マンションの間取り

新築マンションの検索サイトを全国くまなく見て回った。狙いは、マンション業者がどのくらい間取りを重視しているかを見るためである。
 何となく分かっていたことだったが、間取りにこだわった物件は数えるほどしかないのに失望した。
 
 良い間取りは、ある程度余裕のある面積の中で生まれるもので、例えば3LDKの間取りを作ろうとすれば、70㎡ではダメで、最低でも77㎡ないと良い間取りにはならない。できたら、85㎡は欲しいのである。
 そうなると、価格の高い東京では無理があるから、良い間取りは必然的に地方に多くなる。思い出すのは、札幌市のマンションの素晴らしさである。札幌は、職人の日当が安いために建築費が多分日本一安い。地価も安いので、札幌は、大都市らしからぬ安い価格でマンションは分譲されてきた。
 この2年ほど札幌の仕事から遠ざかっていたが、今日、その札幌でかつて見られた優れた間取りが全く影を潜めていることに、とても残念に思った。

 総じて、全国どの会社も似たような間取りばかり、個性的なものはさっぱり見られない。
 原因は、分かっている。コストを抑えるためだ。収入の伸び悩みや、景気の先行きが不透明な中、価格を抑えることがマンション業者共通の命題になっている。金のかかる凝った間取りは、作りたくても作れないのが本音である。
 ただ、ごく僅かだが、挑戦する姿勢が見られる業者もある。それは、意外にも東京の物件である。前々から注目していたが、制約の有る中で、精一杯の工夫を見せてくれている。とても個性的な提案がそこに見られるのである。ここで具体的に業者名を出したいほどだ。
 
 マンションの買い手は、間取りだけで選ぶ訳ではない。予算があり、その中で立地条件が多分最優先であり、その先に間取りがあり、階数や向きや設備、付帯施設などがある。すべての条件が揃ったものはないから、どれかを妥協するはずである。間取りも重要な条件の一つだが、広さが先に来てしまい、間取りは妥協して買っている可能性がある。
 言い換えると、間取りが平凡でも問題のないものであれば、他の条件が満たされる限り二の次に追いやられているのである。場所が気に入り、設備も良く、つまりモデルルームが素晴らしく、予算の範囲で一定の間数と面積があれば我慢してくれているのである。
 私が客なら、我慢はしない。間仕切りを自分で変えて、このとおり変更工事をして欲しいと要求する。もちろん、工事期間がまだたっぷりある場合しか業者は条件を呑まないので、買うなら販売初期である。
 そのマンションが、販売不調だったら、あとで値段をこっそり引き下げて売るのではないか。そうなったら損ではないかという異論もあろう。それでもいい。自分が満足できる間取り、住戸内デザインのマンションで暮らしたい。そうした思い入れを持って買いたいものである。

 今日はここまでです。有り難うございました。  三井健太
 「三井健太のマンション相談室」にもどうぞおこし下さい。こちらから