新築マンションの契約率低下の“朗報”

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

2014年11月18日の新聞に、10月の新築マンション調査データが掲載されていました。

継続調査を続けている「不動産経済研究所」が発表したもので、①9か月連続で発売戸数が前年同月比で減った、②同月の契約率(10月新発売の物件が月末までに何%売れたかというもの)が2009年2月以来の低水準(61.7%)だったとあります。

注目ポイントは後者・契約率の低下です。

というのも、好調の目安とされる70%を大きく下回ったからです。東日本震災後の一時期に低迷したマンション市場は、その後回復し、2012年以降ずっと好調を維持して来ました。

金利が下がってローンの返済負担が下がったことに加えて、2006-2009年にかけて上昇した価格が2010年以降下落したことで購買意欲を高めたこと、その後は再び価格の先高観、さらに金利の先高観も出て来て一段と購買行動を活発化させたためです。

消費税の増税による2013年9月の駆け込み需要の反動減もマンションでは軽微でした。

しかし、震災復興需要が動き出して以降、建築費が上昇してマンション工事費にも影響が及ぶようになり、価格にコストアップ分を転嫁せざるを得なくなったのです。

このブログで何度か解説してきたことなので繰り返しませんが、2013年の新築マンション価格はとうとう前年比8%も上昇したのです。

それでも統計上の売れ行きに悪化という数値は表われませんでした。それが販売シーズンの10月にとうとうはっきりと出て来たのです。ちなみに前年10月は79.6%と8割近い好調ぶりでした。

不動産経済研究所の発表によれば、千葉県は39.9%、神奈川県60.2%、東京都下59.5%の契約率に留まったそうです。 

東京都区部(71.5%)と埼玉県(80.6%)は、数字上に悪化の様子は見られませんが、早晩低下すると見られます。

このようなデータを、読者の皆さんはどうご覧になりますか?

筆者は、急がないと買えなくなるという、ある種の強迫観念から逃れることができるかもしれないと考えます。これは買い手にとって朗報です。

朗報とする理由を説明しましょう。

業者は、契約率が悪化しないように発売戸数を減らし先送りします。売れそうな数だけ売り出すことで表面上の契約率は高く保つことができるからです。

販売現場では、「殆んど売れました」や「全部売れました」と言えます。買いに来た人には、「次期の売り出しをお待ちください」と、もったいぶることもできるのです。

しかし、発売戸数を絞り、先送りすれば未発売在庫の減り方が遅くなります。やがて建物竣工の時期がやって来ます。建物が完成すれば先行契約者に引き渡しをしなければなりません。

入居が始まってからの販売は、マンション業者にとって好ましいことではありません。

入居者からの問い合わせやクレーム処理が少なからず発生してくることに加え、検討客の建物内覧に入居者の出入りが重なったりすること、入居者銘板や集合郵便受けの名札などから売れ残りの多寡が知られてしまうことなどが理由です。

売れ残りが多いと強気な営業ができなくなり、値引き圧力にさらされるので「売れゆきは良し」と装っておきたいのですが、完成在庫があると難しいのです。

最も重要な問題は、建物が完成すると施工会社に代金を支払ってマンション全体の引き渡しをしてもらわなければならないことです。

言うまでもなく、売れなければ代金の回収が終わっていないので、支出が先行することになり、売主企業の財務バランスを悪化させます。

従って、未発売を含めた在庫は増えすぎないように絶えず対策を講じています。普通は、竣工時までの完売を目標にしてマンション分譲は計画されます。

そこで販売促進を急げという指令が現場に出されます。同時に、販促の策が論じられます。そして、多くの企業は値引き販売策を採用するのです。

不動産経済研究所などの調査は、あくまで定価による統計であり、値引き後価格のデータは現われません。しかし、販売不振が続けば、値下げ・値引き販売が水面下で(こっそりと)断行され、実態は価格の下落トレンドが始まるのです。

建築費が下がる見通しは当分立ちません。従って、マンション価格は今後も下がりそうにありません。しかし、売れ残った何%かが限定的に値下がりするというわけです。

もうお分かりですね。価格が上昇したら、売れゆきの悪化につながり、売れゆきの悪化は価格の低下に繋がって行くのです。

価格の如何に関わらず高い人気を博する特別な物件もありますが、多くの物件は高価格から売れ足を鈍化させているとしたら、ディスカウントのチャンスがやって来ることになります。

2014年8月25日に、書くのは早いかもしれないと思いながらも書いた「値引き・値下げ物件が増えて来そうだ」は、どうやら筆者の予想より早まりそうです。

3月の決算期を控えて時間があまり残っていません。3月引き渡し物件ではチャンスが目の前に迫っていると言えます。

交渉したら値引きしてくれそうかどうか、その見極めが今後のキーポイントになるかもしれません。 そのためには、建物の完成時期と、売れゆきのチェックが重要です。

特に売れ行きのウオッチングをしっかりとしておきましょう。 分割して売り出す場合(大抵そうです)、第〇期〇戸発売(登録受付)と広告に出ますから、その数と受付日を継続記録しておくのです。

「急ぐべき時です。しかし慌てないことが大事です」と、最近1年はこう助言して来た筆者ですが、どうやら「急がなくて大丈夫です」と言い換えるときが来たような気がします。

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