第710回 「テレワークの増加で変わるかマンションの価値」
- 2020.03.10
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このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。
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価値あるマンションの見方で大きく方向が変わるとしたら、何が原因になるだろうか?そんなことが、ふと頭をよぎるときがあります。
新型コロナウイルスの流行が経済活動にも大きな影響を与えている流れが「働き方の改革」を一気に進めるのだろうか?そんな連想をしてみたりしつつ、景気の行方を心配し、マンションの市場の変化にも思いをいたす日々です。
今日は働き方改革とマンションの資産価値の関連について徒然に語ろうと思います。
●伊豆や軽井沢で仕事する人が増えたら?
街の発展は人口の増加と密接な関係があります。東京に人口が集中したとき、様々な問題を引き起こしているとして、人口を分散するための施策が何度も検討されました。
官公庁の一部を地方都市に移そうという最近の動きもひとつですし、その前は遷都(首都移転)も構想にのぼりました。地方創生の政策も数えられるでしょう。自治体も「町おこし・村おこし」に取り組んでいます。「定住者を募集」の看板を掲げている島などの話もときどき聞きます。
しかし、これらの策によって地方都市が衰退から成長に転換したという実例はあるでしょうか? ごく少数の地方都市で、空き家問題の解消にいくらか役立ったという程度です。
時代は移り、「インターネット環境さえ整っていれば、仕事はどこでもできる」ようになっていますが、伊豆や軽井沢のようなリゾート地に何万人と人口移動する可能性は低いはずです。北海道のニセコ地区のような訪日客の増加でホテルや別荘建築が増えている例もありますが、これは例外的です。
首都圏のマンション需要は、新築・中古合わせて年間8万戸ほどですが、これは世帯数1300万の0.6%に過ぎません。従って、首都圏の世帯数が100万減少すれば、6千戸の需要が消失する、すなわち、8万戸が7万4000戸に減るだけです。
今後も、東京の人口が減ってマンション需要も減るということにはならないのではないかと考えています。東京都の人口推計では、区部が2026年、都全体では2025年がピークで、以降は減少に転じるそうですが、それでも地方都市のような減少速度ではないはずです。都心や都心に近いエリアは減少しないという予測もありそうです。
マンション需要は人口の増減だけでなく、高齢者世帯の増減、単身者世帯の増減などによっても変動しますが、人口の大幅な減少がない限り大きく減ることはありません。
東京圏で購入したマンションの将来は、全体として見た場合、郊外都市を除けば心配しなくてよいのかもしれません。つまり、いつでも買い手は見つかると考えても大きな誤りではないのかもしれません。
しかしながら、総需要の数は元々少ないのですから、物件格差はどうしても出てしまいます。郊外には需要の絶対量が少ないこと、今後は一段と減ると予想されること、都心・準都心であっても物件固有の条件によって大きな差ができるものであることを断っておきましょう。
●マンションの資産価値とは何か?
