「天井で買って底値で売る」ことになっても・・・

ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

値上がりがすさまじい新築マンション。連れて中古マンションも新築を追い抜いてしまいそうな値上がりが続いています。

新築マンションの価格が底だった2012年からの動きを見ると、2013年に前年比8%上昇、2014年は同2%の上昇と高止まりかと思いきや、2015年は9.4%の上昇と再び急騰しました。

結局、2015年の価格は2012年比で20%以上も上がってしまいました(首都圏全体の平均坪単価で比較)。東京23区だけで見ると、2012年比23.5%の上昇値を残すことになったのです。

中古マンションの価格も上昇を続けているというニュースは、毎月、新聞に載るのでご存知の読者も多いと思いますが、値上がり率は築年数と無関係に1戸平均価格で発表しているため、上記の新築価格とは正確に比較ができません。しかし、その上昇カーブは新築価格と並ぶものです。

先に「新築を追い抜いてしまいそうな」と表現しましたが、これは次のような場面で感じることでした。

中古マンションの購入検討者から、価格が適正なものかの評価を依頼されたとき、検討物件が築10年未満である場合に驚愕のデータを発見してしまうのです。

適正価格を検証するとき、過去1~2年間における類似物件の取引事例を探すのですが、その価格が新築相場と大差ないか、新築相場を超えている例もあるからです。

ここで言う新築相場とは、過去5年の平均を取っています。直近販売の新築物件を比較対象にしようとしても当該エリアには販売物件が存在しないことが多いからです。

築浅の物件の場合は、リフォームによるバリューアップは考えにくいので、高い価格の根拠は眺望がいい(最上階など)、間取り良い(角部屋など)、ブランド価値が付加された、駅前・駅直結など立地条件が際立っているなど、格別な物件なのでしょう。

そうであれば、新築相場を超えても何ら不思議はないのですが、成約事例の大半が新築に接近し、新築価格の95%~100%の位置にあるエリアに遭遇することが増えていることが問題です。築浅の中古に限れば、新築も中古もないという高いレベルになってしまったのです。

「直近販売の新築物件を比較対象にしようとしても当該エリアには販売物件が存在しない」と述べましたが、中古が高い原因はここにあります。

もともと、中古マンションの価格は、新築価格に連動する性格があります。新築マンションの価格が高くなれば、相対的に中古に割安感が出て来るので中古に人気が集まり、やがて中古も値上がりするという軌跡をたどるのです。

過去3年間の新築マンションの急激な値上がりは、中古マンションへの注目度を高め、中古価格の上昇を引き起こしています。

しかし、これだけでは中古マンションの価格が新築を上回るという説明には十分ではありません。中古が値上がりしたとしても、あくまで新築よりは安い位置にあるはずです。そうでないのは何故でしょうか?

統計的に中古が新築を上回るのは、比較対象になる新築が存在しない中で中古を購入するという状態にあることに他なりません。

想像してみて下さい。同じような立地条件で、建物グレードその他の条件に差がなく、違いは新築か中古かだけという場合、二つの物件を比較検討したら、新築の価格より高い中古物件を買う人はいないはずです。

しかし、理論上はそうであっても、比較する新築物件がなければ、新築を超える価格を提示しても、その中古を購入する人は表れることでしょう。

新築の供給が活発なエリアであれば、年中どこかのモデルルームが公開中にあり、中古マンションを探す人より新築を検討する人が多くなるので、中古マンションは新築との差異を意識して販売戦略を立てることが必須となります。

具体的には、価格の魅力を打ち出すことが手っ取り早く確実な作戦です。そうして新築との価格開差は大きくなって行きます。

新築マンションの供給量は、最近数年間を見ると、ピーク時の半分に減っています。需要がそこまで減少しているのではありません。少子高齢化がマンション需要を半分に減らしたわけでもありません。少なくとも、首都圏は人口流入が進んでいるのですから。

需要が減った、正確に言えば、顕在化していた需要が価格の高騰によって購入を一時諦めて潜在化してしまい、顕在需要が減ったということはあるかもしれません。

しかしながら、半分まで減ったとは思えないのです。前回のブログでも述べたように、金利の低下は購買力を高め、価格高騰をかなりの部分で吸収したと考えられるからです。

供給が減った原因や背景はさておき(過去に解説しましたが)、新築が好きな日本国民ではあるけれども、その新築が少ないため、エリアによっては全くないため、仕方なく中古へ流れるという構図を創り出しています。

