第782回 「管理費の高いマンション・安いマンション」

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論「マンションの資産価値論」を展開しております。10日おきの投稿です。

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70㎡換算で10,000円と安いものから、35,000円もの高額な管理費まで、その幅が大きいという現実があります。この差は、どのような条件で生まれるのでしょうか?整理してみましょう。

 

●管理費の使い道

管理は、言うまでもなく共用部分を対象に行われます。共用部部分とは、エントランスホールや共用廊下、コミュニティルーム(集会室)やキッズルーム、ラウンジ、ゲストルーム、防災用備蓄倉庫、管理人室、ゴミ置場といった共用の施設を指します。

 

同様に、外壁・屋根などの建物外部、敷地内公園や花壇、植栽、露天駐車場といった空地部分も対象となります。

 

設備では、廊下やエントランス・管理人室等の共用灯、機械式駐車場、エレベーター、TV視聴設備(アンテナ等)、水道管・排水管の内の竪管部分、受水槽、古いマンションでは屋上の高架水槽といったものがあります。

 

このような施設の面積が広く、設備の数が多いほど、管理費は膨大なものとなります。広ければ、清掃費だけでも馬鹿になりません。エレベーターの数を1台でなく2台にすれば、電力も定期点検費用も2倍となります。

また、24時間警備体制や管理人と別にコンシェルジュを配したりすれば、人件費が増えます。

 

しかし、管理費用が膨大にかかっても、住戸数が多ければ1軒当たりの管理費はさほど増えません。

 

ところが、マンションの住戸数は20戸程度から1000戸くらいまでと、差が大きく、数に比例してメリットが生まれる(割安になる)わけでもありません。

例えば、20戸のマンションも50戸のマンションもエレベーターは1基が普通ですし、50戸のマンションの管理人は1人で、100戸だから2人必要ということでもないのです。

 

共用施設の面積が2倍になれば、清掃費は単純に2倍かかるでしょうが、共用廊下が雨の吹き込む外廊下か、絨毯敷きの内廊下かでは差ができるはずです。

 

これらの要素が絡みあって、管理費は1軒当たりにすると1万5000円から3万5000円といった差が生まれるのですが、傾向的にはっきりしているのは、戸数が少ないほど割高になってしまうことです。

 

●管理費の高いマンション

さて、小型マンションの管理費は割高になることは容易に想像できると思いますが、実際はさほどでないケースが多数存在します。 高くなると売れないので、管理人を置かず巡回式にするなどの策を講じて経費を削っているためです。

 

管理人の平均月収を25万円とすると、その経費を賄うためにマンション所有者から集める管理費のうち、管理人人件費に充当する分は、100戸のマンションなら1軒あたり2500円ですみますが、25戸のマンションなら1万円も必要になってしまいます。

 

仮に3万円の管理費のマンションだとしたら、3分の1は人件費に消えるというわけです。管理人を置かなければ、単純に見て2万円ですんでしまうということになるのです。

 

巡回管理方式の管理人不在マンションと、管理人室に管理人さんの姿が見えるマンション。どちらが良いかは言うまでもないのですが、比較的小規模の高級マンションには、例え管理費が5万円になっても管理人が8時間以上滞在するのが普通です。

 

今あなたの検討中マンションの管理費が、1㎡当たり300円くらいとしましょう。70㎡なら2万1000円です。このほかに修繕積立金が1万円前後に設定されているはずです。

 

立地も建物も気に入り、買いたいと思ったとします。しかし、ランニングコストの高さが引っ掛かっているとしましょう。

 

平均的な管理費が@200円として、@100円の差は、70㎡住戸なら毎月7000円の負担増というわけです。貴方の年収と住宅ローンの毎月負担などを考慮しても、無論払えない金額ではないし、重い負担とも思わないが、何か気になるという人があります。

 

経済的な比較だけで考えて見れば、7000円は年間8万4000円の負担増ということですが、10年なら84万円となります。

この金額をどう見ればいいのでしょうか? 答えは簡単です。10年後に売却するとして、管理費の安い、すなわち間引き管理や手抜き管理(言葉は適切でないかもしれません)のマンションより84万円高く売れればいいのです。

 

管理費が高くても販売に影響しないと判断して「日勤管理=8時間」を選択したマンションは、その大半が好立地に建設され、分譲価格も東京都心なら70㎡でも8000万円以上1億円くらいの上級物件のはずです。

 

これを普通か普通以上の所得の勤労者が買えてしまう超低金利時代になっているだけに、たとえ毎月7000円でも気になる金額になっているのだろうと想像しています。

しかし、先に述べた通り、検討物件が将来価値の期待できるものであれば、10年で84万円など、問題外の金額とも言えるのです。

 

●管理費の安いマンションをどう見るか?

反対のケース、すなわち管理費が安いマンションの場合は、どう見たらいいでしょうか? 何も問題はない? ええ、そうかもしれません。しかし、中には要注意マンションもあることを知っておいて悪くないと思います。そこで、付言します。

 

先の記述でお気付きのことでしょうが、管理体制は多分に分譲主が販売の都合で設定しているものです。

 

売りにくいから安く設定できるような管理仕様にしたい、管理費が髙くても売れるから管理人は常駐にして構わない、魅力に乏しい物件だから(若しくは、より魅力を高めるために)「24時間有人管理とコンシェルジュを売りにしよう。規模が大きいので、管理費にはさほど影響しないだろう」・・・などといった販売サイドの思惑によって決められているのです。

 

問題は、管理費が際立って安いマンションです。最初に述べた通り、管理費はその対象面積が広く、対象設備の数が多ければ総体として高くなるわけです。反対に管理対象が狭く、設備も少ない建物は安くなります。

 

管理費が安いマンションの中には、スケールメリットが十分に発揮できて安くなったというものがあるのも確かですが、それだけでは説明できないケースが少なくありません。

 

エレベーターが本来なら5基は必要な規模・高さなのに3基にしたことで、保守点検費と、籠内の清掃費が安くなっているかもしれませんし、植栽の手入れ費用が少なくて済むような僅かな緑しかない設計なのか、あるいは手入れの頻度が少ない管理仕様なのか、単に共用施設が何もないからか、駐車場が平置き式だから機械式と違って安いのか等々・・・・・疑いはキリなく出て来ます。

 

これら管理費が安い理由について素通りせず、一応の問題意識を持つことが大事です。良いと思った建物が意外にも欠点があったなどと気付くかもしれないからです。

 

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