生活の基盤が家・マンションです。通勤の便や買い物、学校など、欠かせない条件があり、自己実現の欲求とでも言うべき「こだわり」も家には重要です。こだわりとは、好みと言い換えてもよいでしょう。
そうした前提条件や希望などを満たそうとして物色するものの、100%を満たす物件は存在しません。
モデルルームを見て「こんなマンションに住みたい」と感動したが、よく考えたら通勤が大変なので悩んでいるという相談例がときどきあります。
予算が少ない自分たちにとって広さが魅力の物件だが、バス便が問題だと悩む例もありました。場所も建物も最高だが、買える部屋は1階の日当たりの悪そうな部屋しかない、こういう選択をして問題はないかと悩む人もあります。
長く住みたいので、日当たりと眺望を重視しているが、予算は希望の広さ・間取りに届かない。どうしたらいいのか。こうした悩みを訴えて来る相談者もあります。
また、自分は一流志向で「売主」や「場所・アドレス」を優先しています。今とても気に入っている物件があるのですが、施工が聞いたことない建設会社。これが唯一の引っ掛かりとして残っています。問題はないでしょうか―――このような相談を寄せて来る人もあります。
マンション選びは、悩んだ後、最後のところは些細なことを決め手にして前に進めるものです。ところが、そのとき大事なポイントを置き去りにしてしまう人が少なくありません。
では、何を忘れてはいけないのでしょうか?それは、将来の売却を想定し、その価値を決める要素、すなわち「資産価値」という観点ですが、これを優先順位の上位に置くこと。ここが大事です。そこで、マンションの資産価値というテーマを少し分解して説明しましょう。
<そもそも資産価値とは何か>
不動産を保有すると、固定資産税と都市計画税を毎年納め続けなければなりません。そのほか、マンションなら毎月「管理費と修繕積立金」も必要になります。
乱暴に言えば、賃貸マンションの方が家賃だけで済むので安上がりかもしれません。しかし、「賃貸マンションにはないメリットが購入にはある」――このことを誰もが知っているからでしょう。マイホーム志向の人が賃貸派より圧倒的に多いのも納得が行きます。
<資産価値を左右する条件と順位>
資産価値を構成する要素としては、①立地条件、②スケール(存在感)、③外観・玄関・空間デザイン、④建物プラン(共用施設、間取り、内装や設備など)、➄ ブランド、⑥管理体制が挙げられます。
全ての要素が揃っていなくとも、以下のような順番で条件を満たしていれば高い価値を持つマンションとなります。資産価値を左右する要素のうち、優先する順位もしくは比重の高い順位を表わすと考えてもらえればいいでしょう。
第1位:立地条件(利便性と環境)
第2位:スケール(存在感)
第3位:外観・玄関・空間デザイン
第4位:建物プラン(間取りや内装、設備、及び共用部分のプラン)
第5位:ブランド
第6位:管理体制
立地条件の悪い物件は論外です。他の条件が束になってかかっても立地条件の比重を上回るものではないかです。ちなみに、1から5までの合計を100として立地条件の占める重さを表わすと、70から80くらいになるのです。
ここに記載のない番外条件はできるだけ念頭から外しましょう。枝葉末節のものと割り切りましょう。枝葉末節こだわればこだわるほど、決断できなくなるからです。
メリットがあればデメリットがあるのが世の常です。森羅万象、何事も裏があり表があるもの、メリットだらけの素晴らしいマンションがあるとしても、価格が高くて手が出ないというデメリットがあるはずです。
安いものはたいてい交通便が悪いものです。環境が良ければ駅からバス。「広くて安い」を目指すと郊外の、しかも支線の駅。通勤に便利で人気のある街で探すと、条件の悪い住戸しか予算に合う部屋はない、というように、「あちら立てればこちらが立たず」と苦労するのがマンション探しというものです。
ご相談者に中に、「5年も探し続けているが未だに決められない」という人もありました。そこまで行かなくても、1年以上も探し続けている人は少なくありません。
そこで、大事になるのが「妥協」ですし、「優先順位の決め方」なのです。
買い替えの可能性が少しでもある人は、将来の売却価値に重きを置くよう筆者は勧めます。
そうなると、優先順位は何を置いても立地条件(利便性と環境)」がトップになります。建物がどんなに素晴らしく、ブランド力のあるマンションであっても、そして自然環境が良いとしても、バス利用となると、ほかの全ての良さが吹き飛んでしまうのです。