その中古も、できるだけ新しいものがよいと考える買い手が多いため、築浅の中古に人気が集中するという傾向を生み出しています。

結果として、築浅の中古は足が早くなります。売り出されるたび、すぐに無くなるので、築浅中古は市場に多く流通していないのです。

悪循環に陥っていると言えるかもしれません。足が早い優良中古・・・市場流通量の少ない優良中古・・・流通量を上回る買い手の数・・・物件を奪い合う買い手・・・価格の上昇・・・

優良中古マンションには、言うまでもなく築浅という条件もあります。また、築10年を超えていても、立地条件が別格の場合も同様です。人気ある優れた品物が市場に少なければ、価格にプレミアムが付くのは自然の流れです。

最近のご相談メールには、仲介業者に対する憤りが行間から伝わって来るものが増えています。例えば、価格交渉を仕掛けたところ、「一切応じられません。そんなことを言うなら、二番手の買い手さんへ商談の権利が移ります」と言われたという類の話です。

これが業者ではなく、個人売主の言葉でもあったりします。非常に強気な、将に「売り手市場」なのです。無論、特定のエリア、特定の物件のことであって首都圏あまねく売り手市場にあるということではありません。

前回も述べたように売れ行きは二極化の傾向も見せているのですから。

今日のお話は、売れ行きの良い方の、かつ中古に限ってのものです。

売れ行きの良い中古だけに目を向けると、多くの買い手が交渉の余地さえなく、売主の言いなりになるという状況を見ます。その実態は尋常でないと言うほかありませんが、それでも買い手は購入に踏み切って行くようです。

多くの買い手が高値を押し付けられたとしたら、その決断は将来に禍根を残すかもしれません。株の世界ではありませんが、「底値で買って天井で売る」の反対、「天井で買って底値で手放す」という不運を招くかもしれないのです。

家は買いたい時、買わなければならない時に、都合よく安値である確率は低いのかもしれません。ライフステージと購入時期とは無関係ではありません。結婚、子育て、転勤、定年、子供の独立などとマイホームの購入や売却は密接に関わっています。

高度成長期に社会に出た人、バブル期に就職した人、バブル後のデフレ時代に少年期にあった人、高金利時代にマイホームを買った人、バブル時代に郊外で買うしかなった人、低金利のローンでマイホームを買えた人、バブル後に都区内でマンションを買えた人、など例を挙げればキリはないですが、それぞれの人生は経済や社会構造の変化など時代背景によって良くも悪くも影響を受けるのでしょう。

人生のイベントの中でマイホーム購入は重みあるものですが、タイミングが悪いとしても、それを不運と嘆いたり恨んだりしても仕方ないことです。

過去には、高値で買ってしまったために売るに売れず苦しんだ人もあったでしょう。売れた場合も、その損失額が半端なものではなかったという人もあるはずです。

しかし、経済的には損失だったとしても、使用価値が高いことで大きな「精神的利益」を得て余りあるという場合があります。
「使用価値」は、個人の価値観や家族の事情などによって幅があるもの、その大きさは他人には測り知れないものがありましょう。つまり、場所を含め、快適な暮らしができそうなマンションであるなら、その選択は間違いではないことになります。

精神的な利益は金銭では測れないものと考えます。今は、どこを見ても、新築も中古もみな高いのですが、先ずは使用価値をじっくりと考えてみることが大事です。自分と家族にとって、この家が幸せをもたらすのか、快適な暮らしをおくれるのか、そんなことを自問自答することが最も肝腎です。

マンション購入の競争に打ち勝つために予算を積み増ししたとしても、それが損とは言えないこともあるのです。

 ・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ。

★三井健太のマンション相談室は、マンション購入のお悩みにお答えするサイトです。

★「無料の未公開情報(HPでご紹介。現在66タイトル)や「マンションWEB講座(※最新版NO.90)」など、お役立ち情報も多数掲載されています。

判断に迷ったら唯一無二の「マンション無料評価サービス」で解決!お申込みは上記URLから(無料の範囲は限られます:ご注意ください)

溢れる情報で混乱を来たしそうなとき、物件の価値を筆者の冷徹で公平・客観的な観点からの評価コメントをお読みいただいた結果、「頭の中が整理できた、先入観や固定観念、誤解などが氷解した、悩みがすっきりした、前に進めそうだ、これで無料とは驚きと感謝」等のお声をたくさん頂いています。

既に契約済みの方もどうぞ気軽に!!「自分の決断は間違いなかった」と確認できること請け合いです。