますが、SUUMOなどの情報サイトで賃料をチェックしておきましょう。 購入物件と同じ駅の付近で、いくらで募集しているかを調べて大まかな賃料を把握すれば十分です。 気を付けたいのは、築年数です。新しいものは高く貸せるものの、古い物件ほど賃料は安くなるのですから。  

●優雅に暮らしたい間取り

最後に、コンパクトマンションを購入する際の住戸の間取りについて触れておきましょう。 ワンルームタイプにせよ、少し広めのコンパクトタイプにせよ、新居へのこだわりは人それぞれです。ここで筆者が述べたい点は、以下の通りです。  

*女性は靴のスペースに注目しておきたい

*キッチンの調理スペースは残念ながら非常にコンパクトと覚悟しなければならない

*玄関先に訪問者を迎えたとき、中が丸見えにならないか、つまり玄関ホールと居住部分との間に扉が付いているかどうか、これは見逃せない

*洗面化粧台が浴室の外にあるかどうか。トイレと一体化されていても良いが、浴室の中にあると、不便なことが多い  

・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談のお申込みはこちらから(http://www.syuppanservice.com

無料進呈「住んで気付くダメ間取りと名作間取り・特選50」 お申込みは「三井健太のマンション相談室」へ http://www.syuppanservice.com  

新刊ご案内!!「損しないための究極のマンション選び」

電子書籍1000円 三井健太著 概要とお申込みはこちらからどうぞ http://www.syuppanservice.com/yuuryou-book.html  

まとめて4件以内*ショートコメントサービス*始めました。

見学前のご利用がお勧め。肝心の部分に限定したショートレポートです。複数の候補があってお迷いのときに役立ちます。 ショートコメントサービスの料金とお申込みは「三井健太のマンション相談室」でご確認ください➡(http://www.syuppanservice.com

※こちらのBLOGも是非ご利用ください。

https://www.sumu-log.com/archives/author/mituikenta/(スムログ) http://sumitaimansion.blogspot.com/(三井健太の住みたいマンション)