これは、大都市なら例外はないと思って間違いありません。特に利便性は優先されるべき条件なのです。
立地条件が良いマンションは価格が高いものです。従って、広さは我慢する必要があります。新築を諦めて中古を選択することも必要です。
もう一度言いましょう。「広さまたは新しさを犠牲にしても場所を採る」――この覚悟が大事なのです。
●永住を前提にしないことが基本
あるマンション購入者調査では、「永住するつもりである」と回答した人が70%もあるというのです。筆者にはどうしても信じられません。設問の仕方の問題ではないかと思うのですが、「永住するつもりであるが、先のことは分からない」ということと解釈することにしています。
人生は想定外のことが起こるものです。将来のことは誰にも分からないのですし、売却するかどうかも分からないのに、将来のリセールバリューを論じるのは「絵に描いた餅」になりかねないというご批判もいただきました。
しかし、将来のことが分からないからこそ、いつでも処分が可能な、言い換えると資産価値の下落リスクが小さいマンションを選択するべきだというのが筆者の持論です。
筆者にも、想定外の理由で住み替えなければならないことが二度も起きました。それが人生だなどというと大仰ですが、自宅マンションは大切な個人資産なのですから、いつでも処分が可能な価値あるものを選んでおきたいものです。
下落リスクの低いマンション、その条件はいくつかありますが、その中で最も影響が大きい要素は立地条件です。このことを強く心に刻んでおきましょう。
購入時の価格から下がらない、むしろ値上がりするマンションの立地条件はと問われると、都心にあるとか、駅に近いといったことになります。地域的には人気沿線や東京都内などの限られた物件になります。
としたら、現実問題として郊外や地方都市を選択するしかない人はどう考えたらいいのでしょうか?
都心の一等地のマンションは中古になっても値下がりしないが、郊外のマンションは必ず値下がりする。このような言い方をしたら、どれだけ切ない思いに至ることでしょう。しかし、あえて申しましょう。
東京でも八王子市のような人口50万人余の大都市なら、市内に住みたい人は多数いるに違いありません。同様に、埼玉県内に勤め先があるので自宅も県内に構える方が良い。そう考える人は勿論たくさんいるわけで、東京都心に通勤する人ばかりではありません。
ところが、これらの都市のマンションは、東京都心や準都心の人気の街ほど高い価値で処分ができるわけではありません。それが現実です。
そこで、郊外のマンションを選ぶ場合は、地域一番の物件を選ぶなど、可能な限り値下がり率の低い物件を選択するようにしなければなりません。
購入したマンションが、10年しか経っていないのに半値になってしまい、売りたくても売れない事態になるなどということがあります。
10年程度の経過では住宅ローンの残債が大きく、売却して得られる金銭では弁済ができない。かといって、手元の預貯金には手をつけたくない。このような困った事情を抱えてしまう人は多数潜在しています。
いつなんどき売却の必要があるか分からない、計画通りに行かないのが人生。そんなことを思うとき、気楽に転居できる賃貸住宅と違って、マイホームは行動を妨げる大きな障害になるかもしれない。このように覚悟して購入するとして、その場合の留意点をお話ししましょう。留意点というより一定の覚悟、心構えと言う方がよいかもしれません。それは、次のようなものです。
売却が5年先かもしれないし、10年先かもしれませんが、ここでは20年後を例に取ってお話しします。
①先ず、賃料を払ったつもりになって20年の住宅ローンを返済すると考えます
20年ローンの場合、毎月の返済額は、同程度の条件のマンションの賃料とほぼ同額になるケースが多いはずです。ローンのシミュレーションと、賃料相場を調べて比較してみて下さい。管理費等のランニングコストも計算に入れておきましょう。
②月々の賃料とローン返済金額がほぼ同額の負担であるなら、マイホーム・我が城であることの満足感だけでなく優るものは他にもあるはずです。
つまり、物差しで測ることのできない、精神的な利益を得られるものがマイホームにはあるはずです。
③経済的には以下のように考えます。
20年後、住宅ローンを完済。仮に3000万円で購入したマンションが、そのとき僅か1000万円でしか売れなかったとしても、1000万円の手元キャッシュは儲け。気付かぬうちの貯金です。2000万円なら望外の喜びと考えましょう。
・・・・・ただし、これは住宅ローンを20年で組んだ場合ですから、もっと長い償還期間を選択した場合は、20年後に売却するときに残債を銀行に返済しなければなりません。10年後に売却することになったときは、もっと残高は多いわけです。従って、できるだけ短く組む方がよいのは言うまでもありません。
何年か先に1000万円で売れたものの、ローン残が1000万円では、手元に1円も残らないことになるのですから。
・・・・・転勤で地方都市に移住した折に念願のマイホームを購入した人がいます。仮にYさんとします。Yさんは、それまでの狭くて古くて、綺麗とは言えない社宅を脱出したのです。地方都市は安いので広いマンションが買えました。ところが、入居して3年で再び転勤になりました。
そこでマイホームを処分することを検討したのですが、何と購入価格の30%ダウンという査定結果に愕然としました。購入時に入れた頭金は30%だったので、それが全部吹っ飛んでしまう計算です。住宅ローンの支払い分は家賃だったと思えばよいとしても、失ってしまうかもしれない頭金を36か月で割ると随分高い家賃を支払ったことになりました。
3年間の地方都市ライフは快適でした。家族も幸せそうでした。その精神的利益は測りしれないと言えますが、「この3年間、賃貸住宅にしておけば、頭金を失うことはなかった」とYさんは後悔しました。
10年後、20年後に果たしていくらで売れるかは予想が困難です。もっと先の30年後なら更に難しいと言わざるを得ません。管理・メンテナンス次第ですが、築20年くらいの中古マンションを購入した人なら、30年後は築50年となり、色々悩ましい問題が発生するかもしれません。
しかし、そうであるとしても人里放れた山の中でない限り、売却額がゼロ円ということはないはずです。少しでも手元に残れば、金銭的な利益を手にすることも可能なのです。地域一番の物件を選んでおけば、手残りは大きくなるはずです。
●テレワークの拡大はマンション需要も一変させるか?
郊外立地のマンションの価格は信じられないほど安いから、テレワークの普及や時差出勤が普通になれば、都心のマンションでなくともいいのではないか?そんなことを思ったりもします―――「郊外で子供を育てる方がいいのではないか」「共稼ぎを止めて妻は子育てに専念させたい。郊外ならマンションも安い。一戸建ても夢でない」と語る人にたまたまお会いして、考えさせられました。
郊外の中古マンションなら、確かに信じられないほどの安値(たとえば3LDKが2000万円以下)で購入可能です。子育て期間中は、それもありかなと思います。しかし、社会はそれを許すでしょうか?
社会の大きなうねりを見れば、人手不足は続きそうです。子育て期間中の育児休暇を与える代わりに企業は復帰を望むでしょう。復帰後の勤務形態をテレワーク主体に切り替えることが可能な人もあるでしょうが、職種や業務内容によっては全く不可能な人も少なくないはずです。
安値の中古マンションなら、収入が減ってもローンの返済に困ることもあるまい。妻が会社を辞めても生活に困窮することもない。預貯金も増やせそうだ―――こんなふうに考える人が増えれば、高値の都心・準都心マンションを選ばなくてもいいとする買い手が出て来るかもしれません。
新築マンションの価格は言わずもがな高くなり過ぎました。中古も新築のあおりで高くなりました。この数年、売れ行きは伸び悩み、市況は悪化しています。そこへ「コロナウイルス風邪」の流行が重なって需要は後退しそうにも思います。
オリンピックは延期になるかも? 少なくともスポーツイベントや芸能関係の公演は開催できない。また、来日観光客の制限などという過去に例がない事態に直面している今、マンション購入などではないと語る人も現れ始めました。
こんな動きを見ていると、「未曽有の不況」につながりかねないなあと感じます。全く予想外のことが起きてしまう。それが現代社会というものかもしれないとも思います。長く同じ家に住み続けるということですら、現代社会では難しいのではないかと思います。
そんなことを徒然に思うと、マイホームはやっぱり需要の多い都心・準都心がベターです。郊外マンションの需要が増えて、価格が強含みに推移する構図は浮かんで来ません。
・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「対面相談」もご利用ください。お申込みはこちらから(http://www.syuppanservice.com)
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